吉村永の「ホントに使える動画グッズを探せ!」

11品目:シンプル操作の“小さな”ワイヤレスマイクシステム

Hollyland「Lark M1」

この連載では“スチルカメラ愛好家”に向けて、動画畑出身のカメラマン 吉村永がレンズ交換式デジタルカメラで動画を撮る際に便利なグッズを見つけて紹介していく。時にプロ向けの高価な機材から、馴染みのないメーカーの製品まで積極的に試して紹介できたらと思う。

今回紹介するのは、ワイヤレスのラベリアマイクシステム。ラベリアは「ピンマイク」と言った方が通りがいいかもしれない。主に映像の伝送システムで好評を得ている中国Hollylandの製品だ。実勢価格は税込2万3,000円前後。

Hollyland「Lark M1」

役立ち度:★★★★★
コスパ:★★★★★
マニアック度:★★★

シンプルな操作性とミニサイズが魅力

この製品は以前紹介した「DJI MIC」に非常に似ており、送信機一体型マイク×2台と、この2つの電波を同時に受信できる受信機×1台が、ワイヤレスイヤフォンのような充電ケースに入った製品だ。演者がひとりのときはもちろん、インタビューイとインタビュワーの2人といったような掛け合いの撮影時にも、音声ミキサーなどを用意しなくても収録できるとても便利な製品と言える。

送信機と一体型になったマイク

そしてこの製品の最大の魅力と感じたのはそのシンプルな操作性と小型軽量なサイズだ。

ワイヤレスマイクのモジュールでは、送信機をTX、受信機をRXと呼ぶ。マイクとバッテリーを内蔵したLark M1のTXは、重量が実測で12gと“超”軽量。サイズも、人差し指の先から第二関節までの長さより短いくらい小さい。シャツの胸元につけても大きすぎて目立つことがないし、軽いのでシャツ生地が捩れる心配もない。

実際に男性の胸元にTXを取り付けた例。48×21.5×10mmという小ささだが、ロゴの主張はちょっと大きめか?(笑)

そしてRXは実測17.7g。こちらも背面にクリップがついているのでどこかに挟むこともできるし、カメラのホットシュー部分に取り付けても使える。

ほとんどのカメラに接続可能な3.5mmの3極/4極ケーブルが付属しているし、スマートフォン取り付け用のLightningやUSB Type-Cケーブルも別売りで用意されているので接続に困ることもないだろう。

バッテリー寿命も十分なもので、TX/RXともに約8時間動作する。付属の充電ケースに入れると2回充電が可能なので、最大で24時間使用できる計算。TX/RX/ケースともに約1.5時間でフル充電が可能なので、電源周りにストレスを感じない。

使い方のシンプルさには本当に感心させられた。TX/RXを充電ケースに入れ、USB Type-Cで充電をしておく。TX/RXをケースから取り出すと、自動的に送受信のペアリングがなされ、2.4Ghz帯の中でその場で干渉の少ないチャンネルを自動スキャンしてスタンバイしてくれる。TXを演者の胸元にクリップで着け、RXをカメラのシューに載せて付属のカールコードでカメラに接続。これだけだ。

RXの音量はRX本体の±ボタンで3段階に調節可能。他に電源ボタンも装備されているが、これはケースの出し入れだけで自動ON/OFFされるので基本的に操作不要だ。

ノイズキャンセリング機能を搭載

気になる音質だが、ラベリアマイクとしての基本性能はばっちり。セリフを明瞭に拾ってくれて、とても聞き取りやすい。ただ、高音質かというとそれほどでもなく、ちょっと鼻声というか詰まった感じの音声になる。DJI MICではより高音質を目指す場合に別売りのラベリアマイクをTXに接続することができたが、本モデルではマイク入力端子が用意されていないのでそういったシステムアップには対応していない。

特筆したいのは、このモデルならではのノイズキャンセリング機能。TXの黄色いボタンをワンタッチすると青のインジケーターが緑色に変わり、ノイズキャンセル機能がオンになる。同時に人の声がちょっぴりロボットボイス的な響きになるが、工事や車のノイズなどがなかなか効果的に抑えられる。

下の動画では、車の行き交う通りのそばで音声を収録している。ノイズリダクションのオン/オフを比べてみた

通信の到達距離は、カタログ上では見通し200mほど。実際に今回の実験でも50m程の距離で受信が可能だった(それ以上の距離はテスト日程の関係上、行っていない)。

ただ、2.4GHz帯のこの種の製品なので、演者が後ろを向くと音声が途切れる場合がままある。人体が、電波を遮っていると考えられる。また業務用ワイヤレスと違い、Wi-Fi電波が多く飛び交う展示会会場では接続が不安定になった。この辺りはこの製品の欠点ではなく、同種電波の民生用電波機器では避けられないものと感じている。

他にもユニークなのがカラー展開。ブラックだけでなくグリーン、パープル、ピンク、ホワイトの5色がラインアップされている。演者の服の色に合わせてコーディネートが楽しめるのもポイントだ。TXだけが色違いになるのかと思えば、充電ケースもRXも色が変わるところにも感心させられた。

さらに細かいことだが、充電ケースに加え、ケーブル類やウインドジャマー、説明書などのすべてのアクセサリーを収納できるコンパクトなケースも付属している。僕は実際にこの種のワイヤレスマイクの便利さから気が緩み、ケーブル類を忘れて現場に行ったことがある。こうして、音声関係がひとまとめになっていればこの手のエラーも防げるだろう。

機能を削ぎ落とし、コンパクト化したことで使いやすさと低価格を実現したラベリアマイク入門にぴったりのセットだ

付属のケースと、セットの全容。ケースは実測で95×57×145mmとコンパクト。全セットで実測264gだった
吉村永

東京生まれ。高校生の頃から映像制作に目覚め、テレビ番組制作会社と雑誌編集を経て現在、動画と写真のフリーランスに。ミュージックビデオクリップの撮影から雑誌、新聞などの取材、芸能誌でのタレント、アーティストなどの撮影を中心とする人物写真メインのカメラマン。2017年~2020年カメラグランプリ外部選考委員。