交換レンズレビュー

XF16-55mm F2.8 R LM WR

ボケ味も美しい大口径標準ズーム

今回はFUJIFILM X-T1で試用した。発売は2月。実勢価格は税込13万9,860円前後

XFレンズには、リーズナブルな標準ズームとしてXF18-55mm F2.8-4 R LM OISがラインナップされているが、さらに高画質を求めるユーザーのために登場したレンズが、XF16-55mm F2.8 R LM WRである。

ワイド側を2mmほど広げ、35mm換算で24mmが使えるようになり、さらにF値もズーム全域で2.8を実現したことで、表現の領域が確実に拡大。多くのXユーザーにとっては待っていたスペックなのではないだろうか。

デザインと操作性

本レンズの第一印象はそのサイズだ。XF18-55mm F2.8-4 R LM OISと比較すると、一回りも二回りも大きく、今回使用したX-T1に装着すると明らかにフロント側が重くなる。その大きさゆえのデメリットは、X-T1に装着し雲台に固定したとき、絞りリングがプレートに接触すること。これを回避するためには、MHG-XT(グリップ)などのクリアランスを確保するためのアクセサリーが必要になる。この点には注意が必要だ。

フィルター径77mm、最大径83.3mm、重量約655g(レンズキャップとフードは含まず)は、APS-Cサイズのセンサーを搭載したカメラ用としては少々大きめ
赤いエンブレムが良く目立つデザインだ。上がピントリング、下がズームリング

XF18-55mm F2.8-4 R LM OISには手ブレ補正機構が搭載されているが、本レンズは不搭載。おそらく、画質優先の設計によるものだと思うが、手持ち撮影時の起動性が若干損なわれたことは少々残念だ。ただ、レンズ自体の重さが手ブレを抑える役目を果たしているため、手持ち撮影をしていても案外ブレない。もちろん、しっかり構え、ISO感度も適切に設定する必要はあるが、それらがきちんとできていれば、手持ち撮影にもトライできる。

絞りリングを装備したことは、本レンズの特徴と言える。フィルムカメラ用レンズなどでは当たり前の構造だったが、その使い勝手に慣れているユーザにとっては懐かしい感覚だ。逆に、ダイヤル操作で絞り値を変えることに慣れているユーザーにとっては新しい感覚だと思うが、Xシリーズのマニュアル操作が心地良いと感じているなら、本レンズの絞りリングにも好感が持てるに違いない。絞りリングの回転の感触は優れており、1/3段刻みのクリックが気持ちよく決まる。

最近のレンズは絞りリングが省略されたものが多いが、本レンズはF2.8からF22までが刻まれ、1/3段刻みで調節が可能
ズーミングをすると全長が変化するタイプ。全長は広角端(左)で106mm、望遠端で129.5mm

AFは非常にスムースだ。X-T1とのコンビで使うとピント精度も高い。加えてリニアモーターによって静音化も実現されており、静謐な環境下で使ったとき、雰囲気を壊さずに撮影できたのは嬉しかった。

本レンズの操作リングの配置はレンズの先端側がピントリングで、中央側がズームリングだが、いずれも回したときのトルク感は中庸で、気持ちの良い動きをする。ピントリングは回転角が十分に確保されているため、デリケートなピント調節がしやすい。ズームリングは、レンズを真上にしたとき、どの焦点域でも自重落下することはないので安心して仰角撮影が行える。

大き目の花形フードが同梱されている。レンズ側の「−」マークに、フード側の「・」マークを合わせて装着する

遠景の描写は?

本レンズは12群17枚構成の光学系を持つ。球面収差やディストーションを抑制するため、4/8/13枚目に非球面レンズを使用。広角側の倍率色収差や望遠側の軸上色収差を補正するために、10/11/16枚目にEDレンズを使用している。

大口径レンズにありがちな周辺光量落ちは、本レンズでももちろん見られるが程度は小さく、周辺部が明らかに暗くなるような結果は得られていない。1段程度絞れば良好に収束する。どの焦点域を、どの絞り値で使っても、不自然な見え方がないという性能は見事だ。

解像感に関しては広角側はおおむね良好で、どの絞り値でもシャープだ。回折現象もF16でわずかに見られる程度である。一方、望遠側の解像感はF5.6もしくはF8あたりでピークが得られる。F11やF16も、F5.6やF8に匹敵するほどの素晴らしさだ。反面、F2.8やF4ではやや甘いという結果がでた。F5.6やF8の解像感が圧倒的に優れているから、差が感じやすいのかもしれない。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
広角端―中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。共通設定:X-T1 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 16mm
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
広角端―周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。共通設定:X-T1 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 16mm
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
望遠端―中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。※共通設定:X-T1 / -1.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 55mm
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
望遠端―周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。※共通設定:X-T1 / -1.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 55mm
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

ボケ味は?

標準ズームレンズなので、マクロレンズや望遠ズームほどの大きなボケ味が楽しめるわけではない。とは言え、大口径F2.8の開放F値を持っているので、使い方によってはボケを生かすことが可能だ。広角側にせよ、望遠側にせよ、ボケを生かすためには最短撮影距離を生かすことがもっとも大切だ。その条件で主役は大きくなり、同時にボケも大きくなる。またボケを鑑賞者に意識させるには、前ボケを使う方法もある。

本レンズの最短撮影距離は、広角側で30cm、望遠側で40cmと異なっている。望遠側で撮影する場合には少し距離をとる感覚だ。今回使ったX-T1では、バージョン4.0のファームウエア(6月29日無償配布)にアップグレードすると、従来のようなマクロ機能を使わず、シームレスに最短撮影距離を使うことができる。使い勝手が良くなって、最短撮影距離が使いやすくなったので、積極的にトライして欲しい。

ボケ味は滑らかで美しい。自然な味わいが楽しめる。また9枚羽根の円形絞りを採用しているため、点光源は玉ボケとなる。煌びやかな背景を作ることができるので、ぜひ試して欲しい。

広角端
絞り開放・最短撮影距離(約60cm)で撮影。X-T1 / 1/180秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO1000 / 絞り優先AE / 16mm
絞り開放・距離数mで撮影。X-T1 / 1/220秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 16mm
絞りF4・距離数mで撮影。X-T1 / 1/500秒 / F4 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 16mm
絞りF5.6・距離数mで撮影。X-T1 / 1/18秒 / F5.6 / +2EV / ISO1600 / 絞り優先AE / 16mm
広角端
絞り開放・最短撮影距離(約60cm)で撮影。X-T1 / 1/56秒 / F2.8 / +1EV / ISO1600 / 絞り優先AE / 55mm
絞り開放・距離数mで撮影。X-T1 / 1/60秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO250 / 絞り優先AE / 55mm
絞りF4・距離数mで撮影。X-T1 / 1/680秒 / F4 / +1EV / ISO800 / 絞り優先AE / 55mm
絞りF5.6・距離数mで撮影。X-T1 / 1/56秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO1600 / 絞り優先AE / 16mm

逆光耐性は?

広角側にしても望遠側にしても、強い太陽光を画面内に入れると大なり小なりゴーストやフレアは発生する。このときは快晴の空に輝く太陽だったので、影響は最大限に出る状況。そのわりにはゴーストは少なく、そういう意味ではかなり有害光対策は施されていると言える。

レンズの全面に多層コーティング処理「HT-EBC」(High Transmittance Electron Beam Coating)を施し、加えてナノGIコーティング技術を採用したことが結果に現れていると考えて良さそうだ。

太陽を外した場合は、広角側も望遠側もほとんどゴーストは発生しないようだ。もちろん、外し方にもよるが、うまく光源の位置をコントロールすれば、逆光の雰囲気を生かしつつ、クリアな表現ができるようだ。

広角端
太陽が画面内に入る逆光で撮影。X-T1 / 1/500秒 / F8 / +1EV / ISO200 / 絞り優先AE / 16mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。X-T1 / 1/300秒 / F8 / -0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 16mm
望遠端
太陽が画面内に入る逆光で撮影。X-T1 / 1/1,300秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 55mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。X-T1 / 1/500秒 / F8 / -1.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 55mm

作品

シダの緑と水の白を組み合わせ爽やかなイメージを作った。解像力の高いレンズなのでシダの葉脈が露わになり、リアルな表現となっている。

X-T1 / 1/10秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 34.2mm

潜流瀑の滝壺に佇む倒木。倒木の明、滝の暗を対比してみたが、ヌケの良さ、色ののり、調子の出方など、申し分ない結果が得られている。

X-T1 / 1/1.7秒 / F11 / -1.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 35.3mm

紫陽花にぐっと近寄り、ボケを生かして撮影。広角側のワイド感が生き、同時にボケの美しさも加わり、印象的な1枚になった。

X-T1 / 1/850秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO800 / 絞り優先AE / 16mm

葉の隙間から太陽をチラ見せ。F11まで絞っているので、このレンズ特有の美しい光条が発生し、画面を華やかにしてくれた。

X-T1 / 1/210秒 / F11 / +1EV / ISO800 / 絞り優先AE / 16mm

ピントが合った部分のシャープさ。背景の玉ボケの美しさ。そしてデリケートな色の味わい。このレンズの特徴が見事に出た1枚だ。

X-T1 / 1/1800秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO800 / 絞り優先AE / 55mm

玉ボケを出すことにこだわって撮影した。木漏れ日は美しい玉ボケとなり、背景を飾り立ててくれた。このレンズならではの表現力と言える。

X-T1 / 1/1500秒 / F2.8 / +1.3EV / ISO800 / 絞り優先AE / 45.5mm

まとめ

XF18-55mm F2.8-4 R LM OISと比較すると、大きくて重い、手ブレ補正機構がないといったデメリットがあるが、反面、比較的大きなボケが使える、高画質が得られるといった表現や画質に直接影響があるメリットが最大の魅力だ。

重いとか、手ブレ補正が効かないという点は、使い手のスキルでカバーできるが、表現力や画質はレンズ固有のものだからカバーのしようがない。こういう点に気がつけば、値段には代えられないことがわかる。FUJIFILM Xユーザーにとっては、ザックの中に入れておきたい最有力レンズの1本と考えて良さそうだ。

萩原史郎

(はぎはら しろう)1959年山梨県甲府市生まれ。日本大学卒業後、株式会社新日本企画で「季刊風景写真」(※現在は隔月刊) の創刊に携わり、編集長・発行人を経験。退社後はフリーの風景写真家に転向。著書多数。日本風景写真家協会(JSPA)会員。カメラグランプリ選考委員。