中井精也のエンジョイ鉄道ライフ「ジョイテツ!」

ゆる鉄探訪 第5回「三陸鉄道リアス線」

意外にレア? 海と一緒に撮れる沿線スポットをご紹介

もとJR山田線の区間である岩手船越駅と浪板海岸駅の間のポイントです。震災後に三陸沿岸道路が建設され、その工事用の道路から何箇所か海と列車が撮影できるようになりました。ここではカットしていますが、写真のすぐ下は高速道路という状況になっています。ただ三陸鉄道リアス線全体を見ても、海と列車を防風壁などの邪魔なものなしで撮影できる貴重なポイントと言えるでしょう。ただし年々木々が伸び、いつ撮れなくなってもおかしくない状況ですので、撮影するならお早めにどうぞ。
ソニーα1 FE 24-70mm F2.8 GM(37mm)マニュアル露出(F8、1/800秒)ISO 800 WB:太陽光 [Googleマップ]

僕が大好きなゆる鉄路線をご紹介する「ゆる鉄探訪」。路線の撮影ポイントや見どころのほか、僕がその路線で撮影したBEST SHOTもご紹介します。

5回目は三陸鉄道リアス線をご紹介します。東日本大震災で壊滅的な被害を受けた三陸鉄道は、北リアス線と南リアス線の両線を2014年4月に復旧させただけでなく、2019年3月には震災以来不通が続いていたJR山田線区間も引受け、日本の第三セクター路線では最長となる全長163kmを誇る、三陸鉄道リアス線の運行を開始しました。

ニコンD7100 AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR テレコンバーター使用 (1000mm相当)マニュアル露出(F13、1/4,000秒)ISO 200 WB:日陰

リアス式海岸で有名な北東北の太平洋岸を走る三陸鉄道だけに、海と列車を撮影できるポイントがたくさんありそうなものですが、もともと明治の大津波の経験から、津波に強い路線にするべく、海から離れた山間部を通ることが多いため、意外に撮影ポイントは限られてしまいます。

今回は意外にレアな三陸鉄道と海を撮れる作品をご紹介したいと思います。写真はいきなりBEST SHOT。朝日に輝く海をバックに走る三陸鉄道を2013年に撮影したものですが、現在は大きな防潮堤が完成し、撮影できなくなってしまいました。この写真は南リアス線が吉浜駅まで部分復旧した翌日に撮影したものなのですが、通学時間だというのにほとんど人が乗っておらず、美しい風景ながらも厳しい現実を実感した一枚でもありました。このときは、まさかJRを取り込んでリアス線になるなんて考えられない状況だったので、現状が奇跡のように思えてしまいます。

ソニーα1 FE 14mm F1.8 GM(14mm) 絞り優先オート(F8、1/4,000秒)ISO 800 WB:太陽光

最初にご紹介するのは陸中野田駅と十府ヶ浦海岸駅の間の巨大な防潮堤の上からのカット。この区間は津波で大きな被害を受けましたが、現在は巨大な防潮堤が完成し、自由に入れる防潮堤から撮影すると、海とリアス線をからめた爽やかな作品を狙うことができます。震災直後には膨大な瓦礫が積み上げられていた場所なので、よくぞここまで復旧したなと感慨深い場所でもあります。

作品だといまいち高さが伝わりませんが、撮影している防潮堤はかなり高さがあり、残念ながら車窓から海が見えなくなってしまいました。ただ、震災前にも海と線路の間に防風林があったので、もともと車窓から海は見えない場所でもありました。

ソニーα1 FE 14mm F1.8 GM(14mm)絞り優先オート(F11、1/1,250秒)ISO 800 WB:太陽光

続いてはリアス線と海をもっともお手軽に撮影できる定番ポイント「大沢橋りょう」をご紹介します。堀内駅と白井海岸駅の間に位置するこの鉄橋では、乗客に海を見せるために列車が鉄橋上で一時停止します。なので、初心者でも慌てずにさまざまなバリエーションを欲張れるポイントでもあります。並行する国道45号から撮影しますが、撮影地に「レストハウスうしお」があり、お食事をすれば屋上から撮影させていただくことも可能です。ちなみにオススメは定番の磯ラーメンのほか、生うに丼も最高です♡

鉄橋には防風壁があり下回りは見えづらくなっていますが、作品を見てわかるとおりそれほど気になりませんので、あまり気にしなくていいでしょう。

ソニーα1 FE 70-200mm F2.8 GM OSS(100mm) 絞り優先オート(F6.3、1/1,600秒)ISO 800 WB:太陽光

どうしても防風壁が気になる方は、大沢橋りょうの両側部分は壁がないので、そこをピンポイントで狙うといいでしょう。縦位置限定になりますが、三陸らしい険しい海岸風景と列車を撮影することができます。

ソニーα1 FE 24-70mm F2.8 GM (100mm) 絞り優先オート(F6.3、1/640秒)ISO 1600 WB:太陽光

続いては田野畑駅と島越駅の間で一瞬だけ海が見えるハイペ沢橋りょうをご紹介します。列車に乗っていると、ほんの数秒で通り過ぎてしまう鉄橋なのですが、ほとんど手つかずの自然な海岸の風景と列車を撮れるお気に入りのポイントでもあります。震災直後に運転士さんに心境を尋ねたとき、「またいつか列車を運転しながらハイペ川橋りょうのアナウンスがしたい」という夢を語ってくれたのが印象的で、それから何度もこの場所に通っています。撮影するうえでもシャッターチャンスは一瞬なので、集中して逃さないようにしましょう。

ソニーα1 FE 70-200mm F2.8 GM OSS(70mm)マニュアル露出(F9、1/250秒)ISO 400 WB:太陽光

同じく岩手船越駅と浪板海岸駅の間に位置するポイントで、三陸鉄道と砂浜を撮影できるレアなポイントです。三陸花ホテルはまぎくの前の砂浜から、簡単に撮影できます。ただし列車がスッキリと見えるポイントは限られているので、構図づくりには注意したいところです。

ソニーα7R IV FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS(400mm) マニュアル露出(F9、1/640秒)ISO 400 WB:太陽光

こちらは大槌駅近くの城山公園からの俯瞰撮影。大槌町は津波で壊滅的な被害を受けたところで、ニュースなどでこの城山公園から町に津波が押し寄せる映像が流されました。今はすっかり復興が進み、巨大な水門も完成しています。奥の海に見えるのは、あの「ひょっこりひょうたん島」のモデルとなったと言われる蓬莱島です。

ニコン Z 7 AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR(82mm) 絞り優先オート(F9、1/800秒)ISO 800 WB:晴天

こちらは吉浜湾と列車を撮影できるポイント。こうして作品にするとわからないのですが、意外に家などが多く、この構図以外は撮影するのが難しい場所でもあります。国道45号から撮影します。

ソニーα1 FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS(181mm) マニュアル露出(F8、1/500秒)ISO 800 WB:太陽光

こちらも海と列車をからめて撮影していますが、周囲に邪魔なモノが多く、この構図限定とも言えるスポットです。撮影地に行くのもひと苦労で、地図で示した三陸縦貫道路の管理用の場所から、山の斜面をガムシャラに登ったところから撮影しています。三陸鉄道と海を撮るのって、本当に難しいんです。

ソニーα1 FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS(294mm) マニュアル露出(F8、1/500秒)ISO 400 WB:太陽光

最後は甫嶺駅近くのポイント。かなり遠くから約300mmの望遠レンズで切り取っています。電柱が邪魔だと思いますが、このあたりは本当に電柱だらけで、この撮り方が精一杯。ただ午後には順光になるので、爽やかな青い海と列車をキレイに撮れるレアなポイントと言えるでしょう。

リアス線と海を撮れるポイントをご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか? 実際には電柱と夏草との戦いになると思いますが(笑)、この夏、輝く海と三陸鉄道リアス線を狙ってみてはいかがでしょう?

中井精也からのお知らせ

ゆる鉄画廊NOMAD山形

2022年6月17日(金)〜19日(日)に山形で「ゆる鉄画廊NOMAD山形」を開催いたします。東北地方2回目のNOMAD開催です! 皆さまのご来店をお待ちしております。

今回の会場は、一般的な展示会場とは別に畳敷きの和室会場でも写真を展示いたします。どんな展示内容になるかお楽しみに! 期間中は全日程で中井精也が在廊いたします。

中井精也の代表作品をはじめ、山形の鉄道風景や東北を代表する鉄道風景までのご当地の絵柄作品やオリジナル書籍、グッズを取り揃えて、皆様のお越しをお待ちしております!

さらに、今回のNOMADでは月曜日恒例の写真教室を開催予定です(6/20月曜)。詳細は、「1日1鉄!」ブログ他、ゆる鉄画廊NOMAD公式ツイッター、中井精也ツイッターでもご案内いたします。

<会場>
ギャラリー絵遊/蔵ダイマス
〒990-0033
山形市諏訪町一丁目4番10号
※ギャラリーの駐車場が満車の場合は近隣の有料駐車場をご利用下さい。

<営業時間>
6/17(金):14時〜18時
6/18(土):10時〜18時
6/19(日):10時〜16時

<ギャラリー絵遊/蔵ダイマス>
http://samidare.jp/kaiyu/

<1日1鉄!ブログ>
https://ameblo.jp/seiya-nakai/entry-12745737641.html

<ゆる鉄画廊NOMAD公式ツイッター>
https://twitter.com/yurutetsugarou

<中井精也ツイッター>
https://twitter.com/railman_nakai

それ以外にも、様々な場所でNOMADを計画しておりますので、詳細が決まりましたらご案内いたします。皆様の街へ「ゆる鉄画廊NOMAD」は出張いたしますので、近くに来た際には、ぜひお越しくださいね。

中井精也

1967年、東京生まれ。鉄道の車両だけにこだわらず、鉄道にかかわるすべてのものを被写体として独自の視点で鉄道を撮影し、「1日1鉄!」や「ゆる鉄」など新しい鉄道写真のジャンルを生み出した。2004年春から毎日1枚必ず鉄道写真を撮影するブログ「1日1鉄!」を継続中。広告、雑誌写真の撮影のほか、講演やテレビ出演など幅広く活動している。全国を旅しながら自身の作品を販売する「ゆる鉄画廊NOMAD」を展開中。テレビレギュラー番組に「中井精也のてつたび!/NHK BSプレミアム」、「ヒルナンデス!/日本テレビ系列」、「にっぽん鉄道写真の旅/BS-TBS」などがある。https://ameblo.jp/seiya-nakai/