イベントレポート

4 Seasons 〜OM-D E-M1 Mark IIで撮る四季〜 冬編 トークショー

1年にわたる写真家5名のグループ展がついに完結

4 Seasons 〜OM-D E-M1 Mark IIで撮る四季〜 冬編の展示を前に、参加写真家5名が揃った。左から萩原史郎さん、木村琢磨さん、吉住志穂さん、今浦友喜さん、福田健太郎さん。

オリンパスのミラーレスカメラ「OM-D E-M1 Mark II」を使う今浦友喜さん、木村琢磨さん、萩原史郎さん、福田健太郎さん、吉住志穂さんが、春夏秋冬を各々の写真で飾るグループ写真展「4 Seasons 〜OM-D E-M1 Mark IIで撮る四季」。ここまで春編、夏編、秋編と開催され、デジカメ Watchでもトークショーの模様をレポートしてきた。

1年間にわたりレポートしてきたこの写真展も、いよいよ最終回の冬編に。最後となる今回のトークショーでは、5人全員が集まり、ひとり25分の持ち時間で冬編の作品について語った。

ちなみに春〜秋の作品はこちらでも鑑賞できる。

日本各地の冬を求めて……福田健太郎さん

まず最初に登壇したのが福田健太郎さんだ。

福田健太郎さん

福田さんはこのグループ展とトークショーのためにすべての写真を撮りおろした。スライドでは20枚近くの写真が表示されたが、プリントして展示されていたのはそのうち2枚。霧氷を纏って白く染まった山を写した1枚と、太陽に照らされた空と海を写した1枚だ。

撮影:福田健太郎(トークショー資料より)

「作品の展示は、見る人にどういう印象を与えるかということも考えて出すべきだと思っています。今回はこの2枚を対にして見せた方がしっくりくると思ったので、2枚のみの展示としました」

それ以外にも、愛媛県の渓谷、蔵王の山並み、知床半島の河口など、全国各地の冬の風景をバリエーション豊かに描写。25分という短い時間だったが、内容は充実しており、もっと見ていたいと思わせるものだった。

撮影:福田健太郎(トークショー資料より)

モノクロでシンプルに冬を表現……木村琢磨さん

マイクを受け継いだのは、春・夏・秋編で独特な世界観を表現していた木村琢磨さん。

木村琢磨さん

今回展示した3枚はカラー作品だったものの、トークショーでは多数のモノクロ作品もあわせて披露された。

撮影:木村琢磨(トークショー資料より)
撮影:木村琢磨(トークショー資料より)

「モノクロフィルムで撮影するときは、自分の目で見ているときはカラーですが、出来上がる写真はモノクロになります。その差をどう理解して撮るかが大事でした。デジタルカメラの場合は仕上がりを見ながら撮影できるので、カンニングのようなものですけど(笑)、でもフィルムの考え方や技術をデジタルに応用することもできるので、表現は広がると思います」

スライドで表示された写真は、葉が落ちて枯れた木、氷柱が連なる滝など、冬の厳しい寒さを感じさせる写真。そして「モノクロ」と一口に言っても、青みのある冷黒調や赤みのある温黒調などのバリエーションがあり、それぞれ決して単調になることなく写真を見続けることができた。

「氷の花」に挑戦……吉住志穂さん

3人目は吉住志穂さん。

吉住志穂さん

吉住さんは春、夏、秋の写真の振り返りから入り、「被写体が花」という共通点を説明した。吉住さんと言えば花、というイメージも強い。しかし、冬は意外な1枚がメインになった。

撮影:吉住志穂(トークショー資料より)

「冬は花が少なくなりますが、『氷の花』というイメージで風景に挑戦しました。またもう1枚は、冬に命が終わる間際の最後に輝いた花を写しました。3枚目はススキで、実は穂が花でもあるんです。今回はこの3点を選びました」

その後は3枚が撮影された状況やテクニックを解説。構図、光、色などを、比較画像を用いながらわかりやすく説明してくれた。そして最後は、このシリーズの恒例となった「世阿弥」からの引用で、「花は心 種は態」「離見の見」という2つの言葉を紹介して締めた。

撮影:吉住志穂(トークショー資料より)

様々な氷に想いを込めて……今浦友喜さん

4人目に登場したのは今浦友喜さん。

今浦友喜さん

今浦さんは日光という場所に縛って撮影した様子。中禅寺湖の周辺で氷や雪を荘厳に捉えたものもあれば、鳥や猿を可愛らしく写したもの、自販機に雪が積もった様子を写したスナップ的なものもあった。

撮影:今浦友喜(トークショー資料より)
撮影:今浦友喜(トークショー資料より)

「被写体選びは大きくふたつあります。ひとつは単純にかっこいいもの。もうひとつはかわいい被写体ですね。展示に入っている氷も『かわいい』と思って撮ってきた1枚です。男らしいドカンとした氷も好きですが、小さな氷は季節の間を感じられるような作品も好きですね」

今浦さんも最後に春、夏、秋の振り返りをしてトークを締めて、次の登壇者にマイクを渡した。

撮影地の状況と心理を解説……萩原史郎さん

5人のトリを務めたのは、萩原史郎さんだ。

萩原史郎さん

萩原さんは秋編と同様に撮影の裏側や展示写真のセレクトの過程を見せていくスタイルだった。時間のない中、締切の直前、撮影会の現場の山口県から志賀高原まで車を飛ばし、ほぼ徹夜の状態で撮影に入ったという。

撮影した作品を時系列に並べ、その時の状況と心理を詳細に説明する萩原さん。

撮影:萩原史郎(トークショー資料より)

天候にも恵まれず、相当に苦戦したようだが、残された時間と天気予報や撮影地の状況を見て、最終的にはこれまでの春、夏、秋とリンクするように「命+光+色」というテーマで作品づくりを完遂。冬に終わりを迎える命、そこに差す朝日の光と、移りゆく光の色を見事に捉えた3枚が展示されていた。

撮影:萩原史郎(トークショー資料より)

5名それぞれの「四季」

3月に春編が開催されてから、約1年間続いたこのグループ展。5人の写真家はそれぞれ次のように振り返っていた。

福田健太郎さん

「展示が終わるとすぐ次の準備だったので焦りましたが、短い時間の中でみなさんにどんな写真を見てもらおうかと考えて撮影しました。風景写真をフィーチャーしてくれたこともありがたかったと思います」

木村琢磨さん

「自分の作品を人前で解説することがこれまであまりなかったのですが、今回のグループ展で『なぜ自分は写真を撮っているのか』『どういう気持ちで撮っているのか』と考え、自分の気持ちと向き合える一年でした。また、5人の写真家はみな風景を撮っていますが、その中でも答えは違います。写真の楽しみ方に答えはないですし、カメラを持っているだけで世界が広がるんだなとわかって、有意義な1年間になりました」

吉住志穂さん

「写真の作業はいつも1人ですが、今回は5人が同じ締め切りに出すということで、ライバルのような仲間のような不思議な意識を持って、いつもとは違う楽しい作業になりました。『みんなはこういう写真を撮ってきたんだ』という驚きもありましたし、写真家が他の写真家の講演を聞く機会はほとんどないので、話を聞けたのはとても楽しかったですね。お祭りのような楽しさを感じることができた1年間でした」

今浦友喜さん

「みなさんおっしゃるように、けっこう大変だったんですよ(笑)。でも面白かったです。いつもは締め切りがない状態で風景写真を撮りますが、今回の展示はギリギリの中で切り詰めて、なるべく最新のものを出していくようにしました。そのギリギリの状況を楽しむことができました。また5人というのも面白くて、大御所の皆さんと同じ場に展示する作品はなんだろうと、ものすごく考えました。他の方がどういう写真を出してくるのか想像して、それはいい意味で裏切られることが多く、新たな一面が見えました。オムニバスの面白さですね」

萩原史郎さん

「私は冬が一番苦労しました。これだけ焦って作品を作ったのは久しぶりで、ヒリヒリする感じが楽しかったです。自分の中の違うものも見えました。皆さんの作品を見て思ったのは、『OM-D E-M1 Mark II』はすごいカメラだなと。風景、花、遠景、近景、何を撮っても自分たちの期待する絵に仕上げてくれるのは、本当にすごいことです。手持ち撮影に関して言えば、日本最強のカメラではないでしょうか。このカメラと1年間過ごすことができて、非常に幸せでした」

これにてトークショーは終了。5名の写真家による1年間の集大成を垣間見ることができた。

写真展は、オリンパスプラザ東京 地下1階ショールーム クリエイティブウォールで1月16日まで。オリンパスプラザ大阪では、2月8日(金)〜2月14日(木)の間に開催される。

中村僚

編集者・ライター。編集プロダクション勤務後、2017年に独立。在職時代にはじめてカメラ書籍を担当し、以来写真にのめり込む。『フォトコンライフ』元編集長、東京カメラ部写真集『人生を変えた1枚。人生を変える1枚。』などを担当。