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ニコンサロン年度賞「第47回伊奈信男賞」を宮田恵理子さん、「第24回三木淳賞」を宛超凡さんが受賞

前列中央向かって右が伊奈信男賞を受賞した宮田恵理子氏、左が三木淳賞を受賞した宛超凡氏

株式会社ニコンイメージングジャパンは3月28日、ニコンサロン年度賞「第47回伊奈信男賞」と「第24回三木淳賞」の授賞式をニコンプラザ新宿で開催した。

2022年1月から12月に、ニコンサロンで開催された写真展の中から最も優れた作品に授与される賞。最も優れた作品には「伊奈信男賞」、新進作家で優れた作品には「三木淳賞」が贈られる。

審査員は、池上博敬氏、飯沢耕太郎氏、今森光彦氏、小髙美穂氏、佐藤時啓氏、港千尋氏の6名。

第47回伊奈信男賞

第47回伊奈信男賞には宮田恵理子写真展「disguise」(2022年11月29日~12月12日)が選ばれた。スイスのアルプス地方を舞台とした写真展。第二次世界大戦中に作られた陣地壕とトーチカなどの軍事要塞などが被写体となっている。

受賞した宮田氏は、「今回の作品は、抽象的でわかりにくい作品ですが、感覚を通じて理解していただけるように作品を作りました。受賞したことで自分の考えていた通りに写真が機能していてうれしい」とコメントした。

作品についても、「ヨーロッパには高速道路の横などに、いまもトーチカが点在しています。しかし同じヨーロッパでもスイスでは、アルプスの山に溶け込むようにカモフラージュされてました。その理由が気になり調べたところ、『永世中立国』となった政治的理由や歴史などがわかりました。それから、研究者の文章などを読み、撮る被写体を調べ、作品を深めていきました。その影響もあり撮影方法も途中から変えています。そういったところも見る方に感じてほしい」と話した。

受賞の喜びをコメントする宮田氏

受賞理由について、審査員の小髙氏は「客観的な記録写真ではなく、作者の戸惑いと思考のプロセスが内包されている。写真で答えを出すのではなく、手がかりにしながら問いへの歩みを深めていく点や、抑揚の効いたバランスで空間が作られており、表現者としての視座を感じさせる非常に完成度の高い展示であった」とコメント。

伊奈信男賞には、賞金100万円と副賞としてNikon Z 7IIとNIKKOR Z 24-70mm f/4 Sが贈られた。

第24回三木淳賞

第24回三木淳賞は宛超凡写真展「河はすべて知っている ―― 荒川」(2022年11月15日~11月28日)が選ばれた。埼玉県、東京都を流れ東京湾に注ぐ河川「荒川」が舞台になった写真展。川そのものではなく、川にまつわる生活や地域などのシーンが被写体となっている。

受賞した宛氏は作品について、「川には様々な物語があり、荒川を下っていくことで東京という都市の様々な側面が見えてくると考えました。これが荒川を被写体として選んだ理由です。荒川を下ることで見えてきたのは、都市の一つの側面に限らず、自然に対する人間の力であり、それを作品にしました」という。

日本と中国の川をじっくりと見比べられるのが私の強みだと話す宛氏。今後は中国・上海を流れる黄浦江を撮影して日本との違いなどを考察していきたいという。

作品についてコメントする宛氏

受賞理由について審査員の飯沢氏は、「6×18センチ判のパノラマサイズのカメラで撮影されており、横に大きく広がり、川とそれを取り巻く環境が風景となっている。今回のテーマに非常にふさわしい手法であった。色々な被写体が入り込んでくることによって自然と人が一体化されたものが写し出された。それが展示にも活かされており、全体的にとても完成度の高い作品であった」とコメントした。

三木淳賞には、制作支援金300万円と副賞としてNikon Z 6IIとNIKKOR Z 24-70mm f/4 Sが贈られた。宛氏は制作費300万円の使い道として、全額ブローニーフィルムの購入費に充てて、2年の間にニコンサロンで展示ができるように挑戦したいと話す。

第47回伊奈信男賞受賞作品展「宮田恵理子写真展『disguise』」および第24回三木淳賞受賞作品展「宛超凡写真展『河はすべて知っている ―― 荒川』」は、以下の日程で東京・新宿のニコンサロンにて展示が行われる。

第47回伊奈信男賞受賞作品展「宮田恵理子写真展『disguise』」

会場

ニコンサロン
東京都新宿区西新宿1-6-1 新宿エルタワー28階

開催期間

3月28日(火)から4月10日(月)

開催時間

10時30分から18時30分(最終日は15時00分まで)

休館

日曜日

第24回三木淳賞受賞作品展「宛超凡写真展『河はすべて知っている ―― 荒川』」

会場

ニコンサロン
東京都新宿区西新宿1-6-1 新宿エルタワー28階

開催期間

4月11日(火)から4月24日(月)

開催時間

10時30分から18時30分(最終日は15時00分まで)

休館

日曜日

本誌:佐藤拓