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「RICOH THETAデベロッパーズコンテスト」表彰式が開催
3Dオブジェクト配置アプリや、船のエンジン点検用ガジェットなど
Reported by 本誌:鈴木誠(2015/8/20 20:20)
リコーは8月20日、「RICOH THETAデベロッパーズコンテスト」の表彰式を開催した。同社の全天球カメラ「RICOH THETA」を題材にアプリケーションやガジェットを開発するコンテストで、4月から6月まで応募を受け付けていた。
主催はリコー、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所が共催。日本科学未来舘が協力している。
「THETAの更なる可能性を教えてもらった」
表彰式の冒頭には、リコー会長執行役員の近藤史朗氏が登壇。THETAはリコーのものだけでなく、APIやSDKを公開することで新しく面白い使い方が生まれるとし、今回のコンテストを実施した。2か月の応募期間に15か国から72作品が集まり、12作品を入賞とした。
実施には不安もあったそうだが、ユニークで素晴らしい出来栄えのものばかりが多数集まり、驚き、感動したと述べた。また今回のコンテストを通じ、THETAの更なる可能性について、リコー自身も教えてもらったと話した。
「学ぶところが多かった」
日本科学未来舘館長の毛利衛氏は、同館の最終目標が「科学技術を皆さんのアイデアで一緒に作り上げる」ことであり、それをTHETAが始めている、と述べた。
科学技術者と一般市民で協創する社会が日本科学未来館のもともとのコンセプトで、それを先駆けているTHETAには学ぶところが多かったという。
「オープン」に積極的なリコー
続いて、審査員長をつとめた東京大学大学院情報学環教授の坂村健氏がコンテストを振り返り、講評を行なった。各審査員は全応募作品を見たうえで、半日におよぶ審査を行なったという。
坂村氏は、THETAがAPIやSDKを開発者向けに公開するなどの「オープン」な部分を特に評価していた。大きな会社は「オープン」に否定的になりがちだが、リコーはそれにポジティブで、坂村氏の考えにマッチしていた。
そこでは、「積極的に技術情報を開示するから、一緒に未来を作ろう」、「(THETAについて)隠すものは何もない。全部出そう」といったリコー側からの言葉があったという。治具が作りやすいようCADデータもオープンにしようと提唱したのは、坂村氏だった。
坂村氏とは、「TRONプロジェクト」を1980年代に始めた人物である。“国産OS”として知られるTRONは、自動車のエンジンコントロールや小惑星探査機のはやぶさで使われており、リコー製品ではカメラ、複写機、プリンターに採用された。そのTRONは「オープンアーキテクチャ」の考えを基本に、ロイヤリティフリーで、ソースコードはすべて公開されていた。
ただひとつ残念だったと坂村氏が述べたのは、今回のコンテスト期間が2か月と短かったところ。しかし、今後も「思ってもみなかった」という面白さの作品を求めて、来年・再来年と続けていく考えだという。「21世紀の物の作り方とは、どこか一社でなく、みんなで作ること」だと締めくくった。
審査員講評
日本科学未来館 科学コミュニケーション専門主任の小沢淳氏は、審査においてポジティブに「これいいね」といった意見が多く、新しい賞を追加したほどだったと振り返る。
実用性の高い提案が多かったが、夢を抱かせるような作品がもっとあってもよかったと語り、「完成度は低くてもいいから、社会や文化を根こそぎ変えてしまうようなもの」に今後期待する。例として、メディア技術の発達と人類の発展はリンクしており、活版印刷が本になったような発達を挙げたうえで、「THETAは間違いなくそれ」だと語った。
NAKED Inc. 代表の村松亮太郎氏は、自身がクリエーター側なので技術的な凄さはわからないと前置きつつ、どういう面白さや可能性に繋がるのかを感じさせてくれることを重視したとコメント。「協創により、ともすれば平均化しがちなところ、それを抜けた特徴があるものを選んだ」という。
アートジャーナリストのDora Tauzin氏は、ビデオメッセージでの参加。THETAは今いるところを皆にすぐ伝えられるから楽しくて、面白い写真が撮れると評価。審査した作品には、かわいいものも、真面目ですぐに使えるものまであったとコメントした。
受賞作品(敬称略)
RICOH THETA賞
・Theta GPS(Cornelia and Harald Meyer)
・CliPETA(石村 司)
・360 Coffee Shop(360 Coffee Shop)
・ポータブルパノラマプレイヤー(MIRO)
・スマートエンジンカメラ きらりNINJA(日本郵船株式会社、株式会社MTI、ダイトエレクトロン株式会社)