写真展告知

田沼武能写真展:子どもと地蔵さま

「村のはずれのお地蔵さまは、いつもニコニコ見てござる」と童謡で歌われる通り、日本には津々浦々に地蔵さまが祀られています。それだけ日本人に親しまれているのでしょう。私が地蔵さまを意識するようになったのは、1945年の東京大空襲の翌朝に、わが家の防火用水槽の中で焼死していた子どもを見てからです。その姿があまりにも地蔵さまの姿に似ており、私は“地蔵さまは子どもの化身である”と思うようになったのです。学校を卒業し写真の道に入ってから、日本の子どもや世界の子どもの写真を多く撮るようになりました。そして、防火用水槽の子が忘れられず、子どもと地蔵さまにかかわる行事を探し、写真に記録することを始めました。

行事の辞典から引き出して調査しました。しかし、戦後の時代の変化で消えてしまったものも多く、わずかになった行事を尋ねたなかから、今回4つの行事の写真をご覧いただきます。

・福井県小浜市、消えつつある伝統行事、西津に伝わる「化粧地蔵と地蔵盆」

・200人をこえる子どもが参加する、少子化時代には珍しい京都市左京区岩倉の「地蔵盆」

・群馬県佐波郡玉村町、近年は都市化の波が押しよせ子どもが少し増えた、箱石の「地蔵さまワッショイ」

・山形県尾花沢市北郷の正月の雪の中で行われる「地蔵ころがし」

私はユニセフ親善大使の黒柳徹子さんに同行し、30余年にわたり、援助を必要とする国を訪問し、子どもの写真を撮り続けています。そのほとんどは戦争や紛争に巻き込まれた国であり、被害を受けるのは子どもや女性、老人です。訪ねるたびに日本の戦争時代のことを思い出します。

劇映画などで戦争を見ると、なんとも恰好よく見えますが、戦争そのものは人と人との殺し合いにほかなりません。日本の子どもたちが地蔵さまと楽しんでいられるのも、平和であるからこそです。写真に映された子どもたちのように、明るい笑顔で地蔵さまと接していられるのは、戦後日本は戦争をおこしていないからです。防火用水槽の中で命を落とした子どものようなことが起こらぬよう、平和な日本であり続けてほしいと願いつつ、子どもと地蔵さまの伝統行事を撮り続けています。

出展作品数:カラー 約70点

写真展情報

オリンパスギャラリー東京

開催期間

2019年9月6日(金)~9月11日(水)

開催時間

11時00分~19時00分

所在地

東京都新宿区西新宿1-24-1 エステック情報ビル地下1階

休館

木曜日

ギャラリートーク

9月7日(土)14時00分~

オリンパスギャラリー大阪

開催期間

9月20日(金)~10月3日(木)

開催時間

10時00分~18時00分(最終日は15時00分)

所在地

大阪市西区阿波座1-6-1 MID西本町ビル

休館

日曜日・祝日

ギャラリートーク

9月28日(土)13時00分~

作者プロフィール

1929年 東京生まれ。東京写真工業専門学校卒業。
1949年 サンニュースフォトスに入社して木村伊兵衛氏に師事。1972年からフリーランスとなる。
1979年 モービル児童文学賞、1995年 菊池寛賞を受賞。
1990年 紫綬褒章、2003年には文化功労者に顕彰される。
1995年~2015年まで日本写真家協会会長、現在は日本写真著作権協会などの会長を務める。