特別企画
写真&動画のバックアップに…Kingston ポータブルSSD「XS2000」レビュー
小型で高速、耐久性能もアリ USB 3.2 Gen 2x2対応の実力を見る
2021年12月21日 07:00
写真を撮影していて何より恐ろしいのが、撮影したはずのデータが失われることだ。そして、それは珍しいことではなく、ちょっとした不注意だけでなく、不意の事故や紛失、カメラやメモリカードの不調で、いとも簡単に起きてしまうことだ。
それを避けるためにも、バックアップが重要になるのだが、面倒で手間がかかるもの、というイメージがあるかもしれない。特に昨今、デジタルカメラの高画素化が著しく、2,000万画素、4,000万画素、1億画素と高画素化するとデータ容量も増加し、バックアップにも時間が掛かるようになってしまった。
動画撮影がより身近になってきたことも、そうした傾向に拍車をかけている。これまで静止画だけで済んでいたのが、同時に動画の撮影も求められることが多くなっており、そうして撮影された動画データの容量は莫大だ。
そんな時に活躍するのがポータブルSSDだ。高速なストレージとして知られるSSDは、持ち歩きが簡単な小型なものも増えてきた。容量が少ないというイメージもあるSSDだが、大容量モデルも増えてきて実用的になっている。
ここで紹介するKingston「XS2000」も、高速大容量・小型軽量ポータブルSSDの最新モデルだ。デジタルカメラのお供として、安心安全を実現する1台なのだ。
高速規格に対応した超コンパクトなポータブルSSD
XS2000は、インタフェースとしてUSB 3.2 Gen 2x2を採用したポータブルSSD。容量は500GB、1TB、2TBの3種類が用意されており、用途に応じて選択できる。今回試用したのは2TBモデルだ。
何といっても USB 3.2 Gen 2x2対応という点が大きなメリットだ 。公称の転送速度は読み取り速度2,000MB/秒、書き込み速度2,000MB/秒と高速。SDカードの場合、UHS-IIでもそれぞれ300MB/秒、250MB/秒なので、10倍近い速度差となっている。
USBにはいくつもの規格があり、その1つがUSB 3.2 Gen 2x2。転送速度が最大20Gbpsになるという高速な規格だ。
USBはこれまで、USB 3.0、USB 3.1、USB 3.2と進化しており、そのたびに名称が変更。USB 3.2世代となってUSB 3.0は「USB 3.2 Gen 1」(USB 3.2 Gen 1x1という表記もある)、USB 3.1は「USB 3.2 Gen 2」、そしてUSB 3.2は「USB 3.2 Gen 2x2」となった。
このようにUSB規格は煩雑で、PCやUSB充電器でよく見かける長方形の端子は「USB Standard-A」と呼ばれ、これはUSB 3.2 Gen 2までしか使えない。この時の転送速度は最大10GbpsとUSB 3.2 Gen 2x2の半分。
20Gbpsのスピードを実現するには、接続するPCもストレージもUSB Type-C端子を備え、ケーブルを含めてUSB 3.2 Gen 2x2に対応している必要がある。
USB 3.2 Gen 2x2に対応したポータブルSSDはいくつか出ているが、その中でこのXS2000は、とにかくコンパクトな点が特徴の1つ。
本体サイズは69.54×32.58×13.5mm、28.9g。 ポケットにも気軽に収まるし、小型のバッグでも簡単に収納できる 。
持ち運びしやすい代わりに、誤って落としてしまいそうになる。それも付属のラバースリーブに収納すれば、ある程度の衝撃にも耐えられる。他の機材と一緒に収納しても傷つけないというメリットもあるだろう。
それだけでなく、 IP55相当の防水防塵性能 というタフさも備えている。粉塵が内部に入り込まず、水が直接かかっても影響を受けないというレベルなので、撮影で想定されるハードな現場でも安心して利用することができる。
いざという時に持ち歩いていないと意味がないのがバックアップだ。PCと一緒に持ち歩いても邪魔になることはないし、周囲の環境を問わずに取り出して利用できるのが、このXS2000なのだ。
実力をベンチマークで検証
実際にどの程度の実力を発揮してくれるのか。真の実力を発揮するためには、接続する端末がUSB 3.2 Gen 2x2に対応している必要がある。そこで、デスクトップPCのPCIe 4.0 x16スロットにUSB 3.2 Gen 2x2対応の拡張ボードを取り付けてXS2000を接続した。
まずはベンチマークソフトでのテスト。定番ソフト「CrystalDiskMark」でテストしたところ、1GiBの転送ではシーケンシャルの読み込みが2086.48MB/秒、ランダム読み込みが169.21MB/秒などとなった。シーケンシャル読み込みは約17Gbpsほどとなるため、最大20Gbpsという規格から考えれば十分な速度が出ていると言えるだろう。
書き込み速度は、シーケンシャル書き込みが1882.03MB/秒(約15Gbps)、ランダム書き込みが191.80MB/秒。
比較として、他社ブランドのUSB 3.2 Gen 2接続ポータブルSSDも用意して計測してみた。PCとの接続はXS2000と同じ端子、同じケーブルを利用している。その結果、シーケンシャル読み込みは1091.86MB/秒(約8.7Gbps)、ランダム読み込みが227.41MB/秒、シーケンシャル書き込みは1065.45MB/秒(約8.4Gbps)、ランダム書き込みが198.35MB/秒などとなった。
結果、2倍とはいかないものの、USB 3.2 Gen 2x2に対応したXS2000は、 USB 3.2 Gen 2対応品よりかなり高速 だということがわかる。規格上の最大速度と比べても十分な速度で、環境さえ整っていれば安心して利用できるだろう。
ちなみにベンチーマークに使用した筆者のPCはM.2 NVMeのSSDを搭載している。こちらも同様に計測してみたところ、シーケンシャル読み込みが2386.68MB/秒、1015.36MB/秒など。書き込みはシーケンシャルが1111.83MB/秒、ランダムが816.16MB/秒などという速度だった。
今回は画像の転送を想定するため、基本的にはシーケンシャルリードが影響する。そのため、SDカードや一般的なSSDに比べて圧倒的で、M.2 NVMe SSD並みの速度で転送できていることになる。PC内蔵のM.2 NVMeのSSDには若干劣るものの、それでもシーケンシャル書き込みでは上回る結果を残しており、XS2000の実力の高さが伺えた。
画像/動画をどのぐらいの速度で転送できるか
次に、実際の利用状況に即した速度も計測してみた。
デジタルカメラのRAW画像(合計約3.34GB)の画像を100枚を、PC内蔵のM.2 NVMe SSDからXS2000に転送してみた。用途としてはPCに保存したデータをバックアップするという動作だ。
その結果、転送終了までの時間は約4.31秒(3回試行の平均)で転送された。
同様に、USB 3.2 Gen 2接続のポータブルSSDでも転送時間を計測したところ、転送終了までの時間は約6.24秒(同)だった。100枚ぐらいだとあまり大きな差は出なかったが、この数がさらに多くなることで差は大きくなる。
大容量データの例として動画も転送してみる。2~2.5GB程度の4K動画を5つ(約10.7GB)をPCからXS2000に転送したところ、約12.38秒だった。対して、USB 3.2 Gen 2では約13.81秒。
速さはバックアップの味方
写真を撮影したあと、不意のトラブルで画像が消失してしまう、というのは最大級のトラブルだ。撮影後にPCに取り込んで安心したと思っても、そのPCの盗難、紛失、破損などのトラブルもありえる。
そのため、画像をPCに取り込んだら、さらにバックアップを取っておけば二重三重の安心材料となる。とはいえ、バックアップというのは意外に手間だ。特に転送速度が遅いと、PCへの画像取り込みに加えて余計な時間が掛かってしまい、ついついサボりがちになってしまう。
その点、USB 3.2 Gen 2x2に対応したXS2000なら、スピードに関して内蔵ストレージ並みの速度を叩きだしてくれるので、 内蔵ストレージとXS2000への同時保存をすれば手早くバックアップできる 。これだけ高速なら、こと細かにバックアップしても時間を取らずにすぐに完了するので安全性が高まる。
スピードという点では、ポータブルSSDに直接記録できるカメラの存在も見逃せない。例えばSIGMA fpはポータブルSSDに対して12bit 4K UHD動画のCinema DNG形式で記録できる。SIGMA fpはUSB 3.2 Gen 2対応機だが、今後USB 3.2 Gen 2x2対応カメラやモニター搭載レコーダーが登場した場合にも活用できるだろう。
コンパクトなのでバッグの隅にも簡単に入れられ、 容量も2TBと十分 。USB 3.2 Gen 2x2対応の環境を揃える必要はあるが、最近は対応のノートPCも増えている。例えば、MacBook Pro(2021)はThunderbolt 4に対応しているため、USB 3.2 Gen 2x2での転送が可能。今後もそうしたPCは増えてくるので、そうした場合には特にXS2000のスピードが威力を発揮する。
もう一つの使い方としては、今やほとんどのAndroidスマートフォンやタブレットでUSB Type-C端子を搭載しているほか、iPadにもUSB Type-C端子が搭載されている。こうした モバイル端末の外部ストレージとして使うことも可能 だ。PCが使えない環境でも、カメラとスマートフォンなどを接続して画像データを転送し、そこからXS2000に画像を転送してバックアップする、という使い方もできる。
PCを広げられないような場でも、モバイル端末ならすぐに取りだして転送できるし、XS2000ならスマートフォンと接続してもコンパクト。スマートフォンで撮影した写真や動画も転送できるので、最終的にPCに取り込む場合も、XS2000の高速転送でまとめて行えるので効率もいい。
業務ユーザーはもちろん、多くのカメラユーザーに、安心と安全を効率的に実現できるXS2000の所有を検討して欲しい。
制作協力:Kingston Technology International Limited(KTIL)