中井精也のエンジョイ鉄道ライフ「ジョイテツ!」
ゆる鉄探訪 第8回「関東鉄道常総線」
首都圏からも好アクセス! 非電化ならではの光景を狙う
2022年9月10日 09:00
僕が大好きなゆる鉄路線をご紹介する「ゆる鉄探訪」。路線の撮影ポイントや見どころのほか、僕がその路線で撮影したBEST SHOTもご紹介します。
8回目は茨城県を走る関東鉄道常総線をご紹介します。首都圏に近い位置にありながら、電車ではなくディーゼルカーが走る常総線はレアな存在。位置的には電車が走っていてもおかしくない路線なのですが、同路線の近くに気象庁の地磁気観測所があり、電車だと地磁気の観測に影響をあたえる可能性があるということで、電化できなかったという経緯があるそうです。
常総線は常磐線の取手駅から下館駅を結ぶ51.1kmの路線ですが、取手駅から水海道駅は通勤路線の色彩が濃く、非電化ながら複線という珍しい光景が見られます。いっぽう水海道から下館までは単線で、田んぼや畑のなかをのんびりと走るローカル線のイメージ。1路線で2つの顔を持つ、魅力的な路線なのです。
最初にご紹介するのは大田郷〜黒子の風景。まるでゴルフ場のように、芝の上を列車が走る不思議な光景ですが、実はこれ、芝の畑なんです。実は茨城県には芝の作付面積が3,100ヘクタールもあり、日本一の産地になっています。地面で育てられた芝は、四角く切り分けられ出荷されるそうです。そもそも芝畑なんて知らなかったので、最初に見たときは驚いちゃいました。
芝畑のすぐそばの畑は、10月になると蕎麦畑が広がります。高速シャッターで写し止めた一枚目も悪くないですが、列車とお花の色が似ているせいか、いまいち目立たなくなってしまった印象。そこで二枚目では1/10秒で流し撮り! お花畑から列車が浮かび上がるように写すことができ、列車の存在感を強調することができました。
関東鉄道常総線のいちばんの見どころは、なんと言っても筑波山でしょう。筑波山は平野からドーンと聳えるせいか、関東平野各地から遠望でき、かなりの存在感を誇っています。そのせいか標高が877mしかないにもかかわらず日本百名山にも登録され、数ある名山が名を連ねる日本百名山の中でいちばん標高が低い山になっています。
常総線に乗っていると車窓から筑波山を見ることができますが、意外に住宅や送電線の鉄塔が多く、撮影しようとするとなかなかスッキリと撮れません。そんな中、この大宝駅の近くのポイントは、牧歌的な風景の中を走る列車と筑波山と列車をスッキリと撮影することができます。もう少し森が低ければ、完璧なんだけどなぁ。
石下駅の近くにはひときわ目を引くお城が建っています。「豊田城」と呼ばれるこの建物は、実際はお城ではなく「常総市地域交流センター」という常総市の施設になっています。豊田城は列車からも良く見えるので、お城に登れば列車も撮れるのでは? と7階の展望室に上がって見ると、なんと遠くに富士山を望むことができました。市街地なので建物だらけですが、富士山と常総線というレアな組み合わせを、バッチリ撮ることができました。
常総市地域交流センター
http://www.city.joso.lg.jp/shigai/kanko/chiiki/1421553530228.html
こちらが今回のベストショット。豊田城から富士山が見えるなら、地上からも見えるのでは? ということで見晴らしのいい、南石下〜三妻の田んぼに行ってみることに。おそらく何も知らないと富士山に気づけないと思いますが、だいたいの方角がわかっていたので、逆光の白い空にうっすらと富士山が見えているのに気づくことができました。
ここから富士山までの距離は約140km。午後は逆光になるので、どこに富士山があるかはほぼわからないと思います。狙い目は午前中ですが、夕空をバックに富士山の稜線が浮かび上がる夕方を狙ってみました。レンズはクロップして847mm。燃えるような夕焼けに富士山の山容が浮かび上がる、大迫力の一枚になりました。
さきほど富士山と列車を撮影した南石下駅から三妻駅にかけての区間が、常総線でいちばんのオススメスポット。ここは線路の両側が田んぼになっていて、自由なアングルで撮影できます。ヌケが良いので、筑波山とも撮影することができます。ただ山の手前に送電線の鉄塔がありアップだと目立ってしまうので、離れた位置から40mm前後で広〜く写してみました。まるで北海道のような広大さを写せる茨城県スゴい!
南石下〜三妻にはアグリロードという道路が通っていて、常総線とオーバークロスします。そこからは少し高い位置から広々とした田んぼを撮影できます。四季折々、美しく変化する田園風景と、のんびりと走る常総線は、関東とは思えない絶景です。歩道部分が狭いので、撮影には気をつけましょう。
秋には稲が色づき、黄金色の絨毯になります。あえて周囲の建物が入らない構図で、画面全体を黄金色に染めてみました。一面だけ刈り取りあとなのが残念っ!
最後は複線区間から。水海道〜小絹には、常総線と国道294号がオーバークロスする場所があり、そこから見下ろすように撮影することができます。非電化なのに複々線というレアな光景は、まるで北海道の鉄道風景のよう。常総線が複々線になる取手〜水海道は市街地を走るため、すっきりとした風景写真を撮るのがむずかしいのですが、ここは背景に店舗が入るものの、広大な平野と列車を撮影できるレアなポイントになっています。
狙い目は日没前後。一枚目なんて、とても茨城とは思えない雄大な風景でしょ? 二枚目は日没後に、奥の店舗の灯りに輝く、複々線の線路を主役に撮影した作品。露出を線路に合わせると、中古車販売店の煌々とした看板は飛んでしまうので、光の中に向かう列車のような、幻想的なイメージになりました。
首都圏の近くにありながら、非電化路線ならではのイメージを狙える常総線。秋葉原からつくばエクスプレスを使えば、常総線と接続する守谷駅まで最速32分で着いちゃいますので、ぶらっとフォトさんぽしてみてはいかが?
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