写真展レポート
猫写真家・沖昌之氏の新作が並ぶ「これネコ それネコ?」が開催中
猫の自由な存在感そのままに 空間全体で表現した新感覚の写真展
2025年2月21日 13:52
「えっ、猫ってこんな表情するの?」「こんな姿で寝ているの?」と思わず2度見してしまうような瞬間を収めた作品が並ぶ、猫写真家・沖昌之氏の写真展「これネコ それネコ?」が2月21日(金)に始まった。会場は東京・六本木のフジフイルム スクエア。
猫の写真を撮り続けて11年の沖氏。アパレル会社勤務から猫写真家へと転身し、独特の視点で捉えた猫の表情や仕草が人気を博している。今回展示しているのは、約2年の歳月をかけて撮りためた新作。中には2024年12月末に撮影したものも含まれる。沖氏は「基本的には初めましてのカットがほぼ」と話し、大半が初公開作品だという。
「2年前に企画が決定してから、撮り続けてきました」と沖氏。いわゆる猫島での撮影では明け方から日没までカメラを手放さない日々を送ったという。
会場に足を踏み入れると、従来の写真展のイメージを覆す空間が広がる。猫の写真が壁一面に所狭しと並び、天井から飛び出すように設置された立体パネルが来場者を迎える。
「写真展のコンセプトをぶち壊したかった」と話すのは、写真選定やデザインを手がけた山下リサ氏。写真展という既成概念から完全に解放したという空間構成を、まさに「遊びきった」と表現する。
山下氏は「写真集はページをめくるという限定された動きしかないけど、写真展は立体なのでどうとでもなる。美味しい材料が来たみたいに食い散らかしちゃいました」と制作過程を語る。
「空間を感じに来るか、アトラクションを見に来る感じに近い」と沖氏。情報量の多さに「1度では味わいきれない」とも語る。「まるで漫画のような表現」と評し、「何度振り返っても全てを見切れない」展示空間の魅力を強調した。
展示作品の中で特に印象に残っているのは、漁師が魚の不要部位を投げ与える瞬間を捉えた1枚だという。「猫が遊び道具を見つけた時、それを1匹が触っていたらほかの猫たちは飽きるのを待っているような感じになるだろうなと想像していたんです。でも、この時はすべての猫が1つの対象物に対してアグレッシブに動いていたのが印象的でした」と説明する。
撮影に充てた2年間で機材にも変化があったと話す。「いままで、キヤノン EOS-1D X Mark IIIを使っていたのですが、2024年の後半からキヤノン EOS R1を使わせていただく機会があって、そこから撮影の楽しみが増えました。1日で3,000枚、3,500枚と撮るようになって」と語り、最新鋭のカメラを手にしたことで、撮影スタイルにも変化が生まれた。
「言い方が悪いですけど、もう自分が見ていなくても、シャッターを押せばカメラが合わせてくれる。これまで人体の構造上難しいと思っていた角度からも可動式のモニターになり撮れるようになった。これまで諦めていた構図にも挑戦できるようになった」という。
展示作品には富士フイルムの「銀写真プリント」を使用。これは銀塩プリントの技術を活かした印画紙によるプリントで、豊かな階調と深みのある表現が特徴。会場で見る写真は猫の毛が1本1本見えるほどの解像度を持つ。
「プリントが良すぎて、余計に情報量が多く感じるのかもしれない」と沖氏は語る。特に大型プリントでは、この描写力が際立ち、猫の表情や毛並みの質感までもが生々しく伝わってくる。
展示会場内には特設フォトスポットも設置。大きな壁面に猫が飛び出す構造になっており、座ったまま記念撮影ができる。「外から中が見えて、ほぼ誰が見ても違和感しかない」と笑う沖氏。この仕掛けも山下さんの発案だ。
このフォトスポットで目を引くのは、特大サイズの猫の写真だ。外の人を呼び込む役割から、沖さんたちはこの大きな猫を「宣伝部長」と愛称で呼んでいる。来場者がベンチに座って記念撮影する姿が外から見えることで、通りかかった人の興味を引く仕掛けにもなっている。
写真展の会期中、土日祝は沖氏によるトークイベントも予定されている。また、3月5日(水)に発売予定の新刊写真集『これネコ それネコ?』も会場で先行販売している。
写真展名
沖 昌之写真展「これネコ それネコ?」
会場
会期
2025年2月21日(金)〜3月6日(木)
開催時間
10時00分〜19時00分
※最終日のみ16時00分まで
入館料
無料