イベントレポート

【CP+】中井精也さん「記憶に残したい日本の鉄道風景 〜with α9 & α7R III〜」レポート

ソニーブース写真家セミナーより

鉄道写真家として名高い中井精也さん。公式ブログ「鉄道写真家 中井精也の1日1鉄!」では毎日鉄道写真をアップし、雑誌や書籍にテレビまで、連日メディアに引っ張りだこだ。

CP+2018ソニーブースでは、その中井さんが1日2回、計8回のステージに登壇した。今回は3月4日(日)12時5分からのステージの様子をお届けしよう。

愛くるしい笑顔とキャラクターで演説をする中井さん。

当然というべきか、このステージの観覧者も座席数にはとても収まらず。筆者も含め大勢の立ち見客がいた。

このステージでは、ソニーの新機種「α7R III」と「α9」を、中井さんの写真で紹介していく内容だった。まず驚かされたのは、α7R IIIの描写力の高さと連写性能の凄さだ。

「4,240万画素、フルサイズセンサー、約10コマ/秒撮れるカメラですね。『6、7枚で連写が止まっちゃうんでしょう』と思う人もいるかもしれませんが、今からRAW+JPEGフルサイズで連写していきます」

シャッターボタンが押され約4秒間、シャッター音は止まらなかった。4,000万画素を超えたフルサイズ機のRAW+JPEG記録で連写が切れない。これは本当に驚異的だった。

次に描写力の説明で、モニターに出されたのは、列車の車体に「506」と書かれただけの写真……と思いきや、なんと遠景で撮影された写真のごく一部を拡大して表示させたもの。1枚目の写真が表示された時には筆者は「ぽかん」とした表情だったが、元の写真が表示された時には目を見開いた。

最初にこの写真の左上の部分が拡大されて表示された。普通の望遠作品と見間違えるような画質だった。

そして意外だったのは、高感度耐性もかなり高いこと。メーカーのWebサイトなどではあまり大々的に謳われていないが、ISO感度を高めてもあまりノイズは出ないようだ。

「ハンガリーで撮影した写真です。だいぶ拡大してもシャープですが、感度はISO12800なんですね。ここまで伸ばしてもほとんどノイズが目立たない。すごい描写力だと思います」

メーカーはあまり表立った宣伝はしていないが、高感度画質も高い。

次に中井さんが取り出したのはα9。2017年5月に発売された機種だ。α7R III以上の高速連写ができる。さらにブラックアウトフリーで、連写中でもファインダーに被写体が写り続けるため、連写中も被写体を見失うことがない。鉄道の撮影で言えば、流し撮りなども成功率が格段に上がるという。

その連写で撮影されたのが次の写真だ。走っている電車にカメラを向け、夕日が重なった瞬間に連写。その中の1枚に、ドラマチックな瞬間が写っていた。テーマは「日常にシルエット」だ。

100-400mmのレンズも発売となり、テレコンバーターも取り付けてクロップ機能も使用。1,200mm相当の超望遠撮影となった。

次に写されたのは、大きく滝の流れが写り、画面上部に列車が入り込んでいるという不思議な写真。何が不思議かというと、水の流れは低速シャッターで表現されているのに、電車がブレていないのだ。

「踊り子の滝踊り」と名付けられた写真。流し撮りで撮影したため、低速シャッターでも列車の動きはブレていない。

「風景写真で滝を撮ると、高速シャッターで水の流れを止めて撮る方も多いと思います。ですが、この時は低速シャッターと列車が止まっている様子をなんとか両立したかったのです。シャッタースピードは1/30秒です。もちろんそのまま撮ればブレてしまいますが、ほんのわずかに流し撮りすることで、川の動きも列車を止めることも両立することができました」

ちなみにここでは、撮影している中井さんの様子も紹介された。胸まで覆う半胴長靴をすっぽりと着る中井さんが、なんともチャーミングであった。

そして圧巻だったのがスライドショーだ。旅情を感じさせるBGMとともに、ベトナムの風景が次々と流れていく。どこか古き良き日本を想起させるような景色の数々は、その場にいた全員をスクリーンに釘付けにした。

美しい音楽と写真に会場の人は癒された。筆者もこの時ばかりは目を奪われた。

スライドショーが終わると、今度は中井さんのカスタム設定の説明が入る。ファンにとっては垂涎の情報だ。

まずはレリーズ。多くのカメラにはピントが合っていない時にシャッターを下ろすかどうかを設定できる機能がついており、中井さんは常に「OFF」。ピントが合っていない時でも、シャッターさえ押せば撮れる設定にする。

次にAFとMFの切り替え。種類によってはレンズ側に切り替えボタンがついているものもあるが、この設定は常にカメラ側で切り替えられるようにしているという。

また、MF時にピントリングを回すと画面が拡大する機能も解除。その代わり、AFボタンに拡大機能を割り当てて、ピントの確認に活用している。こういった設定によって「カメラが生まれ変わるように使いやすく」なるようだ。

最後に、紅葉の写真テクニックを紹介しておこう。「萌ゆる秋」とテーマ付けされた写真は、構図の作り方が解説された。

「いかに紅葉を画面の中にいっぱい入れるか」がポイントで、曇り空の状況で白い空を大きくしてしまうと、いかに写真が弱くなるかという話だった。「曇り空の白い部分は親の敵と思え」とのこと。

また、色づくりの解説では、Dレンジオプティマイザーとクリエイティブスタイルを使って、見た目以上に鮮やかに表現する方法が紹介された。デフォルト設定と比較されてしまっては、納得するしかなかった。

そして最後に日本での写真で作られたスライドショーで締め。随所にコミカルな写真も挟みつつ、α7R IIIとα9の魅力がたっぷり語られた45分だった。

中村僚

編集者・ライター。編集プロダクション勤務後、2017年に独立。在職時代にはじめてカメラ書籍を担当し、以来写真にのめり込む。『フォトコンライフ』元編集長、東京カメラ部写真集『人生を変えた1枚。人生を変える1枚。』などを担当。愛機はNikon D500とFUJIFILM X-T10。