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ニコンD810発売直前記念:D700からD810までを振り返る

7月17日発売のニコンD810。価格はオープン。店頭予想価格は、ボディのみが35万円前後、D810 24-85 VR レンズキットが40万5,000円前後の見込み。※いずれも税込

いよいよ7月17日、ニコンからD810が発売される。D一桁系のプロ機D4Sの下位、FXエントリー機D610の上位に位置するFXフォーマット中位機の製品だが、読者諸兄はその歴史が、2008年発売のD700から始まったのを覚えておられるだろうか。

本稿はD810の発売を若干前倒しで祝し、ニコンFXミドルクラスの歴史を辿るものである。

待望の“フレンドリー”フルサイズ機−−D700

D700。発売当時の実勢価格は、ボディのみが33万円前後、「AF-S VR Zoom Nikkor ED 24-120mm F3.5-5.6 G (IF)」が付属するレンズキットが40万円強 ※いずれも税別

そもそもニコンFXフォーマットの第1号機は、2007年11月に発売されたプロ機、D3だった。キヤノンのEOS-1Ds(2002年9月発売)に遅れること約5年、ようやく35mmフルサイズセンサーを手に入れたニコン(※注)が、次にミドルクラスをフルサイズ化するのは自明のことと見られていた。F5にF100があったように、あるいはキヤノンにEOS 5D(2005年10月発売)があったようにだ。

※注)「フルサイズ参入に遅れをとった」は若干言い過ぎで、ニコンとしては当時の諸状況を鑑み、「現状ではDX(APS-C)こそが理想的なフォーマット」としていた経緯がある。

2008年7月、満を持して登場したD700は、DXフォーマットの最上位モデルD300に似た大きさのボディーに(幅は同じで奥行きが2mm、高さが約10mmほど増)35mmフルサイズセンサーを搭載。見事D3ジュニア、あるいは35mmフルサイズ版D300を体現したカメラとして市場に受け入れられた。

D700

D300からイメージセンサークリーニングや、ライブビュー機能を受け継いだのも、当時としてはトピックだった。35mmフルサイズにして本体のみ約5コマ/秒、マルチバッテリーグリップMB-D10装着時なら約8コマ/秒という連写性能にも驚かされた。

また、このクラスにしては珍しく、内蔵ストロボを備えていたのにも感心したのを思い出す。コマンダー機能も有しており、一方で高感度画質も当時としてはとても優秀。1台で様々なシーンをまかなえる実力が、プロ〜ハイアマチュア層に評価された。

かように高い完成度で現れたD700だったが、がっかりさせられた点がなかったわけではない。とりわけ当時取り沙汰されたのは、ファインダー視野率が約100%ではなかったことだ。

いま見ると比較的高さのあるペンタ部でありながら、ファインダー視野率は約95%にとどまっていたのだ。現在、より小柄なボディーのD610でさえ視野率約100%を実現していることに思い至ると、そんなところに改めて、約5年の月日を実感させられる。

とはいうものの、ニコンユーザーにとって35mmフルサイズ機を身近にした功績は大きく、ハイアマチュアを中心とした人気を一躍獲得するD700。この後市場では、EOS 5D Mark II(2008年11月発売)との熾烈な戦いが始まることになる。

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超高画素センサー&ローパスレス−−D800/D800E

D800。発売当時の実勢価格は、ボディのみ30万円前後、AF-S NIKKOR 28-300mm F3.5-5.6 G ED VRが付属するレンズキットは40万円前後。D800Eはボディのみで、35万円前後だった。

D700の発売から約3年半たった2012年3月、後継機のD800が登場した。筆者はデジカメ Watchの初期メンバーとして参加して今年で10年になるが、そのときのインパクトはいまだに忘れられないものだ。

有効画素数は3,630万。現在でも35mmフルサイズ機としては、トップクラスの画素数となる。さらには光学ローパスフィルターを無効にした兄弟機、D800Eも投入された(他のスペックはD800と同じ)。今に至る超高解像時代をリードしたのが、まさにD800/D800Eだったのだ。

D800

ファインダーは、ちゃんと視野率約100%を実現。フルHDムービー記録への対応や、CF & SDのダブルスロットの新設など、諸装備の強化にも抜かりはなかった。

そんなD800/D800Eは発表以来大人気となり、ともに想定を上回る予約が発生。ニコンイメージングジャパンより、両機種の品薄が個別に告知される事態となった。

D800とD800Eのどちらを購入するかで、悩んだ人もいるだろう。究極の解像力を持つD800Eはモアレ発生の可能性が高まる。しかもD800より5万円ほど高価。D800でも十分ライバルを引き離す画素数なのはわかっているが、D800Eと比べてしまうと……しかしモアレが……と、当時は堂々巡りの思考に陥ったものだ。

D800E

その後、D800/D800Eの解像力を引き出すには、「高級レンズ必須」「三脚必須」といった空気がカメラ業界を支配する。しかも光学ローパスフィルターを無効化したD800Eについては、ニコンから推奨レンズ16本がアナウンスされたほど。紹介されたのは、やっぱり全域F2.8の高級ズームレンズや、最近発売された単焦点レンズ群だった。いま思えばあの頃、いままでと別次元の画素数というだけで、ずいぶんと盛り上がったものだ。

2012年2月7日の発表時点では、スペック面でライバルのEOS 5D Mark IIを突き放した感があったD800/D800Eだが、同年3月2日、キヤノンからはすぐにEOS 5D Mark IIIが発表されている。

有効画素数こそ2,230万と5D Mark IIから大きな進歩はないが、D800/D800Eと同じくファインダーを視野率約100%にしてくるなど、こちらも順当な進化を見せていた。6コマ/秒の連写性能、拡張ISO102400などは、D800/D800Eを超えるスペックとして注目された。が、D800/D800Eの盛り上がりに比べて当時、どうしても地味に感じられたものだった(今でも人気の高い良いカメラです)。

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完成度を増した次世代FX機−−D810

D800の発売から約2年。その間、FX下位モデルD600およびD610の投入を交えながらも、プロ〜ハイアマチュアの間で独自のポジションを維持し続けるD800/D800Eだったが、その後継機がこのたび発売になるD810だ。

一見するとボディデザインはほとんど変わらず、有効画素数も3,635万と大差はない。「800」→「810」という型名の違いのさりげなさから、ややもするとマイナーチェンジに見られがちだが、実はかなり手が加えられていることに注目だ。

例えば内部のメカ機構を一新し、機構ブレの恐れを低減。ミラーアップ時に電子先幕シャッターが使えるようになるなど、高画素一眼レフカメラにおける進化の方向性を見せている。実際、シャッター音は静かで上品なものとなり、一眼レフらしい精密さがより感じられる。

画質面では、まず光学ローパスフィルターレスに1本化されたのがトピック。撮像素子も新型となり、そこに最新の画像処理エンジンEXPEED 4が加わった。これからのFX画質のスタンダードを問う出来であり、普段から言葉選びに慎重なイメージのあるニコンをして、「ニコン史上最高画質」を喧伝するほどだ。

その切れの良さと安定した絵づくりについては、先日公開したこちらの記事で確認していただきたい。

その他、AFの強化、RAWサイズS(3,680×2,456ピクセル)の追加、白画素入りの液晶モニターなど、手が加えられた点は多い。ボディーのみでの連写性能は、D700時代の5コマ/秒に戻っている。

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D700以来、このラインはニコンファンの支持を強く集める人気のクラスだ。ミラーレス勢においても35mmフルサイズ機がその地位を固める中、一眼レフカメラの進化が今後、どうユーザーにとらえられるのか。これからのD810の進撃ぶりを見守りたいと思う。

(本誌:折本幸治)