デジタルカメラマガジン
名所の撮影をイラスト解説した新刊「図解で分かる名所の撮り方」ができるまで
木村琢磨さん・嶋田拓朗さんに聞く 撮影の実演動画も
2022年4月7日 09:00
デジタルカメラマガジンで好評の連載が1冊にまとまった『図解で分かる名所の撮り方』が3月23日(水)に発売。日本の名所撮影のコツをイラストと写真で分かりやすく解説した本書の発売にあわせ、著者である木村琢磨さんと、イラスト制作を担当した嶋田拓朗さんにお話をうかがった。
——『図解で分かる名所の撮り方』は、どのような本ですか?
木村:タイトルに「図解」とあるように、どのような場所で、どの焦点距離のレンズでどのように被写体を切り取るのか、嶋田さんの分かりやすいイラストをふんだんに使って名所の写真の撮り方を解説しています。
嶋田:撮り方の解説はもちろんですが、木村さんの色鮮やかな写真を眺めるだけでも十分に楽しい本に仕上がっています。
——全国24カ所の名所が紹介されていますが、お気に入りの場所はどこでしょう?
木村:思い出深い場所ばかりですが、やはり「富士山」が大好きですね。季節や時間帯、撮影場所によって実にさまざまな表情を見せてくれます。
嶋田:私は何と言っても熊本県の「鍋ヶ滝」です。写真のインパクトがあり、本当にきれいだなとワクワクしながらイラストを描きました。
——本書はデジタルカメラマガジンの連載がベースになっていますが、スタートのきっかけを教えてください。
木村:写真の撮り方の解説はたくさんありますが、実際に現場で写真家がどのように撮影しているのかを図解で詳細に紹介する企画はあまりなかったので、やってみたいという思いがきっかけです。1人では難しくても嶋田さんの力を借りられれば実現できるのではないかと声を掛けました。
嶋田:そのお話をうかがったときに、面白そうなのでぜひやりましょうと二つ返事でした。
木村:最初は手探りで、正解を見つけるのに時間がかかりました。
嶋田:進めていくうちにこれまでにはない新しい形ができたと手応えがありました。
——そもそもお二人が知り合ったのはいつなのでしょうか?
木村:フリーランスになる前は岡山県で商業写真や広告写真を撮影するスタジオに勤めていたのですが、その頃からの付き合いです。当時、嶋田さんが勤務する会社から仕事の依頼があり、そこでは僕の撮った写真を嶋田さんがデザインに起こしてくれるという関係でした。その後、お互いフリーランスとなり、今回の企画は嶋田さんしかいないとお声掛けしました。この連載がきっかけで嶋田さんとまたつながることができて感謝しています。
嶋田:縁ですよね。1冊の本にまとまって自分でも何か不思議な感じがしています。
——連載はどのような流れで形になるのでしょうか?
木村:まず、どうやって撮っているのかを伝える現場写真を私が撮影し、これをベースに嶋田さんがイラストに起こしてくれます。想像しながらのところもあるので、毎回大変だろうなと思いながら写真を送っています。
嶋田:いえいえ、とても分かりやすいので、描いている方も助かっています。私が毎回同行することができないので、木村さんの現場写真を頼りに、読者の皆さんが何を知りたいのかを想像しながらイラストにしています。
木村:実はメインの写真の撮影時間よりも、イラスト用の写真を撮る時間の方が長かったりします(笑)。
——連載はモノクロでしたが、本書では美しいカラーになりましたね。
木村:そうなんです! モノクロは陰影で見せることが大切ですが、カラーは色情報があるので、連載と書籍では現像方法を変えています。実際に目で見た印象よりも、記憶色を大切にしながら鮮やかさを加えて、被写体の魅力を引き出すことを意識しています。
——これまで北海道から九州までを旅されてきたわけですが、今後訪れてみたい場所はありますか?
木村:沖縄に行ってみたいですね。
嶋田:私も同じく沖縄に行きたいです。
木村:沖縄はこれまで何回か行ったことがありますが、名所はまだまだ撮れていません。
嶋田:撮影前にその場所のことを調べるものなのですか?
木村:はい、ただ写真を撮るだけではなく、地元の料理や歴史を調べておくと旅の楽しみが倍増します。ただ、あまりロケハンし過ぎると現場に行ったときの感動が薄れてしまうこともあるので、そのバランスには気を付けています。
——もう1回チャレンジしたい場所はありますか?
木村:書籍には収録されていませんが、嶋田さんと一緒に出掛けた京都の叡山電鉄です。自分が思ったものがモノクロだと表現できたのですが、カラーにしたときに思うようなイメージになりませんでしたので再訪したいです。
嶋田:私は関東出身の一読者として「これぞ関西」というものを見てみたいです。書籍では大阪の伊丹空港でしたが、コテコテの大阪名所というのはどうですか?
木村:はい、次はぜひ! 1巡目は各地の名所を撮っていく過程で、なるべくジャンルがかぶらないようにしました。いつもならこっちを撮るけど、あえてあっちを撮ろうとか。伊丹空港もそうで、普段は飛行機を撮ることが少ないのですが、新しいジャンルに挑戦することで今まで自分が撮ったことのなかった1枚に巡り合えました。
——撮影時のお話をうかがいたいのですが、必ずこれだけは持っていくレンズは何ですか?
木村:私の場合、何を撮るにも標準ズームレンズが基本です。どんな現場でもなるべくそのレンズの画角に収まるように工夫しますが、そこで物理的に難しいときに初めてレンズ交換をしています。自分で工夫をしながら、撮影ポイントを探していくのは楽しいです。この書籍を手に取ってくれる方の中には、初めてカメラを買った方もいらっしゃると思いますし、そういう方でもなるべく同じような条件で撮れるように意識しています。
——撮影時にこれがあれば便利というアイテムなどはありますか?
木村:一にも二にも電源です! カメラは当然ですが、スマートフォンも撮影には欠かせません。これがあると地図の役割を果たしてくれますし、調べ物もできます。カメラとスマホを動かしているものはバッテリーなので、それを充電できる電源を用意しておくことはとても大事です。
——3年近く連載を続けていますが、その原動力はどこにあるのでしょうか?
木村:名所撮影に限りませんが、今までに見たことがない、撮ったことがないところに行けることが一番のモチベーションになっています。
嶋田:その中で何か新しいものが世の中に出せれば幸せです。そこが原動力につながっているのかもしれません。
木村:結局はお互いモノ作りが好きなんだと思います。
——最後にこれからの目標をお聞かせください。
木村:日本一周です。それでも全部を撮り切ることはできないので、たとえこの連載が終わったとしても、ライフワークとして名所を撮り続けていくと思います。今までは地元岡山県の景色を撮ることが多かったのですが、県外の景色を見ることで日本の良さが分かっただけでなく、岡山の良いところも見えてきました。
嶋田:47都道府県制覇ですね。第2弾の書籍ができれば最高ですが、これからも良いものを生み出せるモノづくりを続けたいと思います。
初めて訪れた場所でも迷わない撮影ガイドブック。写真だけではなく、撮影現場の状況を詳細なイラストで再現し、被写体をどこからどんな角度でどう切り取るのか、まるで現地にいるかのように視覚的に分かりやく解説。写真を始めたばかりの人でも本書を読むだけでプロと同じような絶景写真が撮れるコツやポイントが分かる仕組みになっている。
著者プロフィール
木村琢磨(きむら たくま)
1984年、岡山県生まれ。はち株式会社代表取締役。岡山県在住のフリーランスフォト&ビデオグラファー。広告写真スタジオに12年勤務したのち独立。主に広告写真(風景・料理・建築・ポートレートなど)を撮影。ライフワーク・作家活動として岡山の風景を撮影。12mのロング一脚BiRodやドローンを使った空撮も手掛ける。イベントやカメラメーカー主催のセミナーで講師としての登壇実績も多数。デジタルカメラマガジンにて「図解で分かる名所の撮り方」を連載中。主な著書に『風景写真の7ピース 撮影イメージがひらめくアイデアノート』(インプレス)がある。
嶋田拓朗(しまだ たくろう)
1985年、千葉県生まれ。グラフィックデザイナー、アートディレクター。デザインマネジメントによるデザイン戦略、手法を柱とするデザイン会社で、CI、BI、VIなどのブランディングの他、パッケージやグラフィック、Webなど幅広く制作の経験を積み、2017年よりフリーランスとして独立。企業が持つ商品のブランディングやその顔となるパッケージ、販売促進に関わる各種コンテンツなど、企画・戦略から制作までを手掛けている。