写真展告知

ニコンサロン 第49回 伊奈信男賞/第26回 三木淳賞 受賞作品展

第49回「伊奈信男賞」受賞者 紀成道氏の写真展「風と土と x elements/Earth」

株式会社ニコンおよび、株式会社ニコンイメージングジャパンは、両社が運営する公募制の写真展会場「ニコンサロン」の年度賞として、第49回「伊奈信男賞」および、第26回「三木淳賞」の受賞者を2月25日(火)に発表した。

「伊奈信男賞」は、1年間(1月~12月)を通じて、ニコンサロンで開催した写真展の中から、最も優れた作品に授与されるものとなる。

第49回「伊奈信男賞」は、紀成道氏の写真展「風と土と x elements/Earth」が受賞。

人間と自然の営み、ひそやかに——。
激しい日照りの下、わたしは古来の製鉄技術「たたら」の文化が残る島根の山あいを歩いていた。不意に心地よい風が、肌にまとわる汗をなでる。気づけばそこは集落の入り口。なるほど、ヒトの野性で地の利を生かした社会の発生を想像させる瞬間だった。
ここにいると、自然は人間が操るものではなく、コミュニケーションの対象という認識がしっくりくる。今でも、半夏生に刈った笹で巻く餅がふるまわれ、神在月のころ、杜に藁蛇が供えられゆっくり土へ還っていく。
豊かな風土の流転は、一方で人間に厳しさも教える。ツタが空き家を覆い、過疎地に残された果樹が獣を呼び寄せる。生物の多様性や復元力が育まれるのは、土(守る力)と、風(変える力)が摩擦する場所なのだから。
止まらない少子高齢化に無力さを覚えたら、この視点に立ち返りたい。老いと若きが擦れ合う中で、農村と都市、双方の論理をわかり合い、課題を乗り越えられるのは、まさにこの地からであろうと。

(紀 成道)

伊奈信男賞受賞者一覧 - 第49回(2024年度) 伊奈信男賞 紀成道

また、「三木淳賞」は、若手写真家支援活動「Be a Photographer」の一環として設定。1年間(1月~12月)を通じて、ニコンサロンで開催した写真展の中から、新進作家による最も優れた作品に授与される。

第26回「三木淳賞」は、齋藤利奈氏の写真展「The Circle of Life ~海に息づく命の環~」が受賞した。

地球の表面積の約70%を占める海。そこには、わずか数ミリの小さな生き物から10mを超える大型海洋生物まで、1,000万種類以上もの生き物たちが暮らしているといわれています。

彼らの命の営みを目の当たりにした時、その力強さや儚さに深く感動したとともに、言いようのない愛情と畏敬の念を抱かずにはいられませんでした。

美しく雄大な海。そこに息づく生き物たちそれぞれが、輝くように命のバトンを繋ぎ、やがて静かに消えゆきます。しかし、生き物たちはそこで役割を終えるわけではありません。その灯火が消えた後も、彼らは海の糧となり、再び命の環に加わります。厳しくも美しい、あるがままの自然の姿は、私の心を強く捉え、魅了し続けています。

母なる海に潜り、その豊かさや力強さ、輝く命の営みに触れるひと時。それは私にとって、何ものにも代え難い大切な時間です。

ファインダーを通して捉えた、環になり巡る命の煌き。
この写真展が、海や自然へと思いを馳せるきっかけとなれば幸いです。

(齋藤 利奈)

伊奈信男賞受賞者一覧 - 第49回(2024年度) 伊奈信男賞 紀成道

いずれも、東京・新宿のニコンサロンにて、受賞作品展を開催。会期は、第49回 伊奈信男賞 受賞作品展が3月25日(火)~4月7日(月)。第26回 三木淳賞 受賞作品展が4月8日(火)~4月21日(月)となる。

第26回「三木淳賞」受賞者 齋藤利奈氏の写真展「The Circle of Life~海に息づく命の環~」

会場

ニコンサロン(ニコンプラザ東京内)

開催期間

  • 第49回 伊奈信男賞 受賞作品展:3月25日(火)~4月7日(月)
  • 第26回 三木淳賞 受賞作品展:4月8日(火)~4月21日(月)

開催時間

10時30分~18時30分(最終日は15時00分まで)

休館

日曜日

作者プロフィール

紀成道

1978年愛知県生まれ。
京都大学工学部物理工学科卒。人、もの、場所、時間、思考の「接点」でものごとは起こり、異質間の相互作用こそ我々に気づきを与えることをテーマに制作を行っている。島国である日本が直面する課題に人々がどう取り組むかに焦点を当て、何が日本を日本たらしめているかを探る。
森にある精神科病院を舞台に、自然を介した患者と健常者との関わりを「Touch the forest, touched by the forest.」(2017年)、製鉄の現場から高度経済成長期と現在の世代のつながりを「MOTHER」、「Hands to a Mass」(2019年)としてまとめた。展示や写真集ならではの表現で発表を続ける。
本作をまとめた写真集「かぜとつちと x elements」(赤々舎刊)を2024年に上梓。

齋藤利奈

1984年大阪府生まれ。
同志社大学文学部美学芸術学専攻卒業後、京都市立芸術大学大学院音楽研究科音楽学専攻修了。2012年、沖縄県でダイビングのライセンスを取得。最初は海で見た生き物を記録するために、コンパクトデジカメで写真を撮り始める。その後、水中写真家の作品展を見て感動したことをきっかけに、「作品作り」に関心を持つ。2019年、レンズ交換式カメラでの水中写真撮影をスタート。
青くカラフルな海や大型海洋生物、壮大な魚群に憧れ、インドネシアやモルディブ、タヒチ、フィリピン、ハワイなど海外や沖縄を中心に潜っていたが、コロナ禍をきっかけに日本、とりわけ、西日本の海の魅力を知る。海に暮らす生き物たちが懸命に命を繋ぐ姿に心を動かされ、求愛、産卵、新しい命の誕生のといった生態行動の撮影を開始。輝くような命の瞬間に触れる中、一方で静かに消えゆく命の存在を知る。自然界において「死」は終わりではなく、他の生き物の糧・海の養分となり、環になって繋がっていく。そんな、ありのままの自然の姿を撮りたいと思い、現在は「海に暮らす生き物たちの命の環」や「海洋環境」をテーマに撮影を行なっている。


    <受賞歴>
  • 2020年 地球の海フォトコンテスト 自由部門 グランプリ・舘石昭賞
  • 2021年 串本海中フォトコンテスト 金賞
  • 2022年 フジフイルムフォトコンテスト ネイチャー部門 銅賞
  • 2022年 宮古島フォトコンテスト グランプリ
  • 2022年 JTAフォトコンテスト 中村征夫賞
  • 2024年 日本水中フォトコンテスト 準グランプリ(グランプリなし)
  • 2024年 Sony World Photography Award 2024 Open 自然・野生動物部門 shortlist ほか