ニュース

「RICOH THETAデベロッパーズコンテスト」表彰式が開催

3Dオブジェクト配置アプリや、船のエンジン点検用ガジェットなど

受賞者、審査員の記念撮影

リコーは8月20日、「RICOH THETAデベロッパーズコンテスト」の表彰式を開催した。同社の全天球カメラ「RICOH THETA」を題材にアプリケーションやガジェットを開発するコンテストで、4月から6月まで応募を受け付けていた。

RICOH THETA

主催はリコー、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所が共催。日本科学未来舘が協力している。

「THETAの更なる可能性を教えてもらった」

表彰式の冒頭には、リコー会長執行役員の近藤史朗氏が登壇。THETAはリコーのものだけでなく、APIやSDKを公開することで新しく面白い使い方が生まれるとし、今回のコンテストを実施した。2か月の応募期間に15か国から72作品が集まり、12作品を入賞とした。

リコー会長執行役員の近藤史朗氏

実施には不安もあったそうだが、ユニークで素晴らしい出来栄えのものばかりが多数集まり、驚き、感動したと述べた。また今回のコンテストを通じ、THETAの更なる可能性について、リコー自身も教えてもらったと話した。

「学ぶところが多かった」

日本科学未来舘館長の毛利衛氏は、同館の最終目標が「科学技術を皆さんのアイデアで一緒に作り上げる」ことであり、それをTHETAが始めている、と述べた。

日本科学未来舘館長の毛利衛氏

科学技術者と一般市民で協創する社会が日本科学未来館のもともとのコンセプトで、それを先駆けているTHETAには学ぶところが多かったという。

「オープン」に積極的なリコー

続いて、審査員長をつとめた東京大学大学院情報学環教授の坂村健氏がコンテストを振り返り、講評を行なった。各審査員は全応募作品を見たうえで、半日におよぶ審査を行なったという。

坂村氏は、THETAがAPIやSDKを開発者向けに公開するなどの「オープン」な部分を特に評価していた。大きな会社は「オープン」に否定的になりがちだが、リコーはそれにポジティブで、坂村氏の考えにマッチしていた。

東京大学大学院情報学環教授の坂村健氏

そこでは、「積極的に技術情報を開示するから、一緒に未来を作ろう」、「(THETAについて)隠すものは何もない。全部出そう」といったリコー側からの言葉があったという。治具が作りやすいようCADデータもオープンにしようと提唱したのは、坂村氏だった。

坂村氏とは、「TRONプロジェクト」を1980年代に始めた人物である。“国産OS”として知られるTRONは、自動車のエンジンコントロールや小惑星探査機のはやぶさで使われており、リコー製品ではカメラ、複写機、プリンターに採用された。そのTRONは「オープンアーキテクチャ」の考えを基本に、ロイヤリティフリーで、ソースコードはすべて公開されていた。

ただひとつ残念だったと坂村氏が述べたのは、今回のコンテスト期間が2か月と短かったところ。しかし、今後も「思ってもみなかった」という面白さの作品を求めて、来年・再来年と続けていく考えだという。「21世紀の物の作り方とは、どこか一社でなく、みんなで作ること」だと締めくくった。

審査員講評

日本科学未来館 科学コミュニケーション専門主任の小沢淳氏は、審査においてポジティブに「これいいね」といった意見が多く、新しい賞を追加したほどだったと振り返る。

日本科学未来館 科学コミュニケーション専門主任の小沢淳氏

実用性の高い提案が多かったが、夢を抱かせるような作品がもっとあってもよかったと語り、「完成度は低くてもいいから、社会や文化を根こそぎ変えてしまうようなもの」に今後期待する。例として、メディア技術の発達と人類の発展はリンクしており、活版印刷が本になったような発達を挙げたうえで、「THETAは間違いなくそれ」だと語った。

NAKED Inc. 代表の村松亮太郎氏は、自身がクリエーター側なので技術的な凄さはわからないと前置きつつ、どういう面白さや可能性に繋がるのかを感じさせてくれることを重視したとコメント。「協創により、ともすれば平均化しがちなところ、それを抜けた特徴があるものを選んだ」という。

NAKED Inc. 代表の村松亮太郎氏

アートジャーナリストのDora Tauzin氏は、ビデオメッセージでの参加。THETAは今いるところを皆にすぐ伝えられるから楽しくて、面白い写真が撮れると評価。審査した作品には、かわいいものも、真面目ですぐに使えるものまであったとコメントした。

アートジャーナリストのDora Tauzin氏

受賞作品(敬称略)

大賞

・Holobuilder - a web-based virtual reality creator using 360° Theta photos(bitstars)

全天球画像に3Dオブジェクトを配置できるWebベースのツール。「2Dのものは多く見られたが、こちらは3D。作りもよく実用レベル」(坂村氏)
受賞の瞬間をTHETAで撮影

アプリケーション・API部門賞

360HDR(aimino)

連写合成でHDRイメージを実現。保存ファイルはimage based lightingに使える

アプリケーション・ユーティリティ部門賞

・3Dパノラマ画像計測システム PanoMeasure2(株式会社ズームスケープ、株式会社インベステム)

全天球イメージから寸法計測や図面作成が可能。ワンショットの単体画像で使える。建築物での利用を想定

ガジェット部門賞

・Ambisonics360 マイクロフォン(Qos_mic)

4方向の音を個別チャンネルに録音し。専用プレイヤーで視点方向に合わせた音場を再現する

RICOH THETA賞

・Theta GPS(Cornelia and Harald Meyer)

GPSを用いて、指定場所で撮影を開始・停止できる

・CliPETA(石村 司)

全天球イメージを部分ごとに撮影・合成。自分が入らない写真や、自分が複数写り込んだ写真を撮れる

・360 Coffee Shop(360 Coffee Shop)

コーヒーショップの検索アプリ。THETAの全天球イメージを投稿する機能を持っている

・ポータブルパノラマプレイヤー(MIRO)

THETAの全天球イメージをメールで送る際、添付ファイルのみで完結するよう、アプリのインストール不要で「開けば再生できる」ファイルを作る

・スマートエンジンカメラ きらりNINJA(日本郵船株式会社、株式会社MTI、ダイトエレクトロン株式会社)

船のエンジン点検を助けるガジェット。人にかわってエンジン内部に入り、照明で照らしながら撮影する

審査員特別賞

・Journey360(タオソフトウェア チームサンディ)

カメラで撮影したマップ上に全天球イメージをマッピング。20代女性を想定したというアプリUIのかわいらしさも特徴的

・THETA PACKAGE HMD(itachin)

THETAのパッケージをカジュアルHMDにするアイデア。単眼用のフレネルレンズ、立体視用の二眼レンズを用意した。

・なかよしボックス(ParkCaravan実行委員会)

小学5年生のアイデアを親子で実現。四角い箱に顔を入れるとなぜかみんな笑顔になり、誰でも仲良くなれるというコンセプト

全受賞作品の詳しい紹介と講評コメントは、RICOH THETAデベロッパーズコンテストのWebサイトで読める。

(本誌:鈴木誠)