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あの日のライカ Vol.5 tsukao × ライカSL2-S
2023年4月6日 08:00
広告、雑誌、カタログなど、幅広いジャンルで活躍するtsukaoさんは、プロフェッショナリズムと作風を両立する人気写真家だ。愛おしい瞬間や美しい光などを大切にしたその作風を追求する中で、ライカは憧れでありながらも正面から向き合うまでには至っていなかったという。しかし今回、ライカSL2-Sを手に沖縄でスナップ旅。使い慣れたカメラの延長線上で使うことができ、さらにライカの描写と伝統息づく質感を手にすることができたと話す。
tsukao
神戸大学卒業。菅原一剛氏に師事。2006年よりフリー。広告、雑誌、音楽、ファッション、などの分野で活動中。「3人のフォトグラファーが撮る小松菜奈」展などに参加。谷川俊太郎氏の写真詩集『<どこかの森>のアリス』(LD&K)、『雪の国の白雪姫』(PARCO出版)では写真とムービーを撮影。写真集に『ALL L/Right』(リブロアルテ)
——tsukaoさんにとって、ライカに対するイメージはどのようなものだったのでしょうか。
もちろん憧れのカメラです。師匠である菅原一剛さんのアシスタント時代、ライカのすごさ、特にレンズが素晴らしいという話を幾度となく聞いてきました。でも、なかなか手を出せるものではないなって。若いうちは広告の仕事などに対応できる機材にお金を回さざるを得なかったので、とてもライカにはたどり着けなかったんです。“ズミクロンの50mm”にはそれはもう憧れましたね。師匠と弟子というのは親子のようなものですから、親から聞いたことは心に残ります。ですから、ライカはいつかじっくりと取り組んでみたいと思っていたんです。
——ライカはお持ちですか?
フィルムのM型ライカをお借りして使ったことはあります。でも、なかなか向き合う時間を持てず、満足のいく写真が撮れないまま時間が経ってしまいました。憧れているけれども、最も遠い場所にいるカメラ、という感覚だったかもしれません。
——M型ライカのどのような点が難しさを感じさせていたのでしょう。
カメラのサイズは小さいのですが、気軽にパシャパシャと撮っていくというよりも、距離計を使って一枚一枚をしっかりと撮っていくイメージがあります。ファインダーの真ん中でピントを合わせる距離計の場合、絞り込んだり、置きピンをしたりして撮影すればいいのですが、いつもの撮り方とは異なるので、自分にとっては少し練習が必要ですね。
——“ライカといえばM型”と、特別視する向きもあります。
わたしにとって慣れているのは一眼レフカメラや中判の二眼レフカメラ。被写体を隅っこに置くことも多く、ファインダーの全面でフォーカシングするような使い方をします。旅でのスナップの場合、一瞬が勝負になるので、急に距離計でのフォーカシングになってしまうのは難しいですよね。ただ、ライカレンズへの憧れは強かったので、ミラーレスカメラにアダプターを介して古いズミクロンを使うというようなことはやったことがあります。
——今回使用したライカSL2-Sはミラーレスカメラですから、まさに純正のライカで最新鋭機の使い心地を得ることができます。Lマウントレンズを組み合わせれば当たり前ですがAF撮影となり、アダプターを使うことでMレンズもMFで使用できます。
今回はライカSLレンズの「バリオ・エルマリートSL f2.8/24-70mm ASPH.」も使いました。ライカでズームレンズを使うこと、そしてAF撮影ができることはとても新鮮でしたし快適でした。でも、MFで撮ることは元々苦にしてないですし、視認性の良い背面モニターでライブビュー撮影がおこなえるため、Mレンズを使うことのほうが多かったですね。拡大表示は使わなかったので厳密に見ていくとズレているかもしれませんが、画面のどの位置に被写体を置いても快適にフォーカシングできました。精度を求めるよりも、瞬間を切り取ることのほうが大切。そうした向き合い方での撮影であればライカSL2-SとMレンズの組み合わせで何の問題もなかったです。
——掲載作品は「ノクティルックスM f1.25/75mm ASPH.」で撮られたものが多いですね。M型ライカでは35mmや50mmによる作品が多いので、新鮮なセレクションです。
特に旅のスナップの場合は、少し距離を取り、その世界を壊さないよう撮影するのが私のスタイル。また、人や動物など動きのある被写体をできるだけ入れて撮りたいと思っています。今回は沖縄を訪れましたが、やはり日本だとあまり人に近づいて撮ることはできない感覚があり、明るい中望遠レンズは使いやすく、海辺などで少し遠目に人物を狙うのがとても楽しかったです。重さはあり長時間歩いていると疲れてきますが、それでもフォーカスリングのねっとりとした操作感がよく、大きくても使い勝手はいいという印象でした。
——なぜ沖縄を選んだのですか?
ライカという高価なカメラを持って海外ロケに行くのは私にとって怖さがあり、避けたいという気持ちはありました(笑)。国内で冬であってもカラフルな場所といえば沖縄、そしてビーチが美しい場所といえば沖縄じゃないですか。そもそもビーチだけで写真集を作りたいほどビーチという場所が好きなんですね。みんなが開放的になって楽しんでいる場所で、自由な雰囲気が充満しています。そういう場所で撮るスナップは最高ですね。
——使用レンズは「アポ・ズミクロンM f2/50mm」を筆頭に現行ラインナップのレンズです。描写はいかがでしたか?
現代レンズらしい性能の高さだと思いました。試し撮りをしたときに感じたのですが、置いてあるコップを撮っただけでも雰囲気がよくなるから不思議だなって。きっと、すごい解像力や階調再現性があるということなんでしょうね。ただ、ライカSL2-Sとの組み合わせでは、沖縄の天気のせいもあるのかもしれませんが、他社の最新機材と比べるとしっとり写る気がしますね。ひと足早く桜なども咲いていましたが、経験上もっと派手に出るだろうなというものも、見た目に近い色で再現されました。それだけデータが豊潤ということだと思います。
——RAWデータを現像してみての感想は?
沖縄は暗いところと明るいところの差がとても激しいので、暗めの露出で撮ることが多く、掲載作品もRAW現像をしたものになります。暗部を持ち上げてもきれいに出ますし、空も白飛びせずに表情が残っていました。あまりにもそれを活かしすぎるとどんよりとした空になってしまうので、少し明るめに調整しています。仕上げ方に自由さがあるデータだなと思います。
——いつかはライカとじっくり向き合いたいという想いは、ライカSL2-Sで叶えられそうですか?
M型ライカと比べると圧倒的に気軽さを感じました。加えて質感が素晴らしく、手にしただけで素性の良さがわかりますよね。最初は「アポ・ズミクロンM f2/50mm」のような小ぶりのレンズを付けたときのデザインにキュンとしていましたが、それは気持ちのどこかで“ライカは日常に寄り添うような存在”というイメージが抜けてなかったからだと思うんですね。
ライカSL2-Sの場合は、AFのズームレンズや中望遠レンズなどを付けて、より快適に一瞬を撮るという使い方まで踏み込むのがいいなと思いました。ライカと言えば35mmや50mmによる作品が多いので、その根底に脈々と流れる感覚と、現代的に洗練された使用感。それが共存できる使い方をこれからも探していきたいと思います。
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制作協力:ライカカメラジャパン株式会社