イベントレポート

300名もの参加者で賑わった「撮りフェス in 室蘭」レポート

撮影エリアは室蘭全域 24時間滞在型フォトコンテストを体験して見た

作品提出後、講評を行う浅田政志さん。

昨年9月16日から9月17日にかけて、北海道室蘭市で24時間滞在型フォトコンテスト「撮りフェス in 室蘭」が開催された。参加者は大賞をかけ、24時間限定で室蘭市内全域を対象に撮影した。

室蘭市、室蘭商工会議所、室蘭観光協会、撮りフェス in 室蘭実行員会の共催によるこのイベントは、ルールだけ見ると撮影会というより、競技を思わせる内容。あくまでも写真を競い合うコンテストという印象だ。ただし実際に現地で感じたのは、室蘭という場所で終日写真を楽しもうという、参加者の和気藹々とした雰囲気だった。

ルールとスケジュールを大まかに説明しよう。事前に申請した参加者は当日、運営本部が設けられた室蘭観光協会に集合。オリエンテーションの後、24時間市内を自由に撮影する(つまり夜中や明け方もOK)。時間内に運営本部へ撮影データを持ち寄り、後日審査が発表される。

運営本部の室蘭観光協会(旧室蘭駅舎)。遠くに工場エリアが見える。

ここに続々と参加者が集まった。200名の定員のところ応募多数のため、急遽100名分の参加枠を追加したという。

撮影する場所は室蘭市全域。撮影機材はデジタルカメラだけでなく、スマートフォンやフィルムカメラもOKだ。フィルムカメラでの参加者は、各自で現像・プリントの後、作品を郵送で応募する。

また、今回からドローンでの参加も可能となった。事前申請が必要で、かつ飛行エリアも運営の指示に従わなければならないが、こうしたイベントでドローンの使用を許可する例はまだ少ない。

昨年行われた第1回の作品は、観光ポスターなどに使われたほか、室蘭市職員の名刺や、定例記者会見のバックボードなどに利用されたという。

オリエンテーションでは青山剛室蘭市長が壇上に立ち、第1回を振り返った。

「最近室蘭では工場夜景の紹介に力を入れていて、全国に知られて来ている。それでも第1回の作品を見て、私自身、こんな風景があったのかと新しい気づきがあった」

室蘭市長の青山剛氏

企画担当の川島佳峻さんによると、室蘭市がイベントを通じて、室蘭の潜在能力に気づき始めているという。ものづくりの歴史が長い室蘭にとって、観光はメインの産業ではなかった。しかし比較的コンパクトなエリアに被写体が集まっているのが室蘭の特徴であり、その良さをイベントで全国に紹介できれば、とのことだ。

個人的にも室蘭に来て、「(水平線を絡めた)朝日と夕日が撮れる」「海に落ちる断崖」「坂の多い街並み」、「素朴な鉄道」、「きれいな星空」といった点に感心した。特に、朝日と夕日が両方撮れるのは珍しい。もちろん、工場地帯や白鳥大橋といった、ダイナミックな夜景が撮れるのもポイントだろう。

第1回の実績を踏まえて今回はイベントへの注目度が高まり、川島さん曰く「空気が変わって来た」とのこと。カメラ関係大手企業としては、キヤノン、ニコン、リコーが協賛企業に名を連ねている。

オリエンテーションが終わるといよいよ撮影開始。記念撮影を担当したのは、『浅田家』で木村伊兵衛賞を受賞した浅田政志さん。浅田さんは本フォトコンテストの審査員を務めている。

第1回に続き、イベントに合わせて普段立ち入れない場所が撮影地として開放されたり、特別なクルーズが仕立てられているのも特徴だ。一部は抽選制になっており、当選者名は運営本部で張り出されていた。

私もいくつか参加して見た。

東日本最大の吊り橋「白鳥大橋」の主塔に登り、中間地点から撮影するツアー。もちろん普段は立ち入り禁止の場所だ。この高さから橋を俯瞰する経験は、なかなかできないだろう。

室蘭港にある大黒島を経由し、有名な工場エリアをめぐる「大黒島クルージング」。

本イベントを除くと年2回のみ開放される「チキウ岬灯台前広場」。ここも参加者証があれば特別に入れた。

ペンギンの散歩が見られる「私立室蘭水族館」。参加者は無料で入場できた。

今回は全部で計7カ所ものプレミアムスポットが用意されていたが、もちろんそれらこだわる必要はなく、思い思いの場所で撮影すれば良い。

9月17日に撮影提出が終わると、運営本部では浅田政志さん、ケント白石さんによる作品講評&トークが行われた。

参加者とともに室蘭をまわった浅田さんは、講評に加えて参加者の撮影風景を紹介。フォトコンテストとはいえ、撮影を楽しんでいる参加者の様子が伝わる。

ケント白石さんは、同じく北海道在住の井上浩輝さんとのかけあいで、撮影テクニックの紹介や、撮影に対する心がけなどを説明していた。

ケント白石さん(左)、井上浩輝さん(右)

24時間、室蘭限定で撮影した作品で競う、地域密着のフォトコンテスト。第1回に続き参加者の多くは室蘭市民だったが、今回は市外・道外からの参加も増えたという。市民参加型のイベントとしての成功はもとより、全国各地から撮影者が集い、市民との交流が深まるようなイベントへの発展にも期待したい。

入賞作品(一部)

大賞

小沢吉一さん(東京都日野市)

準大賞

星大治郎さん(北海道札幌市)
前川喜隆さん(北海道河東郡音更町)

審査員特別賞

葛西薫賞
土岐将一さん(北海道札幌市)
辻佐織賞
森順さん(北海道千歳市)
藤井保賞
小林由枝さん(北海道登別市)
山口一彦賞
石川綾子さん(北海道登別市)
浅田政志賞
菊池光宏さん(北海道札幌市)
田口清隆賞
塚本淨司さん(東京都世田谷区)

室蘭市長賞

澤田博明さん(大阪府箕面市)

パブリック賞

阿部なおきさん(北海道 登別市)

本誌:折本幸治