新製品レビュー

Nikon COOLPIX W300

防水タフネスカメラを風景写真家が試す

オールウェザータイプのカメラである初代COOLPIX AW100が発売されたのは2011年のこと。それから6年を経て新たなアウトドアカメラCOOLPIX W300がこの6月30日に発売された。

2016年10月に発売されたCOOLPIX AW100の上位モデルで、前モデルのCOOLPIX AW130同様、ハウジングなしで水深30mまでの水深性能が保証されているうえに耐衝撃性能が向上した本格派アウトドアカメラとしての登場だ。

タフ性能

アウトドアでの使用、それもビーチや水中、あるいは山岳などは過酷なシーンであることが多い。本機の耐衝撃性は前モデルよりも向上しており、それまでの2.1mから2.4mの落下試験をクリアしている。

防塵性はJIS/IEC保護等級6(IP6X)相当で、-10度の寒冷地にも対応。夏のビーチはもちろん、冬の雪山でも不安なく撮影することができる、まさにオールシーズンに対応したアウトドアカメラだ。

加えて、JIS/IEC保護等級8(IPX8)相当の防水性能を有しており、水深30mで60分まで撮影することができる。しかもハウジングを必要としないため、セッティングする作業の必要もなく小型なサイズを生かして機動力抜群の水中撮影を楽しむことができる。

手軽に撮れる水中カメラがあったなら……。そう思う風景写真家も少なくはないはずだ。むろん筆者もそのひとり。そんな願いが叶ったカメラなのだ。

デザイン

大柄な筆者が持つとずいぶんと小さく感じられるだろうか。幅約111.5mm、高さ約66mm、奥行き約29mmほど。手のひらにすっぽりと収まるサイズだ。重量は231g(バッテリーと記録メディアを含む)で、本体サイズとほどよくマッチングする重さとなっている。

ボディ全面は光沢感のあるメタリックな質感で、グリップや上面、背面の艶消しの黒によくマッチする。グリップはやや小さめだが、指がかりは良く持ちやすい。

アウトドアタイプのカメラはごつい“アウトドアライク”なスタイルなものが多いのに対して、とてもスリムでスタイリッシュなデザインなので、通勤や通学など普段使いでも気軽にバッグから取り出して使用できるのもうれしい。

アクティブガイド

アウトドアスポーツに限らず、風景撮影では撮影地の位置情報はもちろん、標高がどのくらいかを知りたいときがある。たとえば紅葉の撮影だ。標高1,500mで錦秋の紅葉を迎えていれば、そのほかのエリアで近い標高もきっと良い状態のはず、移動してみようか? といった判断材料になる。

そのような時に便利な機能がアクティブガイドだ。日時はもちろんや位置情報や高度・水深情報、そしてロググラフを、ツールボタンでダイレクトに表示することができる。自然を相手にする風景撮影ではとても有効な機能だ。

アクティブガイドの位置情報表示画面
アクティブガイドの高度表示画面
撮影中の位置情報表示画面
再生時の情報合成表示

カメラが起動している状態で、側面の一番上にあるツールボタンを押すとアクティブガイドが表示される。いちいちメニューを開く必要もなく素早く知りたい情報にアクセスできる。

有名撮影地なら、わざわざ特定せずとも地図に載っているだろうが、道中でふらりと立ち寄った場所を、かすかな記憶だけを頼りに後から特定することはかなり難しい。

かつてはGPSロガーを持ち歩いたものだったが、本機は位置情報と高度情報ををログとして記録することができる。ログファイルはViewNX-iのマップで表示することができるので、どのルートを通り、どの場所で撮影したかを後から簡単に特定することができる。

何気なく通りかかったとき、まだ花が咲いていなかったけれど今ごろきっと満開のはず。もう1度あの場所に行ってみよう、ということが容易にできるのだ。

位置情報ログ表示画面
高度ロググラフ表示画面
ViewNX-iのマップでログを表示したスクリーンショット

ボタン類

上面ボタンはシャッターボタンと電源スイッチのみのシンプルな構成。シャッターボタンは大きめで、電源ボタンより突出しており押しやすい。

背面のマルチセレクターは小さめではあるものの、しっかりと凹凸があり各方向への操作性も悪くはない。またその周囲に配置されているボタン類も押しやすいよう切り欠きが設けられている。細かな配慮がうれしい。

側面には上からツールボタン、アクションボタン、LEDライトボタンを配置。直観的にもわかりやすいアイコンが記されている。

新たに搭載されたLEDライトは、カメラが起動していない状態でもLEDライトボタンを押すだけで手元を照射することができる。深夜や早朝などの暗いときの撮影準備などで便利だ。

イメージセンサー

1/2.3型の裏面照射型CMOSセンサーを搭載。有効画素数はCOOLPIX AW130と同じく1,605万画素で、記録形式はJPEGのみだ。

画像処理エンジンはEXPEEDを搭載し、ISO感度はISO125~6400となっている。

液晶モニター

約92万ドット、広視野角タイプの3型TFT液晶モニターを搭載する。反射防止コートが採用されているため、屋外でも視認性は良好だ。なお、視野率は撮影時に上下左右とも97%、再生時は上下左右とも100%となっている

記録メディアスロットとバッテリー室

厳重なパッキングが施されたバッテリー室だ。使用バッテリーはリチウムイオン充電池EN-EL12で、満充電時に静止画は約280コマまで、動画(1080/30p)は約1時間(連続時間時間と容量制限あり)まで記録することができる。

記録メディアはSDメモリーカード、SDHCメモリーカード、およびSDXCメモリーカードで、4K UHD動画撮影ではUHSスピードクラス3以上のメモリーカードが推奨となっている。

端子

出力端子はマイクロUSB端子で付属するケーブルを使用して外部機器に接続する。カメラの充電もこの端子を利用する。また、HDMI出力用のHDMIマイクロ端子(Type D)を搭載する。

4K動画

本機から新たに4K UHD動画が搭載された。サイズおよびフレームレートは[2160/30p](4K UHD)または[2160/25p](4K UHD)で高精細動画の撮影を楽しむことができる。

さらに、安定した明るさを維持する動画撮影時のAE固定機能や、搭載されているLEDライトによる動画照明機能が採用され、より自由度の高い4K UHD動画撮影を楽しめる。

動画ファイル形式は新たにMP4を採用し、スマートフォンなどでの再生に対応している。もちろん4K UHD動画は、再生時に静止画として切り出すことも可能だ。

通信機能

スーマートフォンやタブレットとの連携が楽しめるSnapBridgeに対応している。本機で撮影した画像をスマートフォンに転送し、それをSNSなどにアップロードすることが簡単に行えるうえに、日時情報の同期やクレジットの追加なども行うことができる。

スマートフォンやタブレットでは撮影できない水中写真なども、リアルタイムでSNSに公開するなんてこともたやすくできるのだ。

作品

テレ端で撮影。望遠側は120mm相当となる。このように渓流の一部分を切り取るような撮影も簡単に行える。

1/30秒 / F4.9 / 0EV / ISO360 / プログラムAE / 21.5mm

ワイド端で撮影。広角側は35mm判換算で24mm相当となる。ぐっとワイドな広がりのある表現も楽しむことができる。

1/30秒 / F2.8 / 0EV / ISO125 / プログラムAE / 4.3mm

テレ端で撮影。シャドウ部分で黒ツブレ、ハイライト部分でわずかに白とびを起こしている。

1/100秒 / F4.9 / 0EV / ISO125 / プログラムAE / 21.5mm

ワイド端で撮影。輝度差の強いシーンなだけあり、ハイライト部分で白とびを起こしている。ダイナミックレンジをチェックするため、アクティブD-ライティングはOFFにして撮影しているが、このようなシーンではONにすると白飛びが大幅に改善される。

1/50秒 / F2.8 / 0EV / ISO125 / プログラムAE / 4.3mm

立ち寄った清流でバイカモを見つけ、W300を水中に沈めて撮影したカット。どこでも手軽に水中撮影できるメリットは大きい。これまでにない水中のアングルは撮影意欲をくすぐるものがある。

1/100秒 / F2.8 / 0EV / ISO125 / プログラムAE / 4.3mm

夕方ちかい時間で光量が足りない状態だったためISO800で撮影。シーンにもよるがISO1600ではノイズが目立ってくる場合もある。シビアに風景写真として見た場合の上限はISO800程度だろう。

1/2.5秒 / F4.7 / -0.7EV / ISO800 / プログラムAE / 15.3mm

まとめ

水辺で風景を撮影しているとき、水の中から撮影したら面白い写真になりそうだ、と思う風景写真家も少なくないはずだ。W300の耐水深30mは他社の追随を許さない、本機ならではのスペックの1つ。

渓流などでの活用はもちろん、ダイビングによる水中撮影が楽しめるのは大きな利点だ。それでいて耐衝撃性能が向上しているのだからアウトドアでの過酷な使用でも不安はない。

しかもスタイリッシュなデザイン、35mm換算で24-120mm相当の焦点距離など、普段使いのカメラとして扱いやすいのもメリットだ。さらに位置情報や高度情報をログとして記録できるため、撮影情報収集用のギアとして大いに活用できる。風景写真のサブカメラとして、申し分ないコンパクトカメラではないだろうか。

萩原俊哉

(はぎはらとしや)1964年山梨県甲府市生まれ。浅間山北麓の広大な風景に魅せられ、2008年に本格的に嬬恋村に移住。カメラグランプリ選考委員 ニコンカレッジ講師 日本風景写真家協会(JSPA)会員。