中井精也のエンジョイ鉄道ライフ「ジョイテツ!」
【臨時便】ゆる鉄画廊写真展「旅するライカ」のご案内
11月12日(火)まで開催中 一部作品を解説つきで紹介
2019年10月7日 16:28
ゆる鉄画廊では、10月3日より新しい写真展「旅するライカ」を開催。2018年の年末から2019年9月末までの、比較的新しい作品38点を展示しております。もちろん、展示中の作品はすべてライカで撮影しています。
今回のジョイテツ臨時便では、ただいま展示している作品の解説も兼ねて、9月に開催したワールドフォトツアーズ「スペイン・ポルトガル撮影ツアー」のライカ作品を中心にご紹介します。(ゆる鉄マガジン9月15日号の再編成となります)
9月1日から8日にかけて、スペインとポルトガルを旅してきました。成田からオランダ経由でバルセロナに入り、モンセラート鉄道を撮影。その後マヨルカ島に渡り、ソーリェル鉄道を訪ねました。マヨルカ島からはマドリッド経由でポルトガルのリスボンに飛び、リスボン市電を撮影するという欲張りなツアーでした。
今回はライカM-P(Typ240)で撮った作品、しかもスナップを中心にお見せします。旅スナップの楽しさが伝われば幸いです。
こちらはマヨルカ島のソーリェル鉄道軌道線。木造の古い電車が走る電車線もいいのですが、たくさんの人が往来するオシャレなビーチのすぐ横を走る軌道線も素敵です。さすがヨーロッパを代表するバカンスビーチだけあり、トップレスの美女が砂浜で寝そべっていたりして、目のやり場に困りますが、とにかく絵になります。そこで見つけたのは南国らしい木の影のシルエット。このように瞬時にポイントを見つけてサッと撮るのがスナップの醍醐味。鉄道以外に魅力的なテーマがないか、つねにキョロキョロすることが大切です。こういう写真って、影をテーマにして撮ってくださいって言われたら、誰でも撮れると思うんです。その影に気付けるかどうかが、大きな分岐点になるのです。
これは歩きながらノーファインダーで撮影したスナップ。赤ちゃんの表情が最高ですね。だいたいの距離を目測して、レンズの距離指標を見ながらピントを合わせて撮りました。手前に線路がちゃんと入ったのは、ほとんど運です。海をバックに、どこか昭和っぽい海のスナップ。いいのが撮れました。
マヨルカ島の街のなかにオシャレな通路があったので、その形状をうまく使って構図づくり。やさしい色づかいが、木製の電車とよく似合います。こちらはスナップでも、じっくりと待つスナップ。ギリギリまでハイキーにして、やさしい雰囲気に。
上の列車が行ったあとは、瞬間勝負のスナップ。ちょうどベスパで激走するおじさんが来たので、ノーファインダーで流し撮り。ピントも瞬時に目分量で合わせながらパンしました。こういう瞬間勝負のスナップは、失敗して当然。当たればラッキーなくらいで、とにかくチャレンジすることが大事。ちゃんと撮ろうという思いが強すぎて、もたもたピントを合わせたりしていると、撮り逃しちゃいます。ちなみにこのカット、ノーファインダーながら全部で11枚も連写していました。こんな感じでいいかげんに撮ってるということがよくわかると思うので、つなげてパラパラアニメにしてみましたのでご覧ください。
生活感が丸出しのカフェと、市民の下駄代わりのトラム。生活とトラムの距離の近さを見せたくて、この場所で撮影しました。よく見ると、物理的にもかなり近いですね(汗)奇をてらわない自然な構図をこころがけました。
15分間隔くらいで走ってくる28番ですが、車の渋滞に詰まったり、配送トラックが線路上で長時間停車したりして大幅に遅れます。45分くらいぱったり来なくなったと思ったら、3両一気に走ってきたり……。この写真は、ず〜っと待っていたのに来なくて、とうとうあきらめて歩き出した瞬間に走ってきたトラム(涙)僕が手を広げて「遅いよ〜」ってジェスチャーしたら運転士さんが笑ったので、とっさに流し撮り。傾いたけど、ピントも甘いけど、それもまた良し。
今回の写真展のメインビジュアルになった作品。
車で通るのもやっとな旧市街に、網の目のように敷かれた線路。トラムの最後尾から眺めていたら、迷宮に迷い込んだかのような感覚になります。またまた無意識に構図をナナメにしていますね。このナナメ具合が、臨場感をプラスしてくれているのかもしれません。日が差さないほど込み入った町並み。車内から撮影した写真ですが、街の重厚な雰囲気をうまく表現できた気がして、お気に入りの作品です。
ここは28番で最も狭い路地を通る場所。たぶん電車と建物の隙間は、僕のお腹よりも狭いです(笑)この日はいいお天気で、かなりの明暗差がありましたが、明るい色の建物がお互いにレフ板のように照らしあい、素敵な色彩になりました。リスボンの迷宮のもっとも深い場所でみつけた、宝物のような風景。
リスボン名物のケーブルカー「ビッカ線」。とってもかわいい車両ですが、落書きだらけなのがちょっと残念。でもそこでサングラスをかけたお姉さんを入れることで、全体をファンキーな雰囲気にまとめました。まるで映画のワンシーンのような雰囲気が、とても気に入っています。
夕方になるとリスボン大聖堂に夕陽が当たります。そのハイライトをバックに、トラムがシルエットに浮かび上がるように撮影することに。でもトラムの道は車やバイクがひっきりなしに走るため、なかなかスッキリと電車だけを撮影できません。来る列車すべて車両全体が見えるシーンではガッツリ車が被ったので、イチかバチかで目の前を通過した直後に大胆な構図でパチリ。タダ乗りのおじさんまできっちりシルエットになってます(笑)
沿線にかわいいピンク色のアパートがあったので、ここを背景に。縦か横か構図に悩んだけど、交通量の多さから安全策をとって縦位置に。手前に車がかぶらないタイミングで列車が来る直前に、ちょっとエスニックな雰囲気の女性が通ってくれたので、人物と列車がバランスいい配置になりました。スナップって楽しい!
お寿司屋さんの前でぐて〜っと寝てるワンちゃんを見つけたのでスナップ。飼い主さんはあえて切って、手前に線路と道路を大胆に配置しました。まるでワンちゃんが「俺、お寿司好きじゃないんだよなぁ……」って拗ねてるみたいなシーンになりました。ワンちゃんの表情を強調するために、色情報をなくすモノクロにしています。
なんか昔の8ミリ映画の一コマのようなカット。ここも車が通らないことがほとんどない場所なので、背景に新しいクルマがほとんど写らなかったのは幸運でした。トラムがいませんが、こういう写真はむしろトラムがいないほうが、人物が目立っていいと思います。列車が来ないときも、常に臨戦態勢でいることが大切なのです。こちらもモノクロで雰囲気を出してみました。
最後はリスボン市電の夜景。行き交うトラムの背後には、美しい夕焼けが。
あとがき
今回はスペインとポルトガルを舞台にライカM-Pで撮影したスナップ写真をたくさん見てもらいました。まぁスナップ写真って、こんなふうにくどくど解説するものではなく、写真を見て感じてほしいところなのですが、今回はあえて解説していますので、参考にしていただければと思います。
ゆる鉄画廊写真展「旅するライカ」では、解説に出てこなかった国内外の写真も含め、計38作品を展示中。まるでその場の空気まで写したかのような、優しい展示になりました。ぜひ画廊にてご覧頂ければ幸いです。
写真展概要
展示名:ゆる鉄画廊写真展「旅するライカ」
会場:ゆる鉄画廊(地図はこちら)
作品点数:38点
展示期間:2019年10月3日〜11月12日(火)
※最終日の展示は午後2時まで。
営業日:
平日…午後1時〜午後7時
土日祝…午前10時〜午後6時
定休日…毎週水曜(祝祭日は営業)