中井精也のエンジョイ鉄道ライフ「ジョイテツ!」
初心者でも楽しく撮れる!「はじめての鉄道お立ち台ガイド」vol.02
三陸鉄道リアス線・由利高原鉄道
2020年8月10日 06:00
鉄道写真の世界にたくさんある「お立ち台」と呼ばれる有名撮影ポイント。条件の良いそんな場所には百戦錬磨の鉄道ファンが多く集まるため、慣れていない方だとちょっと近寄りがたい雰囲気があるかもしれません。この企画では、ふだん鉄道を撮らない初心者でも安心して撮れるオススメの「お立ち台」をご紹介いたします。「撮影地が広くたくさんの人が集まっても安心して撮れる」「カメラ位置が限定される車両アップではなく風景と鉄道をからめて撮影できる」などなど、鉄道撮影がはじめてでも気楽に撮影できる条件のポイントを選びました。
今回からは「絶景ポイント」と「ゆる鉄ポイント」に分け、作例をお見せしながら解説いたします。ふだんあまり鉄道は撮らないという人も、ぜひ鉄道写真にチャレンジしてみてくださいね!
はじめての鉄道お立ち台・絶景編:三陸鉄道リアス線「大沢橋りょう」(岩手県)
このポイントは堀内駅と白井海岸駅の間にある橋りょう。国鉄久慈線時代から知られる有名な撮影ポイントで、背景に海を入れて簡単に撮影することができます。さらにここでは乗客に海を見せるため、なんと橋りょう上で列車が停車するので、不慣れな人でも確実に撮影できるのも嬉しいところです。ただ橋りょうの中央部は強風対策の防護柵があるため、その柵をいかに目立たないように写すかがポイントになります。海の青さを際立たせるなら、順光になる午後がオススメです。
こちらは夏の三陸の風物詩ともいえる「やませ」が発生したときに撮影したもの。やませ(偏東風・山背)は春から夏にかけて、北日本川の太平洋岸に吹く、冷たく湿った東よりの風のことで、これが吹くと沿岸は冷たい霧に包まれます。長く続くと冷害を引き起こすこともある気象現象ではありますが、霧に包まれた海の風景はとても幻想的。この日は、最初に現場に着いたときはやませで何も見えない状況でしたが、この列車が来たときにちょうど霧が晴れはじめ、ドラマチックな作品になりました。次の列車ではすっかり霧がなくなってしまったので、とてもラッキーでした。
こちらは橋りょうの白井海岸側を切り撮った作品。防護柵がない部分だけを縦位置で切り撮っているためスッキリとした印象になっており、単行の列車だとバランスのいい構図が作れます。背景はリアス式海岸ではないものの、それをイメージさせる三陸らしい断崖になるので、三陸鉄道リアス線の象徴的な風景を撮れる貴重なカットと言えるでしょう。シャッターチャンスは一瞬ですが、前述したとおり橋りょう上で停車するため、かなりノロノロと現れるので安心です。
こちらは冬の風景。残念ながら風景は雪化粧はしていませんが、屋根にこんもりと雪が積もった列車が来てくれました。ここでは邪魔モノ扱いの防護柵ですが、サイドから撮ると意外に目立たないのがわかります。こうしてみるとアップで撮らないかぎりは、あまり気にする必要ないのかもしれませんね。青空にうかぶ雲と、それが反射した海の色が素敵な、冬の三陸の絶景です。
2011年3月11日に発生した東日本大震災により大きな被害を受け、この区間も1年以上不通が続いていました。こちらは2012年3月30日に撮影したもので、よく見ると行き先表示が試運転になっています。約1年ぶりに海が見えるこの区間に列車が帰ってきた感動を作品にしたくて、柵を入れずに画面を海で埋め尽くす大胆な構図にしてみました。このカットは少し離れた場所から、撮影地である国道橋の下を抜いて、超望遠レンズで撮影しています。
橋りょう上で停車してくれることもあり、車窓から見ると、こんな絶景を堪能することができます。こういう場合は風景だけを撮りがちですが、作例のように列車の窓枠の一部を入れて、車窓ということが一目瞭然になるように撮るといいでしょう。
はじめての鉄道お立ち台・ゆる鉄編:由利高原鉄道「曲沢駅」秋田県
ゆる鉄編は、秋田県を走る由利高原鉄道・鳥海山ろく線の曲沢駅をご紹介します。由利高原鉄道はもと国鉄矢島線で、羽越本線の羽後本荘駅から矢島駅を結ぶ延長23.0kmの路線です。鳥海山をバックに走る絶景も狙える路線ですが、僕が大好きなのが今回ご紹介する曲沢駅です。ここは作例のような駅名板と空だけを写すゆる鉄作品が狙えます。こんな場所どこにでもありそうですが、ここまで空バックで駅名板を撮れる場所はかなりレアなのです。雲の表情を主役として、メルヘンチックな作品を狙いましょう。
こちらが駅の全景。そのまま撮っても十分絵になるでしょ? よく見ると駅名板の奥に山が見えますが、これが撮影位置を低くすると空抜けになるのです。ちなみに隣の黒沢駅も、かなり絵になる駅なので、あわせてどうぞ。
駅名板だけでなく、列車を入れるとこんな感じ。ここでもホームの手すりを切った構図にしたいところですが、由利高原鉄道のディーゼルカーは横から見ると真四角なので、柵を切ろうとして下半分を切ってしまうと、列車感が薄れてしまうと判断。ここでは必要悪として柵を入れた構図にしました。この鉄道にはいろいろなカラーの車両があるので、どの色が来るかも楽しみのひとつです。
ペルセウス流星群が見られると聞き、いつ出現するかわからない流星を待って、徹夜で撮影した作品。30秒の長時間露光を何度も繰り返して、構図内に流星が流れてくるのを待ち続けました。星空は淡い光なので、駅に電灯があると破綻してしまうのですが、この駅の駅名板には照明がなく、道路の街灯に淡く照らされているだけなので、そのまま撮影することができました。とても幻想的でロマンチックな、ゆる鉄作品です。流星群というだけに、たくさん流星が見られるのかと思いきや、一晩中撮影して流星が写ったのは数枚だけでした。
次回も素敵な鉄道お立ち台をご紹介しますのでお楽しみに。