オリンパスZUIKOレンズ 写真家インタビュー

自然と人物を主役に非日常を描き出す…田口るり子さん

M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO

地震活動で隆起した山の一部が自然環境によって侵食されて柱状になった土柱。もやが出るような低コントラストな日だったがシャープで迫力のある表現となった(撮影:田口るり子)。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO / 25mm(50mm相当) / マニュアル露出(F3.5、1/200秒) / ISO 200 / WB:オート

オリンパスのZUIKOレンズを使う写真家に、作品表現でのポイントや使い勝手をお聞きしていく本企画。

写真家の田口るり子さんに、写真を撮るとき気をつけていることや、撮影機材に重視することなどを聞きました。レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO」で撮影された作品も紹介します。

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田口るり子
たぐち るりこ
愛知県名古屋市出身。2003年から独学で写真を始める。その年に富士フォトサロン新人賞2003を受賞、それを機に写真家としての活動を始める。作品としてはヌード写真や家族のドキュメンタリーポートレートなどを撮り続け、国内外の写真展や紙面で発表し続けている。
公益社団法人日本写真家協会会員、日本舞台写真家協会会員。
webサイト:rurikotaguchi.jp


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現在、どのような作品を撮られていますか?

女性の身体のラインを風景に見立てた「SCAPE」、女性のヌードで背中のみをフィルムで撮っている「形骸土木」、96歳になる祖母の日常を追いかけているドキュメンタリー「KIYOKO」など、その他ドキュメンタリーとして追いかけている方が数名います。いずれも女性のポートレートという共通点があります。

ポートレート撮影をはじめた“きっかけ”があれば教えてください。

初めてカメラを買って、その足で友人の女性宅に行き、室内でポートレートを撮影させてもらいました。ファインダーを覗いて見たい世界、自分にとって一番興味のあるもの、それは最初から人でした。

国道438号線沿いで見つけた阿川のかかし。F5まで絞り込んで撮影することで、手前から奥にかけて、かかしの形をはっきりと描写。奥行きが感じられる1枚に(撮影:田口るり子)。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO / 25mm(50mm相当) / マニュアル露出(F5、1/1,000秒) / ISO 200 / WB:オート

今回は徳島県で撮影されています。徳島の魅力は、どのようなところに感じていらっしゃいますか?

徳島は山・川・海・星と、色んなバリエーションの自然を一度に楽しめるところが魅力です。夏は阿波踊りのお祭りもありますし、四国八十八カ所のお参りのお遍路さんが無心で歩いている姿には何か神々しいものを感じます。

阿瀬比ノ鼻の岬。F8まで絞り人物を立体的に、岩場や山並みなどはクリアな描写で表現した。ブルーとグリーンのカラー描写も鮮やかでオリンパスらしい(撮影:田口るり子)。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO / 25mm(50mm相当) / マニュアル露出(F8、1/1,000秒) / ISO 500 / WB:オート

モデルさんや撮影地はどのように決められているのでしょうか。

今回のモデルさんについては、女性はたまたまSNSでダンスをしている動画を見て、知り合いではありませんでしたがメッセージをしました。男性は、自宅の近所ですれ違った時にその見た目と雰囲気に惹かれ声をかけました。いつでもどこでも、“撮影させて欲しい”と思う方に出会えば勇気を出して声をかけています。

今回の撮影地である徳島については、父方の故郷ということもあり、また知っている土地でもあったので決めました。

灌頂ヶ滝。弘法大師がこの滝の下で修行をしたという伝説がある滝。シャッタースピードを1/400秒にすることで滝の飛沫が雨のように降りそそいでいる様子を表現した(撮影:田口るり子)。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO / 25mm(50mm相当) / マニュアル露出(F9、1/400秒) / ISO 200 / WB:オート

今回、自然と人物の双方を主役にした作品づくりをされていますが、ロケーションやモデルには、どのようなイメージを求めたのでしょうか。

男性が大柄で野生的、女性は小柄で可愛らしい方でしたので、2人が並ぶと美女と野獣のような、非日常感が出るなと思ったので、撮影場所も非日常感のある壮大な場所、というのがイメージにありました。

撮影時に心がけていることはありますか?

今回は風景と人物の両方が主役ですが、風景の方が撮影できる角度や画角が限られるので先に画角を決めてから人物を配置するようにしました。初めて行く場所も多く、時間も限られていたので、ファーストインプレッションで“良いな”と思うところは迷わず素早く撮るということを心がけました。

明丸海岸。服、海、空、すべてが微妙に違う青色をオリンパスブルーが見事に引き出してくれた。水平線や地面のラインの正確な描写が写真を引き締めている(撮影:田口るり子)。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO / 25mm(50mm相当) / マニュアル露出(F4、1/1,250秒) / ISO 250 / WB:オート

モデルとのコミュニケーションで、工夫したポイントがあれば教えてください。

太陽や風の向きを読んで、立ち位置はもちろんですが、顔の向きや視線の位置など、細かく指示させていただきました。風や波など、自然とのタイミングも重要だったのでリテイクも多かったのですが、求めている絵の説明をなるべく詳細に言葉にして伝え、モデルさんに不信感を沸かせないようにしました。

明丸海岸。ゴツゴツした岩肌の質感と海の青のグラデーションが単焦点レンズならではで詳細に表現されている。手前の岩と湾状になっている奥の海岸と島を写すことで奥行きを出した(撮影:田口るり子)。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO / 25mm(50mm相当) / マニュアル露出(F4.5、1/800秒) / ISO 250 / WB:オート

今回、16:9のアスペクト比を使われた意図について教えていただけますか?

アスペクト比は4:3で撮ることが多いのですが、今回は映画やミュージックビデオのワンシーンのような写真を撮りたいという思いがあったので16:9のワイドな比率にしました。

写真の世界観はアスペクト比で大きく変わると思うので、被写体や作品により1:1や3:2なども使用しています。

交換レンズに求める性能とは?

撮影する対象によってレンズを変えているので求める性能は被写体によって変わります。

今回は自然と人物の両方を主役にしたかったので25mm(35mm判換算50mm相当)で。狙った絵をしっかり作りながら撮影できる環境ですので、描写力やボケ味を優先して単焦点レンズで撮りました。

今回は単焦点レンズを使用していますが、例えば祖母のドキュメンタリーなどは被写体(祖母)の動きが読めず、予測できないことが起こることもあるので、どのような距離でもすぐに対応できるズームレンズで撮っています。

M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PROの使用感や描写について、感想をお聞かせください。

今回のロケ期間中、徳島は天候が不安定で、午前中は靄(もや)が出たり、日中は真夏のような暑さになったり、夕方には厚い雲が空を覆ったりしていましたが、目で見たそのままの情景をクリアに写してくれることに驚きました。特に逆光での靄という過酷な条件などもありましたが、それをしっかり描写してくれることによって幻想的な雰囲気の写真が撮れたと思います。

M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO

オリンパスのカメラで気に入っている機能は?

人は止まっているように見えても意外と微細に動いているものだなと、特に屋外撮影の時には思います。被写体の動きについていってくれる顔/瞳優先AFモードと、無音撮影が可能な静音モードはとても気に入っています。屋外では周囲に注目されにくくなるので撮影に集中出来ますし、被写体に威圧感を与えず自然な表情を引き出しやすいので、常に静音モードにしています。

大浜海岸。波のない日だったがタイミングを待ち波しぶきが大きくなる瞬間を狙って撮った。少し上の目線から俯瞰で撮ることにより二人だけの世界を作り、海の広がりを表現した(撮影:田口るり子)。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO / 25mm(50mm相当) / マニュアル露出(F2.5、1/400秒) / ISO 500 / WB:オート

デジタルカメラマガジンにも田口るり子さんが登場!

デジタルカメラマガジン2019年10月号の連載「日本列島 ZUIKO LENSの旅」で、田口るり子さんによるM.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PROの解説が掲載されています。

本連載は47人の写真家が47の都道府県を巡るというもの。今回、田口さんは徳島県を巡っています。ぜひ、あわせてご覧ください。

モデル:大久保千代太夫、近藤彩香
制作協力:オリンパス株式会社

デジカメ Watch編集部