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キヤノン、HDR合成処理がいらない広ダイナミックレンジCMOSセンサー。画面を736分割

約0.1~270万luxまで撮像できる監視用

キヤノンは1月12日、ダイナミックレンジ148dBの監視用途向けCMOSセンサーを開発したと発表した。

約0.1luxから約270万luxまでの撮像に対応するという、有効約1,260万画素(4,152×3,024)の裏面照射積層型1インチCMOSセンサー。地下駐車場の出入り口で車両のナンバープレートと運転者の顔を同時に認識したり、スタジアムの出入り口で来場者の顔認証と背景の監視を両立させるといった用途での活用を見込む。

新開発センサーの撮影例
視認状況:運転手○ ナンバープレート○
一般的な高画質センサーの撮影例
視認状況:運転手○ ナンバープレート×
視認状況:運転手× ナンバープレート○

一般的なハイダイナミックレンジ撮影では、露光時間を変えて撮影した複数の画像を合成処理するため、露光時間のずれにより生じるモーションアーキファクト(移動する被写体が重なって写ってしまう現象)が課題だった。

それに対して、本センサーでは画面を736領域に分割して、各領域ごとに最適な露光時間を自動で決定する方式を採用。複数画像の合成処理が不要となるため、移動する人物を撮影する場合でも顔認識の精度が向上するという。また、1フレームあたりに扱うデータ量も少なくなるため、約60fps(ダイナミックレンジは142dB。30fps時は148dB)のハイフレームレート撮影が可能になったとしている。

センサー内部には複数のCPUと専用の処理回路を搭載。1フレームの時間内でも、各領域ごとの露光条件設定を同時に素早く処理できるという。また、撮影環境や使用用途に応じて撮影条件のカスタマイズも可能としている。

広いダイナミックレンジを実現する仕組み解説図

領域別露光の仕組み(下図)は、まず現在から2つ前のフレームと1つ前のフレームの差分で画面中における被写体の動いている部分を検出し、「動体マップ」を生成する。

次に、現在から1つ前のフレームで各領域ごとの被写体の明るさを認識して「輝度マップ」を生成。隣り合う領域の輝度差が大きくなりすぎないよう滑らかにした上で、動体マップの情報から露光条件を補正する。

そして最終的な露光条件を決定し、現在のフレームに反映する仕組みとなっている。

領域別露光の仕組み解説図。実際には736領域に分割しているが、ここでは簡略化している
本誌:宮本義朗