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ニコンZ 8にオススメのCFexpressは?上田晃司さんに聞くProGrade Digital「GOLD」の実力

5月26日発売のニコン「Z 8」は、上位機「Z 9」と遜色ない性能・機能を持ちながら小型軽量化したモデルとして注目を集めている。

「Z 9」と「Z 8」を実用するうえで実感できる大きな違いは、そのサイズ感や重量もさることながら、メモリーカードスロットで使えるメモリーカードが異なる点も挙げられる。CFexpress Type Bのデュアルスロットである「Z 9」に対して、「Z 8」ではCFexpressとSDメモリーカードスロットを1基ずつ備えている点に違いがあり、静止画撮影時であれば両スロット同時記録時の速度などに差が出やすい。

公称の最大書込速度が1,500MB/秒と現行メモリーカードの中でも高速なProGrade DigitalのCFexpress「GOLD」512GB/1TBシリーズは、長時間の高解像度/高フレームレート動画記録にも耐える性能が魅力だ。

今回は業務で「Z 8」を使っているカメラマンの上田晃司さんに、「Z 8」とProGrade 「GOLD」の組み合わせについて、ユーザーの視点からその利点についてお聞きした。

高度な連写・動画機能に機動力も合わせもった「Z 8」

——上田さんは発売前から「Z 8」を使っていると聞きました。気に入っているポイントとは?

上田晃司さん(以下略):「Z 8」は3月からおよそ3カ月ほど使っていますが(取材は6月)、「Z 9」と連写性能や動画機能は同等。それでいて小型軽量なので、遠くのロケに持っていくカメラとしてかなり気に入っています。特に重量は「Z 9」の1,340gに対して910gまで軽くなっていて、この差は「たかがペットボトル1本分」と言われがちなのですが、これって僕からしたら別次元の快適さなんです。それもあって、すでに遠出するときは「Z 9」よりも「Z 8」を持ち出すことが圧倒的に多いです。

Z 9の主要な性能をほぼ引き継ぎ、ボディを小型化したZ 8

あとは、「Z 9」と違ってバッテリーが「EN-EL15c」(Z 7IIやD850と同じ)なのも取り回しがよくて便利ですね。縦位置グリップ使用時であれば、ホットスワップも「Z 9」より安全(USB給電のために端子カバーを開かずに済む)にできるので、使えるシーンの幅も広がります。

——「Z 8」で高速なメモリーカードを使うことのメリットは?

静止画についていえば、「高効率RAW」を撮影した際の連続撮影可能コマ数が1,000コマ以上というのが印象的ですよね(CFexpress使用時)。要するにバッファがいっぱいになって撮影できなくなることが実用上「ない」ということなので、CFexpressの容量いっぱいまでシャッターが途切れることなく切り続けられます。

試してみましたが、「COBALT」では確かに無限にシャッターが切れました。一方「GOLD」1TBでは、およそ400枚まで途切れてしまいます。とはいえ、400枚でも一般的な撮影ではまったく問題ない、事実上「無限連写」といえるでしょう。つまり「GOLD」でもほぼ「Z 8」の性能を引き出せているわけです。

悩ましい? CFexpress+SDのデュアルスロット

——「Z 8」はCFexpressとSDメモリーカードのデュアルスロットを搭載していますが、上田さんの場合はどのように活用しているのでしょうか。

僕は動画を撮影する機会も多いのですが、「Z 8」は動画記録時のバックアップ記録に非対応ですし、少なくとも動画記録の際はCFexpressだけを使っています。

SDメモリーカードを使うのは、静止画撮影時の「バックアップ記録」が主な用途になりますね。

Z 8はCFexpress Type BとSDXC UHS-IIのデュアルスロットを採用する

メモリーカードの価格に目を向けると、CFexpressとSDメモリーカードとでは性能面で大きく開きがある一方で、価格面で大きく差がないどころかSDメモリーカードの方が容量単価的に高価だったりします。これから性能が求められるカメラについてはCFexpressが主流になることが要素されますね。「Z 8」のメディアスロットは、あくまも移行期ならではの仕様というのが僕の肌感覚です。

コスパに優れた「GOLD」

——上田さんはProGrade 「GOLD」1TBを気に入って使っているとお聞きしましたが、特に気に入っているのはどんなところですか?

個人的に「COBALT」のヘビーユーザーですが、「GOLD」が「Z 9」「Z 8」の性能を完全にカバーすることは体感しています。それに加えて「COBALT」より容量が大きいというのはシンプルに安心ですよね。「GOLD」の1TBは、1TB単位のポータブルSSDにバックアップするとき容量的に切りも良い。僕が持っているニコンカレッジの動画講座でも、メモリーカードについて尋ねられたら、「GOLD」をおすすめすることが多いです。

「GOLD」に2TBが登場

512GB/1TBからなる第3世代の「GOLD」に、2TBが追加された。最低継続書込速度は1TBと同じ1,300MB/秒。8K RAW動画の収録などで、さらに余裕を持った撮影が期待できる。

——「Z 8」と「GOLD」1TBを組み合わせて使っているユーザー層はどのような方々なのでしょうか。

大容量のCFexpressが必要になるユーザーは、その時点で「Z 8」を動画機として見ているはずです。YouTubeチャンネルを運営しているとか、半ば以上業務としてカメラを扱っている人たち。出したい映像が自分の中にあり、作品としてこだわって映像を作っている人たちだと思います。そういう方々はどんどん素材を収録していくので、1TBという大容量は便利に感じているのではないでしょうか。

CFexpress Type B GOLD 512GB(左)1TB(右)

——上田さんがメモリーカードを選ぶうえで重要視していることはなんでしょうか。

やはり信頼性は大事ですよね。メモリーカードって選ぶときのワクワク感がまったくないんですが、でも一番重要な部分なのもまた事実なんです。いろんなところで繰り返し申し上げていますが、それでもこれだけは強調しておきたいです。

もちろん容量や速度、性能と価格のバランスも大事ですが、そんなに使ってないのにデータが消えるようになってしまったり、エラーが頻発するようになったりしたら大変ですよね。どんなに高価なカメラを使っても、どんなにすばらしいタイミングで貴重なロケーションに居合わせたとしても、バックアップを取るまでその結果はメディアの中にしかない……。

何事にも絶対はないのですが、一つの目安として、業界団体による認証に準拠しているものを選ぶようにしています。例えば僕の場合は静止画だけでなく動画も撮影するので、CFexpressであれば「VPG」ロゴを取得しているかどうかに注目する、といった具合です。

Z 8で撮るならぜひ「CFexpress」を

——メモリーカードの運用や手入れに関して特に気を遣っていることはありますか?

「Z 9」も「Z 8」も動画撮影時の「バックアップ記録」(主/副スロット同時記録)に非対応なので、シングルスロット運用が基本になります。僕の場合は日常的なメモリーカードのメンテナンスの一つとして、カメラでの物理フォーマットを行なっています。

——撮影時の性能以外でProGradeのCFexpressを使う利点はありますか?

バックアップ時の速度ですね。例えばメディアからSSDへの書き出し時間でCFexpressとSDメモリーカードの公称値をざっくり比較するだけでもおよそ5倍以上は違うわけで、そうなると、気持ちの面でもこれまでよりバックアップする気が出てくると思うのです。

——デジタルカメラのメモリーカードといえば長らくSDメモリーカードでした。現行のCFexpressは今後、どのくらい長く使えると考えていますか?

静止画は言うに及ばず、動画でも当面の間は問題なく使えると思います。動画は「8K/30p」「4K/60p」のような形で「型」があるので、静止画のように撮影解像度が微妙に増えたりはしないからです。これは将来的にミドルクラスやエントリークラスのカメラ機種に8Kの動画記録機能が降りてきたときに、一定の実用性を保証することを意味しています。そういう意味では、長く使えるという点で資産と捉えることもできますよね。

——ProGradeのCFexpressで「GOLD」の1TBをおすすめする理由を教えてください。

やはり容量あたりのコスパですね。「GOLD」の512GBが2万7,000円というのに対して、1TBは6万円弱という実勢価格がその根拠です。僕の経験から、運用面でも1TBを買っておいて間違いはないかと思います。上位モデルの「COBALT」は最大容量の650GBで10万6,000円なので、僕のような仕事で使う立場なら良いのですが、現実的に購入にはちょっと覚悟が必要な価格でしょう。

SDメモリーカードも512GBクラスはかなり高額になってくるので、もし今後CFexpress対応のカメラが増えていくなら、性能に対する価格面の優位性も生きてくるはず。とはいえ使いたいカメラで使えなければ意味がないので、これから出てくるカメラの対応メディアも注視してみるようにするといいと思います。

関根慎一