新製品レビュー

SIGMA dp1 Quattro(実写編)

独自のセンサー+専用ワイドレンズの実力検証

SIGMA dp1 Quattroは、28mm相当の広角レンズを搭載した高級コンパクトデジタルカメラだ。同社独自のFoveon X3ダイレクトイメージセンサーQuattroを採用した製品としては、今年6月に発売された標準レンズ搭載モデル「dp2 Quattro」に続くシリーズの第2弾である。

広角レンズ搭載モデルとしては、2012年発売の「DP1 Merrill」の後継製品にあたる。ボディデザインを大幅に変更したうえで、レンズにはQuattroセンサーに最適化するために開発された専用設計のものを採用する。

前回のレビューでは外観と機能をチェックしたが、今回は実写編として、写りの性能を見てみよう。

解像力

実写を見てまず感心するのは、独自の3層構造を採用したFoveon X3ダイレクトイメージセンサーならではの細部表現力の高さだ。遠景のディテールをくっきりと描写し、素材の質感や立体感をリアルに再現できる。一般的なイメージセンサーとはひと味違うクリアな写りといっていい。

ただし描写の傾向は、昨年までのモデルDP Merrillシリーズとは少々異なる。最低感度のISO100で撮った場合、Merrillセンサー搭載機は非常に高精細でありながら、細部のノイズがほとんど見られない滑らかな表現になるのに対し、dp1 Quattroは高精細ではあるものの、青空などの単色の部分はザラザラとした粒子状の仕上がりになる。ここは好みが分かれるところだ。

気になったのは、輝度差のある被写体の輪郭部分にはパープルフリンジが生じやすいこと。撮影メニューから「パープルフリンジ除去」を「入」にすると、多少改善されるが、完ぺきな除去にはならない。またシャープネスは強めで、被写体によっては輪郭のエッジ強調が目立ったり、斜めの直線がギザギザした描写になる場合がある。

オートでの露出とホワイトバランスの安定感が向上したことは誰にとっても大きなメリットだ。シーンによっては狙いとは異なる色になるケースも多少あったが、ほとんどのシーンではオートでも上々の結果が得られた。

下の写真は、絞りによる写りの違いをチェックしたもの。カラーモードは初期設定のスタンダードを選んでいる。

F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

レンズの解像性能については良好なレベル。絞り開放値では周辺部がわずかに甘いが、F4まで絞ると全域でくっきりし、F5.6〜8あたりで解像はピークとなる。そしてF11以上に絞ると、回折の影響で徐々に甘くなる。

周辺光量は絞り開放ではやや落ち込むが、1段絞ると目立たないように改善される。歪曲収差は少なめ。逆光性能に関しては、画面内に強い光源があるとゴーストが生じやすいので注意したい。

ボケ味

ボケについては、そもそも焦点距離が19mmと短いので大きなボケは得られないが、近接撮影時はそれなりにぼける。開放からF4くらいまでは滑らかなボケが楽しめる。

F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

高感度画質

感度は、ISO100〜6400の範囲を1/3段ステップで選べる。感度を高めるほど暗部ノイズが増えるが、ISO400までは大きな問題にはならないだろう。解像感も維持できている。

ISO800になると急激にノイジーになるので、積極的には利用したくない。さらにそれ以上はあまり実用的とはいえない。

以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400

カラーモード

発色の調整機能としては、11種類のカラーモードを搭載する。Merrillシリーズでは7〜8種類だったが、新モードとして褪せたような渋い色調の「シネマ」や赤が強調される「サンセットレッド」、緑が濃厚になる「フォレストグリーン」、黄色が強くなる「FOVクラシックイエロー」などが追加されている。

以下は、同一のRAWデータを元に、カメラ内RAW現像機能を利用して各カラーモードで書き出したもの。初期設定の「スタンダード」でも彩度は結構高めになるので、色飽和が気になる鮮やかな被写体では「ニュートラル」に切り換える、または詳細設定で彩度をマイナスに設定するといいだろう。

また前述した単色部分は、ザラツキは「ポートレート」を選んだり、シャープネスをマイナスに設定することで目立たなくできる。

スタンダード
ビビッド
ニュートラル
ポートレート
風景
シネマ
サンセットレッド
フォレストグリーン
FOVクラシックブルー
FOVクラシックイエロー
モノクローム

JPEG撮って出しとRAW

Quattroよりも前のDPシリーズは、センサーの性能をきっちりと引き出すには、専用ソフトを使ってRAW現像をすることが欠かせなかったが、QuattroセンサーになってからはJPEGの画質が大きく向上している。

以下は、JPEG+RAWモードで撮影したJPEG画像と、RAWデータを元に現像処理によって出力したJPEG画像を比較したもの。RAW現像には専用ソフト「SIGMA Photo Pro 6.1.0」を使用し、初期設定のまま出力した。

細部を見比べると、撮影したままのJPEG画像に比べると、RAWから現像した画像はシャープネスが抑えめで、その分、青空部分のザラツキや建物の輪郭部分のエッジ強調が目立たなくなっている。発色に関しては、このシーンでは大きな差は見られない。

撮影したままのJPEG画像
RAWから「SIGMA Photo Pro 6.1.0」で現像したJPEG画像

近接撮影

最短の撮影距離は20cmで、最大撮影倍率は1:8.3となる。特に接写に強いとはいえないが、近接撮影であっても画質が低下することはない。

最短距離の20cm付近で撮影。背景をぼかしつつ、花の質感をリアルに再現した。なお、輪郭がややにじんだように見える個所があるのは、ストロボのスローシンクロ発光による被写体ブレだ。1/30秒 / F2.8 / ISO100 / マニュアル / 19mm
手前の被写体まで70cmくらいの距離で撮影。背景は滑らかにぼけて、奥行きを感じる表現となった。歪曲収差は目立たないように低減されている。1/15秒 / F2.8 / ISO400 / 絞り優先AE / 19mm

作品集

ホワイトバランスを日陰にセットし、夕日のグラデーションを濃厚な色で表現した。こうした逆光シーンではフレアやゴーストが生じやすいが、それが目立たないようなアングルを選んだ。1/500秒 / F5 / ISO100 / マニュアル / 19mm
ワイドレンズを生かして遠近感が引き立つ構図を選択。細部までシャープに解像し、構造物の硬質な素材感がよく出ている。1/80秒 / F8 / ISO100 / マニュアル / 19mm
外部ストロボを利用して、花の部分を明るく照らしつつ、高速シャッターを使うことで周辺部を暗く落とした。花粉や花びらの質感、小さなアリの姿などが克明に描写されている。1/320秒 / F8 / ISO100 / マニュアル / 19mm
こちらも外部ストロボを使用。逆光気味に光を照射することで、葉っぱの色やかたちが浮かび上がるようにした。1/30秒 / F4 / ISO100 / マニュアル / 19mm
カラーモードの「モノクローム」を選択した上で、コントラストをプラスに設定。光が当たった屋外部分を白く飛ばし、建物の造形美を際立たせた。1/15秒 / F5 / ISO100 / 絞り優先AE / 19mm
以上の写真は、撮ったままのJPEGデータだが、この写真はRAWデータを現像したもの。現像ソフトは「SIGMA Photo Pro 6.1.0」を使用。精細感の高い描写性能は、モノクロ表現にもうってつけだ。1/50秒 / F4.5 / ISO200 / マニュアル / 19mm

ハードルが低くなったFoveon機

今回の試用では、多くのシーンで狙いどおりの発色と描写が得られ、画質面での満足感は高い。惜しいのは、ハイライト部の輪郭にパープルフリンジやジャギーが生じやすいこと。レンズについては、開放値から安心して使える光学性能を実感できた。

要望としては、専用のRAW現像ソフトSIGMA Photo Proの使い勝手を改善して欲しいこと。Quattroセンサーになって、カメラ内生成のJPEG画質が向上したのは確かだが、それとは別に、作品として写真を撮る際はRAWデータを元にきっちりと現像して仕上げたい。そのためには、現状のSIGMA Photo Proでは力不足に感じる。

カメラ本体の性能は、従来のMerrillシリーズよりも進化し、使いこなしのハードルは低くなった。ほかにはない斬新な形のボディをあやつることで、人とは違った写真が撮れる。そんな気分にさせてくれるカメラだ。

永山昌克

広告スタジオを経て、1998年よりフリーランスのフォトグラファー。以後、主に雑誌やウェブ、広告の分野で活動。得意分野は都会のスナップ。写真展に「チャイニーズ・ウエスタン」(銀座ニコンサロン)、著書に「写真の構図&アングル練習帳」(ソーテック社刊)などがある。