中井精也のエンジョイ鉄道ライフ「ジョイテツ!」

ソニーα7R IVで撮る!北海道ツアー②

ソニーα7R IV FE 24-70mm F2.8 GM (45mm) 露出マニュアル (F8、1/640秒) ISO 400 WB:太陽光

ラベンダーが咲く7月に開催した北海道撮影ツアーをご紹介するジョイテツ! 2回目となるこの記事では、いよいよ夏の富良野らしい丘の風景と、ラベンダーのある風景が登場します。前回の記事のとおり、初日は雲が多めの天気でしたが、2日目はバリ晴れ。思わず空を見て顔が緩みます。せっかくの晴れ、無駄なく行動することにします。

富良野線はいわゆる「美瑛の丘の風景」の中を走りますが、雪の多い地方であることと、丘を吹き抜ける風が線路に雪溜まりをつくってしまうのを避けるため、線路の両側に立派な防雪林が植えられています。そのため丘陵地帯のど真ん中を走っているというのに、丘の風景と列車をすっきりと撮影することができないのが悔しいところ。そんななか、今回訪ねたこのポイントは、かなり貴重でオススメなポイントです!

ほんの一部分だけ線路脇の防雪林が切れた区間を狙えるこの場所は、畑などに立ち入ることなく、安全に撮影できる貴重なポイントです。風景写真でも有名な「赤い屋根のある風景」を見下ろす位置を走る道路から望むと、赤い屋根の納屋と列車、そして背景には雄大な丘の風景を見渡すことができます。

ソニーα7R IV FE 24-70mm F2.8 GM (39mm) 露出マニュアル (F5.6、1/1,600秒) ISO 400 WB:太陽光

この日は晴れてはいるものの、雲が多めの空模様。列車を大きめに撮影すると、青空が入らず天気が悪い印象になってしまいます。そこで高い位置にある青空を入れて、左右の丘の風景を構図にいっぱい入れ込んで撮影しました。ここまで列車を小さく撮るのはあまりないですが、ここでは約6,100万画素を誇るソニーα7R IVの高精細な描写力に甘えてみました。

富良野線の普通列車は白いボディーなので、小さく写してもよく目立ちます。そして、さすがのα7R IVだけに、これだけ小さく列車を写しても、陽炎でゆらゆらしてはいるものの、列車が高精細に描写されているのは凄い! さだまさしさんの「北の国から」のテーマソングが聞こえてきそうな、北海道らしい風景写真になりました。

ちなみに青空の部分をトリミングしてみると……列車は大きくなりましたが、同じ写真とは思えないほど天気が悪く見えませんか? 青空が入っているのといないのでは、ここまで印象が変わるのです。

ソニーα7R IV FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS (105mm) 露出マニュアル (F4.5、1/1,250秒) ISO 400

次に来るのは夏限定の観光列車「富良野・美瑛ノロッコ号」。ラベンダー色のかわいい機関車が、レトロ調のオープン客車を牽引してのんびりと走ります。

少し鉄ちゃん的な話になるのですが、この列車で気をつけたいのは機関車の向き。この列車は画面に向かって左方向に走っているのですが、本来は先頭で客車を牽引するはずの機関車が後ろ向きに連結されています。ふつうの客車列車は出発する駅で機関車を客車の前後に入れ替える「機回し」作業を行いますが、ノロッコ号の客車には機関車を制御できる運転台が備わっているため、「機回し」することなく、客車が先頭のまま運行できるのです。ですから上下列車どちらも、この写真と同じ画面の左側に機関車が来ることになるんですね。ここでは機関車が左のほうがバランスがいい気がするのですが、こればっかりは仕方ないところですね。客車が地味な色で、鈍行列車と同じ構図だと目立たなくなくなるので、少し列車を大きめに撮ることにしました。

このように列車の向きや色で、構図など撮り方そのものが変わることもあるのです。もちろん鉄道写真は誰でも撮れるものですが、やはりある程度の鉄道の知識があったほうが有利。知識がない場合は、ちょっと下調べしておいたほうがいいでしょう。もし近くで鉄ちゃんが撮影していたら、どんな車両が来るのかどんどん尋ねてみましょう。きっと優しく教えてくれるはずですよ。

さて、写真の話に戻ります。列車を大きめに撮ろうとすると青空は入らなくなるので、今度は下の丘の立体的なうねりを主題とし、カメラを下に向けます。緑と黄緑のそれぞれの面が、まるでパッチワークのように主張し、とても可愛い風景写真になったと思います。ここではちょっと空を入れたくなるところですが、前回お話した「白い空は親のカタキと思え」に従い、空はカットしています。

これは激写する僕です(笑)ちょっと注目してほしいのが、首から提げているオレンジの四角いポーチ。実はこれiPad Proなんです。このようなツアーではどんな写真を撮ったかを参加者に見せてあげるためにiPadは必須のアイテムですし、iPad Proは端子がLightningからUSB-Cになったので、カードリーダーなどを接続できるだけでなく、PhotoshopやLightroomなどのアプリも充実している関係で、時間の空いたときに仕事までできてしまいます。そんな便利なiPad Proですが、首から提げられるケースはほとんどありません。そんな中で僕が見つけたのがこれ。

ただこれは首から提げられるだけで、そのままでは収納力が足りません。というわけで同じサイズのポーチを探してきて、ベルクロ(面ファスナー)で無理やりiPadケースに取り付けています。肌見放さずiPad Proを持ち歩けるだけでなく、中にはフィルターやUSB-Cのカードリーダーなどを入れられてとても便利なので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

さぁいよいよ今回のツアーのメインディッシュ、ラベンダーと富良野線の撮影です。撮影場所は観光地としても超有名な「ファーム富田」。園内にもお花畑はたくさんありますが、列車とからめて撮影するなら山の斜面に植えられたラベンダーが狙い目です。観光地とはいえ、結構な急坂を登っていったのですが、なんとラベンダーの色づきがイマイチ。今回のツアーはこのラベンダーの季節に合わせて開催したのですが、なんと今年は寒さが続きラベンダーの生育が遅れているとのこと。これはショック!

ソニーα7R IV FE 24-70mm F2.8 GM (47mm) 露出マニュアル (F8、1/640秒) ISO 400 WB:太陽光

う〜ん。確かにラベンダーの色が薄いうえ、手前の壁やアドバルーンなど情報が多すぎて、列車が目立たず、いまいち手応えがありません。特急用の車両を使った臨時列車が走ってきましたが、ちょっと残念な結果に。下から見た感じでは、もう少し左側にある駐車場の真上にあるラベンダーは咲いていたのですが、メインに考えていたこの畑は満開まで2週間くらいかかりそうです。撮影は難しいと思われますが、念のため駐車場の上のほうへ回ってみることに。

大規模な駐車場の真上にあるラベンダー畑なので、見下ろしたらぜったいに車が写り込んでしまうと思い込んでいたのですが、低くカメラを構えれば車を入れずに撮れることが判明! まだまばらではありますが、ラベンダーの色も鮮やか! こちらで狙うことにします。あきらめなくてよかった!

ソニーα7R IV FE 24-70mm F2.8 GM (46mm) 露出マニュアル (F8、1/640秒) ISO 400 WB:太陽光

画面のなかのラベンダーの面積は少ないですが、キレイな青空だったため、とても北海道らしい爽やかな風景写真になりました! まさにこれを撮るためのツアーだったので、ひと安心。それにしても、撮影を自然のタイミングに合わせるのって難しいですね。

ソニーα7R IV FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS (150mm) 絞り優先オート (F5.6、1/2,000秒) ISO 1250 WB:太陽光

ファーム富田のすぐ近くには「ラベンダー畑」という臨時駅があり、たくさんの観光客が乗降します。かなり長く停車するので、その間に望遠レンズでラベンダーを前ボケさせて撮影します。望遠でも広角でも、ほぼ同じ位置に列車を置いた構図に注目です。

2枚の写真を「せいや君構図」と重ねてみました。広角でも望遠でも、ほぼ同じ左下の1点に列車が配置されているのがわかると思います。どんなに焦点距離が違っても、列車を置く位置は変わらないことが多いのです。風景と対峙したとき、まず列車を置く位置を決めてしまえば、構図に迷いがなくなるのがわかると思います。

ソニーα7R IV FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS (100mm) 絞り優先オート (F4.5、1/2,500秒) ISO 1250 WB:太陽光

続いてはファーム富田の展望台から撮影。画面の上のほう、ビニールハウスと銀色の車が走っている道路の真ん中にある、茶色い線が線路です。よく見ると線路の手前に木や電柱などがかかっている場所がありますが、それを意識せず構図を作ってしまうと、一番バランスのいい列車の位置で、列車の顔に邪魔なモノが重なる失敗になりがち。こんなときはまず線路と、それにかかる邪魔モノをよく観察して、「列車の先頭がこの場所に来たときにシャッターを押す」という位置を、明確に決めておくことが大切です。

ソニーα7R IV FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS (105mm) 絞り優先オート (F4.5、1/3,200秒) ISO 1250 WB:太陽光

2両編成の列車がちゃんと収まり、列車の顔に木が重ならない位置を決めて構図を作った写真がコチラ。お花畑だけでなく、たくさんの観光客を入れることで、夏の富良野の明るい雰囲気を表現してみました。

撮影で中富良野駅付近をウロウロしているとき、遠くに大きな黄色い面があり、とても気になっていました。季節的に菜の花ではないだろうと思っていたけど、なんと近づいてみると真夏の菜の花畑でした。しかもスゴく広い。下から見ると列車は写らないので、キョロキョロしていると、菜の花畑の上に素敵なログハウスが!

撮影させてもらおうとダメ元で急坂を登って訪ねてみると、なんとそこは天国のように素敵な喫茶店でした。ここ「さくらの」は一年を通して営業しているオシャレなカフェ。そのベランダからは広大な菜の花畑が一望できます。オーナーさん夫婦はいきなりの来訪者に驚いていましたが、快く撮影させてくれました。撮影しながらいただく、特製の「ふらのブドウソーダ(白)」700円は極上の味わい。とっても素敵な時間を過ごしました。

お店情報

店舗名:さくらの
〒076-0048 北海道富良野市字清水山
営業日:不定休。予約・貸切営業優先。
※来店の前に電話でご確認ください。
電話:0167-23-1775

ソニーα7R IV FE 24-70mm F2.8 GM (40mm) 露出マニュアル (F8、1/640秒) ISO 400 WB:太陽光

広大な菜の花畑と富良野線。夕方は雲が多くなりドキドキしましたが、なんとか列車が目立つ位置に光が当たってくれてラッキー。真夏の菜の花畑という思わぬ収穫を得ることができました。これで盛り沢山なツアー2日目はおしまい。お天気に恵まれ、とても充実した1日になりました。

中井精也からのお知らせ

ゆる鉄画廊では、9月28日(土)・29日(日)の2日間、「ゆる鉄画廊写真教室」を開催いたします。※各回とも単発の写真教室となります。

中井精也が皆様へ直接、写真表現の手法や撮影テクニックをレクチャーします。撮影場所は都電荒川線沿線を予定。まったくのカメラ初心者から、写真表現を一歩踏み込みたいベテランの方まで幅広くお楽しみ頂ける内容です。お誘いあわせのうえ、ぜひご参加ください。

参加者にはテキスト「せいや流!撮影ハンドブック 入門編」をプレゼント

写真教室の参加者全員に、特製テキスト「せいや流!撮影ハンドブック 入門編」をお配りします。この本は、写真教室の教科書としても使用。カメラ初心者が最低限超えなければならない知識・ノウハウをコンパクトにまとめました。

※このテキストは、ゆる鉄画廊オンラインショップと、Amazonでもお買い求め頂けます。

当日は動きやすい服装で。雨具も忘れずに!

中井精也が参加者へ写真の撮り方をアドバイスする。中井精也への質問もできるので、分からない事はどんどん聞きたい。(写真はいずれも7月に開催した「ゆる鉄画廊写真教室」のもの)
初心者にはむずかしい「流し撮り」を練習するため、電車の代わりに走る中井精也を撮影する。もちろん「流し撮り」のコツについても解説がある。
撮影のあとは三ノ輪橋駅へ戻り、最寄りのレンタルスペース『都電カフェ』で参加者の作品を講評する。自分の作品に対して、中井精也から直接アドバイスが受けられるまたとないチャンスだ。

募集概要

ゆる鉄画廊写真教室、開催スケジュール
・第4回 …2019年9月28日(土) 早稲田近辺を撮影予定
・第5回 …2019年9月29日(日) 飛鳥山近辺を撮影予定
・参加費…おとな1万5,000円(高校生以上)、こども7,500円(中学生以下)、いずれも税込価格。
・定員…各回20名ずつ

お申し込み受付けフォームはこちら↓
https://forms.gle/t3tPFpVsPNfDPpL88

第4回、9月28日(土)スケジュール■

10時00分 王子駅周辺へ集合、早稲田方面へ移動
10時30分ごろ 撮影指導スタート
12時ごろ 早稲田周辺で各自昼食
13時ごろ 集合し、引き続き撮影
14時ごろ 都電貸し切り電車に乗り、三ノ輪橋へ移動
三ノ輪橋近辺を撮影
16時ごろ 「都電カフェ」にて講評会
18時ごろ 解散

※28日は、復路にて都電貸し切り電車に乗車します。
※貸し切り電車の運賃は料金に含まれます。
※往路の都電運賃はご負担ください。

第5回、9月29日(日)スケジュール■

10時00分 ゆる鉄画廊集合、都電荒川線で移動
10時30分ごろ 王子駅着、撮影指導スタート
12時ごろ 王子駅周辺で各自昼食
13時ごろ 集合し、引き続き撮影
16時ごろ 三ノ輪橋へ戻り、「都電カフェ」にて講評会
18時ごろ 解散

※29日は、都電の貸し切りはございません。
※都電1日乗車券をお配りします。乗車券は料金に含まれます。

中井精也

1967年、東京生まれ。鉄道の車両だけにこだわらず、鉄道にかかわるすべてのものを被写体として独自の視点で鉄道を撮影し、「1日1鉄!」や「ゆる鉄」など新しい鉄道写真のジャンルを生み出した。2004年春から毎日1枚必ず鉄道写真を撮影するブログ「1日1鉄!」を継続中。広告、雑誌写真の撮影のほか、講演やテレビ出演など幅広く活動している。株式会社フォート・ナカイ代表。2015年、講談社出版文化賞・写真賞、日本写真協会賞新人賞受賞。著書・写真集に「デジタル一眼レフカメラと写真の教科書」「DREAM TRAIN」(インプレス・ジャパン)、「ゆる鉄」(クレオ)、「都電荒川線フォトさんぽ」(玄光社)などがある。2018年5月、東京都荒川区に鉄道写真ギャラリー&ショップ「ゆる鉄画廊」をオープンした。甘党。https://ameblo.jp/seiya-nakai/

■TVレギュラー:「中井精也のてつたび」/NHK BSプレミアム、「ヒルナンデス!沿線フォトさんぽ」/日本テレビ、「ひるまえほっと てくてく散歩」/NHK総合、中井精也の「にっぽん鉄道写真の旅」/BS-TBS、カメラと旅する鉄道風景/CS各局