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FUJIFILM X-H2Sの連写性能を引き出すには? CFexpress「COBALT」で検証してみた

超高速連写、超高画素動画。ここ近年のデジタルカメラはこの2つの柱を中心に飛躍的な進化を遂げている。今年の7月には、APS-C機種で初めてとなる積層型センサーを搭載し、約40コマ/秒の超高速連写と6.2K 30P動画を実現した「FUJIFILM X-H2S」(以下X-H2S)の登場が話題となっている。

その性能をフルに発揮するため、これまでSDメモリーカード(UHS-I、UHS-II)を採用してきたXシリーズと異なり、X-H2Sでは「CFexpress Type B」をメモリーカードに採用した。

X-H2S(と兄弟機のX-H2)は、CFexpress Type Bに加えてSDメモリーカードも使用できるダブルスロットを装備している。そのため以前からのXシリーズユーザーが所有しているSDカードがそのまま使用可能だ。

X-H2Sのダブルスロットのうち、スロット1はCFxexpress Type Bに対応している

しかし最高性能が出せるのはあくまでもCFexpress Type Bのみという制限がつくため、多くのユーザーがCFexpressの導入について悩んでいることだろう。

なにを隠そう私もその一人で、ゆくゆくはX-H2Sを導入するにあたりCFexpressを導入しなければと考えていたところ、今回CFexpressを試す機会に恵まれた。その性能をしっかりとテストしてレポートしてみたいと思う。

CFexpressとは?

当サイトの読者ならご存知の通り、CFexpressカードは理論値での最高転送速度が2,000MB/sという化け物カード。今回計測に使用したプログレードデジタルの「CFexpress Type B COBALT 1700R 165GB」(以下CFexpress COBALT)は読込1,700MB/s、書込1,500MB/sという性能に仕上がっている。

ちなみにCFexpressの前身ともいえるXQDカードのスペックはというと、読込440MB/s、書込400MB/s。かつてプロ向けの一眼レフカメラが採用していたCFastカードが読込525MB/s、書込450MB/sあたりが最高スピードだったので、CFexpress COBALTは両カードの3倍以上の転送速度ということになる。

今回はCFexpress COBALTに加えて、同じくプログレードデジタル製の「CFexpress Type B GOLD 1700R 128GB」(以下CFexpress GOLD)も検証。さらにSDXCメモリーカードの「SDXC UHS-II V90 COBALT 300R 128GB」(以下SDXC COBALT)のカードを加えた3枚のカードをX-H2Sで使用して比較してみようと思う。

検証で使用したメモリーカード

SDXC UHS-II V90 COBALT 300R 128GB
最大読込300MB/s
最大書込250MB/s
CFexpress Type B GOLD 1700R 128GB
最大読込1,700MB/s
最大書込1,400MB/s
CFexpress Type B COBALT 1700R 165GB
最大読込1,700MB/s
最大書込1,500MB/s

とにかく連写性能が高い「FUJIFILM X-H2S」

ここでX-H2Sがどんなカメラなのか簡単におさらいしよう。

APS-Cセンサー搭載のミラーレスカメラで初めて裏面照射積層型の約2,616万画素COMSセンサーを搭載。

電子シャッターの高速連写はAF/AE追従で最高約40コマ/秒。JPEG記録の約30コマ/秒連写では1,000コマ以上の連続撮影が可能だという。

動画は6.2K 30P 4:2:2 10bitまで記録できる。

電子シャッター時のローリングシャッター歪みも大幅に改善。動物や乗り物といった被写体認識AFや、最大7.0段のボディ内手ブレ補正など、あらゆる面で高い性能を誇るモンスターマシンだ。

FUJIFILM X-H2S

検証① 約40コマ/秒での書き込みコマ数(連写が止まるまで)

ここからは検証に入る。

まずはX-H2Sの特徴でもある約40コマ/秒の高速連写がどこまで続くのか検証してみよう。今回は非圧縮RAWデータのみの記録とJPEGのみの記録のそれぞれでテストしてみた。

結果は次の通りだ。

SDXC COBALTは非圧縮RAW約111コマ、JPEG約152コマ。思った以上にしっかりと撮れた印象。

CFexpress GOLDは非圧縮RAW約118コマ、JPEG約152コマ。SDXC COBALTよりもRAWで7コマ上回った結果となった。

最も成績の良かったのがCFexpress COBALTだ。非圧縮RAW約145コマ、JPEG約154コマとなり、他のカードに比べRAWで30枚ほど連写を継続できたことになる。

ちなみに富士フイルム公式ページでの連続記録コマ数は非圧縮RAWが140コマ、JPEGが184コマと記載がある。今回の検証では非圧縮RAW記録におけるCFexpress COBALTでこの数値のクリアを確認できた。

検証② 連写遅延→書き込み終了までの時間

さて、連続記録コマ数でも1.3倍程度の性能差を見せたCFexpress COBALTだが、実際の撮影では連写が一度きりで終わることなどなく、次のシャッタータイミングで再度連写に入ることになる。そのため、バッファ開放(カードへの書き込みが終了)のスピード感のほうが重要だったりする。

ということで連写がスローダウンしてから書き込み中のランプが消えるまでの時間も計測してみた。

データ量の大きい非圧縮RAWの場合、CFexpress COBALTとCFexpress GOLDの差はなんと約2.6倍までになった。

JPEGでは大きな差にはならなかったが、非圧縮RAWともなると、カードへの書き込みはもろに性能差が表れということなのだろう。

ちょっとここで気になったので追加のテストもしてみた。おそらく多くのユーザーが持っている数年前のSDメモリーカードがどの程度この超高速連写に耐えられるのかということ。

ということで手元にあったUHS-I 95MB/sのカードで非圧縮RAWの約40コマ/秒連写をしてみたところ、約104コマで連写が滞り、その後のバッファ開放までの時間が約1分50秒かかった。CFexpress COBALTの約12秒からすると、いつ終わるのか不安になるほど遅く感じてしまう結果だ。

ところで最大書込速度で見ると、CFexpress COBALTとCFexpress GOLDで大きな差がないように見える(1,500MB/sと1,400MB/s)。それなのにこれほど違いが出るのはなぜだろう?

実は「最低継続書込速度」が大きく違うのだ。それぞれCFexpress COBALTが1,400MB/s、CFexpress GOLDが140MB/s。つまりCFexpress COBALTは書込速度が下がりにくい。

これは記録方式の違いによるもので、CFexpress COBALTが速度に特化したSLC(Single Level Cell)を採用しているのに対し、CFexpress GOLDは大容量化しやすいTLC(Triple Level Cell)を採用しているためだ。連写を重視するなら最大書込速度とともに最低継続書込速度も重視した方が良いだろう。

検証③ 約30コマ/秒での書き込みコマ数(連写が止まるまで)

これまでのテストでCFexpress COBALTの優位性が証明されたが、もう少しテストしてみたい。そう、富士フイルムが公表している「約30コマ/秒のJPEG連写なら1,000コマ以上の継続連写ができる」という話だ。

いや、そんな連写をし続けることは私の撮影スタイルにおいてはまずないわけだが、それでも気になっちゃうのがホンネ。ということで約30コマ/秒の連写を先ほどと同じく非圧縮RAWとJPEGでテストしてみた。

ちなみに書き込み終了時間は、CFexpress COBALTが13秒(非圧縮RAW)、CFexpress GOLDが32秒(非圧縮RAW)/29秒(JPEG)、SDXC COBALTが31秒(非圧縮RAW)/27秒(JPEG)という結果になった。

注目して欲しいのはCFexpress COBALTのJPEG。テストを始めたものの、終わらないのだ。「∞」と記載したものの、実際には7,000枚を超えたところで私の気力が折れて連写を止めた、というのが実際のところ。そしてさらに驚いたのが、7,000枚以上の連写を終えた瞬間、カードへの記録も終わっていたのだ。要するにカードいっぱいまで連写できたということ。

JPEGとはいえこれまで体験したことがなく、CFexpress COBALTのパワーをこれでもかと感じるテストとなった。

検証③ 動画データ(6.2K/30P・5分・約3.2GB)のPCへの転送秒数

最後に、PCへのデータ転送のスピードテストもしてみよう。今回はX-H2Sが6.2K 30Pが撮れるということで6.2Kで約5分(データ量約3.2GB)の動画を撮ってみた。

テストに使用したPCの主なスペック
CPU:AMD Ryzen 5 3600 6-Core Processor(3.60 GHz)
メモリ:48GB
記録先:PC内蔵SSD

PCへの転送にはプログレードデジタルの「CFexpress Type B/SD USB3.2Gen2 ダブルスロットカードリーダー」を使用した。

CFexpress Type B/SD USB3.2Gen2 ダブルスロットカードリーダー

結果、どれも想像以上に速かった。CFexpress COBALTとGOLDで速度に差がないのはカードリーダーの最大転送速度が1.25GB/秒ということでカードの速度が上回ってしまっているためだと思われる。

まとめ

今回の検証は2つの驚きがあった。ひとつはX-H2Sのバッファの大きさ。2,616万画素の約40コマ/秒連写で安定した挙動と十分な記録コマ数は素晴らしいと感じた。今回の検証では触れていないが、プリ連写モードなどを使用しても画面表示のカクつきなどもなくとにかく安定して高速性を享受できた。

そしてもうひとつはもちろんCFexpressのスピードだ。特にCFexpress COBALTの場合、体感では他カードの2倍以上の性能に感じられた。高速性とストレスのない連写性能を求めるユーザーにおいては、X-H2Sの性能を最大限引き出してくれる。反対にそれほど高速性を求めないユーザーは高画素のX-H2が向いているわけで、その場合のカードは大容量化しやすいCFexpress GOLDのほうが向いているかもしれない。

積層型センサーによるローリングシャッター歪みのないクリアな画像、超高速連写と優れたAF、強力なボディ内手ブレ補正と扱いやすく強靭なボディを持つX-H2S。圧倒的な書き込み速度でカメラの持つポテンシャルを最大限まで引き出すCFexpress COBALT。私も覚悟を決めなければならないときが来たようだ。

制作協力:プログレードデジタル

1986年埼玉県生まれ。風景写真家。雑誌『風景写真』の編集を経てフリーランスになる。日本各地の自然風景、生き物の姿を精力的に撮影。雑誌への執筆や写真講師として活動している。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。