オリンパスZUIKOレンズ 写真家インタビュー

徹底した観察を通じて野鳥が持つ魅力を素直に引き出す…中野耕志さん

M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO

朝焼けをバックに飛翔するオオワシ。多くの望遠レンズでは周辺画質向上のために1段程度絞るのが基本だが、本レンズは開放絞りからピーク画質が得られる(撮影:中野耕志)。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / 300mm(600mm相当) / マニュアル露出(F4、1/1,000秒) / ISO 800 / WB:晴天

オリンパスのZUIKOレンズを使う写真家に、作品表現でのポイントや使い勝手をお聞きしていく本企画。

写真家の中野耕志さんに、写真を撮るとき気をつけていることや、撮影機材に重視することなどを聞きました。レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO」で撮影された作品も紹介します。

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中野耕志
なかの こうじ
野鳥や飛行機の撮影を得意とし、広告や雑誌等に作品を発表する。「“Birdscape”~鳥のいる風景」と「“Jetscape”~飛行機の飛ぶ風景」を2大テーマに、国内外を飛び回る。著書に「デジタルカメラによる野鳥の撮影テクニック」(誠文堂新光社)、「飛行機写真の教科書」(玄光社)、「SAMURAI PHANTOM」(廣済堂出版、9/28発売予定)などがある。ウェブサイト:http://strix-photography.com/


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現在、どのような作品を撮られていますか?

現在までに日本では約600種、世界では約1万種もの野鳥が記録されています。これらの野鳥たちのなかでも、とくに自分が撮りたいと感じた種を中心に撮影しています。

野鳥が持つ魅力を素直に撮影するのはもちろんですが、野鳥が生きるためにはバックグラウンドとなる生息環境を取り入れた作品づくりを目指しており、「“Birdscape”~鳥のいる風景」をテーマにして国内外を飛び回っております。

木の幹をよじ登りながら探餌(たんじ)するアカゲラ。ボケづらいマイクロフォーサーズでも背景から十分な距離を離せば、超望遠らしいボケを生かした撮影が可能だ(撮影:中野耕志)。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO+M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14 / 420mm(840mm相当) / 絞り優先AE(F5.6、1/250秒、±0EV) / ISO 400 / WB:晴天

野鳥撮影をはじめた“きっかけ”があれば教えてください。

中学生のとき、野鳥写真家である嶋田忠さんが撮られたカワセミの写真集に出会ったのがきっかけです。その後、自分のフィールドでもカワセミを観察できたことで、野鳥観察・撮影の魅力を知りました。フィールドに出るたびに必ず発見があることが楽しくて、以来30年にわたり観察・撮影を続けています。

オオワシの飛翔。ミラーレスは超望遠での野鳥撮影が苦手だったが、OM-D E-M1 Mark Ⅱと300mm F4.0 PROの組み合わせでは快適な野鳥撮影を楽しめる(撮影:中野耕志)。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / 300mm(600mm相当) / マニュアル露出(F4、1/1,500秒) / ISO 200 / WB:晴天

北海道だからこそ出会える被写体はありますか? また、同地ならではの醍醐味や魅力はどのようなところにあるのでしょうか?

北海道と本州を分かつ津軽海峡は、「ブラキストン線」という動物相の分布境界線となっています。ゆえに本州では見られない動物が多く、野鳥でもあまり移動しないタンチョウやシマフクロウ、クマゲラなど北海道ならではの野鳥が多いのが魅力です。

また、日本離れした雄大な風景や、まだ多くの原生自然が残されていることが大きな魅力だと思います。

夏鳥として渡来するコサメビタキ。森林内における撮影ではM.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO+テレコンバーター「MC-14」の機動力がいきる。相手が動かなければ1/30秒の手持ち撮影も楽勝だ(撮影:中野耕志)。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO+M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14 / 420mm(840mm相当) / 絞り優先AE(F5.6、1/250秒、+0.5EV) / ISO 200 / WB:晴天

高緯度で太陽光線が低いことから北海道では“上質な野鳥写真”が撮れると、デジタルカメラマガジンでご説明されていますが、この“上質”という部分について詳しく教えてください。

高緯度地方は、低緯度地方に比べて同時期同時間帯の太陽高度が低いため、早朝や夕方のようなフォトジェニックな光線が得られる時間帯が長くなります。

また、空気の透明度の高さは写真の透明感に表れますし、北国では葉や幹の色が明るい樹種が多く、これらを背景にしたときに見栄えがするなど、総合的に上質な野鳥写真を撮影しやすいのです。

公園の池畔で休む雄のオシドリをクローズアップ撮影。M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROはオリンパスらしく近接撮影が得意で、描写力はもちろん適度な被写界深度が魅力(撮影:中野耕志)。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / 300mm(600mm相当) / マニュアル露出(F4、1/125秒) / ISO 200 / WB:晴天

撮影地はどのように決められているのでしょうか。

撮影したい野鳥が生息している場所であることはもちろんですが、バックグラウンドとなる自然環境が豊かであるところを選びます。それは原生自然が残されているのはもちろんですが、人の営みによって自然と共生してきた水田や雑木林などの里山的環境も含みます。

また、できるだけ自分で撮影地を見つけることで、オリジナリティを出したいとも考えています。

新緑の森で見つけたキビタキ。野鳥観察用ハイドに隠れて至近距離での撮影だが、静音撮影モードで相手を脅かさず、かつメカニカルなぶれを抑えて撮影した(撮影:中野耕志)。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO+M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14 / 420mm(840mm相当) / 絞り優先AE(F5.6、1/350秒、±0EV) / ISO 200 / WB:晴天

撮影時に心がけていることはありますか?

撮影者は、野鳥にとって迷惑な存在でしかないので、彼らの生活を脅かさないよう十分配慮して撮影に臨みます。そのためには撮影に入る前に相手をよく観察をして行動パターンを把握し、その中でどんなシーンを切り取れるかを考えます。この事前の観察がもっとも重要で、カメラを持って撮影するのは最後の仕上げに過ぎません。

流氷の上にたたずむオオワシ。絞り開放から非常にシャープな描写が得られるM.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROは、射貫くようなオオワシの目力を見事に表現した(撮影:中野耕志)。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / 300mm(600mm相当) / マニュアル露出(F4、1/3,000秒) / ISO 400 / WB:晴天

交換レンズに求める性能とは?

撮影機材には野鳥の美しさを鮮明に捉えられる性能を求めます。具体的には絞り開放からシャープであることと、立体感と透明感を表現できることです。そして咄嗟のシャッターチャンスに対応するため、操作性の良さが重要です。

枝から枝へ、すばしこく飛び回るハシブトガラ。M.ZUIKO DIGILAL ED 300mm F4.0 IS PROは軽量なので、超望遠撮影といえども手持ち撮影でラクにレンズを振り回せる(撮影:中野耕志)。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / 300mm(600mm相当) / マニュアル露出(F4、1/750秒) / ISO 400 / WB:晴天

オリンパスのカメラで気に入っている機能は?

オリンパスのカメラの魅力はシステム全体で軽量コンパクトかつ堅牢製が高く、どんな過酷な環境下へも持ち込めることです。そして三脚不要とも言わしめる手ぶれ補正能力の高さです。こうした面に加えてPROレンズの描写力の高さも、システムとして大きな魅力です。

そのPROレンズのひとつである「M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO」の特徴と、テレコンバーター「MC-14」との組み合わせについて教えてください。

野鳥撮影の標準レンズともいえるのが800mm F5.6ですが、ハイエンドのフルサイズカメラ+800mm F5.6レンズとの組み合わせでは、システムの重量が約5kg、三脚を含めると8kgを超えてきます。

一方、オリンパスのシステムでこの840mmF5.6相当の構成を組むと、OM-Dシリーズのボディ+レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO」+テレコンバーター「MC-14」で、システムとしての重量を約2kgに抑えられ、かつ三脚も不要となります。

フィールドにおいて、この軽量さは圧倒的な機動力につながります。もちろん、これは擬似的な望遠効果ではありますが、高い描写力と840mm相当で手持ち1/15秒でも余裕で(像が)止まるほどの手ぶれ補正能力が、軽量なシステムの魅力を更に高めています。

M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO

告知があればぜひ!

オリンパスの写真投稿コミュニティ「Fotopus」にて、「中野耕志 OM-Dと旅する世界の野鳥」というweb連載が始まりました。計4回にわたって世界の野鳥を紹介する予定です。第1回はマレーシア・ランカウイ島で撮影した色とりどりの野鳥たちです。

また、僕は飛行機写真も得意としておりますが、航空自衛隊F-4ファントムII写真集「SAMURAI PHANTOM」(廣済堂出版)が9月28日に発売される予定です。

デジタルカメラマガジンにも中野耕志さんが登場!

デジタルカメラマガジン2019年9月号の連載「日本列島 ZUIKO LENSの旅」で、中野耕志さんによるM.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROの解説が掲載されています。

本連載は47人の写真家が47の都道府県を巡るというもの。今回、中野さんは北海道を巡っています。ぜひ、あわせてご覧ください。

制作協力:オリンパス株式会社

デジカメ Watch編集部