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光と闇のコントラストを体感…別所隆弘「煙か闇か爆ぜ物」がニコンプラザで開催

フォトグラファー・別所隆弘さんの写真展「煙か闇か爆ぜ物」がニコンプラザ東京 THE GALLERYで2月25日(火)にスタートする。その後はニコンプラザ大阪に巡回し、最終日の4月2日(水)まで駆け抜ける。

花火といえば明るく華やかなもの。そんなイメージがまず想起されるが、「僕にとっては暗い印象の方が強いんです」と別所さんはいう。その作風から山の中で撮影することが多く、かつ“待ち”の長い花火の撮影は、闇の中で闇を見る時間が続く。暗いからこそより輝く光。ギャラリーに訪れた鑑賞者は、その光と闇のコントラストを体験することになる。

別所隆弘さんプロフィール

フォトグラファー/文学研究者/関西大学社会学部メディア専攻講師

写真と文学という2つの領域を横断しつつ、「その間」の表現を探究している。滋賀、京都を中心とした”Around The Lake”というテーマでの撮影がライフワーク。近著『写真で何かを伝えたいすべての人たちへ』(インプレス)。

一期一会の体験を

写真を撮り始めたそのときから、「花火を撮りたい」と明確に思っていた。綺麗な花火を収めたいと、初めてびわ湖大花火大会を撮影した日は雨に降られたうえに無風。花火の撮影条件としては極めて厳しいものだった。気落ちしながらもシャッターを切り続けていると、急に雨がやみ、風が吹きはじめ、そしてラストのスターマインが打ち上がった。

琵琶湖の水面上に上がる花火に、風にたなびく煙が絡む。最初は意図せず写し撮った煙だったが、別所さんはそれから煙に魅せられ、そして「花火と煙」を自身のテーマのひとつとして追い続けていくことになる。

キービジュアルに選んだのは、昨年8月に長岡まつり大花火大会で撮影した作品だ。龍が花火を飲み込まんとするような、まさにそんな姿に見えてくる。バルブ撮影で長秒露光して写し撮ったそれは、実際に目で見ているものとは異なるし、ましてや再現性もない。その作品との一期一会に魅力を感じている。

「煙は自分の意図を全く無視してあらわれます。写真の良いところは、そのすべてを自分でコントロールできるわけではない、というところにもあると思っています」(別所さん)

個展として、そのやりたいことの全てを自分自身で企画したのは、意外にも今回が初のことという。それを後押ししたのは、撮影データの記録方式「HEIF」フォーマットとの出会いだった。HDRの表現力で、花火の光がより鮮やかに写し出される。花火を主題として、光と闇を、そしてそのコントラストを見せたいというテーマと結びついたのだそうだ。

「個展をやるからには、そこには新しい発見が必要だと思っています。カメラやその技術が進化していく中で、また新しい表現が可能になっている。来てくださった方にも、“来る前には知らなかった世界”を感じてもらえると嬉しいです」

その“仕掛け”をたくさん用意したという別所さん。その空間自体が展示そのものになっているとのことで、ぜひギャラリーに足を運び、一期一会の体験をしてもらいたい。

写真展情報

ニコンプラザ東京THE GALLERY

  • 開催期間:2025年2月25日(火)~3月10日(月)
  • 開催時間:10時30分~18時30分(最終日は15時00分まで)
  • 休館日:日曜日
  • トークイベント:2025年3月1日(土)14時00分~15時00分
    ※定員30名(当日先着順、参加費無料)

ニコンプラザ大阪THE GALLERY

  • 開催期間:2025年3月20日(木・祝)~4月2日(水)
  • 開催時間:10時30分~18時30分(最終日は15時00分まで)
  • 休館日:日曜日
  • トークイベント:2025年3月22日(土)14時00分~15時00分
    ※定員30名(当日先着順、参加費無料)