中井精也のエンジョイ鉄道ライフ「ジョイテツ!」

ゆる鉄探訪 第9回「秋田内陸縦貫鉄道」

紅葉シーズンの絶景アングルをご紹介!

車窓越しに紅葉を写したものですが、これはもう劇場でしょ? カーテンを開ければ、ドラマチックな秋色のショーが始まるのです!
ソニーα7R III FE 16-35mm F2.8 GM (16mm) 絞り優先オート (F3.2、1/250秒) ISO 80 WB:日陰

僕が大好きなゆる鉄路線をご紹介する「ゆる鉄探訪」。作品とともに、路線の撮影ポイントや見どころの解説を交えてお届けします。

9回目は秋田内陸縦貫鉄道をご紹介します。秋田内陸縦貫鉄道、通称内陸線は、秋田県の鷹巣駅から「東北の小京都」と呼ばれる角館へ至る第三セクター鉄道。もともとは国鉄の赤字線であった阿仁合線と角館線を引き継ぎ、その両線を結ぶ未開通区間を開通させる形で1986年11月に開業しました。第三セクターの路線としてはかなり長い総延長94.2kmの区間を、2時間半かけてのんびりと走ります。深い山の中を走るため、その車窓風景は変化に富んでおり、特に10月末から11月初旬にかけては紅葉のベストシーズンをむかえます。


ソニーα7R III FE 16-35mm F2.8 GM (22mm) 絞り優先オート (F2.8、1/1,000秒) ISO 80 WB:日陰

比立内駅近くの比立内川橋りょうからは、息を飲むような渓谷の絶景が!こういうときは風景だけを撮るのではなく、ちょっと車窓を入れるのがコツ。そうじゃないと、歩道で撮ったのか、車から撮ったのか、わからない写真になっていまいます。


ニコンD750 AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR (16mm) 絞り優先オート (F4、1/3,000秒) ISO 800 WB:晴天日陰

内陸線沿線では、可愛い田んぼアートを車窓から楽しむことができます。まさに内陸線の列車が、田んぼアートを楽しむ展望台に! ここでも車窓を額縁にして、「笠地蔵」をテーマにした田んぼアートを切り取ってみました。見頃は9月中旬から下旬ですので、2022年は残念ながら終了しています。


ニコンD600 AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II (95mm) 絞り優先オート (F2.8、1/3,000秒) ISO 200 WB:晴天日陰

さきほど車窓から渓谷を眺めた、比立内川橋りょうをゆく列車。あんなに美しい渓谷を越えるシチュエーションなのですが、谷が深すぎるのと立ち位置がないため、残念ながら渓谷と列車を入れて撮ることができません。ここでは背景の山々の紅葉が美しかったため、手前に秋色の葉っぱを前ボケさせて狙ってみました。道路から簡単に撮れるので、お手軽に撮りたい方にオススメのポイントです。


ソニーα7R III FE 24-70mm F2.8 GM (39mm) マニュアル露出 (F4.5、1/3,200秒) ISO 1000 WB:日陰

紅葉シーズンでも、山全体がまんべんなく色づくわけではありません。そんなとき色づきの良い場所を探すコツは、寒暖差の大きな場所をチェックすること。特に狙い目は、川沿いに立つ広葉樹です。この写真を撮影した戸沢駅付近は、線路に沿うように桧木内川が流れているため、朝夕の寒暖差によって例年紅葉が燃えるような色になります。この年は山の中腹にあるモミジが真っ赤に色づいていたので、急な斜面に登ってかなり不安定な体勢でプルプル震えながら撮影しました(笑)。


ニコンD600 AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II (110mm) 絞り優先オート (F8、1/750秒) ISO 400 WB:晴天日陰

紅葉には赤やオレンジなど、さまざまな色があふれていますが、戸沢駅裏の斜面だけが鮮やかな黄色に輝いていました。可愛い駅舎を入れて、黄色の紅葉が目立つようなフレーミングにして列車を待ちます。ちょうど紅葉とコーディネートしたかのような、黄色い気動車が来てくれました。斜めから撮影するのではなく、列車と正対する位置から撮ることで、左右の広がりをなくし、見せたい風景だけを箱庭のように閉じ込める構図にしています。


ニコンD750 AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR (21mm) 絞り優先オート (F8、1/1,000秒) ISO 400 WB:晴天

続いては秋田内陸縦貫鉄道を代表する有名撮影ポイント「大又川鉄橋」をご紹介します。萱草〜笑内間にある鉄橋で、列車に鉄骨がかぶらない上路式トラス橋なので、スッキリと列車を目立たせることができます。列車と並走する国道105号からも撮影できますが、こちらの作品は旧道の橋から見上げて撮影。国道の萱草大橋から直接旧道へ下りられないので、笑内方面に500mほど進んだところから戻るように左折した道を進んで行きます。旧道の橋は老朽化により車の通行はできないので注意しましょう。


ニコンD750 AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR (16mm) 絞り優先オート (F8、1/350秒) ISO 400 WB:晴天

旧道の橋を萱草駅方面に渡り、河原に下りる道の途中から橋を見上げると、鉄橋が森に囲まれているようなロマンチックな光景が広がっていました。こういう有名撮影ポイントで、列車の本数が少なくチャンスが限られている状況では、どうしても定番の構図だけを撮影しがち。でもそんなときこそウロウロして、本当に自分が素敵だと思う構図を探してみることが大切なのです。


ソニーα7R III FE 16-35mm F2.8 GM (16mm) マニュアル露出 (F6.3、1/800秒) ISO 640 WB:日陰

ここでも風景全体が色づいているわけでなく、やはり川沿いの広葉樹だけが秋色に輝いていました。そこで河原に下り、下流側に進んだ場所に立っていた紅葉の下から、見上げるように撮影しました。よく見ると国道の萱草大橋が写っていますが、鉄道の橋とほぼ重なっているので、それほど目立たなくて済みました。


ソニーα1 FE 24-70mm F2.8 GM (32mm) 絞り優先オート (F13、1/200秒) ISO 400 WB:オート

実はこの大又川橋りょう、厳冬期もキレイなんです。特に笑内駅側の斜面は端正な杉林になっていて、着雪すると幻想的な風景に変わります。ここではあえて旧道の橋を入れ、雪深さを強調しています。白銀の世界に、黄色い列車が映えますね。こちらは国道105号の萱草大橋から撮影しましたが、手前に電線があるため、撮れる場所は橋の両端の限られた部分のみになります。

現在、内陸線は令和4年8月13日に発生した豪雨災害により、鷹巣〜阿仁合間の不通が続いています。復旧の見込みが立たない厳しい状況にありますが、こんなときこそ紅葉に輝く内陸線に乗って、撮って、応援しましょう!

中井精也からのお知らせ

第18回ゆる鉄画廊NOMAD福島

2022年11月11日(金)〜13日(日)に福島市写真美術館で、ゆる鉄画廊NOMADを開催いたします。期間中は毎日、中井精也は在廊しております。

仙台・山形に続いて、東北地方3回目のNOMAD開催です!10月に復旧した只見線の最新作品も展示・販売予定です。ぜひお越しください!

さらに、11月14日(月)には、恒例の写真教室も開催予定です。写真教室の詳細は、追ってブログでご案内いたします。

会場:福島市写真美術館
11月11日(金):13時〜16時
11月12日(土):10時〜16時
11月13日(日):10時〜15時

<ゆる鉄画廊NOMADホームページ>
https://garou.ichitetsu.com/

<1日1鉄!ブログ>
https://ameblo.jp/seiya-nakai/

中井精也

1967年、東京生まれ。鉄道の車両だけにこだわらず、鉄道にかかわるすべてのものを被写体として独自の視点で鉄道を撮影し、「1日1鉄!」や「ゆる鉄」など新しい鉄道写真のジャンルを生み出した。2004年春から毎日1枚必ず鉄道写真を撮影するブログ「1日1鉄!」を継続中。広告、雑誌写真の撮影のほか、講演やテレビ出演など幅広く活動している。全国を旅しながら自身の作品を販売する「ゆる鉄画廊NOMAD」を展開中。テレビレギュラー番組に「中井精也のてつたび!/NHK BSプレミアム」、「ヒルナンデス!/日本テレビ系列」、「にっぽん鉄道写真の旅/BS-TBS」などがある。https://ameblo.jp/seiya-nakai/