デジカメアイテム丼

風量が2.7倍にアップしたセンサークリーナー「Fujin」の実力を写真家が検証!

こまめに使うことでゴミの固定化が防げる

レンズ交換式デジタルカメラの宿命とも言えるのがイメージセンサーのゴミ問題だ。

デジカメのイメージセンサーはフィルムと違って固定式なのでゴミは蓄積していくばかり。どんなに注意してレンズ交換しても使ううちに空気中の細かなチリが混入してしまい画質に影響を及ぼしてしまうのだ。

イメージセンサーのクリーニングはメーカーのサポートセンターに持ち込んで清掃してもらうほか、個人でもできるクリーニングアイテムも様々な種類が売られているが、カメラの中で最もデリケートな部位だけに個人ではなかなか手を出しづらいのが現状だ。

そこで今回はイメージセンサーには直接触れずに、風の力だけでクリーニングが行えるIPPの「Fujin」というアイテムについて紹介していこうと思う。

センサーダスト問題の現状

良く晴れた日にF16程度までしっかり絞って風景撮影などすると、青空に見覚えのない黒い点が映り込んでしまった経験がある人も多いだろう。

この黒い点がイメージセンサーに付着したゴミ、センサーダストだ。肉眼ではほぼ見えない微細なゴミでも写真に映り込む厄介な存在である。

もし自分はセンサーダストを見たことがないという方は、恐らく普段F5.6以下で撮影しているからだと考えられる。小さなF値ならセンサーに付着したゴミもボケて見えなくなってしまうからだ。

センサーダストを見てみたい場合は、絞り優先モードでF22まで絞って青空や白い壁などを撮影してみると簡単に確認できる(ISO400以下で。壁を撮る場合はピントを外すこと。手ブレは関係ないので無視して良い)。

撮影した画像をパソコンに取り込み、等倍近くまで拡大して画面内を良く見てみると黒い点やひどい場合は糸くずのようなものが見えるはずだ。

半年以上、普通にレンズ交換をしながら撮影をしていればまず間違いなくカメラのイメージセンサーにはダストが乗っていると思って良い。

こまめなクリーニングが効果的

このセンサーダスト問題への対策として、カメラメーカーでもイメージセンサーを微振動させてゴミをふるい落とす機構を備えたり、センサーにフッ素コーティングを施してゴミが付着しづらくするなど工夫はしているのだが、それでも使っていくうちに少しずつゴミが付着し、センサー表面で固定化してしまう。

センサーにゴミを溜めないようにするにはレンズ交換時にゴミが侵入しにくいよう、なるべくクリーンな場所で手早く行うことが大事なのはもちろんだが、ミラーボックス内に入ってしまったゴミを固定化させないように撮影後こまめにブロワーなどで吹き飛ばすことも大事だ。

この日々のメンテナンスを快適に行うために登場したのが“レンズ型のミラーボックス用掃除機”とも言えるFujinである。Fujinを使うことでフィルターを通したクリーンな空気をミラーボックス内に送ることができ、清潔さを保つことができる。

ラインナップ

初代Fujinは2014年にキヤノンEFマウント用が発売され、純正レンズそっくりの形や世界初の機構ということもあり大きな反響を呼んだことを覚えている読者も多いだろう。

現在は、初代から風量を2.7倍にパワーアップさせた新型の「Fujin Mark II」と、同じ風量でニコンFマウント対応の「Fujin D」の2つが主力である。

さらに今年2月にはFujinを使ってレンズの後玉を掃除するための専用アダプター「Canon EF/EF-Sレンズ専用マウント」(CL-001)とニコンFマウントレンズ用の「Nikon Fマウントレンズ専用マウント」(NL-001)もラインナップされる。

奥がFujin、手前がレンズ専用マウント。左がニコン用で右がキヤノン用だ。

レンズにそっくりなFujinの外観

まずはFujinの外観からみていこう。今回はキヤノンEFマウント用のFujin Mark IIを中心に紹介していくが、ニコンFマウント用のFujin Dも同じだと思ってもらって良い。

Fujin Mark IIの同梱物は本体、収納ポーチ、説明書、フィルター3枚となる。本体がEF50mm F1.2L USMにそっくりである事も面白いが、レンズポーチまで純正のものとそっくりという力の入れようだ。

レンズキャップならぬクリーナーキャップ(フロント)は67mm径。

電源ON/OFFボタンは、AF/MFスイッチを模した作りだ。電源ON時にはパイロットランプも点灯する。

動作は単4電池×4本となり、側面の電池ボックスに取り付ける。電池は同梱されていないため別途用意しておく必要がある。1回1分程度の使用で約120回使用できる。電池蓋には「Made in Japan」とあり、国内生産されていることがわかる。

使い始める際はレンズ上部のフィンを回して外し、フィルターを取り付ける。

フィルターを置いたところ。

フィンをセットして、フィルターの取り付けが完了した。

Fujinの専用フィルターは3Mジャパン製の帯電特殊フィルターを使用しており、PM2.5クラスの微細なゴミもシャットアウト。クリーンな空気をミラーボックス内に送ることが可能だ。

予備フィルターは2枚あり、使用頻度にもよるが、1~2カ月ごとの交換が推奨されている。もちろん別途フィルターだけ購入することも可能だ。

マウント側には取り付け用の赤い目印が付いている。中央のフィンがミラーボックス内の空気の流れを制御する。

ニコン用のFujin D(81.3×99mm)はキヤノン用Fujin Mark II(84.5×72mm)よりもやや細長い形状をしているが機能は同じだ。

Fujinのゴミ除去の仕組み

ここまでの外観写真を見ればゴミ除去の仕組みも想像できるかと思うが、Fujinの中央には強力なファンがついており、電源を入れるとクリーナー外周に設置された専用フィルターを通ったクリーンな風がミラーボックス内に入り、内部の空気を勢いよくかき混ぜながら中央部から抜けていく。

風の力を利用してゴミを除去するという点ではブロアーと同じ原理だが、フィルターを通したクリーンな空気をミラーボックスに入れるという点でブロアーとは大きく異なる。これらの仕組みについて同社は特許も取得している。

例えば、埃っぽい屋外ではブロアーだと埃を含んだ空気を送り込んでしまう可能性があり、カメラ内部をより汚染してしまう恐れもあるが、Fujinなら屋外で使用してもカメラに入る空気はつねに一方通行でクリーンな状態となるのだ。

また、ただ空気を送り込むだけでなく、専用設計された整流板がミラーボックス内の空気を効率的にかき混ぜることができるという。

どれほどの力があるのか、コップの中に小さくちぎった繊維質のゴミを入れ、Fujinで吸い出せるかどうか実験をしてみた。スイッチを入れた途端、コップの中の空気が勢いよくかき回され、中のゴミが気持ちよいほどに吐き出されていることがわかる。

Fujinの使い方

Fujinの使い方は非常に簡単だ。まずはじめにFujin単体を10秒ほど空運転させ本体内部をクリーンな状態にしておき、レンズと同じ要領でカメラに装着する。

その後、スイッチを入れゴミが排出されやすいようカメラを下に向ける。一眼レフカメラはそのままだとミラーとシャッターでイメージセンサーが見えない状態なので、清掃中に連写をしてミラーやシャッター動作を加えるとより効果的にゴミを除去できるようになる。

さらに、Fujinを取り付ける前にカメラ本体側でセンサークリーニング機能を使用しておくとイメージセンサーに付着したゴミが取れやすくなる。一連の動作を動画にしたので確認して欲しい。

どのくらいの頻度で使用すれば良いか?

イメージセンサーのクリーニング方法は大きく分けて、1.センサー表面を物理的に拭き取る方法、2.粘着物でセンサーのゴミを吸着させる方法、3.風を当ててゴミを吹き飛ばす方法の3種類があり、クリーニング能力は1>2>3の順となる。

Fujinは強力なファンを搭載しているとはいえ、3.の風を使ったクリーニング方法なので、カメラメーカーが有償で行っている1.のような拭き取り式と比べると除去できるゴミには限界がある点は覚えておきたい。

今回Fujinを使ってみておすすめしたいと思ったのは、撮影ごとの日々のメンテナンスに使う方法だ。前述のとおり、特にミラー動作でカメラ内部から発生したグリス系のゴミや長期間センサー表面に付着したままの固定化してしまったゴミには効果は薄い。

一方で、付着してしまったばかりの固定化していないゴミに対しては高い効果があると感じた。

よって、Fujinは月に1回といった低頻度で使うのではなく、ゴミが固定化する前にマメに使うのが最もおすすめだ。撮影中の空き時間やその日の終わりに使うのが最も効果的だろう。レンズと同じ形なのでカメラバッグに入れて現場へ持ち出すのも楽だ。

ちょっと大きめの単焦点レンズくらいのサイズ感。カメラバッグに入れる場合はクリーナー内部の汚染を避けるため必ずキャップをしておく。ジップロックのようなものに入れておくのも良いだろう。

また、どうしても既に付着してしまったイメージセンサー表面のゴミ除去に注目しがちだが、こまめにFujinを使うことでミラーボックス内がクリーンに保たれ、イメージセンサーへのゴミの付着を未然に防げるという効果も大きい。

一眼レフカメラの場合、イメージセンサーは普段見えない構造なのでいきなりゴミが付着する確率は低く、大抵はレンズ交換時にミラーやミラーボックス側壁に付着したゴミがだんだんとセンサーに落ちていく。そのため、普段からミラーボックス内をキレイに保っておくだけでイメージセンサーへのゴミ付着は格段に少なくなるはずだ。

さらに、ミラーボックス内にはフォーカシングスクリーンやAF用の位相差センサーも設置されている。これらにゴミが付着しても快適な撮影が損なわれるため日々のFujin使用は効果的だろう。

クリーニング機能検証

さて、実際にどれだけのクリーニング機能があるのか実験をしてみた。

実験に使用したのはEOS 5D Mark III。5D Mark IVが出てからめっきり使用回数が減ってしまったためクリーニングをサボっており、数カ月にわたってセンサーにこびり付いてしまったゴミが11個ほど確認できた。

実験前のゴミの状態

ゴミの分布をみるに、ミラー可動部からのグリス系のゴミが疑われるようなものもありこのゴミは残念ながらFujinでもブロワーでも除去することはできなかった。

ゴミの評価は白背景で撮影後、Lightroomの[スポット修正]>[スポットを可視化]でスポットを強調して行った。

そこで、強制的にイメージセンサーを暴露させ、ゴミをわざと付ける事にした。埃っぽい部屋の中に30分ほどセンサークリーニングモードでマウントを開けっぱなしで放置したところ、11個あったゴミが24個ほどまで激増した(皆さんは真似しないで下さい。一度の撮影でこれほどゴミが付くことはありません)。

暴露させた後の状態

ここにFujinを使ってみることにした。説明書通り連写を挟みながら1分ほどクリーニングすると結果は約15個。新たに付着した13個のゴミのうち9個まで除去することができ、先ほど述べたようにセンサーに付着して時間が経っていないゴミに対しては大きな効果があることがわかった。

Fujinでクリーニングした後の状態
1分間清掃しただけで元の状態に近くなった。

また、フォーカシングスクリーンにもいくつかのゴミが付着しており、ファインダー内で黒い点がいくつか見えていたが、こちらもスッキリした(内部に入ってしまったゴミはFujinで除去できない)。

レンズ用アダプター

最後に紹介するのは、レンズ後玉掃除用の「Canon EF/EF-Sレンズ専用マウント」(CL-001)とニコンFマウントレンズ用の「Nikon Fマウントレンズ専用マウント」(NL-001)。それぞれFujin Mark II、Fujin Dに対応したオプションアクセサリーである。

EFレンズ用の赤い目印だけでなく、EF-Sレンズ用の白い目印もついている。

レンズの後玉は汚れてしまうと画質への影響が大きい部位であるだけでなく、その汚れがやがてイメージセンサーに付着してしまうこともあるので、ここも日々のメンテナンスが大事だ。

特に望遠系のレンズは後玉が奥まったところにあるためなかなか手が届きにくく、そのようなシーンでこの変換マウントが有効に使えるだろう。

使い方はまず、レンズの後玉に変換マウントを取り付ける。変換マウントの向きはどちらでもOKだ。つぎに反対側からFujinを取り付けてカメラと同じようにクリーニングすればよい。

まとめ

イメージセンサーに付着してしまったゴミに関しては、Fujinですべて取り除けるというわけではないものの、付着してから時間が経っていないゴミに関しては有効であることがわかった。

撮影ごとにFujinを使えば、イメージセンサーに付着してしまったゴミが除去できる可能性があるだけでなく、日々ミラーボックス内がクリーンに保たれるため新たなゴミの付着を抑制できるメリットもある。

年に1回くらいはメーカーのサービスセンターでしっかりした清掃を行っておき、この清潔度を長く保つためにFujinを使用するのが個人的にはベストだと感じる。

キヤノンの場合、センサークリーニング1回につき税別3,000円(+交通費や送料)が掛かることを考えれば、Fujinの利用にメリットを感じる人も多いだろう。

なにより、センサーダストを気にせずに安心して撮影できるというのも大きい。日々のメンテナンス用に1台持っておくのも良いだろう。

制作協力:IPP株式会社

中原一雄

1982年北海道生まれ。化学メーカー勤務を経て写真の道へ。バンタンデザイン研究所フォトグラフィ専攻卒業。広告写真撮影の傍ら写真ワーク ショップやセミナー講師として活動。写真情報サイトstudio9を主催 。