イベントレポート

世界遺産の熊野を巡る「写真家 山本まりこさんと歩く KUMANO de PHOTO Jenne」レポート

熊野古道の魅力をあまさず写真に 全国から20名のフォトジェンヌが参加

熊野古道、大門坂で参加者全員が平安衣装に着替え、撮影を楽しみました。

カメラ女子に人気の写真家 山本まりこさんと一緒に世界遺産の熊野を回る旅フォトツアー、「写真家 山本まりこさんと歩く KUMANO de PHOTO Jenne」が11月24日〜25日に開催されました。山本まりこさんがプロデュースした、熊野の魅力満載のフォトジェンヌ旅をレポートします。

熊野の魅力を発信

このイベントは、フォトジェンヌの視点で熊野を撮影してInstagramなどのSNSで発信してもらうことで、熊野を世界にアピールしてもらおうと企画されたフォトツアーです(主催:株式会社南海国際旅行、協力:熊野三山観光協会)。首都圏を中心に北は栃木県、南は山口県と全国から、20名のカメラが好きな女性が参加しました。

ツアー講師を務めた写真家の山本まりこさんは、2011年から熊野古道に通い出し、2014年秋に熊野古道伊勢路を歩き始め、2016年5月3日に約170kmを踏破し熊野速玉大社にゴール。現在熊野古道中辺路を歩いており、240km地点まで到達しています。まりこさんが旅する間に知り合った観光協会の人たちとの縁により、今回のツアーが開催されました。

ちなみに山本まりこさんは、今年秋にソニーイメージングギャラリー銀座で個展「熊野古道を歩いています。」を開催し、同時期に同名の写真集も刊行しました。

ツアー講師を務め、ツアー内容をプロデュースした山本まりこさん。

「みんなに楽しんで欲しい!」という想いで生まれたスケジュール

熊野古道とは、熊野本宮大社・熊野那智大社・那智山青岸渡寺・熊野速玉大社へと通じる5つの参詣道の総称で、三重県、奈良県、和歌山県、大阪府に跨っています。

今回のツアーは、まりこさんが歩いた熊野古道の中で印象的だった、熊野三山(熊野本宮大社、熊野那智大社、熊野速玉大社の三社と那智山青岸渡寺の一寺の総称)を1泊2日で巡るというもの。熊野速玉大社は「過去」、熊野那智大社は「現在」、熊野本宮大社は「未来」を担っており、熊野三山は過去・現在・未来を救済する霊場として古来より信仰を集めています。

ツアー初日は、和歌山県JR新宮駅新宮駅前で開会式が行われ、熊野本宮大社・大斎原を巡り、熊野の食材を取り入れた夕食会で参加者の親睦を深めました。

◇   ◇   ◇

初日の集合場所は和歌山県JR新宮駅。駅前広場で開会式を行い、ツアーの始まりです。

バスの中でこれから訪れる場所の見所や、撮影のポイントを紹介する講師の山本まりこさん。

最初に訪れたのは、熊野三山の中でも特に古の雰囲気を漂わせる熊野本宮大社。かつては、熊野川・音無川・岩田川の合流点にある「大斎原(おおゆのはら)」と呼ばれる中洲にありましたが、12社ある社殿のうち8社が明治22年の洪水で流され、流出を免れた4社3棟を明治24年(1891)に現在の地へ移築しました。

杉の木立が生い茂る158段の石段を登りながら、社殿を目指します。途中に紅葉している木を見つけると、参加者全員が足を止め紅葉撮影が始まりました。

落ちている紅葉も立派な撮影アイテム。山本まりこさんからレンズの直前に紅葉かざして、前ボケを作るテクニックなど、かわいい写真の撮り方を教えてもらいました。

石段を登り切ると神門が現れます。熊野では、熊野三社の神様のお仕えである八咫烏も信仰されています。八咫烏は3本の足があり、JFA(公益財団法人日本サッカー協会)のマークにも採用されています。

熊野本宮大社の神門から先は撮影禁止です。今回のツアーでは特別に撮影許可を出してもらいました

神門をくぐった神殿内には、洪水を免れた4社3棟が祀られています。左から3、2、1、4の順番で参拝するそうです。

本殿撮影のあとはお土産タイム。山本まりこさんは熊野本宮大社の御朱印帳を愛用しているそうで、まりこさんとおそろいの御朱印帳にしたい……と、このツアーから御朱印ガールデビューする参加者もいました。

御朱印を集めている参加者も多かったです。ちなみに熊野本宮大社は2018年に創建2050年を迎え、来年の御朱印と御朱印帳は創建2050年の限定バージョンになるそうです。

八咫烏をモチーフにした、かわいいおみくじ。かわいいフォルムが参加者に人気で、みんなおみくじを引いていました。

八咫烏のおみくじを協力しながら撮影する参加者たち。

熊野本宮大社の撮影が終わると、500mほど離れた旧本宮大社の社地である「大斎原(おおゆのはら)」へ向かいました。ここは日本一の大鳥居が建っています。大鳥居を画面に小さく配置してかわいらしい風景で撮ったり、夕日の逆光を活かしてフンワリ明るく撮ったり。フォトジェンヌらしい視点で大鳥居を撮影しました。

かつて社地であった場所で、参加者同士で撮ったり、撮られたり。ポートレート撮影も楽しみました。

陽が沈む時間帯に合わせて、堤防から大鳥居を撮影。「夕日に照らされた大鳥居は、本当に幻想的で美しいんです。黄金に輝く景色を撮って欲しくて、旅のスケジュールを組みました」と、山本まりこさん。

夕食の親睦会は「和の食彩 古城」で行われました。一緒に撮影し終えた後なので、ツアーで初めて出会った人同士でも話に花が咲き、盛り上がりました。

平安衣装を身にまとい……

2日目は朝6時から地元で美味しいと評判のパン屋さんのサンドイッチが配られ、7時にはホテルを出発。那智の滝、大門坂で平安衣装体験、熊野那智大社・那智山青岸渡寺、熊野速玉大社を巡り、最後に講評会が行われました。

山本まりこさん曰く、「私は早朝の人の少ない神聖な雰囲気の中で那智の滝を撮影するのが好きです。朝の空気はヒンヤリしていて、滝の流れ落ちる音だけがゴウゴウと響いています。那智の滝は人気スポットで8時30分には観光客でいっぱいになってしまいます。神聖な雰囲気の中でみんなにも撮影して欲しくて、ホテルを7時に出発できるようにスケジュールを組んでもらいました」とのこと。

那智の滝は、熊野那智大社の別宮、飛瀧神社のご神体として古くから人々の畏敬を集めてきました。駐車場から、石畳の階段を降り那智の滝へ向かいます。

那智の滝は延命長寿の水と伝えられ、滝つぼの水を飲むこともできます。ピンクのかわらけでいただきました。

落差133m、幅13m、滝壺の深さ10mの高さ・水量ともに日本一の那智の滝。「シャッタースピードを調節すると、滝の流れの表情が変わります。撮り方に正解はないので、自分が思い描くイメージに合わせて、色を載せたり、水の流れをぶらしたりしてみて」と、アドバイスするまりこさん。

大門坂は、聖地「那智山」へと全長約600m、高低差約100mの石畳が続く熊野古道。かつて坂の到着地点に大きな門があったことから、「大門坂」と呼ばれるようになりました。

大門坂入り口の夫婦杉近くに位置する「大門坂茶屋」で、平安衣装に着替えます。おかみの宮本照代さんが、かわいい笑顔で出迎えてくれました。

たくさんの衣装の中から、自分好みの衣装を選びます。色や柄など豊富で、選ぶだけで盛り上がりました。着替えは5分ほどで完了します。

平安衣装に着替えました♪「大門坂茶屋」周辺を平安衣装のまま撮影します。

女性用ではなく男性用の衣装をチョイスする参加者も。熊野古道を背景に、ポートレート撮影や記念撮影を楽しみました。初めは恥ずかしそうにしていた参加者も、途中から「みんなでやると楽しい〜♪」と、最高の笑顔でした。

平安衣装から着替えて、大門坂を登ります。苔むした石段や老杉の並木は、熊野古道で栄えた古の雰囲気をタップリ感じることができます。

昼食はインスタ映えする、クマを型取ったお弁当です。かわいく撮影できるように、カラフルなテーブルクロスや紅葉が用意されていました。

お弁当のかわいい撮り方をレクチャーするまりこさん。紅葉で前ボケを作ったり、バリアングル液晶モニターで真上から狙うと良いとのこと。

昼食後、タクシーで熊野那智大社・那智山青岸渡寺へ移動します。那智山青岸渡寺からは、紅葉と那智の滝を一緒に撮ることができました。春は桜と一緒に撮ることができます。

大クス 胎内くぐり。境内には、樹齢約850年のクスを御神木として祀っています。幹が空洞化していて、護摩木(300円)を持って通り抜けることができます。

バスで移動して最後の撮影場所である、朱色が美しい社殿の熊野速玉大社を訪れました。現在の社殿は昭和28年に再建され、熊野三所権現をはじめとする、十二所権現が祀られています。

境内にある樹齢千年のナギの大木は、熊野権現の象徴として信仰され、古来より道中の安全を祈ってナギの葉を懐中に納めてお参りすることが習わしとされていたそうです。参加者たちも落ちているナギの葉を拾って、お守りにしていました。

最後にツアー中に撮影した写真1枚とタイトルを発表し、講評を受けました。まりこさんからは、撮影のテクニックや構図の作り方、タイトルの付け方など、1枚1枚ていねいにアドバイスを受けました。

ツアーで同じ場所を巡ったにも関わらず似たような写真はなく、他の人の視点で切り取られた写真を見ることは、参加者同士でも刺激になったようです。

和気あいあいとした雰囲気で撮影

ツアー後に参加者の方に感想をうかがいました。

「1人で参加したため心細かったのですが、撮影場所へ移動する間や撮影中に参加者同士が交流することができて、楽しく過ごせました。懇談会でFacebookやInstagramをフォローし合い、いっきに写真友達が増えました」

「1日半というスケジュールでしたが、熊野三山すべてを巡るなど、熊野の魅力がギュッと詰まったツアーで大満足でした」

「まりこ先生の写真展や写真集を見てから参加しました。バスの中でまりこ先生が旅した熊野の話を聞きながら、同じ場所を巡れたのがうれしかったです」

参加者が撮影した作品の一部を紹介します。

大島治代さん『くまのに願いを……』
市ノ川倫子さん『古(いにしえ)からの光に導かれて』
村井涼子さん『たそがれ あこがれ こいこがれ』
ひとみんさん『かみがみのわるだくみ』
tabikotoriさん『one day 〜熊野速玉大社〜』

参加者がツアー中に撮影した写真は、Instagramにもたくさんアップされ、「#くまジェンヌ」のハッシュタグで見ることができます。

また、今回のツアーで撮影した写真を使って、熊野本宮大社横の「世界遺産熊野本宮館」で写真展が開催されるそうです(2018年2月13日〜3月4日)。ぜひ、足をはこんでみてくださいね。

写真で熊野の魅力を伝えたい!

ツアーをプロデュースし、講師を務めた山本まりこさんに感想を伺いました。

「平日の金曜日から土曜日という、変則的な日程にもかかわらず、全国からたくさんの方が参加していただき、ありがとうございました。いちばん印象に残ったことは、20人みんなで平安衣装を着たことですね。一人だと恥ずかしくて躊躇してしまいがちですが、みんなで着ると恥ずかしいより楽しい気持ちのほうが勝りますよね(笑) みんなの楽しそうな笑顔を見ることができて、幸せでした」

「今回のツアーは私が熊野古道を歩いて、印象に残った場所をみんなにも体験して欲しいと思い提案させていただき、ギュギュッと詰め込んだツアーです。早朝の那智の滝や、夕方の土手から見る美しい大斎原の大鳥居をみんなにも撮って欲しくて、スケジュールを作ってもらいました」

「ホテルではのんびりくつろげるように、1人1部屋にしてもらいました。いろいろ我が儘な提案をしたのにも関わらず、すべて叶えてくださり本当にありがたかったです。これからも多くの方に、私の愛する熊野を訪れてもらえたらうれしいです」

ツアー中に撮影した山本まりこさんの作品をお楽しみください。

撮影:山本まりこ
撮影:山本まりこ
撮影:山本まりこ

加藤マキ子(ツナ☆カメラ)

1981年生まれ。写真編集者。カメラ書籍を手掛ける編集プロダクションで女性向けのカメラ雑誌や書籍を多数手掛ける。その後、実用書系編集プロダクションを経て、2013年に独立。『光と色の写真の教科書 〜ふんわりフォトもこっくりフォトも思いのまま〜』『まりこ先生が教える やさしい写真の教室』などの企画・編集を担当。ときに、撮影や執筆も手掛けることも。仕事が好きで、マグロのように止まらず常に全力疾走中!