熱田護の「500GP-Plus」

第22回:チャンピオンおめでとう! マックス・フェルスタッペン選手(その1)

EOS-1D X EF400mm F2.8L IS II USM(F4・1/125秒)ISO 400

新年あけまして、おめでとうございます!

みなさん、おせちとお雑煮を食べてますか? 食べすぎてませんか? いいじゃないですか、お正月くらいは! 今年もよろしくお願いいたします!

さて、昨年のF1は劇的なレース展開でしたね。という簡単な言葉では言い表せなぐらいに、もぉ〜〜〜〜感動のしっぱなしの最終戦、そして最高の2021年シーズンでした。今回の500GP-Plusは、2021年チャンピオンのマックス・フェルスタッペン選手がデビューからチャンピオンの頂に辿り着くまでを振り返りながら、紹介してみようと思っています。

実は選び始めたら、写真点数がかなり多くなってしまったので、編集長に無理を言って、2回に分けて紹介することになりました。

上の写真は、F1公式セッションデビューとなった、2014年の日本グランプリです。現地に見に行った人は、記憶している人も多いのではないでしょうか? 横顔が若いですね。それもそのはず、なんと当時は16歳でした!

EOS-1D X EF50mm F1.2L USM(F1.4・1/3,200秒)ISO 100

レギュラードライバーとしてのデビューは、翌年2015年からのトロロッソでした。開幕戦、オーストラリアの写真、この時点で17歳、史上最年少記録です。

この後にレギュレーションが変更になり、18歳以上じゃないとスーパーライセンスの取得が出来なくなってしまったので、この史上最年少記録はフェルスタッペン選手の記録としてずっと残っていくんでしょうね。

EOS-1D X EF11-24mm F4L USM(F4・1/1,000秒)ISO 400

モナコGPでのカット。確か、レッドブルのイベントをやっていてその待ち時間にホームストレートで撮った写真。チームメイトは、今はフェラーリドライバーのカルロス・サインツ選手です。

EOS-1D X EF400mm F2.8L IS II USM(F2.8・1/800秒)ISO 100

ご存知の方も多いと思いますが、彼のお父さんも有名なF1ドライバーだったんです。ヨス・フェルスタッペンさん。結構な頻度で、マックス選手の応援でサーキットに姿を見せています。

まあ、僕の個人的な見解ですけど、現役の時は、それほど速い選手という感じではありませんでした。2世ドライバーで、お父さんの才能に対して圧倒的に上をいっているのは、マックス選手が筆頭ではないでしょうか。

EOS-1D X EF400mm F2.8L IS II USM(F8・1/500秒)ISO 100

ベルギーGP。デビューして間もないのに、マシンセットアップに不満があるのか……、そんないらだちが顔の表情に出ています。もちろん、周囲もその才能に気付いている関係者は多く、期待も徐々にアップしていきます。

EOS-1D X EF400mm F2.8L IS II USM+EF2×II(F6.3・1/500秒)ISO 800

2015デビューシーズンは、全19戦中10戦でポイント獲得、49点。チームメイトのサインツ選手は18点。成績を見るだけでも圧倒的です。

EOS-1D X Mark II EF400mm F2.8L IS II USM(F2.8・1/2,000秒)ISO 500

2016年、開幕から第4戦のロシアGPまでトロロッソから参戦していましたが、第5戦のスペインGPからレッドブルに移籍、その移籍レースでなんと初優勝してしまいます。

移籍に関しては、クビアト選手がベッテル選手にぶつかってしまったためと言われていますが、フェルスタッペン選手をレッドブルに乗せたい首脳陣の気持ちがあって、そのきっかけがロシアGPでのクビアト選手の事件が使われてしまったと見るのが一般的だと思います。

スペインでの優勝は、才能もさることながら運も持ち合わせているという、トップドライバーへの資質とはこういうものだと示した感じがしました。

EOS-1D X EF70-200mm F2.8L IS II USM(F25・1/15秒)ISO 50

この2016年は、全21レースでメルセデスが19勝で圧勝。レッドブルは、フェルスタッペン選手とリカルド選手が1勝ずつの2勝に終わりました。メルセデス一強時代は2014年から始まり、結局コンストラクターズタイトルは2021年まで8回連続で獲得することになるのです。

そんな強豪チームと真正面から争った2021年のレッドブル・ホンダは、膠着状態であったF1の世界、最強軍団メルセデスに風穴を開けたことになるのです。やっぱり、単独チームが勝ち続けるより複数チームが絡んだタイトル争いの方が見ている方は面白いですからね。

EOS-1D X EF35mm F1.4L II USM(F1.4・1/8,000秒)ISO 100

F1の世界に存在するドライバーは、もちろん並外れた才能の持ち主ですが、その中でもチャンピオンになるようなドライバーはさらにプラスした要素が必要です、それはチーム内で自分のポジションを確立すること、信用信頼を勝ち取るということですね。

EOS-1D X EF400mm F2.8L IS II USM+EF2× III(F13・1/500秒)ISO 500

この写真はブラジルグランプリ、インテルラゴス・サーキットの3コーナーの立ち上がりのフェルスタッペン選手。

レース中に降った雨。ここのフェルスタッペン選手のライン取りが素晴らしくカッコ良かった。アウト側の縁石まで目一杯アウトに膨らみながら、滑りやすい縁石にタイヤを乗せながら加速していくラインを取っているのはフェルスタッペン選手だけでした。

EOS-1D X EF35mm F1.4L II USM(F1.8・1/3,200秒)ISO 100

参戦2年目の2017年シーズンが始まります。一気に飛躍の年になるかと思われたのですが、ルノーPUの信頼性の問題が頻発することになるとは、まだこの時は思っていなかったでしょうね。

EOS-1D X EF400mm F2.8L IS II USM(F2.8・1/320秒)ISO 500

珍しく色の薄いバイザーを付けています。ドライバーの目を撮りたいわけですから、薄い色のバイザーは助かります!

EOS-1D X EF400mm F2.8L IS II USM(F6.3・1/1,000秒)ISO 200

アゼルバイジャンのサーキットは公道利用のコース。世界には数多くのサーキットがありますが、すれ違いが撮れるのはここだけかも?

EOS-1D X EF400mm F2.8L IS II USM(F11・1/1,250秒)ISO 200

アメリカGP、サーキット・オブ・ジ・アメリカズ。空が抜けるここは好きな場所なんですが、2021年に行った時には、上にお客さん移動用の橋が出来ていて、空を多く入れた写真が撮れなくなってしまっていました。

同じサーキットでも、改修作業があれば、撮影できる条件は変化します。今年撮れても来年は撮れなくなるということも、結構な頻度であります。ですから、好きな場所があれば、納得いくまで粘ることが大事なことかもしれませんね。

EOS-1D X EF400mm F2.8L IS II USM+EF2× III(F7.1・1/640秒)ISO 200

ブラジルGPの最終コーナーの入り口。
ここから上りの長い左コーナーの始まり、続くストレートスピードにも影響するのでドライバーはコンマ1秒でも早くアクセルを全開にしたいので、ここの縁石でオーバーステアになることも多いのでそれを狙って毎年行きます。

EOS-1D X Mark II EF400mm F2.8L IS II USM+EF1.4× III(F4.5・1/800秒)ISO 500

火花は、我々カメラマンにとって絵を作るのに大きな助けになってくれます。車体の底に埋め込まれたチタン合金が路面と接地して火花が出ます。場所は、高速コーナーの入り口か、ストレート上のスピードが高いところなどです。

EOS-1D X Mark II EF400mm F2.8L IS II USM(F9・1/640秒)ISO 400

ドライバーにとって、チームメイトというのは協力してより良いマシンセットアップを見つける友人でもあるし、絶対に負けてはならないライバルでもあります。

2018年は、3年目となるリカルド選手がチームメイト。この頃になると、レッドブルチームがフェルスタッペン選手をナンバー1ドライバーとして見るようになっていたと思います。この年の獲得ポイントは、フェルスタッペン選手が249点、リカルド選手が170点で圧勝しました。

EOS-1D X Mark II EF11-24mm F4L USM(F6.3・1/6,400秒)ISO 1000

通算4度目の優勝を、レッドブルのお膝元のレッドブルリンクで獲得した時の写真。パルクフェルメで大勢のメカニックから祝福をもらいます。

このような雰囲気の写真を撮りたくて、超広角レンズを付けて待ち構えるのですが、ドライバーがここにきてくれるとは限りませんし、その時に僕のポジションが最適かはやってみるまでわかりません、でも、トライしない限りこうは撮れません。

ですので、多くの撮り損ないや失敗の数々の反省、傾向と対策、あとは運、突っ込んでいく脚力でどうにかなった1枚です。何気なくそこにいたから撮れた写真というのは基本的にはありません。

写真は、そのカメラマンが積み重ねた経験でやっと撮れるものです、もちろん、各サーキットに着くまでの経費と時間を費やしてもいます。

ネット上にたくさんの写真が溢れていますが、その1枚1枚に撮影したカメラマンの努力があるのです。だからこそ価値のあるものだと思っていただけると嬉しいです。

EOS-1D X Mark II EF85mm F1.4L IS USM(F1.4・1/2,000秒)ISO 100

この写真はエナジーステーションに飲み物をもらいに行った時に、たまたまフェルスタッペン選手がパラアスリートの人と談笑していて、その様子をガラス越しに撮りました。

EOS-1D X Mark II EF35mm F1.4L II USM(F1.4・1/1,600秒)ISO 100

グリッド上で国歌演奏が行われる少し前、遅刻しそうで走るドライバー2人の絵です。

今回はここまで。次回はフェルスタッペン選手の2021年シーズン優勝までを振り返ります。

熱田護

(あつた まもる)1963年、三重県鈴鹿市生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。85年ヴェガ インターナショナルに入社。坪内隆直氏に師事し、2輪世界GPを転戦。92年よりフリーランスとしてF1をはじめとするモータースポーツや市販車の撮影を行う。 広告のほか、雑誌「カーグラフィック」(カーグラフィック社)、「Number」(文藝春秋)、「デジタルカメラマガジン」(インプレス)などに作品を発表している。2019年にF1取材500戦をまとめた写真集『500GP』(インプレス)を発行。日本レース写真家協会(JRPA)会員、日本スポーツ写真協会(JSPA)会員。