赤城耕一の「アカギカメラ」

第96回:本格的に「LUMIX G9PROII」をお迎えして、フォーサーズレンズ資産の活用を考える

本日6月20日(木)はパナソニックのLUMIX S9の発売日でございます。入手された方おめでとうございます。発売前にはいろいろとありましたが、HPも様変わりしまして、結果的には良い方向に向いていると考えております。カメラ・レンズを作るすべてのメーカーは、みな元気でなければいけません。

筆者も軽薄短小じゃない、小型軽量カメラは大好きですから、もちろんS9お迎えする予定だったのです。パナソニックのエラい人にも言われてしまいました。「アカギさんのために作りました」と言われました。ええ、それで欲しくなる単純な筆者であります。わかりやすいですね。

ところがですね、急遽お迎えするカメラを変更することにしました。

そのカメラとは、LUMIX G9PROIIでございます。本連載でもすでに取り上げておりますが、正式にお迎えすることにしたので、再びご報告したくなりました。

理由は嬉しいから、じゃない、単純ですよ、どうも最近マイクロフォーサーズシステム方面にいまひとつ元気がないような気がしているからであります。そうでもないすか? どうなんだろう。

昨今では隣国では35mmフルサイズフォーマットでなければカメラにあらず、くらいの勢いであると、先日、某カメラメーカーの営業の方にお聞きしたのですが、おそらく彼の国の業界には権威のある、声の大きな方がいらっしゃるのではないかと推測しております。いや、あくまでも推測ですから本気にはしないでくださいでも、この状況はあまり良くないので、応援するかなという意味も込めています。個人的には仕事にもマイクロフォーサーズ機は使用しておりますし、さほど危機だと感じてはいないのですが、新製品などの登場ペースをみてみると、以前ほどの勢いは感じないですね。

G9PROII を迎えるにあたり、筆者が懸念したのが、そのボディサイズであります。LUMIX S5IIと筐体が同じなのですから、マイクロフォーサーズ機として特別に小型軽量というわけではありません。気にはならないのですが。

愛機のLUMIX S5IIXと並べてみます。筐体は同じ大きさです。さほど不満に感じないのは、少々大きめで、重量はあっても作り込みがしっかりしているからでしょうか。
Lマウント径に合わせた前面のデザインですが、マイクロフォーサーズマウントでも、うまくまとめてきています。センサーがすごく小さいという感じがさほどしないのは評価高いですね。優れたデザイナーさんがいらっしゃるからでしょう。

1番まずいのは筆者のような注意力散漫な人間だと、仕事の時に両者を取り違えて出かけてしまうのではないかという心配もあります。Lマウントと、マイクロフォーサーズマウントのレンズの互換性はアダプターなどでも考えられていないわけなので、ふと想像しただけで血の気が引きます。

もう昔のように撮影前に機材を準備してくれたり、撮影をサポートしてもらうアシスタントさんもおりませんし。甘えることはできない、寂しいお年寄りカメラマンになりました。

G9PROIIをお迎えした理由、その2。これは前にも書いたかもしれませんが、前機種のG9 PROではシャッターボタンのフィーリングがいま1つで、暴発するように勝手に撮影をしてしまうようことがあることです。G9PROIIでは、半押しの感覚がとても良くて、研究改良されていると感じました。

感覚や感触って、個人によって異なるのでしょうけどG9PROII はお気に入りの感触でした。メカシャッターのパタパタする音も優しくていい感じ筆者好みです。

筆者はスポーツなどの動体を撮影することは稀ですが、それでもプロスポーツ選手を撮影したりすることもたまにあるので、いざという時には最低限でも体裁が整ったスポーツ写真が必要になることもあります。だから像面位相差AFとなったG9PROIIの安心感は大きいですね。前機種のG9 PROは今後は動画撮影の方に回っていただこうかと考えています。

その3ですが、これがフォーサーズマウントレンズの資産を活かすことなのです。とくに気にしてたのはお気に入りのライカブランドのフォーサーズマウントレンズをうまく活かせるかどうかでした。

ライカ・Dズミルックス25mm F1.4 ASPH.
マイクロフォーサーズマウントでも同じスペックのレンズがありますが、本レンズはフォーサーズマウント版です。

鏡筒が太く、迫力あります。G9PROIIは負けていないことに注目せねばなりません。デザイン的な相性は悪くありません。直進ヘリコイドで、大きめな動作音をしますが開放から実用になる大口径のF1.4であって、筆者がデジタル専用設計の大口径レンズってすげーと思った最初のレンズでもあります。

もっともマイクロフォーサーズマウントのレンズのほうがよく写るのを知っていますが、こちらのほうが少し軟らかい雰囲気があるのです。ボケ味はそんなにステキじゃないけど。
ナマズのオブジェかなあ。周囲の草むらに取り囲まれるように置いてあり。曇り空で質感描写がいい感じです。
パナソニック LUMIX G9PROII/ライカ・Dズミルックス25mm F1.4 ASPH./25mm(50mm相当)/絞り優先AE(1/1,000秒、F1.8、−1.0EV)/ISO 100
捨てられたか、放置された空き缶なんだけど、英文のデザインに惹かれました単純です。F2くらいの絞りですが被写界深度深いですね。
パナソニック LUMIX G9PROII/ライカ・Dズミルックス25mm F1.4 ASPH./25mm(50mm相当)/絞り優先AE(1/8,000秒、F2.2、−0.7EV)/ISO 100

当初はこれらのレンズもOM システム(オリンパス)のマイクロフォーサーズ機を使えば大丈夫だろうと考えていたのですが、うちにあるパナソニックのフォーサーズ用のレンズのいくつかをアダプターでOM-1やE-M1 Mark IIIなどに装着してみると、個体によるのですが、一応は動作するだけで、極端にAFが遅くなったり、動作が不安定だったり、AF測距途中で諦めて停止してしまうレンズすらありました。これはどうなんですか? 相性というやつなのでしょうか。

またその逆の現象も体験しております。OMシステムのフォーサーズレンズをアダプターを介して、LUMIXに装着しても怪しい挙動をすることがあります。

さらにシグマから発売していた、フォーサーズマウントのレンズの中には、OMは大丈夫だけど、パナはダメとか、これもまたその逆があったりするので厄介です。

シグマ30mm F1.4 DC HSM
かなり早い段階でデジタル専用設計レンズとして登場し、性能面でも味わいのあるレンズとして知られていました、そのフォーサーズマウント版です。鏡筒は太くモコモコしております。G9PROIIとの相性はデザイン面ではそんなに悪くないのですが動作はあまり褒められたものではありません。なんせ絶望的にAF速度が遅いのです。なぜかOM-1との相性はとてもよくて、ストレスがほとんどありません。だからこれからはOM専用レンズとして使いますね、すみません。
大きなデフォーカス状態から勝手に最良のところにフォーカスを決めてくれました大したものです。AFの速度は絶望的なのでオススメはしませんが、質感の描写も悪くない。
パナソニック LUMIX G9PROII/シグマ30mm F1.4 DC HSM/30mm(60mm相当)/絞り優先AE(1/160秒、F4.5、−1.0EV)/ISO 800
中央位置では透明感のある描写。周辺域はぐずぐずしたボケ描写で乱れるが、中央はいいですね、驚きます。本レンズ特有の個性なのでしょうか。
パナソニック LUMIX G9PROII/シグマ30mm F1.4 DC HSM/30mm(60mm相当)/絞り優先AE(1/6,400秒、F2.0、−0.7EV)/ISO 400

カメラの進化により像面位相差AFやコントラストAFなどAF方式が入り乱れるということもあるのでしょうけど、こちらは、フォーサーズ、マイクロフォーサーズはメーカーが異なれど、アライアンスによって完全なる互換性があると信じて使用できるのではと考えていましたから、この事態は正直残念であります。とはいえ、すでにディスコンになったシステムでもあり、さすがに今からファームアップして、直してくれとは言いませんが、そういう事実があることは、ここで申し上げておかねばなりません。

G9PROIIならば、とりあえずパナソニックブランドで販売したフォーサーズマウントレンズの動作のテストはしているだろうからという目論見もありまして、導入を考えたのであります。

結論から言いますと、筆者の所有するパナソニックフォーサーズマウントのレンズはG9PROIIで、問題なく動作しました。これでパナソニックのフォーサーズレンズに対する挙動不審は解消されたのであります。

何? 素直にマイクロフォーサーズマウントのレンズを使えば問題なかろうですよね。

それを言っては、ここで話はおしまいなんですが、ここで毎度の愚痴を申し上げれば、フォーサーズマウントのレンズは処分しても二束三文であります。

とにかく、ミラーレス時代に突入してからは一眼レフ用のレンズは不人気です。当然だとは思いますけど。ならば資産として、レンズを活用しようとするのは貧しい私だけの考え方でありましょうか。

そういえばうちにあるパナソニックのフォーサーズもマイクロフォーサーズマウントレンズも旧型が多くて、みていただくのは恥ずかしいのですが、デザイン的にはG9PROIIとの相性がよいのです。

とくに鏡筒の太いフォーサーズ用レンズは、まるでG9PROIIに用意されたのではないかと見紛うくらいなのです。つまりG9PROIIの筐体とフォーサーズレンズはデザイン的なマッチングがとても良かったというわけであります。

ライカ バリオエルマー14-50mm F3.8-5.6 ASPH.
鏡筒は太いんですが、見た目よりも軽いですね。G9PROII とよく似合う標準ズームレンズであります。この組み合わせではAFは速くはありません。合焦位置を一度通り過ぎて、戻すという、コントラストAF的な挙動をします。でも実用上は十分ですね。被写体認識や顔認識もきっちり機能します。このレンズ、OM-1との相性はいまひとつだったんですよね。今回救われた感じがします。処分しなくて良かったです。
街角。カメラを頭上に上げて撮影したスナップです。まったくの勘というか偶然だけど、フレームに収まりました。こういうのはスポーツ撮影みたいで楽しいですね。
パナソニック LUMIX G9PROII/ライカ バリオエルマー14-50mm F3.8-5.6 ASPH./16mm(32mm相当)/絞り優先AE(1/2,500秒、F9.0、−0.7EV)/ISO 400
昼下がりの保線区。電車の乗り換え駅なのでホームからその都度撮影しているのですが、いつも異なる風景が見られます。ズームなので選択域が増えますね。
パナソニック LUMIX G9PROII/ライカ バリオエルマー14-50mm F3.8-5.6 ASPH./30mm(60mm相当)/絞り優先AE(1/2,000秒、F8.0、−0.7EV)/ISO 400

マウントアダプターDMW-MA1(またはOMシステムのMMF-3)の厚みが薄いことも、デザイン的に優位に働いているというわけであります。カメラは小型軽量であることと、デザインが美しいことを優先する筆者としても、バランス、デザインのよさに、あらためて唸ったりしております。プライベートな撮影には積極的に持ち出し、周りに見せびらかしてやろうなどと考えていますが、あまり効果はないかもしれませんね、威厳には欠けますし。

今回はパンケーキタイプのLUMIX G 20mm F1.7も使用してみました。はい、筆者の所持しているものですので旧型のモデルでありますが、レンズ構成自体はII型と変わらないようです。

LUMIX G 20mm F1.7
今回使用した唯一のマイクロフォーサーズマウントのレンズであります。取り上げた理由ですか? 筆者は素直じゃないので諦めてください。なんか形と色味が気に入ったというのが理由でデザイン的にもII型よりも綺麗なんじゃないかと(笑)。そして、写りもいいという。35mm換算画角で40mmレンズ相当ですから、画角的にもたいへん好みで、実焦点距離での被写界深度の深さは、スナップショットには最高に向いております。これで距離指標があればなあといつも思うのですが。
窓からの逆光で花瓶の模様が浮き立ったので速攻で撮影しました。レンズ性能に不安なしです。
パナソニック LUMIX G9PROII/LUMIX G 20mm F1.7/20mm(40mm相当)/絞り優先AE(1/640秒、F4.5、±0.0EV)/ISO 100
新宿の朝。断っておきますが、朝帰りじゃないですよ、お仕事に行く途中に撮影しています。小さなレンズだと筐体が多少大きくても気にならないということで、本業機材とは別に持ち出しました。夏の朝の光は美しくていいですね。画面の均質性の高い描写も心地よく感じます。
パナソニック LUMIX G9PROII/LUMIX G 20mm F1.7/20mm(40mm相当)/絞り優先AE(1/500秒、F8.0、−0.7EV)/ISO 400

G9PROIIに装着すると、レンズキャップみたいで、相性的にもなかなかよい感じですし、小さいながらも、すばらしくよく写ることは、すでに確認済みであります。

この数年で、単独で撮影に出ることが多くなり、公共交通機関を使うことも多くなりました。このため機材を小さくまとめたい筆者としては、マイクロフォーサーズはとても重宝するシステムとなりました。

S9も35mmフルサイズのカメラとしては小さく魅力的楽しめそうですが、筆者としてはフラッシュ系のアクセサリーを使うことがまったく考慮されていないことで、お迎えする順位が下がってしまったというこもともあります。

デジタルカメラはどのようなビギナー機であっても、仕事に使用してみないと気が済まないわけです。と、なるとフラッシュの使用が考慮されている機種を選択するのがマストになります。LUMIX G9PROIIは小型軽量ではありませんが、仕事でも十分に使えるわけですし、マイクロフォーサーズ新型機がずっと欲しかった筆者には、導入は正解だったと考えております。

風でガンガン揺れていたランプが目に止まり、ここぞという時に連写して仕留めました。だからどうしたという作例ですが、青空バックの錆は必ず押さえなければなりません。
パナソニック LUMIX G9PROII/ライカ・Dズミルックス25mm F1.4 ASPH./25mm(50mm相当)/絞り優先AE(1/2,000秒、F2.5、−0.7EV)/ISO 100
すばしこいネコと思ったら、これもオブジェですね。ネコ全体にフォーカスが来るように絞りを決めてみました。
パナソニック LUMIX G9PROII/ライカ・Dズミルックス25mm F1.4 ASPH./25mm(50mm相当)/絞り優先AE(1/640秒、F7.1、−0.7EV)/ISO 100
カタチのきれいな鉄塔に出会うと、脊髄反射的に、つい撮影しちゃいます。都市部では民家とも近いので、画になります。うっかり必要以上に絞り込んでしまったのですが、なかなかの描写です。
パナソニック LUMIX G9PROII/ライカ・Dズミルックス25mm F1.4 ASPH./25mm(50mm相当)/絞り優先AE(1/640秒、F14、−0.7EV)/ISO 200
描写は悪くないのですが、LUMIX G9PROIIとの相性が悪いんですよねえ。ジコジコと音を立てながらなんとかフォーカスをあわせに行きます。コントラストAF特有の合焦点を通り過ぎて戻るというサーチする感じがするのはレンズの相性でしょうか。
パナソニック LUMIX G9PROII/シグマ30mm F1.4 DC HSM/30mm(60mm相当)/絞り優先AE(1/800秒、F1.8、−1.0EV)/ISO 400
最至近距離での撮影ですが性能が乱れないですね。カタチはパンケーキタイプの標準域のレンズなんですが、ボケも綺麗ですし間違いのない描写性です。標準ズームレンズをお持ちの方も用意しておいた方がよいレンズです。
パナソニック LUMIX G9PROII/LUMIX G 20mm F1.7/20mm(40mm相当)/絞り優先AE(1/1,600秒、F2.0、−0.7EV)/ISO 400
赤城耕一

1961年東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒。一般雑誌や広告、PR誌の撮影をするかたわら、ライターとしてデジカメ Watchをはじめとする各種カメラ雑誌へ、メカニズムの論評、写真評、書評を寄稿している。またワークショップ講師、芸術系大学、専門学校などの講師を務める。日本作例写真家協会(JSPA)会長。著書に「アカギカメラ—偏愛だって、いいじゃない。」(インプレス)「フィルムカメラ放蕩記」(ホビージャパン)「赤城写真機診療所 MarkII」(玄光社)など多数。