イベントレポート

鉄道写真家 中井精也さんと春の小湊鐵道を撮影!プリント体験も

エプソンColorio V-edition「EP-10VA」で用紙選びやプリントテクニックも学ぶ

2017年5月7日、撮影セミナー「中井精也といっしょに小湊鐵道を撮ってプリントしようセミナー」(正式名称)が開催された。会場は白鳥公民館2階のイベントスペース。4月に行なわれた事前募集では、30名の参加を募ったところ、300名を超える応募があったという人気企画となった。

撮影、プリント、講評の3パートをセットにした無料講座で、撮影パートでは中井さんと一緒に小湊鐵道を絡めた作品を撮影し、選んだ写真をプリントした後、出力したプリントを中井さんが講評するといった流れで実施した。午前の部、午後の部ともイベント内容は同じ。本記事では当日の模様をお届けする。

イベントの拠点となった上総大久保駅前の白鳥公民館では、小湊鐵道の100週年を記念した写真展「里山写真展」が、5月14日(日)まで開催中だ。

展示されているのは、中井精也さんが撮影した小湊鐵道の写真約50点。市原市が開催している「第2回いちはらアート×ミックス」との連携企画でもある。

今回のイベントのプリント&講評の会場でもあり、中井精也さんの個展「里山写真展」が開催されている白鳥公民館。
「里山写真展」会場の様子。公民館を使った素朴な会場だ。
布にプリントした写真をキャンバスに張り、画材を塗って絵画のように仕上げたという作品の展示もあった。
近くで見ると、画材の盛り上がりが見える。

主題を明確に、構図を決め打ちするのが「ゆる鉄」のコツ

上総大久保駅に集合して説明を聞く参加者たち。

イベント当日の集合場所は小湊鐵道上総大久保(かずさおおくぼ)駅前。点呼が完了したところで、直接撮影パートに入った。今回のテーマは「部屋に飾りたい写真を意識する」。中井さんは撮影のコツとして、主題を明確にすること、そして構図を決め打ちして撮ることをアドバイスとして挙げていた。

「見せたいものがあれば、列車がきちんと写っていなくてもいいんです。構図を作るにしても、連写して何カットも撮ろうと欲張ると、気がつけば日の丸構図ばかり、ということにもなってしまいがちなので、必ずワンカットは『こう撮る!』と決めてください」

駅周辺は竹林や田園といった里山の風景が広がり、また高低差のある町並みにもなっており、風景写真を撮影する環境としても恵まれた条件。中井さんによれば、上総大久保駅に停車する列車を撮影するスポットとしては、駅にほど近い白鳥小学校前の交差点と、上総大久保駅の脇にある竹林がおすすめだという。

「難しいのは、撮りたいものをメインに据えたとき、構図の中にどう列車を入れ込むかです。広角でメインの被写体に寄りたいときや、望遠の圧縮効果を活かしたいときもあると思いますので、交換レンズは思い描いたイメージに合うように選びましょう」

撮影場所の決め方と構図の作り方に関しては、画面に入れたくないものを見つけることが重要だと話した。

「つい見落としがちなのですが、プリントの段階で構図から排除したいものが見つかることもあります。そうなってからでは取り返しがつかないので、日頃から構図を作るときは、『写したくないもの』をあらかじめ意識するようにしましょう」

上総大久保駅は、ホーム上に待合室だけがある、駅舎のない小さな無人駅だ。
構内に描かれた「トトロ」の絵でも有名。
撮り方や注意点をレクチャーしつつ、撮影に適した場所へ移動する
撮影地でタブレットを取り出し、自分の作例を紹介する中井さん。
ツツジの花びらを前ボケに使って、遠くを走る列車を狙う。

プリントは3種類の用紙から選択

用紙とフチごとの違いを説明する中井さんと福島編集長。

撮影会後は、白鳥公民館の2階にあるイベントスペースで、プリントと講評会を行なった。参加者は撮影してきた写真の中から2枚を選んで、プリントの仕様と用紙を指定し、出力する。判断が難しいと感じる参加者には、中井さんとデジタルカメラマガジンの福島晃編集長がアドバイスをする場面もあった。

使用したプリンターは、協賛企業のエプソン販売株式会社が用意したハイアマチュア向けColorio V-edition「EP-10VA」。グレーインクを含む6色染料K2インクを用いることで、モノクロも美しく、カラーでは、従来の6色と比べ色再現領域の拡大を実現している。

階調性や色精度の向上を図るほか、黒つぶれを低減する機能も搭載している。本体前面にタッチパネル式液晶モニターを備え、メモリーカードスロットも内蔵することから、PCレスでのプリントも可能だ。

さらに、インクと写真用紙<光沢>L判で1枚当たり約12.7円という低ランニングコストも特徴。作品志向のインク構成でありながらも、気兼ねなくプリントできる低コストがColorio V-editionの持ち味。ラインナップにはA4プリントまでの「EP-30VA」も用意されている。

使用できる用紙は、ファインアート紙「Velvet Fine Art Paper」、高光沢写真用紙「クリスピア」、光沢感を抑えた「絹目調」の3種類から選べた。このほかフチの太さやフチの色も指定でき、参加者各自、それぞれのセンスでプリントを楽しんでいた。

何人かに話を聞いたところ、いずれの参加者も普段は自分の作品をA4サイズで出力することはほとんどなく、フチまで意識してプリントすることは今回が初めて。できあがったプリントの想像以上のできばえに驚くとともに、とても満足しているようだった。また、PCレスでプリントできる点に感心する声も聞かれた。

中井さんのアドバイスによると、フチはかなり太くすることがおすすめだという。

「不思議なもので、用紙上の写真の面積は小さくなるのに、フチがあることで写真が締まって見えるんですよね。今回は用紙も複数種類あるので、是非とも普段やらないことを試してほしいです」

まずは写真を2枚セレクトする。
プリントする写真を決めたら、ファイル名と好みの印刷設定をプリント指示書に書き込む。
プリントする2枚のデータを、運営が用意したメモリーカードに書き込む。
この日、終始フル稼働していたColorio V-edition「EP-10VA」。
指示書通りにプリント設定を進めていく。
あとは出力が完了するまで待つ。
講評会の様子。参加者の作品を見ながらひとつひとつ丁寧な評価が行われた。

憧れの中井さんと撮影! プリントも新鮮な体験

プリントを見ながらの講評では、中井さんが参加者全員のプリントの良い点と改善の余地がある点を挙げながら、構図や撮影場所の選び方などのアドバイスを行なっていた。時間の都合もあり全員にというわけにはいかなかったが、何人かの参加者に感想を伺ってみた。

荒木理恵子さん

――今回のイベントに参加した動機を教えてください。

以前からいろいろなところで中井先生やその作品をお見かけしていて、すごく惹かれていたというのもあるのですが、私自身もカメラを始めて3年、中井先生がどういう撮り方をしているのかを見る良い機会になると思って、応募してみました。

――撮影会にはよく参加されるのですか?

聴講するセミナーには参加したことがあるのですが、撮影会は初めてです。

――写真プリントに対する意識は変わりましたか?

自宅にプリンターはありますが、あまり積極的にはプリントしないですね。でも今まではInstagramにアップするのをゴールにしていたのですが、今年、御苗場で写真を展示させていただく機会がありまして、それをきっかけに、本格的に興味を持ちました。

――今回の撮影会でメインの被写体となった小湊鐵道について、何か感じたことがあればお聞かせください。

小湊鐵道はTVや中井先生の作品で見ていたので、一度行ってみたいなとは思っていたのですが、なかなか電車でここまで来ることもないので、いい機会になりました。

小湊鐵道は電車もかわいいし、どの駅も『写真を撮りたいな』と思わせる雰囲気があって、本当に面白かったです。今日は一日券を買っちゃいました。

――今回のイベント全体を通しての感想をお聞かせください。

中井先生と直接お話しできましたし、色々教えていただけたし、すごく楽しいイベントでした。プロの方に写真を講評いただくという機会もないので、本当に参加してよかったです。

喜多亜紀さん

――今回のイベントに参加した動機を教えてください。

私はもともと中井先生の大ファンでしたので、デジカメ Watchでこのイベントの告知を見かけて、すぐ応募しました。当たって嬉しかったです!

――撮影会にはよく参加されるのですか?

初めてです。

――写真プリントに対する意識は変わりましたか?

プリントは全然していませんでした。でも画面で見るのとプリントで見るのとでは全然雰囲気が違っていて、すごく面白かったです。

――今回の撮影会でメインの被写体となった小湊鐵道について、何か感じたことがあればお聞かせください。

私も小湊鐵道にはずっと来たかったので、今日初めて来られてよかったです。駅舎も、線路も、周りの木々も含めた、半径何kmにもなる大きなセットのような雰囲気で、素敵ですよね。

それと道ゆく地元の方とも少しお話したのですが、みなさんとても優しくて、すごくいいところだなと思いました。

――今回のイベント全体を通しての感想をお聞かせください。

今までずっと中井先生が撮った小湊鐵道の写真を見ていたので、一緒に撮影地を回りながら、撮り方だけでなく、この写真はここで撮ったんだよ、と教えていただけたりもしたのは、すごく貴重な体験だったと思います。

長谷川聡さん

――今回のイベントに参加した動機を教えてください。

1日1鉄」(中井さんのブログ)を見て、このイベントの存在を知ったのがきっかけですね。以前から鉄道写真は撮っていて、中井さんのセミナーなどにも参加していたのですが、一緒に撮影したり、講評も受けられるということで、応募しました。

――写真プリントに対する意識は変わりましたか?

家にプリンターはありますが、写真をプリントすることはめったにないですね。イベントの告知を出力するくらいです(笑)

でも今、喜多さんがおっしゃったように、画面とプリントとでは見え方が全く違うことを実感したので、これからは自信作が撮れたらプリントしてみようかなという気持ちになりました。

――今回の撮影会でメインの被写体となった小湊鐵道について、何か感じたことがあればお聞かせください。

私は地元が千葉なので時々来るのですが、いつ来てもいい写真が撮れるんですよね。列車がすごくいいところを走ってくれるので、撮っていて楽しいです。

――今回のイベント全体を通しての感想をお聞かせください。

実は私もイベントを開催することがあるので、機材の手配から体制づくりまで、スタッフの方がの苦労が垣間見えて頭が下がります。私も見習って、仕事に活かしたいと思っています。

田丸真樹さん、田丸沙紅良さん親子

――今回のイベントに参加した動機を教えてください。

中井さんのTwitterをチェックしていたときにこのイベントの告知を見つけて、参加しようと思いました。

――写真プリントに対する意識は変わりましたか?

子どもの写真をLサイズでプリントすることはありますが、A4サイズでとなるとなかなか機会がありません。今回、実際にプリントしてみて、またやってみたいな、思いました。

――今回のイベント全体を通しての感想をお聞かせください。

ブログやTV番組でいつも見ている中井さんと一緒に撮影地を回って、直接指導を受けられたのがすごく嬉しかったです。

谷暁さん、谷ルミ子さんご夫妻

――今回のイベントに参加した動機を教えてください。

元々、中井さんの写真が好きだったので、たまたま今回のイベントの告知を見て、参加を決めました。せっかくなので夫婦で申し込んだところ、運よく二人とも当選できて驚いています。

――写真プリントに対する意識は変わりましたか?

写真を始めて2〜3年になりますが、自宅でプリントしたことは一度もないです。今日、初めてA4サイズでプリントしてみたのですが、出てきたプリントを手にすると「自分の作品」という実感がわいてきて、感動しました。同時にもっと上手く撮れるようになりたいな、という気持ちにもなりました。

――今回のイベント全体を通しての感想をお聞かせください。

中井さんの本を読んで写真の勉強をしたので、今日は直接お話できてとても嬉しかったです。

技術的なことはあまり聞けないのですが、撮影に臨むときに臆することなく茂みに入っていったりだとか、そうした一連の行動を直接見ることができたので、勉強になりました。

あとは、作品を講評いただけたのがうれしかったです。

北村きょう子さん

――今回のイベントに参加した動機を教えてください。

谷さんとは普段通っている写真教室の友達で、別々に応募しました。今回一緒になったのは本当にたまたまです。

――写真プリントに対する意識は変わりましたか?

ほとんどプリントをしたことがありませんでした。でも今回、中井さんや(デジタルカメラマガジンの)福島さんに用紙の設定の選び方を教えていただいて、実際にプリントすることで、明確に印象が変わったのがとても面白かったです。もっと知りたい、と思いました。

――今回のイベント全体を通しての感想をお聞かせください。

中井さんと一緒に撮影ポイントを回れたのがうれしかったです。小湊鐵道沿線にはよく来るので、今日撮れなくても、また次回来た時に役立つ学びもたくさんあって、次に来るのが楽しみになりました。

制作協力:エプソン販売株式会社

関根慎一