吉村永の「ホントに使える動画グッズを探せ!」

20品目:システムアップも楽しいフィルターシステムセット

H&Y「REVORING Swiftシステムビデオグラファーセット」

この連載では“スチルカメラ愛好家”に向けて、動画畑出身のカメラマン 吉村永がレンズ交換式デジタルカメラで動画を撮る際に便利なグッズを見つけて紹介していく。時にプロ向けの高価な機材から、馴染みのないメーカーの製品まで積極的に試して紹介できたらと思う。

H&Y REVORING Swiftシステムビデオグラファーセット

役立ち度:★★★★★
コスパ:★★★★★
マニアック度:★★★★

日中のロケ撮影で使いたいマットボックス

前回紹介したH&YのREVORINGフィルターシステムは、装着が簡単な可変式の爪になっているネジ部分が特徴的だった。しかし同社の製品にはこれ以外にも、様々なオプションや角型フィルターホルダーなどを“マグネットで組み合わせて使える”かなり壮大なシステムを持つシリーズもあるのだ。

今回取り上げるのがそのシリーズである「REVORING Swiftシステム」。これは「ベース」「ブリッジ」「アクセサリー」といった3種類のパーツをレンズに装着して使うもので、目的に応じてその組み合わせを変えられる汎用性の高さが特徴的なアイテムとなっている。各パーツはマグネットによる着脱となるのだが、そのラインアップの豊富さにも目を見張るものがある。

幅広い運用が可能となっている一方で、あまりにも多種多様な製品の組み合わせがあるため、自分の目的に合わせるにはどれを購入すればいいのかがわかりにくいのが唯一の欠点といえる。僕もこのシステムを現場に何度も持ち込みながらどの組み合わせが良いのかを試して行ったのだが、最終的には1番汎用性が高い組み合わせとして、3つの製品を選んで運用していた。

この組み合わせに落ち着くまで数カ月かかってしまったのだが、それと同じ組み合わせが「ビデオグラファーセット」というセット商品で登場したのでびっくり。今回はそちらの紹介だ。

このセットは可変ステップリング「SWIFT REVORINGマグネティック可変式アダプター」(ベース)と、バリアブルNDフィルター「Swift マグネティック Vari ND 3-32(1.5-5段)フィルター」(ブリッジ)、そして逆光状態でレンズのハレーションなどのコントロールをするいわゆる“ハレ切り”に役立つマットボックス「Swift マグネティック マットボックス」(アクセサリー)の3つがセットになっている。

現場で一番使うのはやはりバリアブルNDフィルターだが、日中のロケ撮影ならばマットボックスも使いたいもの。しかしこれまでマットボックスはかなり大袈裟なものが多かった。どんな径のレンズを取り付けても対応できるようにカメラにケージをつけ、そこからレンズ下部に2本のロッドを取り付け、そのロッドにマットボックスを装着する方式が主流だった。

これだと大きすぎるだけでなく、レンズを替えるたびにロッド2本に取り付けたネジを緩め、マットボックスの位置を前後微調整する必要がありとても面倒。だがこのフィルターシステムならば、ステップリング/バリアブルNDフィルター/マットボックスの全てがマグネットによるワンタッチでの着脱が可能なのだ。

色んな用途を見越して拡張できるシステム

実際にこのセットを運用してみると、レンズを交換してもすぐに同じ組み合わせのまま着脱できて便利であった。そして中間位置(ブリッジ)に取り付けられているバリアブルNDフィルターのつまみを回して明るさを調節しても、その先に取り付けられたマットボックスは回転しないようになっていることには感心した。

マットボックスというと、上下2枚のフラップがついたものを想像する人が多いと思うが、ほとんどの場合、この上だけの1枚フラップでハレ切りは可能だし、フラップを畳めばそのままレンズキャップ代わりになるのも使い勝手として便利。さらに、別売りのブラックミストフィルターなどを挟み込むことも可能なので、システムアップも楽しめるのが嬉しい。

このシステムで使えるアイテムのラインアップは豊富だ

行儀良く撮影している読者には関係ないことなのだが、僕の場合だと街歩きの番組収録などかなり動きが読めない状況では、撮影時にマットボックスが建造物などにぶつかってしまうこともままある。この場合、今回の製品はマットボックスとフィルターの間のマグネットが非常に強力なため、その両者が同時にレンズから外れて落ちてしまうことがあった。この部分だけマグネットを少し弱めにしてもらい、光学部品よりは幾分か落下衝撃に強いであろうマットボックスのみが外れるようにしてもらえるとありがたいなとは感じた。

とにかく最小限の装備で動画を撮りたい人には前回の「REVORING Vari ND3-ND1000 CPL」を、これから様々な用途でシステムアップを考えたい人には今回のビデオグラファーキットを強く勧めたい。

吉村永

東京生まれ。高校生の頃から映像制作に目覚め、テレビ番組制作会社と雑誌編集を経て現在、動画と写真のフリーランスに。ミュージックビデオクリップの撮影から雑誌、新聞などの取材、芸能誌でのタレント、アーティストなどの撮影を中心とする人物写真メインのカメラマン。2017年~2020年カメラグランプリ外部選考委員。