写真展PICK UP

赤道直下の11カ国を巡る旅。小澤太一「赤道白書」(前編)

赤道を巡る229日間の旅の記録

2015年3月にアフリカの小国、サントメ・プリンシペのロラス島で、はじめて赤道というものを目の当たりにしました。それはテニスコートほどの大きさの「Marco do Equador」という名の赤道記念碑でした。その後、地球上に赤道が陸地を通っている場所を調べてみたら、わずか11カ国しかありません。

ケニアの小さな町・ナニュキには赤道の看板があり、ときおりバスツアーがやってくる

・サントメ・プリンシペ民主共和国
・ガボン共和国
・コンゴ共和国
・コンゴ民主共和国
・ウガンダ共和国
・ケニア共和国
・ソマリア連邦共和国
・インドネシア共和国
・エクアドル共和国
・コロンビア共和国
・ブラジル連邦共和国

自分が想像していたよりも少ない。もしかして、11カ国なら全部を回れるのではないか? 直感的にそう思いました。本格的に旅に出る前に決めたことがいくつかありました。

①1つの国になるべくゆったりと滞在すること
②国をまたぐような移動はしないで、必ず日本に戻ってから次の国に向かうこと
③できる限り赤道の近くを目指すこと
④ガイドブックによる先入観を持たずに現地で感じたものにカメラを向けること

実際に旅が始まって国を回っている中で、ひとつだけ気がかりなことがありました。それはソマリアのことです。内戦によって事実上無政府状態になっているソマリアは、外務省のホームページを見ると【退避してください。渡航はやめてください】というレベル4の最高危険ランクになっていました。果たしてこの国に行くべきか……、そして行ったとしても僕が撮りたい写真が撮れるのか。

そんなことを思案し続けている中で偶然、「ソマリランド共和国」という未承認国家の存在を知りました。日本の地図上で見ると「ソマリア」の領土内に、「ソマリランド」という未承認国家があるのです。そして、その国を認めているところは世界のどこにもないのです。そんなソマリランドにもちゃんと首都があり、アフリカのいくつかの国からは飛行機も飛んでおり、独自の通貨が発行されていて、しかもソマリアにくらべて格段に安全という、なんとも言えない不思議な立ち位置の国! 僕はソマリア領土内にあるソマリランドに行くことにしました。

未承認国家ソマリランドの難民キャンプの家の中

紆余曲折やトラブルがたくさんあった旅は約3年半の月日で、合計13回の渡航を繰り返し、なんとか赤道を1周、すべての国を巡ることができました。この旅に費やした日数は合計229日。もはや正確な撮影枚数は数えることすらできませんが、写真は何十万枚にもなりました。

明確な目的地や見るものを決めず、赤道あたりをぼんやり目指してみる……そんな答えのない旅のスタイルでしたが、その結果として、人が集まる有名な観光地ではなく地図にも載っていないような小さな村へ、大きな幹線道路ではなく狭い路地裏へと、なるべくそこに暮らす人たちの日常がはっきり見える場所を、自分が求めていることに気がつきました。

そんな赤道で暮らす人たちの日常の報告が、この『赤道白書』です。

小澤太一「赤道白書」

会場

キヤノンギャラリー銀座
東京都中央区銀座3-9-7

会期

2022年9月6日(火)~9月17日(土)

開催時間

10時30分~18時30分

休館日

日曜、月曜休館

作家プロフィール

1975年、愛知県名古屋市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、河野英喜氏のアシスタントを経て独立。雑誌や広告を中心に、子どもからアーティストや女優、某国大統領まで、幅広い分野の人物撮影が活動のメイン。また、写真雑誌の執筆や撮影会の講師・講演など、活動の範囲は多岐に渡る。ライフワークは「世界中の子どもたちの撮影」で、年に数回は海外まで撮影旅行に出かけ、写真展も多数開催している。身長156cm、体重39kgの小さな写真家である。キヤノンEOS学園東京校講師、公益社団法人日本写真家協会会員。