新製品レビュー

タッチ+ツマミ操作と快適UIで写真編集を追い込める「Loupedeck Live」

Lightroom Classicでの使い心地とカスタマイズ方法を紹介

Loupedeckから7月に発売されたコンソールデバイス「Loupedeck Live」のインプレッションをお届けする。試用にあたっては自宅と職場とを行き来する中で常に持ち運び、様々な場面で使用していった。日常使いの中で気づいた事なども交えながらお伝えしていきたい。

シリーズ中もっともコンパクトになった筐体

Loupedeckシリーズは、PhotoshopやLightroom ClassicおよびLightroom、Premiere Proといったアドビの画像・映像編集の定番ソフトに対応するコントロールデバイスだ。これまで同シリーズはLoupedeck、Loupedeck +、Loupedeck CTと代を重ねてきてきた。今回取り上げるのは、シリーズ最新モデルにして最も小型化された「Loupedeck Live」だ。

最大の特徴は、やはり何といってもコンパクトなサイジングだろう。Loupedeck CTでも手が慣れた作業環境を持ち運びできることが製品コンセプトとして打ち出されていたが、本モデルではこの点がさらに突き詰められたものとなっている。

外寸はW150×H110×D30mmで、重量は約230g。手のひらにのる程度のサイズ感のため、ノートパソコンと一緒に鞄に入れても嵩張るといったことはない。重量にしても持ち重り感を主張してくるほどではないため、電源アダプターやカメラとともに通勤等で持ち歩くことを続けてみたが特に気になることはなかった。

ちなみに使用したバッグはピークデザインのEVERYDAY TOTE V2と通常のブリーフケースタイプ。それぞれで試してみたが、ツマミのでっぱりがあるとはいえ、コントロールデバイスという形状から想像されるような嵩張り感はない。薄マチのカバンにもノートPCとともにスッと収まってくれた。ポーチ等を活用すれば、傷つきやホコリの進入といったことにも神経質にならなくて良いくらい剛性が高いところもポイントだ。

薄マチのブリーフケースにも余裕で収まる。ポーチなどに入れて持ち運べばデバイス本体はもちろん、パソコンを傷つけてしまうこともない。コンパクトなのでクッション性のある巾着のようなものでも十分に収納できる

デフォルト設定でも十分な使い勝手が得られる

機能面から見た本製品の大きな特徴のひとつに対応アプリケーションの幅広さが挙げられる。どんなに操作性に優れたコントロールデバイスであっても、使いたいアプリケーションで活用できなければ意味がない。そうした点からみても長年フォト・ムービー分野でアプリケーション対応とUIを進化させ続けてきているLoupedeckシリーズの強さが光る。

写真関連でみていくと、定番のAdobe系アプリケーションではPhotoshopやPhotoshop Camera Raw、Lightroom Classicにそれぞれ対応。またCapture One Proにも対応している点も編集・現像ソフトを使い分けているユーザーにとって嬉しいポイントだろう。一般的によく使う機能などはプリセットされた状態となっているため、特にカスタマイズをしなくても接続してすぐに使い始めることができる。

ちなみに今回の試用にあたっては基本的にmacOS 10.15(Catalina)環境を用いている。ふだんの実務でも使い勝手を確認していったが、対応アプリケーションでの細かな操作で真価を発揮することになるのは当然として、音量の調整や動画のトラックコントロールなど、OSレベルでのちょっとした作業でも活用できるところにも本製品の面白さがあると気づかされた。

本製品の導入にあたっては専用のソフト「LoupedeckConfig」をあらかじめ導入しておく必要がある。同ソフトは常駐型で、製品を接続していない状態でも操作のカスタマイズなどが可能だ。

Loupedeck LiveをPCと接続していれば対応アプリケーションが起動した段階で、各アプリにあわせたUIに変わる。Loupedeck専用ソフトはデバイスを接続していない状態でも起動することが可能で、ここから対応アプリの設定を変更したり確認したり、といった操作も可能だ

Lightroom Classicで出来ること

今回はLightroom Classicを用いて使い勝手を確かめていった。設定できる内容は現像操作のほとんどをカバーしていると言ってよい。

操作内容は大きく分けて、デバイス左右に3つずつ配されたダイヤルと中央パネル部のタッチ時の動作で振り分けて設定できる。ダイヤル部は押下と回転操作をそれぞれ設定することができる。

ダイヤル部の操作にはLightroom Classicではパラメーター操作を割り当てると細かな操作はしやすくなる。特にマウス操作による細かな調整が難しい数値刻みでの微調整で威力を発揮する印象だ。

ざっとマウス操作で大まかなアタリをとった後でダイヤル操作で微調整をする、といった使い方が現実的だろう。いずれにせよ追い込んだ調整を「やる気にさせる」使い勝手が得られる。

微調整がやりやすくなるため、これまでマウス操作での微調整にストレスを感じていた人ほど高い導入メリットが得られるだろうし、これまで細かな調整をスキップしていた人も、小さじ一杯のさじ加減の面白さを実感できると思う。ダイヤル操作時の様子は以下のとおりだ。

カラーグレーディングなどが劇的に使いやすくなる

幅広いカスタマイズができる点もLoupedeck Liveならではのポイントだ。デバイスの構成は左右3つ計6のダイヤル調整ツマミと、大部分を占めるタッチコンソール(4×3の計12個)から成っているが、さらに下部に設けられた1〜7のボタン押下で、操作内容の切り替えが可能となっている。

つまり、6つのダイヤル調整と12個のタッチ操作を7パターンで切り替えて設定できるというわけだ。すべてのパターンを設定すると合計で126パターンの操作がデバイス上から可能になる。

これら全てを活用するということは稀だろうけれども、タッチとツマミ調整それぞれに機能を切り分けて設定できるため、例えば複数ステップを要する操作をタッチ操作に割り当てるだけでも、かなり操作を簡便化できる。

特にカラーグレーディングの操作は本デバイスの得意とする部分だと感じた。そもそもの操作方法自体が各カラーホイール上から直接調整操作するGUIなだけに、ツマミ操作との親和性が高い。ツマミ押下で調整内容を即座にリセットできるため、変化の幅や内容を様々に試せるところもポイントだ。

マウス操作では操作→リセットと2ステップで調整していたところ、手・指を大きく動かすことなく操作が行えるため、どのように調整すると、どのように色味が変化するのかを試しやすい。この手の操作で煩わしさが解消されるのは大変快いものだと思う。

あっさり気味の色調だったカットを見直していたところ、もう少し濃密な感じに調整してみたいと思った。ハイライトとシャドウをそれぞれ黄と赤の中間あたり、オレンジの方向で微調整。ダイヤルツマミは数値刻みで調整がしやすく、微妙な色の方向設定とあわせて操作がしやすい。コントラストやハイライトの微調整もツマミ操作に向いたUIだ。マウス操作によるザックリとした操作とは異なり、かなり追い込んだ調整ができた。

調整前
調整後

カスタム設定の登録も視覚的に分かりやすい

操作のカスタマイズは専用の常駐型ソフト「LoupedeckConfig」を用いて設定する。対応アプリを起動した状態でもデバイス本体を接続した状態であれば即座に設定が反映され、実際に操作感を確かめることが可能だ。このため、一連の操作をしながらキーボード上の指の動きと、本デバイス上でコントロールしたい内容の切り分けが考えやすい。ちょっと違うかな、と感じたらデバイス上で操作したい内容をカスタマイズで登録し、あらためてアプリ上で試してみる、というように、設定に関する一連の流れがとてもスムーズに連携している。

LoupedeckConfigを起動した状態。デバイスに接続した状態であれば、右下に「DEVICE CONNECTED」と表示されているはずだ

では具体的な設定方法をお伝えしていこう。

LoupedeckConfigを起動したら、使用したいアプリケーションを選択しよう。表示言語は英語のほか日本語にも対応しているので、わかりやすい方を選ぶといいだろう。ここではアプリに「Lightroom Classic」を選択し、言語は日本語にした。

設定画面は中央に「Loupedeck Live」の全体像が表示されている。これが現在の設定状態だ。左側に表示されているのが、Lightroom ClassicでLoupedeck Liveに割り当てることができる動作のリスト。「プレス機能」とはデバイス中央のタッチボタン操作に割り当てることができる項目で、「回転調整」がダイヤルツマミに割り当てることができる操作となっている。

右側に表示されているのが、1〜7までの各ページへのアサイン。「一般」の「丸いボタン」が現在時点でのキーアサインの全体像を示している。項目名はデフォルトの状態で「Basic Adjustments」、「Develop Presets」、「Color Adjustments」などの名称が並ぶ。各項目は「ワークスペース」としてそれぞれ管理されており、項目名右側の歯車アイコンから名称を変更することも可能だ。ここでは、この名称をそのままいかしながら、カスタマイズをしていった。

ワークスペースの名称は項目名右側の歯車アイコンから変更することができる

手順も解説。カスタム設定を登録してみる

登録操作は基本的にドラッグアンドドロップで完結する。例えば[1]のボタンに「Color Adjustments」をもってきたければ、この項目名をそのまま[1]の位置にドラッグアンドドロップすればOKだ。もちろん、右側のパネル上からもってくることも可能。選択された状態が視覚的な変化で示されないため、掴めているのか一瞬不安になるが、そのままドラッグすれば、掴んだ状態が表示されるので、そのまま設定したい番号にもっていこう。

[2]の位置にある「Color Adjustments」を[1]に移動する。この画面で「Color Adjustments」を掴んで上に動かすだけでOKだ
[1]にあった「Basic Adjustments」が[2]の位置にあった「Color Adjustments」と入れ替わった

次に各ワークスペースの内容を変更してみよう。右側パネルの「Color Adjustments」をクリックすると、「タッチスクリーンページ」と「ダイヤルページ」という2つの項目が表示された。タッチスクリーンページとはデバイス中央のタッチパネル部への割り当てを意味しており、ダイヤルページは、左右のダイヤルツマミへの割り当てを、それぞれ意味している。

まずはタッチスクリーンページから設定していこう。ここでは新たに操作設定をアサインしたいので「新規ページを追加」をクリック。左側のパネルから、タッチで操作したい項目を選択してドラッグアンドドロップで、任意のタッチパネル部にアサインすればOKだ。ここでは上段にプリセットを4つ、下段に「カーブ」メニューの「強いS字カーブ」と「クロスプロセス」を割り当ててみた。

次にダイヤルツマミの設定だ。この項目も基本的な割り当ての仕方はタッチスクリーンページと同じ。今度は左側パネルから「回転調整」をクリックして、設定したい内容をドラッグアンドドロップで各ツマミにアサインしていこう。

新規ワークスペースを作成した状態

1つのツマミに対して「回転の調整」と「プレス機能」の2つのアクションが設定できる状態となっているが、基本的に割り当てることができる項目は、ダイヤルひとつにつき1個となる。ツマミの回転操作で適用量の加減が調整でき、ツマミ押下(プレス)で調整内容のリセット、というアクションがワンセットになる。ここではカラーグレーディングの調整をアサインしてみた。上からハイライト、シャドウ、全体とし、左側に色相を、右側に彩度を割り当てた。

タッチパネルとダイヤルツマミはすべて任意の内容でカスタマイズが可能となっているため、よく使う項目をひとつのワークスペースに集約したり、各種操作をワークスペースごとにつくってもいいだろう。使い手のスタイルにあわせてくれるため、非常に汎用性の高いコントロールデバイスに仕上げられていることがわかる。設定UIのわかりやすさもポイントだ。

まとめ

Loupedeck Liveを長期にわたって持ち歩き、オフィスや自宅、カフェスペースなど様々な場所で試用してきた。この過程で筆者が特に本デバイスのメリットだと感じたことは以下の2点だ。

1つ目は、非常にコンパクトだということ。常にカメラとノートパソコンをセットで持ち歩いていると、どうしてもこれ以上荷物を増やしたくないという気持ちが強くなる。が、本機はダイヤル型の調整ツマミを含めても非常に薄いため、薄マチのバッグにもスッと収まってくれた。

接続ケーブルが着脱式となっている点もありがたい。収納時にも余計な出っ張りが少なくなるため、サッと出してサッとしまうといったハンドリングの良さも、隙間時間でも活用していきたいと思わせてくれる。歴代Loupedeckシリーズ中でも最もコンパクトなサイズとなっているわけだが、殊、静止画の編集に限ってみれば、主要な操作は本機で十分に事足りるだろう、というのが実感だ。

2つ目は、操作インターフェースの分かりやすさだ。副操作デバイスは機能性が製品の命となるだけに、様々な機能が搭載されるのが常だ。だが、機能性の充実はインターフェースの複雑化と表裏一体の関係であることが多い。

カスタマイズ幅の広さは本機もこうしたデバイスの例に漏れない内容となっているが、コンフィグソフトは特にマニュアルを見なくても操作設定が視覚的に把握できるUIを備えていて分かりやすく、何よりも日本語表示に対応しているところも嬉しいポイント。ハード自体もボタンとツマミだけなので、非常にシンプルな構成のため、操作で迷うことがない点も嬉しい。手・指が迷いなく目的の操作にたどり着けるインターフェスであることは、デバイスとしての成熟を感じさせる仕上がりとなっている。

では問題が全くないのかというと、そういうわけでもない。

タッチコンソールの表示が英文で表示している分には気にならないものの、日本語表示にすると、表示エリアから文字が一部はみ出してしまう項目があるのだ。文字サイズを小さく表示できれば問題は解決できそうに思いメーカー側へ確認をしてみたが、現状では仕様で変更できないとのことだった。どうしても気になるようなら、任意のアイコンを登録することもできるので、使用頻度の高い機能だけカスタマイズしてしまうのもアリだろう。

英語表記で表示されている内容は折り返されてキレイにマス目に収まっているが、日本語表示された内容は見切れてしまっている

コンパクトなサイズに収められているのにかなりパワフルなデバイスだ、というのが筆者の総評だ。前記したように改善点はいくつかあるものの、使い方でほとんどカバーできる範囲。保存や書き出し、等倍表示などといった主要な操作はショートカットキーの活用の方が手が慣れている部分もあり、操作は素早く行える面があるため完全に言い切れるわけではないけれども、複数コマンドで操作するシーンや、拡大・縮小の連続操作などでは、本デバイスのほうが細かな操作がしやすいと感じた。使い所の見極めは難しいが、基本パラメーターの微調整では確実にストレスを軽減してくれたことも事実だった。

シリーズとして見ても、かなりUIがこなれてきており、可搬性も高いとなれば、出先で現像調整をするという人は十分に導入の価値があるだろう。もちろんデスクトップで据え置きで使用する場合も机上の占有スペースが小さいので、キーボード脇に据えておく使い方もアリだろう。いずれにせよ、このコンパクトサイズと使い勝手の良さは導入の積極的な後押しになってくれる。

マウス操作による調整にストレスを感じていた人はぜひ一度触れてみることをおすすめする。デフォルト設定でもかなりの満足感が得られるはずだ。

本誌:宮澤孝周