特別企画

大口径単焦点レンズの魅力をコンパクトなサイズに凝縮——ソニー「FE 24mm F1.4 GM」レビュー

カメラグランプリ2019 レンズ賞を受賞した、最も小さな“G Master”

目移りするほどラインナップの豊富なソニーレンズ。カタログやサイトを眺めて、夢を思い描くのは至福のひとときだ。

しかしながら、あれこれ欲しくなっても、現実問題、お財布と相談しながら、絞り込まねばならない。

そんなときに頭を悩ませることのひとつが、単焦点レンズの存在だ。

多くの人は最初にキットレンズもしくは標準ズームレンズをボディと合わせて買う。そのためレンズを追加購入する際、所有レンズでカバーできる焦点域(24mm〜70mmなど)は「ズームで撮れるから、要らない」と後回しになりがちだ。

けれどもレンズの(そして撮影の)楽しさを純粋に求めるなら、単焦点レンズがイチオシだ。

なかでもFE 24mm F1.4 GMは、ソニーが誇るミラーレス専用設計レンズの最高峰、G Master(Gマスター、略称GM)。開放F値もF1.4とかなり明るく、しかも小型軽量という、従来の高級レンズの常識を塗り替えて登場した逸品。

その証拠に、目利きたちが選ぶ「カメラグランプリ2019 レンズ賞」を受賞している。カメラグランプリとは、その年に発売された最も優れたカメラとレンズを選出する日本で権威のある賞。FE 24mm F1.4 GMはレンズの日本一ともいえる「レンズ賞」を受賞した。

明るい単焦点レンズの魅力

なかでも注目してほしいのはF1.4の開放F値だ。この数値が小さなほど、多くの光を取り込めるため、暗いシーンでも動きを止めやすい、ボケ効果を楽しめるなど、メリットは多く、作品に与える影響は大きい。

参考までに明るいズームレンズとして定評のあるFE 24-70mmF2.8 GM IIと比較しても、最大4倍の光を取り入れられるほどだ。

焦点距離24mmの特長としては、広角らしい遠近感が極端に強く出るわけでもなく、自然な感覚のままに適度な広さを感じる構図が作れること。これが20mmアンダーの領域になると、目の視野とレンズの画角差が激しく、構図作りのハードルが一気にあがり、ベテランでもなかなか苦戦する。

ズームが無いために不便とされる構図決定は、自分の足で前後に動けばたいていカバーでき、ズーム操作で安易に構図を決めずに考えながら被写体としっかりと向き合う経験値を積むにはちょうどいいかもしれない。

なお本機はフルサイズ対応レンズであることから、奥の手としてカメラ側(フルサイズモデル)のメニューより「APS-Cサイズ撮影」へ切り替えればクロップされ35mm換算で36mm相当での撮影も可能。

画面中央を切り抜くかたちになるが、画素数はベーシックなα7 Ⅳでも、約1400万画素をキープして、A4プリント(210×297mm)程度の画素数は保つので、2本のレンズを持っているかのように使い分けることもできる。

ちなみに昨今のスマートフォンの標準レンズは、24mmから30mm近辺が主流。スマホカメラをきっかけに写真に目覚めた方も、24mmは馴染みやすい焦点距離のはずだ。

明るい割に軽量・コンパクト

今回はスナップや風景を中心に撮影を楽しんだ。
一般的にフルサイズ用高級レンズといえば、どっしり風格あるサイズと重さがトレードマーク。しかしながら、本レンズは大口径と思えぬほどに軽量な445gで、街中はもちろんのこと、足場の悪い山中を歩くときでも、カメラを下げた肩や首への負担が少ないのがうれしい。

α7 IVに装着。開放F1.4の広角レンズとは思えないコンパクトさ
軽量コンパクトなレンズとボディなら山中でも軽快に撮影できる

同スペックのライバルと比較しても、群を抜く軽さで、ワンランク暗いレンズと比較して、ようやく肩を並べる製品もあるくらいだ。

本体が軽いと言っても、外観の塗装は梨地に仕上げられており高級感はしっかり保たれているので心配は無用。小さく塊感のある本体には、適切な位置にフォーカスホールドボタンや絞りリング、同リングのクリック切替スイッチなども用意され、扱いやすいものだ。

絞り値を変更できる絞りリング
上からフォーカスホールドボタン、AF/MF切替スイッチ
絞りリングのクリック切替スイッチ

スムーズなオートフォーカス&高度な画質性能

オートフォーカスは、ほぼ無音のまま俊敏に動き、ストレスは皆無。

聞くところによれば、ダイレクトドライブSSMという、スピーディで特にレスポンスの良いアクチュエーターで駆動しているとのこと。気持ちよさの陰には、最新技術で支えられているのを痛感する。

α7 IVなどに搭載されているフォーカスブリージング補正の対象レンズになっているのもポイント。動画の撮影中、ピントの位置が変わるとそれにつれて画角が変わってしまう現象がフォーカスブリージングで、頻繁に発生すると気になるものだ。

FE 24mm F1.4 GMを対応カメラとあわせて使えば、フォーカスブリージングを抑えて動画を撮影できる。

描写については写真とともに案内するが、全般を通して、画面中心部から周辺部まで安定した写りで、ボケや逆光性能なども高レベル。PCモニターにて検証しても良いレンズで撮った充実感に浸れて、思わず頬も緩む。

FE 24mm F1.4 GM ギャラリー

α7 IV/絞り優先(1/200秒・F16・-2.7EV)/ISO 100

夏の日差しを受けても、目立つゴーストやフレアーは見当たらない。

絞り値が大きいのは、太陽の光芒を出すための選択だが、画質劣化を伴う回折もほとんど気にならず、コントラストが織りなす、草原の美しさが際立つ。


α7 IV/絞り優先(1/30秒・F2.8・+0.3EV)/ISO 640

大きくぼけすぎると、形がわからなくなるのでF2.8を選択。

画面右下から、左奥にかけてのなだらかにつながるボケが見もの。ピント位置の細かな模様も、手に取るようにわかり、PCモニターで確認するとゾクゾクするほどだ。


α7 IV/絞り優先(1/125秒・F1.4・-0.5EV)/ISO 100

木漏れ日に光る葉が美しい。

ボケの輪郭も強くなく、いわゆる玉ねぎ状の輪線も見られない。周辺部のボケ形状も比較的円形を保ち、考慮して作り込まれているのがよくわかる。

最短撮影距離は24cm。広げた手をおおむね画面いっぱいに撮れる。


α7 IV/絞り優先(1/100秒・F2.8・-0.7EV)/ISO 1600

バリアングルモニターを利用して、レンズを水流ギリギリまで近づける。

足場の悪いところでの撮影は、軽くてハンドリングが良いのがうれしい。

なお、防水ではないが、防塵防滴に配慮した設計が施されており、アウトドアでも安心だ。


α7 IV/絞り優先(1/250秒・F2.0・-0.5EV)/ISO 100

このようなシーンでは、自転車のフレームにピントを合わせたいが壁にピントが合うことも通常よく起こる。本機ではフォーカスホールドボタンにピント拡大を割り当てれば、スピーディで確実にすすめられる。


α7 IV/絞り優先(1/8,000秒・F1.4・-1.5EV)/ISO 100

本来、このようなシーンを絞り開放で撮ることは、まず無いが試してみる。

F1.4の威力は大きく、本来ボケにくいとされる広角域で、遠景はぼけて、木枠が浮き立つ。画面周辺部の砂の描写も見事だ。

ソニーレンズ最高峰の一角を担う製品

Eマウントレンズは純正レンズと共に、ソニーからの仕様開示により市場には非純正レンズも豊富に出回っている。

しかし近年は静止画だけでなく、動画需要も加わり、単純に高画質でオートフォーカスと絞りが動いて、写真や動画が撮れる要求だけでなく、さらなるスピードアップ、静音化、レスポンス、AF精度、画像補正、手ぶれ補正など、カメラとレンズの連携で求められる性能は想像以上に高いものになりつつある。

極論を言えば、レンズが純正でないとボディ性能を100%引き出すのは難しく、加えて、レンズとボディ双方のマッチングの確実性や安心感はなにものにも代えがたい。その違いでシャッターチャンスを逃すことがあるなら、金額で埋まらない損失にすらなりかねない。

ひとそれぞれ、いろんな尺度でのモノ選びを楽しめば良いと思うが、純正レンズのアドバンテージを頭の片隅に置いて、確かなチョイスをおすすめする。

そんななかでも、FE 24mm F1.4 GMはソニーレンズ最高峰の一角を担う製品だ。

また改めて FE 24mm F1.4 GMを使ってみて、単焦点レンズで撮影する楽しさを実感した。標準ズームレンズの焦点域で実現できる画角だが、コンパクトなサイズが取り回しの良さに繋がり、ボケをはじめとした表現力も大口径単焦点レンズならではといえる。SNSなどで自己表現の場は広がっている中、作品を発表する楽しさをこのレンズで実感してもらいたい。

提供:ソニーマーケティング株式会社

(ももいかずし)写真家・長友健二氏に師事の後、フリーランスフォトグラファー。撮影は人物・海外風景を中心に、カメラ関係書籍の執筆も行なう。NHK「趣味悠々/デジタル一眼レフ撮影術入門(2006)」「趣味悠々/シーン別デジタルカメラ撮影術入門(2008)」 など、テレビ、イベント出演も多数。公益社団法人日本写真家協会会員。