イベントレポート

PENTAXミーティングオンライン2021レポート(Part.2)

次期フルサイズ機の構想やK-3 Mark III派生モデルアイデアなどが話題に

PENTAX機を愛する人、PENTAXのカメラや製品づくりに興味・関心を抱く人が集うファンミーティング「PENTAX ミーティング オンライン 2021」が11月27日に開催された。PENTAXファンにとって約2年ぶりとなったファンミーティング。アーカイブ配信のない一回性のイベントだったために見逃してしまったというユーザーも多くおられることだろう。少し時間は経過してしまったが、あらためてイベントの模様をお伝えしていきたい。パート1では新たに登場したカスタムイメージ「里び」に関する情報を中心にお伝えしてきたが、パート2では快進撃の続くAPS-Cの新フラッグシップ「K-3 Mark III」に関する早々の派生モデル展開に関する構想や次期フルサイズ機のイメージなどを中心にまとめている。イベント開催時の熱気の一端をお伝えできれば幸いだ。

K-3 Mark IIIの進化は止まらない!(後半)

後半パートでは再び商品企画の若代氏が登壇。K-1 Mark IIの後継機は必要な要素技術の開発を進めるている段階だと、さらりと後継機開発を匂わせる発言をしながら(実際に後半でその構想が語られた)、その流れを阻害しない範囲でK-3 Mark IIIの派生モデル展開についても検討を進めている最中だと伝えた。

K-3 Mark III(シルバー)

具体的なモデルに言及するにあたり、冒頭で「たとえ少数であれそれを求めるユーザーがいる限り、期待に応えたい」との姿勢を示した若代氏。ユーザーの意見を採り入れながら、ともに新しいモデルを育てていきたい考えだとして、現状の派生プランが紹介されていった。

1案目は「K-3 Mark III JETBLACK(漆黒)モデル」。黒色を基調にしたカメラは多くみられるものの、ロゴなどを含めて完全に「黒」にしたモデルは少ないと指摘する若代氏。あえてメーカーロゴや刻印などの視認性を無視し、黒やグレー、色なしなどで用意する案を考えているという。

イベント中で映し出されたスライド資料より(リコーイメージング提供。以下同)

2案目は「K-3 Mark IIIシャッターストローク変更モデル」。シャッターストロークを浅くすることで、撮影のテンポがより早くなることを見越したカスタマイズ。押し込みが浅くなることでブレ等を軽減できるメリットもあるとコメント。シャッターボタンを連打する人にも向くカスタマイズではないか、と使い勝手をひろげるカスタマイズであることを強調した。

3案目は「K-3 Mark III MONOCHROME」。モノクロ専用のセンサーを搭載したカメラといえば、ライカのMモノクロームやM10モノクローム、Q2モノクロームが思い浮かぶが、これらと同じようにカラーフィルターを廃した案だ。ベイヤー補間がないことで自然な解像やノイズ面でもすぐれた画質が期待できるとのコメントだった。このモノクロ専用センサーと1案目の漆黒仕様の外装仕上げを組み合わせることで、モノクロの世界観がより一層楽しめるのではないかと個人的に思う、とコメントした若代氏。実に夢のある案だ。

4案目は「K-3 Mark III MF」。ファインダーにこだわりにこだわった仕様が特徴のK-3 Mark IIIだが、マニュアルフォーカスレンズ使用時でもピントの山がつかみやすいと言われているそのファインダーをさらにマニュアルフォーカス専用に変更するという案。具体的にはメインミラーのコーティング特性を変更し、測距モジュールに光がいかないようにするとどうなるか。当然AFは使えなくなるものの、ファインダーの明るさが約30%向上することが期待できるという。マニュアルフォーカスでの撮影の楽しさをさらに押しあげる案と説明する若代氏。もちろんライブビュー撮影ではセンサー面での測距ができるためAF撮影も楽しめる。これもまた実にユニークな案だ。

5案目もある。「K-3 Mark III GUNMETAL」としているとおり、かつて発売されたK-3 Prestige Editionと同じくガンメタリックカラーを基調色に採用するという案だ。しっかりとバッテリーグリップを装着した姿で提示するところも「ならでは」だ。さらに新しいサービスとして、ペンタ部へのイラスト刻印サービスなども用意したいとの意気込みが語られた。

さらに6案目も。もはやできそうなことは全て案出ししようかという勢いだ。内容はいわゆるアストロ撮影に特化させたモデルで、そのものズバリの「K-3 Mark III ASTRO」。キヤノンとニコンでも一部モデルで赤外撮影に特化させたモデルがあるが、これと発想は同根だ。

若代氏はHα感度を約10倍に引き上げるプランを提示。一般撮影はできなくなるものの、天体撮影に特化させることが可能だと伝えた。ただし、公序良俗的な観点からあまり好ましくない使用も可能になることから、要望は認識していても法務上難しい面があると指摘する。本モデル実現の可能性に向けて、天体撮影以外で使用しない旨の誓約書を交わすことを条件に製品化できないか、とのアイデアが示された。

以上6つの案のうち、もちろんセンサー特性によるものは全くの別製品となるだろうことは予想できるが、いくつかの案は既存のK-3 Mark IIIユーザーに向けて改造サービスを提供できないか、という考えも示された。すでに同社ではK-1の内部基盤を交換しK-1 Mark II化するサービスやGRシリーズでもシャッターストロークの変更やグリップの換装なども行ってきている実績があるだけに、最も実現可能性が高そうに思われた。

具体的には、案1で示されたJETBLACK(漆黒)モデルへの外装変更サービスのほか、案2にあったシャッターストロークの調整サービスが挙げられた。また5案目で示されたイラスト刻印サービスもリストアップされた瞬間には、流石に驚かされた。J Limitedシリーズのようなカスタマイズモデルではなく通常モデルにも「AOCo」マークがオフィシャルでつけられる日が近づいてきたのかもしれない。

いくつか提示された案について「実際にはそこまで多くのニーズがあるとは思っていない」と慎重な姿勢を見せる若代氏。それでも、実現に向けて受注販売やクラウドファンディングの形式を採るなどして商品化に向けて働きかけていきたいとの姿勢を示した。続けてこれでも今回提示した案は考えていたことの一部だとして、今後も様々なユーザーの声に耳を傾けながら、細かなニーズに応えられるようにしていきたい、と製品化に向けた熱意を示した。

と、ここまで紹介のあったモデルに対して「実際にどのモデルを手にしたいと思うか」という問いかけに対して参加者投票が行われた。最も多くの票を集めたのは、1案目の漆黒モデル。2番目に多かったのが3案目のモノクロ専用モデルで、3番目には6案目のアストロ撮影専用モデルが続く結果となった。天体撮影特化モデルが上位に入ってくるあたりもペンタックスユーザーならではの特徴だろう。

アストロ撮影続報

天体撮影専用モデルが多くの票を集めたように、やはりペンタックスユーザーは天体や星景に強い関心があることがわかる。そうしたユーザーの熱情を察知していたのか、若代氏は続けて新しいアストロトレーサー機能の開発が進行中だと、サプライズを披露した。

K-1やK-1 Mark IIでは内蔵型となっているが、既存のアストロトレーサー機能ではGPSの併用が不可欠だ。が、K-3 Mark IIIなどでアストロトレーサー機能を利用するには、別途GPSユニットである「O-GPS1」を装着する必要がある。が、若代氏の示したアイデアは、何とO-GPS1を用いることなくアストロトレーサー機能を実現できないか、という発想に根ざしたものだった。

O-GPS1を併用した既存のシステム構成

残念ながら制御が複雑になりすぎるため、対応機種はK-3 Mark IIIのみに限られるとのことだったが、2022年の春にはファームウェアのアップデートでGPSユニットを用いることなく簡易的にアストロトレーサー機能が利用できるようになる見込みだという。開発段階の発表から間をおかないリリーススケジュールと感じられたが、かなり開発が進んでいるのだろう、計画内容は細かな仕様まで完成したものとなっていた。

若代氏によれば、本技術を用いることで雲で星が見え隠れするシーンでは失敗するケースはあるものの、魚眼レンズの使用を除き、焦点距離等の制限をほぼ設けることなく、星を追尾させることが可能になるという。ご存知の読者も多いかと思うがあらためて補足しておくと、アストロトレーサー機能とはGPSから取得した測位情報とボディ内手ブレ補正機構を併用することで星の動きを追尾し、長秒露光でも星を止めて撮影できるという機能だ。もちろん星の動きにあわせて動くため星景撮影では地上の景色が若干流れるという弱点も抱えている。

ともあれ、今回開発を進めているアストロトレーサー機能では、その技術特性から測位待ちや精密キャリブレーションが不要になるメリットがあるという若代氏。そのため磁気の影響が出る場所でもアストロトレーサーの特徴をいかした撮影が可能になると技術ポイントを披露した。もちろん開発が報じられている「O-GPS2」(仮称)の製品化進行が止まっているというわけではない。本機能はあくまでもK-3 Mark III単体でアストロトレーサーに近い撮影機能を実現しようという試みだと考えてよいだろう。

2022年中の発売を目指して開発が進められているという「O-GPS2」(仮称)

ここが知りたいPENTAX

イベントも後半にさしかかった頃、参加者より事前に募集した質問に応えるコーナー「ここが知りたいPENTAX」に移った。質問内容は多く声の集まった内容を集約し、上位3点に絞って伝えられた。

発表は第3位から。内容は「KP、K-70の後継は?」というものだった。この質問に答えた若代氏は、ぜひK-3 Mark IIIを手にしていただきたい、と正直すぎる感想で笑いをとりつつも、この価格帯の製品の重要性は強く認識しているとして、今後も開発を続けていきたいとした。

第2位は「今後のレンズ展開を知りたい!」というもの。本質問に関しては、具体的なレンズ名やロードマップに関わるものなど実に多彩な声が集まっていたという。

質問に答えたメカ設計マネージャーの飯川氏は、ロードマップで示している製品群の開発は思うように進んでいないとしながらも、公表されていないながらも開発が進められている製品もあると発表(FA Limitedレンズ3本のHDコーティング化も実はロードマップ上でアナウンスされていなかった)。ユーザー側から寄せられている案についても、そうした応援を糧に製品実現化に向けて動いていきたいとの意向が示された。開発自体はロードマップ上にある製品がすべてではないとの姿勢が改めて強調された格好だ。

第1位は「次期フルサイズ機は?」というもの。本質問には、非常に多くの内容で声が集まっていたという。本質問への回答にあたった若代氏は、技術開発は進めているものの、具体的な発売時期に答えられる段階ではないとしながらも、ファンイベント催行時点で考えている4つのプラン・方向性を紹介していった。

A案は高屈折率のガラスペンタプリズム・画像処理エンジンを新開発した高画素モデル。若代氏は特に高屈折率のガラスペンタプリズムの完成が鍵を握ることになるとコメント。動体撮影性能等を含めた撮影性能の向上も加味しているものの、ペンタプリズムの完成を待つと長期的な視点に立っていく必要があるのだと伝えた。ここでもA案がすんなりと製品化できれば、それに越したことはないとの正直すぎる回答がみられた。

高屈折率のガラスペンタプリズムを採用したK-3 Mark IIIのファインダー部模式図。左がK-3 Mark IIIで右はK-3 II(資料はリコーイメージング提供)

B案は、K-1やK-1 Mark IIの操作性を継承しつつ、センサー画素数を25MP前後に抑えたプランだという。ボディは変えることなくセンサーを置き換えるというイメージだという。両機のユーザーの中には現状の約36MPもの画素は必要ないとして、より軽快に使っていけるカメラであることを求める声も見られるという若代氏。起動時間の短縮化など、ストレスなく撮影できるモデルとなるだろうことが提示された。

C案、撮影者が自身で考えて操作するモデル。マニュアル撮影に特化させることで、小型軽量かつ機能面をシンプルにさせた案だという。

D案、K-3 Mark IIIのフルサイズ版。「高速かつ高感度で撮影できるモデル」と表現した若代氏。操作性やデザインなどもK-3 Mark IIIと同じような形にできないか、と考えているとして、軽快なシャッター感覚やファインダーの覗き具合なども、K-3 Mark IIIと同時に使用していても違和感なく使用できることを目指す案だという。ふとK-1登場時のいきさつが思い出された瞬間だった。

いずれの案に関してもユーザーとともに育てていきたい考えだという若代氏。ぜひ広く意見を寄せてほしいと呼びかけた。

ここが知りたいPENTAX(番外編)

番外編として、ファンにとって気になる話題をとりあげたクエスチョンもみられた。

一眼レフカメラひいては光学ファインダー機による撮影体験の魅力を深めていく姿勢を示している同社にとっても命題となる重たいテーマがその一つ目だった。

気になる内容は「写真を始める人に一眼レフカメラの魅力をうまく伝えられません。良い勧め方を教えてもらえませんか?」というもの。

回答してくれた三宅氏は「本質に迫る質問ですね」としつつ、“一眼レフカメラで撮影する喜び”がまずあげられるとコメント。「五感で撮影の醍醐味を感じながら、心豊かに撮影できることが、一眼レフの大きな楽しみ」だろうと、難しい問題に迫っていった。

一眼レフカメラはレンズを通して得た被写体像をミラーを介して光学ファインダーに導く構造となっているが、その特性上、センサーが捉えた被写体像をそのまま映すミラーレスカメラなどのEVFと異なり、撮影結果を想像しながら撮る必要がある点を指摘した三宅氏。結果を想像し、撮り方を考えて、そしてカメラを設定していくという一連の流れに、撮影を楽しむ醍醐味があるとして、“良い写真”を求める心は同じながらも、撮影の行為自体も楽しめるところに一眼レフならではの魅力があるだろうと答えた。

番外その2は「ホットシューカバー『P』を手に入れる方法はないですか?」というもの。

同社では「PENTAX」の文字を一つずつピックアップしたホットシューカバーをイベント等にて配布していくと伝えているが、今回のファンイベントで配布が予定されている「E」以前に配布された「P」が象られたホットシューカバーを改めて手にする方法はないものか、との声が寄せられていたという。

配布は完了しており再度の実施はないとの考えを示しながらも、同社ではリコーイメージングスクエア東京および大阪、オンラインストアを通じて在庫限りでの販売(税込800円)を決定したと発表した。

今回のイベントでは参加者全員に「E」の文字が贈られることになった。後の4文字の配布等に関しては今回のイベント中にアナウンスはなかった

プログラムの締めに向けて

時刻も17時をまわった頃、予定終了時刻まで残すところ約30分となった。プログラムの締めとしてシークレットプログラムに突入。例によって「ペンタックスファン以外誰も喜ばない」という一品をかけて、恒例のじゃんけん大会が行われた。じゃんけんの対戦相手は、リコーイメージング代表取締役社長の赤羽昇氏。2012年〜2016年まで同社社長をつとめてきた人物ということもあり、覚えているというユーザーも多いことだろう。

リコーイメージング代表取締役社長の赤羽氏。今回のファンミーティング参加を通じて「第一回 PENTAXミーティング」(2016年3月開催)を懐かしく思い出したとコメント。当時のイベントにあった「ここが好きだよ!! PENTAX・ここがダメだよ!!PENTAX」を振り返り、変わらず熱いユーザーに支えられているとイベント全体を振り返った

今回のイベントを振り返り、現在写真を撮る人口が爆発的に増えてきていると指摘。スマートフォンの普及やカメラ性能の向上により、楽しい瞬間を時を超えて楽しめるようになってきていると続ける赤羽氏。シェア・拡散が当たり前になった写真の楽しみ方について「横につながっていく」特徴があると指摘。これに対してPENTAXのカメラは時を超えて未来に向かって「縦につなげていく」楽しみが提供できるとコメント。撮影者自身の心の中にあるだろう「時を超えて伝えていきたい」という想いに応えるカメラなのだと、あらためて強調した。イベントの締めくくりにあたり、同氏は今後もユーザーとの距離をとることなく「共創」という姿勢のもとで、集まった声とともに製品やサービスの展開につとめていきたいとして、今後の展開に向けた考えを示した。

ユーザーによるユーザーのための「We are PENTAXIAN」

PENTAXユーザーとメーカーがつながる企画に関する案内もあった。PENTAX official siteの編集長をつとめる三宅氏は、サイトをいっそう盛りあげていきたいとして、「We are PENTAXIAN」の投稿テーマを切り替えると発表。「私のお気に入りレンズ」と「私のお気に入り画像仕上げセッティング」の2つのカテゴリとすることで、より気軽に投稿してもらえるようにした、と案内した。投稿の受付は同日よりはじまっている。

PENTAX officialサイト内「We are PENTAXIAN」より

同サイトでは写真家の記事も公開されているが、より一層ユーザー間の交流の場に育てていきたいという三宅氏。「私のお気に入りレンズ」では、愛用しているレンズの製品名や気に入っているポイントをそのレンズで撮影した写真とともに投稿してほしいと案内。「私のお気に入り画像仕上げセッティング」では、例えばカスタムイメージのセッティングや、こだわりの画像仕上げなどを、その設定で撮影された写真とともに投稿してほしいと呼びかけた。双方ともに、セッティングの参考にしてもらえるなど、ユーザー間でのエビデンス交流でも役立ててほしいと案内した。

また投稿者にはノベルティのプレゼントも。パソコンやスマートフォンで利用できる「PENTAX壁紙」を1投稿につき1枚プレゼントしていくという。

このほか、SNS投稿に関しても新たな案内があった。TwitterやInstagramへの投稿時にユーザーが任意に機種名やレンズ名をハッシュタグとしてつけている例が多くみられるが、そうした投稿時のハッシュタグ表記に関して、メーカーオフィシャルのハッシュタグリストが公開された。

11月19日付で公開されたハッシュタグリストは現行製品に限らず、旧モデルもカバー。投稿時の使用してもらえれば、とのアナウンスがあった。

本誌:宮澤孝周