コラム

写真の楽しさ・奥深さを体験できる 富士フイルム「アカデミーX」とは?

ペット撮影講座・猫カフェ撮影講座を体験!

多くのカメラメーカーは、自社製品のユーザー向けに、カメラの使い方や写真の撮り方についての教室を運営している。富士フイルムが展開している写真講座・セミナー「アカデミーX」もその1つだ。

アカデミーXは、2018年6月よりスタートした新しいセミナー。2018年の4月までは「Xセミナーズ」という名前で開講していたが、東京・丸の内に設置したショールーム「富士フイルムイメージングプラザ」のオープンに伴い、セミナーの名称や内容をリニューアルした。

東京・丸の内にオープンした富士フイルムイメージングプラザがこちら。

Webサイトで講座の一覧を見ると、カメラの使い方からジャンル別の「撮り方教室」、RAW現像講座や、変わったものでは「写真集の読み方」といった主旨のものまで様々だ。

富士フイルムイメージングプラザの主な機能はショールームやプロサポート、ギャラリーがあり、セミナールームも常設されている。アカデミーXの講座のうち、座学は主にここで行われている。

フォトスタジオも併設されており、ポートレート撮影の講座などで、すでに活用されているという。

新しいセミナーを目指して

アカデミーXは、同社が以前に開講していたXセミナーズとどう違うのだろうか。

今回はセミナーの講座内容や運営方針について、富士フイルムイメージングシステムズ株式会社の加藤玲子さんに話を聞いた。

――「アカデミーX」は、どのような位置付けのセミナーなのでしょうか。

富士フイルムイメージングシステムズの「デジタルカメラ事業部」が運営を担当しているセミナーです。「カメラ操作からプリントまで、写真を一貫して楽しんでいただく」ということを目的に運営しています。

――富士フイルムでは今までも写真教室を運営してきたと思うのですが、これまでとはまた違うのですか?

以前は弊社のカメラを買ってくださったユーザーの方に特化した、「フォローセミナー」という位置付けでした。つまり、主にカメラの使い方をお伝えする内容です。

今年6月にアカデミーXとしてリニューアルしてからは、カメラの使い方だけでなく、いぜから要望の多かった写真家を講師とした撮影テクニックを学べる講座を設けました。講座によっては講師のお勧めするレンズをその場でお貸出ししたりして好評をいただいています。

また、Xユーザーでなくても、Xシリーズに興味がある方ならどなたでも参加いただけるようなセミナー内容を心がけています。

――講座の内容については、どういった方向性なのでしょうか。

大きく分けると「Xシリーズの使い方講座」と、従来通り、写真家を講師に招いた「撮影技術の講座」の2種類になります。

Xシリーズの使い方については、「基礎講座」という形で、Tシリーズ向け、レンジファインダータイプ向けと、カメラタイプごとにそれぞれ基礎講座をご用意しています。さらにビギナー向けの講座として「入門講座」というセミナーもあります。これはシャッターの半押しとか、交換レンズの着脱といった、本当に初めてカメラに触れるところからのレクチャーになりますね。この2つは無料で受けられます。

このほか「ステップアップ講座」として、カメラをより使いこなしたい方向けの内容もご用意しています。基礎的な内容は卒業して、単に撮るというだけでなく、カメラの機能を生かした設定のより深い部分に踏み込んだ内容です。こちらは有料の講座です。

写真家を講師とした講座も、6月のオープン時から徐々に増えてきています。セミナーは東京、大阪、福岡の3拠点で展開していますが、現在は東京で20数名、大阪で7名の写真家さんが講師として活躍いただいています。

Xシリーズというと、色再現の評価が高いことから、スナップや風景写真、ポートレートというジャンルに強いイメージがありますよね。でも現行の機種ならば、ペットなどの動きものとか、高感度が必要な水族館での撮影にもかなり強くなってきました。アカデミーXで扱う写真ジャンルの幅は、もっと拡げていきたいと思っています。

講座の例

――いわゆる「写真の撮り方」だけではなくて、ちょっと変わった内容の講座もあるようですね。

そうですね、例えば塙真一さんの「写真集から読み解くスナップ術」は、写真集の見方を知ることで作家の視線を理解し、撮り方に活かすという方向性の講座で、すごく好評でした。これは全2回の講座ですが、1回目で座学、2回目で撮影実習という流れですね。9月の講座はアンリ・カルティエ・ブレッソンでしたが、11月に予定している講座ではエリオット・アーウィットをメインテーマに実施します。

講師付きの講座内容については、講師の方と「どうしたら面白くなるだろう?」と相談しながら決めているので、単に座学だけ、とか、みんなで撮影に行きましょう、というだけではない内容にできるよう、気をつけていますね。

――セミナー受講される方は、どのような方が多いのでしょうか。

元々「Xセミナーズ」という土台がありましたので、6月から7月にかけては、そこからシフトしてきたユーザーの方が多かったのですが、8月に入ってからは、富士フイルムオフィシャルのSNSや、講師の方の告知を経由して、新規にお申し込みいただく方の割合が増えてきました。店頭でも講座のご案内は出しているので、その効果もあったのかなと思います。

講座によっては、座学や実習で使う機種の貸し出しもしていますので、機種について気になっていた方が、実践的に体験されるという目的で申し込まれることもあるようですね。やはり実際に体験いただける機会は、どんどん作っていきたいと思っています。

――リニューアルして受講者の性別や年齢層に変化はありましたか?

セミナー全体でいえば「Xセミナーズ」の頃は、やはり既存のユーザーだけを対象としていたこともあり、男性が中心で、年齢層も高めでした。アカデミーXに移行してからは、30〜50代が6割くらいで、年齢層は下がってきていますね。女性の比率も4割近くにまでなりました。料理やペットの写真を撮る趣旨の講座を増やしたことも影響していると思います。

あとは、丸の内という土地柄もあり、就業後に通ってくださる方もいらっしゃいます。仕事終わりに参加いただける方向けのセミナーとしては、ちょっと遅めの19時スタート〜21時終了の講座という形で実施中です。セミナーを受けた帰りに、タッチ&トライコーナーでお試しいただいたり、あるいはちょっとカメラに触っていただいてから講座を受けていただく、みたいな連動ができたらいいなと思っています。

――講座を実施する時間帯は、平日夜と休日が多いようですが、平日昼間に開講してほしいという声はありますか?

あります。シニア層や主婦層の方が中心ですが、それ以外にも、土日にお仕事をされている方もいらっしゃいますし、今後は開講する時間帯も徐々に増やしていきたいと考えています。

その意味では、まず「何をやっているのか」を分かっていただくために、無料の使い方講座はオープンスペースで実施してもいいのかなという気はしていますね。セミナールームだと、何をやっているのかは外からわからないので。

講師の例

――プリントをするユーザーを増やすために行なっている施策はありますか?

現在のところは東京限定になってしまうのですが、有料のセミナーを受講してくださった方には、プリントのお試し券をお渡ししています。とにかくまずは、プリントしてほしいです。今まではPCやスマホの画面でだけ見ていた写真でも、プリントにするとまた違う発見があると思うんですよね。なので、まずはプリントへの入り口をご案内する意図で、今はそういった施策を試しているところです。

――今後、増やしていきたい方向性の講座は、どのようなものでしょうか。

Xシリーズは現在28本(シネレンズを除く)のレンズがあります。レンズ交換式カメラの楽しみを提案とした講座は増やしていきたいです。どのレンズを買えば良いか、悩まれている方の声をよく耳にしますので、ニーズもあると思います。

さらにフォトブックを作る、または写真を部屋に飾るといった切り口の講座です。弊社の商品であれば「Wall Decor」などがそれにあたりますが、楽しみがわかりやすいというのもあり、実用的でもありますよね。いまのところ、そういった内容の講座は少ないのですが、徐々に増やしていきたいと考えています。

受講者の方からよくご要望いただくのは、泊りがけで行うツアー式の撮影実習です。例えば星景写真を撮るとなると、どうしても泊りがけになってしまいますよね。あとは、遠出したい、季節のイベントものを撮りたい、といった要望もいただいています。

カメラで撮ってから、そのあとプリントして写真を飾ったり、見せたりというところまで提案していきたいですね。

プロ講師の撮影テクニックが学べる「座学」

各ジャンルに精通するプロの写真家から直接話を聞くことができるのは、セミナーを受講する最大の魅力だ。

アカデミーXの場合は比較的小規模な講座が多く、中にはジャンルごとに「座学」と「実践」の2種類を用意しているものや、「座学」と「実践」で1講座のものもある。個々の講座はそれぞれ別の講座として扱われる(それぞれ別料金が発生する)が、受講したジャンルについてより深く技術を学びたいのであれば、両方を受けてみる手もある。

ここからは、アカデミーXが実施中のセミナーの1つにお邪魔して、おおまかな講座の内容と雰囲気をお伝えしたい。今回はペトグラファー(ペット+フォトグラファー)の湯沢祐介さんが指導する講座にお邪魔した。

湯沢祐介さん

湯沢さんの講座では「自分の飼っているペットをいかに可愛く撮るか」という切り口で、屋内、屋外問わず、必要となる知識と技術を伝授。フレーミングから構図の作り方、小道具の選び方から気の引き方にいたるまで、幅広い範囲について詳細に解説しており、2時間という長丁場ながら、参加者は湯沢さんの話に非常に熱心に聞き入っていた。

ここでは講座のすべてをお伝えすることはできないが、ペットを撮るノウハウを伝授する中で、特に受講者が盛り上がった場面をいくつか紹介する。

例えば、ペットの気を引く方法について。犬の場合は音のするおもちゃ、猫の場合はいろんな形の猫じゃらしを用意するのがいいという。また、おやつで目線やポーズを誘導するのも有効。言うことを聞いてくれたときには、いつもより少し良いおやつをあげるといいと話した。

講座で実際に使われた資料より

「僕らはフォトグラファーなので撮影には犬用、猫用両方のおもちゃを持っていきます。例えば猫を撮影する場合、1人で撮影するときは左手に猫じゃらしを持って、ピントを合わせたら、猫じゃらしで気を引いて、レンズの方を向いた瞬間にシャッターを連写します」

講座で実際に使われた資料より

「これを繰り返して、良いカットを使うわけですが、慣れないうちは写真に猫じゃらしが写り込んでしまうのが難しいところ。2人以上で撮影できる場合は、相方に猫じゃらし担当になってもらって、連携して撮影すると、アングルや画角の幅も拡がります」

講座で実際に使われた資料より

さらに、ペットを可愛らしく撮る際に抑えておきたいポイントとして、「できるだけ明るい場所で撮影する」「しっかりと目にピントを合わせる」といった基礎知識を紹介している。犬の場合は、なんとなく「顔」をフォーカスすると、鼻にピントが合ってしまうので注意。

ペットを撮影するアングルについては、同じ場所でも色々なアングルを試してみると、大きく印象の異なる写真が撮れると話した。

「秋、イチョウの並木道で犬を撮影した作品では、人の目線からだと一見それほど落ち葉がないように見えるのですが、背景をぼかしてローアングルから撮ってみると、十分に雰囲気のある写真にできます。晴れた日なら、青空を入れてみてもいいですね」

講座で実際に使われた資料より

他にも、猫じゃらしを始めとした小物の使い方や自宅スタジの作り方など、プロならではの数々のテクニックが披露された。

もちろん、カメラの設定についても教えてもらえる。操作がわからな場合は、富士フイルムのスタッフがかけつけて教えてくれていた。

被写体を前に盛り上がる「実践」

さてここからは、別の日に猫カフェを貸し切って行なわれた講座の模様をお伝えする。同じく湯沢さんが指導する講座の「実践編」だ。座学とは別扱いの講座だが、セットで参加している受講者もいた。

場所は東京・浅草にある猫カフェ「MONTA」。同店所属の猫キャストを被写体として、10人前後の少ない人数で実施する講座だった。

講座の最初に湯沢さんが撮影の基本的なテクニックを参加者に伝えた後、各自自由に撮影していくスタイル。

猫キャストがちょうどいい位置にいるときなどは、湯沢さんが参加者に声をかけて、先述の座学で話したような猫じゃらしの使い方などを伝授していた。テクニックを聞いてすぐ試せる環境が整っており、参加者も夢中でシャッターを切っていたのが印象的だった。

「ペットをぶらさず撮る際のシャッタースピードは1/125秒〜1/250秒が目安です。MONTAさんには大きな窓もあるので、窓際であれば、基本的にはシャッター速度を気にせず撮影できると思います。できるだけ明るい場所で撮るというのを意識しましょう」

また、被写体となる猫を構図いっぱいに撮るばかりでなく、背景の空間を感じさせるような「二分割構図」あるいは「三分割構図」を心がけるよう指導していた。

実践講座の感想は?

猫カフェでの実践講座に参加していた受講者に、受講の動機や参加してみての感想をお聞きした。

ご夫婦で参加されていたAさん・Bさん

――お2人とも座学にも参加されていましたが、この講座を知ったきっかけは、どのようなものだったのでしょうか。

Aさん:店頭でカメラを色々見て、いいなと思ったのが富士フイルムのカメラだったので、購入した後のユーザー登録の際に、セミナーの存在を知りました。じゃあ主人と一緒に行ってみようか、という感じです。

Bさん:私は今回のペット撮影に限らず、ほかの講座もいくつか受けたことがあったので、今回は夫婦で、という流れでした。

Aさん:カメラの使い方を習う基礎セミナーから順番に受講して、じゃあ次はどうしようかと思っていたところに、ペットというテーマを見つけました。ちょうどわが家には猫がいるので、今回受講してみた次第です。

――座学、実践と通しで講座を受けてみて、いかがでしたか?

Aさん:座学の時には、こういうポイントに気をつけて撮ればいいんだ、となんとなくのイメージは掴めたのですが、実際に自分で撮ってみて、先生の写真と見比べてみると、やっぱり全然撮れ方が違っていて。「先生はこういう見方で写真を撮っているんだ」と感じました。両方受けたからこそ、実感できることもたくさんありました。

Bさん:やはり先生の写真を見ると、参考になりますね。

――ご夫婦で撮りたい被写体はありますか?

Aさん:私たちは夫婦でディズニーが好きなので、ディズニーのフォトコンテストで賞を獲ることを目標に写真を撮っています。セミナーに通うことで、今の撮り方を変えられたらいいな、と思っていますね。今は「ただ撮っているだけ」なので。

――撮った写真はどうしていますか?

Aさん:いいのが撮れるようになったら、ぜひプリントしたいですよね。今はまだ、プリントするほどのレベルではないという感じです。

――セミナーに関して、何か要望はありますか?

Aさん:もう少し受講料が高くてもいいので、より少人数の講座があったらいいなと思いました。

お1人で参加の女性受講者Cさん

――セミナーに参加したきっかけはありますか?

Cさん:特別に何か撮りたいものがあったわけではないのですが、写真が上手くなりたいな、と思って受講しました。

――カメラを購入されたのは、いつごろですか?

Cさん:購入自体は数年前ですね。友達とハワイに行くことになって、せっかくなのでいいカメラで写真をいっぱい撮ろう、と思ったのがきっかけです。

――講座に通い始めたのは、いつ頃からでしょうか。

Cさん:先々週くらいに初めて受講しました。今回で2回目ですね。特にペットを撮りたいというわけではなくて、基礎から順を追って学べるのがいいなと思って、受講を決めました。

――実際に受講してみて、いかがでしたか?

Cさん:ISO感度とか絞りとか、基本的なところから教えてもらえたので、それって動物に限らず、カメラの基本的なことだと思うので、この機会に楽しく学べて良かったな、と思いました。

これまでは、ほんとになんとなくカメラを使ってきたんだな、ということを自覚しました。本屋さんに行って、写真の本をめくってみて終わりだったのですが、実際に受けてみて、これからがんばろうと思いました。

――今後、撮ってみたいものはありますか?

Cさん:旅行先で写真を撮ることが多いので、風景とか人物を撮る趣旨の講座に参加してみたいですね。

制作協力:富士フイルム株式会社
撮影協力:MONTA

関根慎一