新製品レビュー
ソニーα99 II(実写編)
驚きのAF・連写性能 解像力も格段にアップ
2017年1月27日 07:00
ソニーから発売された「α99 II」は、Aマウント機のラインナップにおいてフラッグシップを担うデジタルカメラ。その名の通り、前機種となる「α99」の後継機という位置づけだ。
大きな特徴は、他のAマウント機と同様にトランスルーセントミラー・テクノロジー(以下TMT)を採用しながら、有効約4,240万画素の35mmフルサイズ裏面照射型CMOSセンサーを搭載していること。これによって高度な動体撮影を、4,000万超の高画素で行うことができる。
実写編である今回は、高画素機となったα99 IIの画質を確認するとともに、「Aマウント史上最速」と謳われるAF性能など、進化したAマウントフラッグシップの実力を見ていきたい。
描写
Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM IIにて、絞りをF8に設定して撮影した。有効画素数が約4,240万画素となったことで、有効約2,430万画素だったα99に比べて格段に解像力がアップしていることは言うまでもない。
加えて、α99 IIからローパスフィルターレス仕様となったため、レンズの光学性能を最大限に引き出すことが可能となった。実写画像を見ると、細かな葉の1枚1枚、小枝の1本1本が、詳細かつ自然に描き分けられていることがわかる。
高感度
暗いトンネル内から出口を望むシチュエーションで、感度をISO6400に設定して撮影した。
画素ピッチの狭くなる高画素機だけに、高感度性能はあまり期待できないかと思いきや、ISO6400程度なら、ノイズの発生や質感の低下などはほとんど気にする必要がない、優れた描写性である。
α99 IIに搭載されているのは、裏面照射型のCMOSセンサー。ギャップレスオンチップレンズ構造の技術も相まって、4,000万画素超の高画素機とは思えない優れた高感度特性を達成しているのである。
つづいては拡張設定の最高感度であるISO102400で撮影。色ノイズ、輝度ノイズとも多く発生し、ISO6400に比べて大きく質感が損なわれていることは否めないが、それでも画としては十分に成立しており、拡張域に設定しているだけに非常用としては十分に使える画質だといえるだろう。
手ブレ補正
α99 IIは5軸ボディ内手ブレ補正機構を搭載している。α99では2軸の角度ブレ(ピッチ/ヨー)のみであったところ、シフトブレ(X/Y)、回転ブレ(ロール)にも対応するようになったことは、「外観・機能編」でお伝えした通り。手ブレ補正効果は最大で4.5段分となっている。
角度ブレというのは、焦点距離が長くなるほど、つまり望遠レンズ使用時に起こしやすい手ブレのこと。最も一般的な手ブレ補正機能と言うこともでき、個人的にもこの角度ブレの補正において一番よく効果を実感することができた。
ソニーのα99 IIのWebサイトを見ると、最大4.5段分は「CIPA規格準拠、Pitch/Yaw方向、Sonnar T* 135mm F1.8 ZA装着時」となっているため、筆者が感じた補正効果の感想も当たらずとも遠からずでないかと思う。
一方で、シフトブレは近接撮影時などに顕著に起こりやすい手ブレであり、被写体に対して撮影者が上下左右方向にずれてしまうことで発生する。
最初の作例は焦点距離200mmに対してシャッター速度1/200秒なので、大した補正効果でもないように思われるかもしれない。しかし、角度ブレの補正があまり効かなくなる近距離において、「1/焦点距離」のシャッター速度でブラさず撮れるというのは、実はすごいことなのである。
回転ブレは、主に長秒時撮影時に起こりやすい手ブレである。長秒の撮影と言うと広角での撮影が多くなるためか、従来の2軸式では広角レンズ使用時にはあまり手ブレ補正機能の効果を実感することができなかった。
しかし、5軸手ブレ補正機能によって回転ブレにも対応したことによって、広角レンズ使用時の長秒時撮影でも手ブレ補正機能の恩恵に預かることができるようになったというわけだ(もちろん標準~望遠の長秒時撮影でも効果はある)。
回転ブレの補正効果の場合は、「手ブレ補正効果〇段分」というよりも、どれくらい遅いシャッター速度でブラさず撮れたかを考えるとよいだろう。
AF性能
α99 IIのAF性能についてであるが、α99 IIはTMTを採用しているため、一般的な一眼レフカメラの“動態予測AF”ではなく、露光時も常時被写体を捕捉しつづける“動態追従AF”であることが特徴のひとつとなっている。
しかも、専用の位相差AFセンサーだけでなく、撮像センサーに埋め込まれた像面位相差AFセンサーも搭載しているため、双方をクロス測距的に併用できる高速・高精度な「ハイブリッド位相差検出AFシステム」が可能となっている。
前機種のα99でも、位相差AFセンサーと像面位相差AFセンサーを搭載する点は同じであるが、クロス測距としては活用できない「デュアルAF」であった点が大きく異なる。
さらに、連写速度はフル画素で最高12コマ/秒の高速連写である。これは、有効約2,430万画素のα99が最高6コマ/秒であったことを考えると(クロップ撮影で1,000万画素字は8コマ/秒、640万画素時は10コマ/秒)、驚異的な性能進化と言えるだろう。
試写では、カメラを三脚に固定し、画面内に飛び込んできたワオキツネザルを撮影した。急に画面内に入った被写体に即座にピントを合わせるのは難しいことであるが、α99 IIの場合はハイブリッドクロス測距点のエリアに入った途端、被写体に正確にピントを合わせ、なおかつ捕捉しつづけている。
なお、ワオキツネザルの動きはかなり速いので難しかったが、ハイブリッドクロス測距点のエリア以外であっても、399点に及ぶ像面位相差AFセンサーがその外を広くカバーしているため、通常の被写体であれば画面周辺でも容易にピントを合わせることが可能だ。
※共通設定:α99 II / Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM II / 1/1,000秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO400 / シャッター優先AE / 200mm(恩賜上野動物園で撮影)
ホワイトバランス
ホワイトバランス設定に2つの新モードが追加された。
ホワイトバランスがオートの際にメニューで「雰囲気優先」を選択すると、白熱電球などの光源下で電球色が適度に残った暖かみのある表現にすることができる。
もうひとつのホワイトバランスの新機能「ホワイト優先」を選択すると、白熱電球下であっても白いものをきちんと白く写すことができる。
4K動画
フルHD動画のα99に対して、4K動画記録が可能になった点もα99 IIの大きな特徴の1つである。(恩賜上野動物園で撮影)
スモールセンサーで記録する4K動画とは一線を画し、スーパー35mm(APS-Cサイズ相当16:9)時は画素加算のない全画素読み出しによるモアレやジャギーの少ない高品質な映像が撮れるところが魅力。フルサイズ領域での4K動画記録にも対応し、フルサイズの表現力をそのまま生かすこともできる。
ボディ内で動画から静止画を切り出す機能も備えている。4K動画からは約800万画素、フルHD動画からは約200万画素の静止画として、決定的瞬間を1コマずつ選んで保存することが可能だ。
作品
広角端24mmで夕陽を撮影。太陽は不自然に白とびすることなく、空や雲を豊かなトーンで表現してくれた。クリエイティブスタイルを夕景に、ホワイトバランスを日陰にすることで夕焼けの色を印象的に仕上げている。
小さな漁港の片隅で1匹の猫が日向ぼっこをしていた。比較的小さ目に猫が写っている構図であるが、拡大すると猫の毛の1本1本まで詳細に描写されている。4,240万画素の解像感は本当に凄まじい。
冬を迎え項垂れていた菊の花をアップで撮影。動態追従性や連写性能に注目してしまいがちなα99 IIであるが、フルサイズセンサー搭載の一眼レフ(風)デジタルカメラとしては破格の小型化に成功しているので、こうしたスナップ的な使い方も苦にならず楽しい。
マルチセレクターについて
前機種のα99では、前後ダイヤルの応答が遅いなどややモッサリとした印象があったが、少なくとも今回の試用ではそのようなことはなく、こちらの操作に対して適当なレスポンスを示してくれた。操作性についても大きく改善がなされているといってよい。
ただ、1つ気をつけたいのがカメラ背面にあるマルチセレクターの操作方法が変更されている点。
従来のように外側から内側に「倒す」という操作では反応しないことが多いのであるが、マルチセレクターの上面に指を乗せ、内側から外側に「押し倒す」ように操作するとスムースに反応する。これを知らないと故障かと慌ててしまうので(筆者は慌ててしまった)よくよく注意した方がよいだろう。
ただし、従来のマルチセレクターは上下左右のみの操作方向であったが、α99 IIは斜め方向も含めた8方向に操作できるようになったため、フレキシブルスポットでフォーカスエリアを移動させたい場合などに非常に便利になった。
まとめ
同社のEマウント機には35mmフルサイズセンサーを搭載したα7シリーズが、多くのモデルをラインナップしているのに対し、α99 IIはAマウント機における唯一のフルサイズ機となっている。
フラッグシップ機という位置づけが明確であるためか、描写性能・手ブレ補正能力・高感度特性・動態撮影能力・処理速度など、全方位的に最高性能を詰め込んだ、非常にハイスペックな1台に仕上がっている、というのが今回の実写で感じた印象であった。それでいて前機種α99よりも小型化に成功している点は実にソニーらしい。
「フラッグシップ機の小型化」というと違和感を覚える人もいるかもしれないが、もともとTMT採用機は小型軽量であることが特長のひとつであるのだから、やはりこれは正統な進化なのである。
α99 IIは、他にはない常時追従の動態撮影能力を高画質で体感したいという人にはもちろん、古くからのAマウントユーザーにとっても、レンズ資産を最大限に活かすことのできる、最新にして最高のボディであると断言できるのである。
(撮影協力:恩賜上野動物園)