吉村永の「ホントに使える動画グッズを探せ!」

21品目:安定のB帯ワイヤレスマイクシステム

SONY「UWP-Dシリーズ」

「ハンドヘルドマイクロホン UTX-M30」(上)、「ポータブルダイバーシティーチューナー(2波受信)URX-P41D」、「ボディパックトランスミッター UTX-B40」。このセットで一人語りや対談、インタビューまでさまざまに対応できる。写真のハンドヘルドマイクは旧製品だが(現行品はUTX-M40)、新旧取り混ぜてシステム運用が可能だ

この連載では“スチルカメラ愛好家”に向けて、動画畑出身のカメラマン 吉村永がレンズ交換式デジタルカメラで動画を撮る際に便利なグッズを見つけて紹介していく。時にプロ向けの高価な機材から、馴染みのないメーカーの製品まで積極的に試して紹介できたらと思う。

SONY UWP-Dシリーズ

役立ち度:★★★★★
コスパ:★★★
マニアック度:★★★★

2.4Ghz帯よりも…

最近は本連載でも紹介したようなワイヤレスイヤフォンのようなケースにセットされたワイヤレスマイクシステムが安価で発売され、使いやすさと手軽さから相当な人気となっている。

多くのビデオグラファーにこれらの製品をおすすめしたいのだが、実は苦手なシチュエーションがある。それがイベント会場だ。

これらの製品の多くは通信に2.4Ghz帯というWi-Fiと同様の周波数帯が使われている。多くの人や企業が集まるイベント会場などではこの周波数帯で多くの機器が同時に使われる関係上、混信や干渉が起こりやすく音声が途切れがちになるのが問題なのだ。

そこで紹介したいのが業務用のB帯を使ったマイクシステムだ。この周波数帯は業務用とはいっても免許や使用申請の心配もなく使え、かつ2.4Ghz帯よりも限られた用途に使われていることもあって実質的な信頼性が高いのが嬉しい点だ。

目的に応じた組み合わせで

まず、このマイクを導入するときに考えなくてはいけないのは、どんな組み合わせが最適かということ。民生用のように送信機×2と受信機×1がセット販売されているわけではないからだ。

カタログを見ると、まず目につくのは「UWP-D21 B帯アナログワイヤレスマイクロホンパッケージ」だ。これは「UTX-B40ボディパックトランスミッター」と「URX-P40ポータブルダイバーシティーチューナー」という製品のセット商品。

前者は送信機とラベリアマイク(通称ピンマイク)のことで、後者は受信機となる。すぐにワイヤレスでのラベリアマイク運用ができるセットで安価なのだが、注意したいのはこのセットに含まれる受信機は1度に1台の電波しか受信できないということ。

1人語りしか録らない/絶対にマイクは1系統しか使わないという人や、たくさんのマイクと受信機を買い揃えて音声ミキサーを使うという人なら別なのだが、一般的には2つのマイクを同時に受けられる受信機を用意しておくのが便利だろう。

その場合に受信機としてお勧めしたいのは「URX-P41Dポータブルダイバーシティーチューナー」だ。これに加えて胸元にマイクを仕込みたいのならば「UTX-B40」を、レポーターのようにハンドマイクを使いたいなら「UTX-M40ハンドヘルドマイクロホン」を揃えればいい。ちなみに型番でもわかると思うが、一般的にワイヤレスの送信機は「TX(Transmitter)」、受信機は「RX(Receiver)」と略されることが多い。

実際に僕も業務でずっと使っているこのシステムなのだが、信頼性の高さからくる安心感は絶大なもの。これは競合の少ないB帯であることに加え、トゥルーダイバーシティー方式と言って常に2つの電波を送受信し、受信状態のいい方を自動選択して良好な接続を保つ方式が採用されていることにも起因する。

もちろん音質もとてもクリアで、TXに付属するラベリアマイクでの収録でも人の声が鼻声になったりすることもなく聞きやすい。ラベリアを楽器に仕込んで音楽演奏の収録をする場合でも素直な音質は好印象だ。

便利機能や周辺アクセサリーも充実

使い勝手の面で注目したいのは「NFC SYNC」機能。収録時の状況で混信やノイズ混入がいちばん少ない電波チャンネルを選ぶのは基本中の基本だが、これがとても簡単に行える。

まずはRXのシンクボタンを長押しすると送受信可能電波を自動スキャンし、いちばんいいチャンネルを自動選択してくれる。次にTXをRXに重ねるように置くと非接触NFCによりRXで選択されたチャンネルがTXに自動的に同期され、本体がブルブルと震えてチャンネル選択と同期が可能になったことが即座に知らされるのだ。小さなディスプレイと少ないボタンでチャンネル設定が煩わしいこの手の小型ワイヤレス機器にありがちな煩わしさが嘘のように解決されている。

多くの民生用製品に比べて少々高価ではあるが、自由にシステムアップできる商品展開は魅力的。さらに、モデルチェンジした場合でも互換性が取れているのでTXだけ、RXだけ新製品を加えていくということも可能だ。実際、僕はハンドマイクといくつかのボディパックTXは過去製品を組み合わせて使っている。

また、業務用ということもあって細かな部品が購入できる点も嬉しい。腰ベルトに取り付けるためのクリップは数百円から、単3形乾電池を交換するのが面倒な人はバッテリーカートリッジだけを買い足したり、ラベリアをTシャツにつけるための安全ピンなども購入できる。

さらに、ソニーのカメラユーザーに嬉しいのがマルチインターフェースシューへの対応。別売りのアダプターSMAD-P5を取り付ければ、αシリーズなどのMIシューに取り付けるだけでケーブルなしの接続が可能になる。この場合はデジタル接続となるので、ノイズも低減され、より高音質が期待できる(カメラの機種により、アナログ接続になる場合もある)。

写真ファンが撮影する動画で、特にクオリティに差が出やすいのが音声部分。信頼できる製品を揃えるのが意外な早道となるかもしれない。

ボディパックトランスミッターの取り付け例。付属のクリップで衣服のベルト部分などに仕込むのが一般的だが、ワンピースの女性などに仕込む場合は使い捨て懐炉の固定ベルトを使ったりするのもお勧め
胸元にラベリアマイクを仕込んだ例。多くの送信機一体型マイクに比べてすっきりとした印象。衣服により洗濯バサミ式や安全ピン式など、取り付け金具も選択が可能だ
吉村永

東京生まれ。高校生の頃から映像制作に目覚め、テレビ番組制作会社と雑誌編集を経て現在、動画と写真のフリーランスに。ミュージックビデオクリップの撮影から雑誌、新聞などの取材、芸能誌でのタレント、アーティストなどの撮影を中心とする人物写真メインのカメラマン。2017年~2020年カメラグランプリ外部選考委員。