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Adobe Fireflyに第4世代目のAIモデルが搭載

動画生成が正式版に 「Fireflyモバイル版」も近日登場

Fireflyで生成されたイラスト

Adobeは4月24日(木)、英国で「Adobe MAX London 2025」を開催し、生成AIのFireflyやCreative Cloud製品のアップデートを発表した。Fireflyでは新しいAIモデルが投入され、これまで以上に高品質でリアルな画像が生成できるようになった。

画像も動画もベクターも生成

Adobe Fireflyは、権利関係を明らかにして商用利用可能な画像を生成できる生成AIサービス。登場後2年ほどで、すでに220億以上のコンテンツが生成されたという。同社は「究極のクリエイティブAIソリューション」として進化しているとアピール。

安心して商用利用できることから、多くのコンテンツが生成されている

新たに発表されたのは新しいFirefly AIモデルで、「Firefly Image Model 4」「Firefly Image Model 4 Ultra」という2種類が用意された。Fireflyの画像を生成するイメージモデルとしては4世代目にあたり、よりリアルに、より高品質な画像を生成できるようになったとしている。生成できる画像は2K解像度まで。構図やスタイル、カメラアングルなどをコントロールできる機能も搭載している。

Image Modelが4世代目になり、"Ultra"も登場した

Firefly Image Model 4は、これまでで最も高速で「迅速なアイデア出しや日常のクリエイティブニーズに最適」と同社。シンプルなイラスト、アイコン、基本的な写真オブジェクトの作成に最適とのことで、「90%の一般的なクリエイティブ要件を高速かつ低コストでカバー」するという。

それに対して同Ultraは、「完璧なディテールとリアリズムが求められるプロジェクトに適しており、構図がシンプルで緻密なシーンのレンダリングに威力を発揮」という。フォトリアルなシーン、人物ポートレート、数人のグループ写真などに適しているとされる。

アイデア出しなどで何枚も生成したい場合はFirefly Image Model 4を、最終成果物として生成AI画像を使いたい場合はUltraを使う、といった使い分けができそうだ。

動画生成の「Firefly Video Model」も登場。これまでパブリックベータだったが正式版として提供が開始された。Fireflyということで知的財産に配慮して商用利用可能な動画生成ツールとなっている。テキストプロンプトや画像から動画を生成でき、すでに電通やペプシコなど、国内外の企業が利用しているという。

Video Modelとベクター生成が正式に提供開始

ベータ版から正式版になり、よりリアルで詳細な動画が生成できるようになった。テキストのレンダリング、風景、トランジション効果なども強化されている。最大解像度は1080p、16:9、9:16に加えて1:1のアスペクト比も対応した。タイムラインのギャップを埋めるためのBロールやゼロから生成した動画など、ワークフローにシームレスに統合された高度なビデオ生成機能が利用できるとアピールされている。

「Adobe Vector Model」も登場。これもベータ版から正式版となり、「テキストからベータ生成」が利用可能になった。ベクターベースのアートワークやロゴ、製品パッケージなど、Illustratorでの制作に使うようなデータを生成できるとしている。

2024年10月に米国で開催されたAdobe MAXにおいて、コンセプトとして公開された「Project Concept」がパブリックベータになり、「Fireflyボード」という名称になった。「共同作業を行うための場」という位置づけで、参加者が自身のアセットを持ち寄り、ボード上で共有。そのアセットは全員が確認でき、さらに複数のアセットを選択して、生成AIによるアセットを組み合わせて新たなコンテンツを生成する、といった使い方が可能。チームでのブレインストーミングなどに活用できるとしている。

複数のアセットを組み合わせてリミックスすることもできるFireflyボード
アセット同士を選択してリミックスを選択すると、プロンプトが自動生成され、複数のアセットを組み合わせた新たなコンテンツを生成してくれる

さらに、クリエイターに生成AIの選択肢を与えるということから、Firefly以外の生成AIを選択できるようにした。作りたいコンテンツの内容に応じて生成AIを使い分ける人もいるということで、そうしたニーズに対応する。

生成AIはFireflyに加えてGPT Image generation、Google Imagen 3、Veo 2、Fluxに対応。さらに今後はfal.ai、Lumaなどにもサポートを拡大するという。Fireflyの場合、生成したコンテンツを商用利用しても安全だが、他の生成AIではそうした問題が発生する可能性はゼロではない。Adobeでは、利用者の自己責任での利用だとしている。

Firefly以外の生成AIを使った生成にも対応

開発発表ながら、Fireflyモバイル版の登場が予告された。iOS、Android向けに提供を予定する。カラー調整、構図の修正、デザイン変更などが可能で、「テキストから画像生成」、「生成塗りつぶし」、「テキストから動画生成」、「画像から動画生成」などの機能を備えている。アプリでの作業の続きを、そのままWeb版で作業するといったことも可能。

モバイルでもFireflyが利用できるようになる

アプリの利用は近日中に開始とされている。

なお、Adobeでは生成AIだけでなくAIエージェントに関する取り組みもしている。同社では、Creative CloudにおけるAIエージェントは、「クリエイターがより早く、より簡単に仕事をするための強力なツールとなること」が目的だという。細かい機能を覚えるのではなく、してほしいことをお願いすれば実行してくれる、といった状態を目指す。

具体例としては、Photoshopにおける「アクション」パネル(ベータ版)において、コンテキストに沿って編集をスマートに提案する機能を搭載している。クリエイターの行いたい作業を先読みして提案する点がポイント。

Premiere Proにはメディアインテリジェンス機能を搭載。動画素材の内容をアプリが判断して仕分けやタグ付けができ、キーワードで動画や動画内のシーンを検索できると言うもので、これもAIエージェントの考え方をベースにしているという。

各アプリの操作をより早く、より効率的にしてくれるAIエージェント

こうしたアプリケーションごとに最適な操作や状況に応じた提案を行ってクリエイターの効率を高めるというのがAIエージェントと位置づけられている。

小山安博

某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、スマートフォン、キャッシュレスなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプで、「世界最小・最軽量」が大好物。たいてい何か新しいものを欲しがっている。