私はこれを買いました!

デジタル一眼レフからの移行を決意したミラーレスカメラ

ニコン Z 8(大和田良)

年末恒例のお買い物企画として、写真家・ライターの皆さんに、2023年に購入したアイテムをひとつだけ紹介していただきました。(編集部)

最も長く使用できる機種になりそう

今年、発表後に迷うことなく即予約購入したカメラはニコン Z 8。

私はこれまで、ニコン D850を使い続けることで、一眼レフによる撮影システムを維持していたが、ミラーレスへの移行に関しては常に検討していた。そのために最も適切なカメラボディが発売されたというのが、購入の大きな理由である。実はそれ以前にもニコン Z 9の導入を検討したのだが、大きさ、重さの点で私が求める方向性とは違っていたため見送っていた。そこで登場したのが今回のZ 8であり、私にとっては現状必要な性能が全て詰まったミラーレス機であると判断した。

大量に写真を撮影するデジタル写真においては、摩耗を気にする必要があるメカニカルシャッターは相性が悪いと常々思っていたから、メカニカルシャッターを排除したことは良い選択だと思えたし、HEIF形式の広いダイナミックレンジを活用するための工夫も次世代機種として歓迎するべきものだろう。堅牢なボディや精度の高いAF性能、手ブレ補正効果なども十分に期待できるスペックであり、実際使用してみてもストレスなく自由な撮影が行える。

同時に購入したレンズは、NIKKOR Z 40mm f/2とNIKKOR Z 24-120mm f/4 Sだが、特に小さな40mmを装着した状態でのスナップ撮影は非常に快適で、ミラーレスシステムならではの軽快な撮影が可能だ。一方、ミラーレス機のデメリットのひとつである消費電力の大きさは、未だ課題として残るところだろう。外での撮影では、常に複数個以上のバッテリーを持ち歩く必要がある。

また、私は酷暑や極寒のシーンでの撮影も多いため、そのあたりの信頼性としても、まだ一眼レフを超えるものではないだろうと今の時点では考えている。この冬に山での撮影に持ち出してみて、実際にどのような印象かはまた改めて判断したい。

しかしながら、とりあえず使い始めて半年ほどが経過したが、今の所文句なく、必要十分な撮影システムを提供してくれているというのが、一番の感想である。私自身に限って言うと、発表直後に即予約したカメラはニコン D800E以来ではないかと思う。考えてみると、ニコン D800Eは、その後ずいぶん長い間現役として使用した。その点において、先進的な機能を豊かに盛り込んだニコン Z 8もまた、現在発売しているカメラのうち、最も長く使用できる機種のひとつになるだろう。

フィリピンで滞在していたコンドミニアムで撮影した一枚。ロビーや庭など至るところに馬の置物があり、午年の私としてはなんとなく親しみが感じられた
Z 8/NIKKOR Z 40mm f/2/絞り優先AE(40mm・1/2,000秒・F2.8・±0)ISO 100

近況報告

最近は、学生にも手伝ってもらいながら各種古典技法の撮影やプリントを実験しています。カリタイプの上にサイアノタイプを二重三重に重ねるプリント方法を試しているのですが、今まで見たことがないような深い群青が現れ、久しぶりに写真の物質感に見惚れました。

大和田良

(おおわだりょう):1978年仙台市生まれ、東京在住。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業、同大学院メディアアート専攻修了。2005年、スイスエリゼ美術館による「ReGeneration.50Photographers of Tomorrow」に選出され、以降国内外で作品を多数発表。2011年日本写真協会新人賞受賞。著書に『prism』(2007年/青幻舎)、『五百羅漢』(2020年/天恩山五百羅漢寺)、『宣言下日誌』(2021年/kesa publishing)、『写真制作者のための写真技術の基礎と実践』(2022年/インプレス)等。最新刊に『Behind the Mask』(2023年/スローガン)。東京工芸大学芸術学部准教授。