熱田護の「500GP-Plus」

第23回:チャンピオンおめでとう! マックス・フェルスタッペン選手(その2)

EOS-1D X Mark II EF400mm F2.8L IS II USM+EF1.4× III(F9・1/640秒)ISO 400

前回に引き続き、フェルスタッペン選手特集です。

2018年のシンガポールGP。シンガポールは、日本からも近いし、安全だし、食事は美味しいし、人気のグランプリなのですが、コロナの影響で日本と同様に2年間開催することができていません。

ここのサーキットも公道を使ったコースですので、金網が張り巡らされています。この写真も金網越しなのですが、夜間なので金網の影響をあまり受けずに撮れた写真です。今年は開催できるといいですね、もちろん日本GPも!

EOS-1D X Mark II EF50mm F1.2L USM(F13・1/6秒)ISO 50

ロシアGPのホームストレート。上の写真と同様に、金網をスローシャッターによる流し撮りで見えなくしています。

みなさんが観客席から写真を撮る場合も同じです。金網が気になる場合は、条件が整えばスローシャッターの流し撮りで逃げるのも1つの手段です。

EOS-1D X Mark II EF400mm F2.8L IS II USM+EF1.4× III(F7.1・1/400秒)ISO 400

ビルの屋上から撮影しています。レンズを向ける角度がかなり下になるので一脚を使うことができません。手持ちで撮ります。

写真撮影は、筋肉隆々である必要はないと思いますが、楽な体制で撮影出来るとは限りません。その場合は、ある程度支えられる筋肉がいりますし、重い機材をカメラマンジャケットに入れて移動する場合もあるので、基礎体力は必要だと思います。

EOS-1D X Mark II EF70-200mm F2.8L IS II USM(F8・1/320秒)ISO 500

2018年シーズンは2勝を勝ち取りました。これは2勝目のメキシコグランプリでガッツポーズをする姿。パルクフェルメで喜びの場面をどう撮るかというのも毎回悩みます。

EOS-1D X Mark II EF400mm F2.8L IS II USM+EF2× III(F13・1/60秒)ISO 100

アブダビGP、夕陽を浴びながらの走行シーン。ここは大好きなポイントです。毎年、欠かさず狙っていましたし、毎回、太陽の光の強さが変わりますからそれなりに取れ高(写真だと撮れ高)が違いました。

ところが、昨年の最終戦に向けてコースが改修されて、コーナーのRが緩くなりレイアウトもかなり違っていて、沈む太陽からの光の角度と走行ラインが変わってしまい。この写真が撮れなくなってしまいました……。とても残念です……。

EOS-1D X Mark II EF50mm F1.2L USM(F1.2・1/8,000秒)ISO 3200

ここからは2019年シーズン。いよいよ、この年からホンダPUがレッドブルにも搭載されました。ということは、フェルスタッペン選手に我らが日本のホンダPUを使ってもらえるということを意味します。

レースというのは、天辺を目指すスポーツ。条件として、勝てるドライバーがいて、勝てる車体、勝てるPU、勝てるチームが揃って初めてチャンピオンという頂が向こうの方に見えてくるものです。

僕もワクワクしていました!

EOS-1D X Mark II EF400mm F2.8L IS III USM(F9・1/640秒)ISO 400

開幕戦はオーストラリア、アルバート・パーク・サーキット。3位入賞です! 嬉しかったなあ! この年から、ヘルメットの基本カラーが白になりましたね。

EOS-1D X Mark II EF400mm F2.8L IS III USM(F4・1/1,000秒)ISO 2000

モナコGPのトンネル。NAエンジンのマシンが走っていた頃のF1は、耳栓なしではとてもいられなかったものです。それが今では耳栓が必要ないくらいの音量になっています。

しかし、ガードレール脇で感じる風圧と、飛んでくるタイヤカスの痛さは変わらないですね。

EOS-1D X Mark II EF11-24mm F4L USM(F5.6・1/500秒)ISO 200

モナコのモンテカルロ市街地コース。ここは、どこを見ても絵になる。毎年、何回来ても、走行時間があっという間に終わってしまいます。個人的には、年に3回くらいモナコで開催してほしい(笑)。

EOS-1D X Mark II EF35mm F1.4L II USM(F1.4・1/4,000秒)ISO 100

マシンへの乗り降りのシーンは、とてもフォトジェニックです。左右のどちら側から乗って、降りる時はどちら側からというのを決めている選手が多いようです。

ちなみに、フェルスタッペン選手は、乗り降り両方ともに、進行方向左側からです。

EOS-1D X Mark II EF35mm F1.4L II USM(F7.1・1/5,000秒)ISO 640

空を多めに入れたカット。雲の表情がとてもドラマチックでした。

EOS-1D X Mark II EF400mm F2.8L IS III USM(F2.8・1/5,000秒)ISO 1000

ホンダ第4期の初優勝は、オーストリアGPでした。その記念すべき日の表彰台で、ホンダマークを指差したシーンはとても印象的。

EOS-1D X Mark II EF400mm F2.8L IS III USM+EF1.4× III(F8・1/800秒)ISO 500

初のポールポジションはハンガリーGPでした! ファーストラップを刻むことに期待が高まります。

EOS-1D X Mark II EF400mm F2.8L IS III USM(F3.5・1/2,500秒)ISO 500

ハンガリーGPで勝ったのはハミルトン選手、2位にフェルスタッペン選手。お互いの健闘を称え合う。今は、こんな状況にはならないでしょうね……。

EOS-1D X Mark II EF70-200mm F2.8L IS III USM(F4・1/2,000秒)ISO 500

ブラジルGP、レース終盤セーフティカー後のホンダ1-2-3。2位を走るアルボン選手とハミルトン選手が接触して2位がガスリー選手となり、最終ラップの上りでハミルトン選手とストレートで並びながらゴール、ガスリー選手が2位でした。劇的なレース展開になりました。

EOS-1D X Mark II EF35mm F1.4L II USM(F1.4・1/2,000秒)ISO 500

フェルスタッペン選手の8勝目はブラジルGP。選手だけでなく現場スタッフからも自信が感じられますね。

EOS-1D X Mark II EF400mm F2.8L IS III USM(F2.8・1/500秒)ISO 800

2020年のバーレーンGP。この年は、コロナの影響で取材許可が出なくて、僕はエミリア・ロマーニャGP、バーレーンGP、サヒールGP、アブダビGPの4戦のみの撮影となりました。

日本にずっといる生活は、時差ボケもなく、飛行機に乗らなくてもいいし、美味しいご飯はあるし、いいこともありましたが、テレビでF1を見ていると“やっぱり現場で撮りたい”と思うんだなあと知りました。

EOS-1D X Mark II EF400mm F2.8L IS III USM(F2.8・1/640秒)ISO 2500

2020年のサヒールGP、このGPはバーレーンで2連戦開催となりました。コロナ対策で、チームメンバーとメディアのバブルがしっかりと分かれていて、パドックやピットロード、グリッドでの撮影は禁止。ですから、選手の顔写真を撮れる機会がほとんどない状況でしたが、それを不満に思うことよりも、現地で撮影できることが嬉しかったですね。

国によって、対応が違って、この年の旅の準備は翌年に比べて厳しいものがありました。今となってはいい思い出です。

EOS R3 EF11-24mm F4L USM(F4・1/1,600秒)ISO 5000

大幅に端折って、2021年の最終戦。劇的なレース展開で見事チャンピオンに輝きました!

去年は、角田選手のデビュー、そしてレッドブル・ホンダとメルセデスの熾烈なチャンピオン争いで、1年を通じて本当に楽しく撮影しました。

全戦取材した日本人は、僕とライターの尾張さんだけでした。やはり日本から出て旅をするリスクを取るというのは、普通に考えればしないことだと思います。

僕も実際にやってみて、ものすごく大変なことが起こりましたし、心折れそうになったことも何度もありました。国から国への移動はストレスが積み重なりました。

でも、サーキットに入って写真を撮ることは、とても楽しく、レース展開も毎戦ハラハラドキドキさせてもらいました。同点というミラクルな状況で迎えた最終戦のアブダビGPは、なんと最終周で逆転の優勝という奇跡。

シーズンを通して、そして最終戦での決着という、本当にそんな瞬間に立ち会えた幸せを心から感じたし、ホンダの皆さんの涙に、こちらも当然泣けました。最終年にチャンピオンを獲得したホンダのみなさんの努力に心から「ありがとう!」と伝えたいです。

日本のPUが世界一になったのです! もう最高ですよ!

実はそんなホンダの第4期をまとめた写真集を制作しています。感動の2021年シーズンを、僕のベストショットで振り返ってみたいと思います。タイトルは「Champion」、257×257mmの少し大型サイズの豪華な写真集です。3月3日に発売予定ですので、ぜひ予約をして待っていてください。

熱田護

(あつた まもる)1963年、三重県鈴鹿市生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。85年ヴェガ インターナショナルに入社。坪内隆直氏に師事し、2輪世界GPを転戦。92年よりフリーランスとしてF1をはじめとするモータースポーツや市販車の撮影を行う。 広告のほか、雑誌「カーグラフィック」(カーグラフィック社)、「Number」(文藝春秋)、「デジタルカメラマガジン」(インプレス)などに作品を発表している。2019年にF1取材500戦をまとめた写真集『500GP』(インプレス)を発行。日本レース写真家協会(JRPA)会員、日本スポーツ写真協会(JSPA)会員。