写真展

中里和人写真展「lux water tunnel land tunnel」

(ニコンサロン)

房総半島 (千葉県)と十日町周辺 (新潟県) は、ごつごつした壁面に野性的な地層の露出した素堀トンネルが無数残っている。

どちらも柔らかい地層のため穴が掘りやすく、耕地のない場所に少しでも田んぼや植林耕地を作りたいという共通点から掘られた。房総と新潟でトンネルが掘られるようになったのは江戸時代まで遡り、今も現役として使われている。

内部に水の流れるトンネルを、房総では川廻し(かわまわし)、新潟では瀬替えと呼ぶ。瀬替えの中でもトンネルの瀬替えを間府 (まぶ) と呼んだ。

つるつるした現代の構造物と対照的な素堀トンネルに入っていくと、複雑な地形が胎内巡りを喚起させ、等身大に近い穴の中では、いつの間にか日常の結界を越えて、何千年、何万年という時間を遡り、他所の惑星に紛れ込んでいくような無重力感を作者は体感した。

これまで林道の奥に隠れていた素堀トンネルは、光 (lux) を見る絶妙な装置であり、浸食と風化を繰り返し、太古からの光の記憶を化石化したアニミズムランドスケープでもあった。

カラー30点。

(写真展情報より)

会場・スケジュールなど

  • ・会場:新宿ニコンサロン
  • ・住所:東京都新宿区西新宿1-6-1新宿エルタワー28階
  • ・会期:2015年10月6日木曜日~2015年10月19日月曜日
  • ・時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
  • ・休館:会期中無休
  • ・入場:無料

作者プロフィール

1956年三重県生まれ。写真家。東京造形大学教授。79年法政大学文学部地理学科卒業。 日本の地誌的ランドスケープを中心にした写真展、写真インスタレーション、写真ワークショップを各地で開催。「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2012」「同展2015」に参加。

写真集に『湾岸原野』(六興出版)、『小屋の肖像』(メディアファクトリー)、『キリコの街』(ワイズ出版)、『路地』、『4つの町』、『グリム』(以上、清流出版)、『東京』(木土水)、『R』(冬青社)、『ULTRA』(日本カメラ社)、『龍宮』(sana-v) がある。

共著に『夜旅』(文/中野純、河出書房新社)、『石はきれい、石は不思議』(INAX出版)、写真絵本『こやたちのひとりごと』(文/谷川俊太郎、ビリケン出版)、『東京サイハテ観光』(文/中野純)、『セルフビルド』(文/石山修武、以上、交通新聞社)がある。また、映像作品に『BOSO TIME TUNNELE』(sana-v)などがある。

受賞歴に、03年「第15回写真の会賞」、05年「さがみはら写真新人奨励賞」がある。

(本誌:河野知佳)