写真展PICK UP
30年間の東京の姿を写し出す…中藤毅彦さん写真展「DOWN ON THE STREET TOKYO 1995-2025」
2025年1月16日 12:00
写真家・中藤毅彦さんの写真展「DOWN ON THE STREET TOKYO 1995-2025」がキヤノンギャラリー Sで2月7日(金)よりスタートする。今年、初めて個展を開催してから30年の節目を迎えるという中藤さん。本展示では自身が生まれ育った東京という街にテーマを絞り、これまでに積み重ねてきた“30年分の東京スナップ”を約200作品という大ボリュームで披露する。
1970年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部中退。東京ビジュアルアーツ写真学科卒業。都市のスナップショットを中心に作品を発表し続けている。 国内の他、東欧、ロシア、キューバ、パリ、ニューヨークなど世界各地を取材。作家活動と共に、東京四谷三丁目にてギャラリー・二エプスを運営。 写真集に『Enter the Mirror』『Winterlicht』『Night Crawler』『Sakuan,Matapaan-Hokkaido』『Paris』『STREET RAMBLER』がある。第29回東川賞特別作家賞受賞。第24回林忠彦賞受賞。
当事者としての街
東京は文京区、小石川に生まれ育った中藤さん。東京に対しては故郷であるという思いを抱く一方で、それとは異なる感情も併せ持つ。
「小石川は懐かしい思い出がたくさんあります。しかし、“東京”という単位で見ると、とても多面的であるがゆえに自分の故郷という思いを持つにはあまりに怪物的な都市であると感じます」
1人の写真家にはとても掴みきれない、いくら撮っても撮り切れない街であると、中藤さんは“東京”をそう言い表す。
集中して作品撮りをする日もあるが、東京を撮影するのは、そのほとんどが日常の中でのことだ。例えば買い物に出かけるときにもカメラを携える。世界の多くの都市を撮影してきた中藤さんだが、東京は自身の「生活」と「被写体」が唯一結びついた、当事者としての街なのだという。
約200点におよぶ今回の展示作品は、各年代に発表した作品やシリーズを軸に再構成。なかには、2025年の正月に撮り下ろした最新作も含まれる。30年間の写真を全て見直しながら、かつての銀塩写真を含むセレクト作業は思いのほか大変だったが、棚の中に眠っていた作品がもう一度、日の目を見ることが出来て良かったと中藤さんは目を細めた。
会場内では、これらの作品に撮影時期や詳細な場所などを記したキャプションは付けずに展示する。各年代の東京の姿が混在しており、一見するとどれがどの時代の写真なのかがわからない。またパーテーションを多用し、迷路のような空間も演出するという。
「本当に街をさまよっているような感覚で見ていただけると嬉しいです。1枚1枚の写真を鑑賞するのも良いのですが、まるで路地に迷い込んだかのような、そういった体験を楽しんでいただきたいです」
キービジュアルに採用した写真は、日本橋で撮影したものだ。この場所から道がつながっていく。かつてよりその姿は変化しつつも、東京の中心でありシンボルであり続けた場所だと中藤さんは語る。撮影は2023年だが、そのときにはすでに今回の写真展開催が決まっていた中で、「この写真をキービジュアルにする」という意識をもって撮影したのだそうだ。
幼少期、いわゆる地元の区立小学校ではなく、都内の色々な場所から子どもが集まる学校に通っていたという中藤さん。小学生のころからひとりで電車に乗り、他の地域に住む友達に会いに行った。それはまさに異世界に足を踏み入れるような感覚であり、そのころから「東京の街をほっつき歩く楽しみを覚えた」のだという。“写真家・中藤毅彦”につながる原体験の話だ。
東京を30年間にわたり撮影してきた中藤さんは、時代とともに変わりゆくその街の姿を写真に残し続けてきた。それはこの30年で終わりを告げたわけではなく、もちろん、これからも続いていくことだろう。
写真展情報
- 開催期間:2025年2月7日(金)~3月24日(月)
- 開催時間:10時00分~17時30分
- 会場:キヤノンギャラリー S
※東京都港区港南2-16-6 キヤノン S タワー 1F - 休館日:日曜・祝日
トークイベント
- 開催日:2月22日(土)14時00分~15時30分
- ゲスト:佐伯剛氏(かぜたび舎代表、写真家)、村上仁一氏(雑誌「写真」編集長、写真家)
- 定員:150名(先着申込順、参加無料)
- 申し込み:1月20日(月)10時より申し込み開始
- 会場:キヤノン S タワー3階 キヤノンホール S