インタビュー

新製品「α6400」の狙いとは?ソニーのミラーレス戦略を聞く

フルサイズの最先端技術をAPS-Cモデルにも集約

ソニーが2月22日に発売したα6400。ボディ単体での実勢価格は11万円前後。

ソニーから、APS-Cセンサーを搭載したαが久しぶりに登場した。本日2月22日に発売された「α6400」だ。

現在ソニーは35mmフルサイズモデルを中心としたラインナップに注力しており、その中で投入されるα6400は、立ち位置的にはα6500の下位モデルになる。ただし、フルサイズαが今春手にする予定の新機能をいち早く搭載するなど、単なるAPS-Cモデルとは一線を画する製品だ。

ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社デジタルイメージング本部第1ビジネスユニット担当部長の大島正昭氏に、α6400の狙いやαを取り巻く市場、2019年の展望などを聞いた。

ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社デジタルイメージング本部第1ビジネスユニット担当部長の大島正昭氏

α6400の存在意義について

——ソニーではフルサイズとAPS-C、どのような棲み分けを考えていますか?

フルサイズのカメラとAPS-Cのカメラを純粋に分けて考えてはいません。その理由ですが、フルサイズとAPS-Cで同一のマウントを共用するという、“One Mount”の特徴を生かすためです。センサーサイズに関わらず、お客様自身が何を優先するかで、カメラを選択できる環境を提供したいのです。

——その場合、α6400の特徴と想定するユーザー層はどうなるのでしょう。

カメラのラインナップの中で中級機を用意するというのは、裾野を広げるという意味で重要になります。フルサイズカメラを欲しいと思っても、いきなり上位モデルはハードル(価格や大きさ、重さ)が高いという声があります。その一方で、APS-Cのカメラであればそういったハードルはあまりありません。Eマウントのレンズ資産を有効に活用できるため、ステップアップのハードルは一層低くなります。すでにフルサイズαのユーザーであれば、レンズが流用できるサブ機にもなります。

つまり、サブ機やステップアップを見据えたモデルとしても使っていただけるカメラということになります。

——その一方で今の時代、α6400はメイン機として使えるほどのスペックにも感じました。

α6400には、α9で搭載している画像処理エンジン「BIONZ X」を採用しています。これにより、大容量の画像を処理できるという利点がありますし、これまで培ってきフルサイズの技術をこのAPS-Cのカメラにも集約させています。

また、これまでに発売したレンズ群についても、十分強みになると考えています。例えば、2018年10月26日に発売した「FE 24mm F1.4 GM」は、35mmフルサイズ対応の広角レンズですが、APS-Cのカメラボディに装着しても小型・軽量を保持できる素晴らしい組み合わせです。

そういった意味で、フルサイズのカメラとAPS-Cのカメラが同じマウントでレンズを共用できるのは、ソニーのカメラとして強みであるといえます。

開放F値F1.4ながら比較的小型のFE 24mm F1.4 GM。APS-Cのボディに装着すると36mm相当F1.4のレンズとして使える。

——α6400は現行機種α6500の下位モデルなのでしょうか。α6500は存続するのでしょうか。

日本を含め、ワールドワイドでα6500の販売を続けていきます。α6400と違い、ボディ内手ブレ補正機構を搭載していることもあり、それを目的に本格的な動画を撮影したいというお客様に選ばれているようです。なお、各地域のディーラーによって対応はまちまちですが、α6300はα6400に切り替わります。

——α6500のアップデートについては話はでていますか。

現時点では具体的にお話できる内容はありません。

——AF周りから受ける印象があるためか、α6400は動画に力を入れたモデルのように感じました。

動画のAFは色々なデータとして表すことが難しいのですが、α6400はしっかりとAFが機能するようにになっています。今までの機種では状況によって、一見するとキレイに撮れていますが、よく見るとピントがあっていないということが時々ありました。α6400では、開発スタッフでも驚くくらい合うようになりました。ぜひ、実際に試していただきたいですね。

——新製品の話を久しく聞かないAPS-C用レンズですが、今後どうなるのでしょうか。

要望としては色々といただいております。将来的な話や具体的なラインナップはこの場で申し上げられませんが、開発陣としてはお客様の要望を“超えられる”ように頑張りたいと思います。

フルサイズαのアップデートについて

——フルサイズαについてですが、新機種を投入するのではなく、アップデートによる機能追加というところに興味を覚えます。

α6400に搭載されているリアルタイム瞳AFなどは、今後α9(3月予定)やα7R III/α7 III(4月予定)にも搭載されます。発売時に搭載できなかったのか? という声もありますが、画像処理エンジンをよりうまく使いこなし、パフォーマンスを最大限に引き出すことができるようになったのは、α9を出したから蓄積できた部分もあります。いまだからこそ可能になったのです。

また、そういった情報はプロの方に限らず、全てのお客様の声を参考にしています。我々としても、お客様の期待を超えられるような開発を続けていきたいです。

大型アップデートの対象機種のひとつα9。アップデートには瞳AFの新アルゴリズムなどのAF関連のほか、前後ダイヤルの設定を3セットまで保存できるようになるなど、操作性の向上も盛り込まれる。

——アップデートの内容やスケジュールに違いがあります。その理由はなんでしょう。

どの機種でどの機能を優先的に実装していくのかはタイミングの問題もあり、少しずつズレている部分はあります。

——リアルタイムトラッキングの実装もその辺りが関係するのでしょうか。

はい。先行してα6400に搭載されていますが、3月の大型アップデートでα9での実装を予定しています。

ミラーレスカメラ戦略について

——現在ソニーはミラーレスカメラで一定のシェアを確保していますが、その要因は何でしょうか?

シェアという見方をすると、α7 IIIのご好評が大きいです。そのα7 IIIもまた、α9で培った技術をベースとして入れ込んでいます。最先端の技術を詰め込んだα9の機能・技術をα7 IIIがしっかりと受け止めている。それをお客様が受け入れて下さっているのがシェアとしても現れているのが、我々としても嬉しいです。

カメラ市場全体の話をすると、ワールドワイド的に縮小傾向にあります。その中でも、フルサイズ機については現状維持であり、フルサイズ機の中でもミラーレスカメラは好調です。

α6400のようなフルサイズではないミラーレスカメラをみると、エントリー向けモデルの勢いはかつてほどではありませんが、高付加価値帯モデルについてはまだまだ勢いがあります。それは、スマートフォンでは撮れない写真を求める人がいるからです。

そういった意味で、シェアという観点で言うと、ソニーも伸びていますし、他社含む高付加価値帯のミラーレスも伸びています。

——昨年より、フルサイズミラーレスカメラで培った5つの要素(専用設計レンズ、画質、スピード、スタミナ、機動性)を打ち出しています。この中で今後、最も伸ばしていきたい要素はどれになりますか。

ハッキリ言うと、全部です。例えば、スタミナについて十分かと言われれば、まだまだだという答えになります。α6400のデモンストレーションで用意した動画の内、インターバル撮影については8時間の撮影を行っていますが、(本体内のバッテリーだけではなく)USBの外部電源を利用しています。こうした現実の運用を考えると、まだまだやることはあるんじゃないかと。そう考えています。

——昨年投入した新しいRAW現像ソフト「Imaging Edge」について、ユーザーの利用率などは把握していますか?

具体的な数値について、公表できるものはもっていません。ソフトの進化の方向性としては、多様なプロの方々のご要望をうかがい、多くのフィードバックを行いました。

また、我々としては撮るという段階にだけ注目しているのではなく、ワークフロー全体でとらえてもっと使い勝手を向上させていきたいと考えています。その中で「Imaging Edge」の進化は大きな役割を担っています。

——α9の投入を機に、プロ会員が順調に増えていると聞きました。

α9以前からプロ会員は大きく増加していましたが、α9の登場が数も撮影されているジャンルも大きく広がりました。それは国内でも海外ででもです。プロサポート会員の交流の場として本社内で懇親会を開いたのですが、さまざまなジャンルで撮影している人がご参加下さいまして、開発スタッフとしても色々な話が聞けました。

製品に対するフィードバックや窓口対応へのフィードバックなど、撮影ジャンルによってニーズの表れ方が違うので、そういった話が直接聞けるよい機会だったと思います。

——色々とお聞きしましたが、引き続き活発な動きが期待できそうです。2019年のαはどうなっていくのでしょうか。

具体的な製品の話はできないのですが、フルサイズ、APS-C両方のミラーレスカメラへの注力・強化を引き続き行っていきます。

ワークフローのさらなる改善を含め、それぞれのシステムとそれを繋げる“One Mount”を広く展開して(積極的にアピールして)いきたいですね。

本誌:折本幸治