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【特別企画】4人の写真家とEOS 5D 第5回
中里和人「夜光散歩」


UFO橋 東京/両国
隅田川に架かる両国橋には丸いUFOのようなもニュメンタルな意匠がついている。背景の町の中では宇宙マンションのようにも見えてくる。窓に灯る明かりがやわらかくデリケートな描写になっていて、コンクリートの質感もキメが細かい
露出優先 / F4 / 0.3秒 / ISO400 / WB:オート / 0 / 35mm

 ここ数年来、日本の夜や闇景色を中心にした撮影を続けている。

 昼間の街や郊外や森など、よく知っている風景も闇に包まれると、まったく知らない国の景色のように見え出すことがある。海の中と同じように、闇の中に浮かぶ光景は身近な場所でありながら、不鮮明なイメージに覆われた遠い場所でもある。

 そんな闇に包まれた新世界に誘われ、夕暮れから夜にかけての光景を写真本「逢魔が時」(ピエブックス 文/中野純)にまとめ、2003年秋に出した。それから闇の体験作家である中野純氏と日本各地の夜を旅した本「夜旅」(河出書房新社)を2005年の秋に出版した。

 という状況で、現在も闇の景色の撮影は続行中である。

 これら一連の作品作りは、ライカ M6、キヤノン New F-1、ブロニカ RF645など、銀塩カメラが担ってきた。デジカメとの出会いはほとんど無かったのだが、1年半ほど前に日本カメラ誌上で、近年モチーフにしている闇を、銀塩カメラとデジタルカメラで撮り比べるという企画をやることになった。タイトルはずばり「闇を写す」。M6と某デジタル一眼レフで闇や夜景の撮り比べをした。

 いつも使い慣れているM6では、経験値もあり、ポジフィルムには予想通りの深い味わいの闇が写っていた。一方デジタル一眼レフのほうは、深い暗がりの公園の林や路地に来るとAFが効かず、手動でピントを合わせようとしても、ファインダーでは焦点は合わせづらく、背面液晶も小さくて苦労した。また、街灯などには異常に反応し、闇の質感を出すにはまだまだ難しいという実感を持ってしまった。


給水塔 千葉/船橋
いつものこの給水塔の前に来ると、遠い見知らぬ国にまぎれ込んだ気になっていく。闇の筒から生え出ているような塔。白っぽい塔のやわらかい質感や、地面の土の表情も闇に浮かんでいる
EF 28mm F2.8 /絞り優先AE
露出優先 / F4 / 2.5秒 / ISO400 / WB:オート / -1 / 28mm
鎮守の森 千葉/船橋
マンションが立ち並ぶ畑の中に、こんもりとした樹木が残っている鎮守の森。外灯の明かりに巨樹の密集した葉が鮮明に描写されている
露出優先 / F4 / 13秒 / ISO400 / WB:オート / -0.33 / 28mm

 それからデジカメはほとんど使ってこなかったが、10月に中野のギャラリーで写真展をやった時に、写真家のW氏が訪れて、「今度出たEOS 5Dなら、今撮っている夜景も結構撮れてしまうかもよ」と話してくれた。

 そんな話を聞いていたので、今回のEOS 5Dでの夜の撮影には大きな期待をよせた。まず、撮像素子が35mm判のフルサイズなので、装着レンズの画角通りに描写できるのは楽だった。一番うれしかったのは背面にある2.5型液晶モニターで、闇に包まれ見えづらくなった被写体を肉眼よりもクリアーに見せてくれることだった。

 時々、あまりの暗がりにAFが効かなくなることもあったが、そのときにはマニュアルにして焦点を合わせ、即座にモニターで描写を確認しながら、闇の撮影を続行していった。

 もちろん闇を撮るといっても、夜の中に灯る街灯や車のライト、家やマンションからもれる光を基調にするわけで、外灯を建物の裏に隠すか、車のヘッドライトを入れるかなど、デジカメは光の条件にものすごく敏感に反応していく。


高架下の道窓 千葉/船橋
コンクリートの鉄道高架下に走る道が、暗くなった畑に向けて劇場のような窓景色になっていた。街灯の明かりと通過していく車のライトが静かで美しい劇空間を創っていた
シャッター優先 / F6.3 / 5秒 / ISO400 / WB:オート / -1 / 28mm

 今回は撮影条件を近いものにし、撮影する被写体や風景が変化していく中で、闇の描写がEOS 5Dでどのように表現されるのかに、主眼をおいてみた。基本的には絞り優先AEでF4、ISO400にし、場所のシチュエーションに応じ、闇の質感を出すために、マイナスの露出補正を2段階まで使った。また、JPEGで記録している。細部をいじる事はせずに、カメラがオートでザックリ捉えた闇の質感を検証してみようと試みたわけである。

 二夜にわたり、気になる闇景を7ショット捉えてみたが、空や雲、建物や樹木、地面に至るまで、質感の違う被写体をクリアーでありながら滑らかに描写していて、中世の精緻なテンペラ画を見るような、細やかな闇の粒子が浮かび上がってきた。

 1,280万画素の力とはこれのことなのか。印象としては、銀塩とは別次元の高度な技を目撃してしまった衝撃が走った。

 これなら新しいデジタルの闇表現が追求できるのではと実感できた、非常に実りのある夜歩きだった。


路地 東京/亀戸
亀戸駅から出ている貨物線の付近には、旧い東京の景色がたくさん残っている。奥行きのある路地に町工場のトタンの壁がしっとりと光っている
露出優先 / F4 / 0.5秒 / ISO400 / WB:オート / -2 / 35mm
花と柵 東京/亀戸
枕木を再利用した柵。古い木の質感や頭の部分の黄色いペンキも闇に美しく映えている。柵の途中から顔を出した花は、夜の中で可憐に妖艶に咲いている
露出優先 / F4 / 1.6秒 / ISO400 / WB:オート / -2 / 35mm

物干し植物園 東京/亀戸
今では見かけなくなってしまった物干しが沢山残る下には、いろんな草花がミニ植物園のように咲いていた。闇の中に花のシックな色彩がよく出ている
露出優先 / F4 / 2.5秒 / ISO400 / WB:オート / -2 / 35mm



中里 和人
(なかざと かつひと)1956年三重県生まれ。法政大学卒業後、1984年よりフリーランスカメラマン。会場探し、会場作りを自ら手掛け、町工場跡や市場、洞穴などでのユニークな写真展を精力的に開催。写真集「湾岸原野」(六興出版)、「小屋の肖像」(メディアファクトリー)、第15回写真の会賞受賞作「キリコの街」(ワイズ出版)、「逢魔が時」、「長屋迷路」(ピエブックス・文/中野純)、相模原写真新人賞受賞作「路地」(清流出版)、最新刊「夜旅」(河出書房新社・文/中野純)他

2005/12/27 00:41
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