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写真・映像制作向けコントローラー「Loupedeck CT」

液晶搭載のタッチボタンダイヤル 対応ソフトを拡大

Felix Hartwigsen氏(Loupedeck共同設立者兼マーケティング責任者)。新製品「Loupedeck CT」を手に

Loupedeck(本社:フィンランド)は3月12日、写真や映像制作用途向けのコントロールデバイス「Loupedeck CT」を発売。これにあわせて都内で製品の発表会を開催した。

Loupedeck CTは、株式会社SAEDAが日本の正規総代理店となっている。同社から購入の場合、製品には1年保証が付帯することになる。販売価格は税込6万9,980円。

Loupedeck+からの進化点とは

発表会では、同社共同設立者兼マーケティング責任者のFelix Hartwigsen(フェリクス・ハートウィグセン)氏が登壇し、Loupedeckシリーズ3製品目となるLoupedeck CTの進化点を紹介した。

Loupedeck CT

まず、前機種のLoupedeck+では、写真編集を念頭において製品の開発がおこなわれていたが、Loupedeck CTでは、写真だけでなく映像や音楽、デザインといった様々な分野で使用されているアプリケーションでの使用を見込んでカスタマイズ性の高さに重点をおいて開発したのだという。

Loupedeck+。発売は2018年10月。株式会社SAEDAの販売価格は税込3万4,630円

製品名のCTは、こうした意図を映すものとして“クリエイティブ・ツール”の意が込められているというわけだ。

このコンセプトに向けて、Loupedeck CTでは汎用性の高さが製品開発のポイントとなっている。発表会時点ではAdobeのLightroom Classicのほか、Photoshop CC、Premiere Pro CC、After Effects CC、Illustrator CCなどに対応。写真だけでなく、映像、デザイン分野で多く使用されているアプリケーションをサポートしている。AdobeのCamera Rawにも対応する。

製品開発の背景と今後の展開

Loupedeck CTの開発背景について、プロフェッショナル向けアプリケーションの複雑化を理由にあげたFelix Hartwigsen氏。Adobe社製のアプリケーションでもUIデザインが一貫していなかったり、直感的に使用しづらいと説明。また従来型のツールではデザインがそうした操作向けとなっていないことや、ハードウェアコントローラーがあったとしても価格やユーザー体験の面で敷居が高かったため、と続けた。

こうした状況に対して、初代Loupedeckをアメリカおよびヨーロッパ向けに展開、日本国内でも2018年10月にシリーズ第2弾製品Loupedeck+が発売となった。結果76カ国で6万台を出荷したという。ただ、前記したとおり、Lightroomを主な使用アプリケーションに想定していたため、汎用性には一部欠けるところがあった。

Loupedeck CTでは、より汎用性を高めた製品づくりがなされることとなり、ボタン類がカスタマイズ可能なタッチスクリーンになるなど、Loupedeck+からカスタマイズ性が向上した。また、外装にはアルミニウムを採用した。

製品の外形寸法は、160×150×30mm。重量は365g。ちなみに、Loupedeck+の外形寸法と重量は155×396×35mmで702gだった。

中央の1〜8までのボタンを挟んで、上側にタッチスクリーン式のボタンとツマミを配置。下側中央にホイールを配したデザイン。ホイール中央部もタッチスクリーン式となっており、表示内容の変更が可能となっている。

上部のタッチスクリーンボタンには、任意のアプリケーションを登録することも可能。

ツマミ部分は、クリック感のある仕様となっており、色味や明るさなど、“1”刻みで数値を変更したい場合にも有効。こうした微妙な操作はマウスでスライダーを操作する方法では難しかった部分だ。押し込むことで、すばやくデフォルト値に戻す操作も可能となっている。

汎用性を高めたコントロールデバイスだが、マウスやキーボードによる操作を置き換えるものではないというFelix Hartwigsen氏。これら従来型のインターフェースと一緒に使っていけることがポイントだと説明した。

今後の展開としては、写真向けアプリケーションではSKYLUM Luminar 4に向こう6カ月間のうちに対応を予定しているという。Maya 3DやAutodesk Fusion 360などのアプリケーション対応も、この期間で実施していく構えだ。

また、幅広いアプリケーションでの利用を助ける「Loupedeck Profile Creator」というプログラミング知識不要のツールも提供していくという。

ワークフローに与える変化とは

発表会では、静止画と動画の面でのデモンストレーションも披露された。登壇したのは、VERYbig株式会社の森本コナン氏と有慶太氏の2名だ。デモでは森本コナン氏が静止画を、有慶太氏が動画を担当した。

VERYbig株式会社の森本コナン氏(左)と有慶太氏(右)

静止画ではAdobe Lightroomを用いたデモが披露された。Loupedeck CTの導入でカラーグレーディングの面でワークフローに変化があったという森本氏。色温度や色相の操作がやりやすくなったという。これはカラーリストにとって、とても重要なポイントなのだそうだ。

デモの内容はLoupedeck CTのカスタマイズ性の高さに注目した内容で展開。中央の1〜8のボタンにワークスペースの切り替えや、アクションを登録して活用するなど、様々な使い方ができることが披露された。

以下の画面は、ボタンのカスタマイズをしているシーン。ワークスペースやアクションなどの項目が色分けして表示・登録されている。

また、Loupedeck CTには8GBのストレージが内蔵されており、汎用記憶領域として使用することが可能となっている。ここに例えば、自身のカスタマイズしたボタン設定を保存しておくことで、他者のPCに接続した場合などでも簡単に、その設定を使用したり共有したりといった使い方も可能になる。

カスタマイズ内容はアプリケーションごとに機能し、複数のアプリケーションを使用している際も、特別な切り替え作業を要することなく、シームレスに使える。様々なアプリケーションを統合して使えるようにしたい、というコンセプトが現実化されているのだ。

森本氏にふだんの使用スタイルを見せてもらった。右手はPC側、左手はLoupedeck CTに置くスタイルだという。飛行機のテーブルのような狭い場所で、マウスだと大きく動かさなければならないようなシーンでも使い勝手がいいという

続けて、有慶太氏より映像制作での活用点が披露された。

動画の場合、どこからどこまでを使用するのか、その取捨選択が常におこなわれているとして、動画の切り出しを中心にしたデモが披露された。

例えばタイムライン上でコマの選択をする場面。ホイールにより、このコマ送りをスムーズに操作できるという。

また、タイムラインの表示が細かく、切り出し位置を特定しづらいシーンでも手元のLoupedeck CTから、タイムラインの拡大や縮小ができること、切り出しツールなどもタッチスクリーンボタンから呼び出せるなど、片手編集の利点が挙げられた。

このほか、操作ツールを画面上から選択する必要がないため、映像をフルスクリーンで表示した状態で色温度の調整も行えると続ける有氏。操作画面とプレビュー確認をいったりきたりしないで操作できるメリットを紹介した。

本誌:宮澤孝周