特別企画

ほぼ全面がNDエリア、それでいてグラデーションあり…H&Yの「バランサーGNDフィルター」を風景写真で使いこなすには?

H&Yの「バランサーGNDフィルター」。一般的なソフトGNDフィルターと違い、GNDエリアが広くてゆるやかに濃度が変化するのが特徴

H&Y Filters Japanより、「バランサー(Blancer)GNDフィルター」という個性的な角型フィルターが発売されました。

風景写真を撮影する時、G(グラデーション)NDフィルターは必需品と言っても過言ではありません。

下の写真のように海岸で海藻が付いた岩を手前に配して太陽を入れたフレーミングの時に、太陽の露出に合わせたら、手前が暗くなってしまった! あるいは、手前の露出に合わせたら空が飛んでしまった! なんて経験があるかと思います。

GNDフィルターなし(空に露出を合わせた)
太陽の露出に合わせたら手前が暗くなってしまった
GNDフィルターなし(手前の岩場に露出を合わせた)
手前の露出に合わせたら空が飛んでしまった

そんな時に明るい空の部分を暗くするようにGNDフィルターを使うと、手前と空の露出を合わせることができます。

GNDフィルターあり
手前と空の露出を合わせることができた

ND濃度のグラデーションが「滑らかに」「幅広く」変化

今回新しく発売されたバランサーGNDフィルターですが、一見するとソフトGNDフィルターと似ています(ソフトGNDフィルターはNDエリアから透明エリアへと続く境目が柔らかいグラデーションになっている)。

一方バランサーGNDフィルターは、NDエリアから透明エリアへとつながるグラデーションの範囲が広いのが特徴です。つまり透明エリアが狭く、そこに至るまで滑らかに変化しているのです。

(左)ソフトGNDフィルター、(右)バランサーGNDフィルター

具体的には、GND16→GND8→GND4→透明へとND濃度が変化しています。

取り付けはマグネットでワンタッチ

バランサーGNDフィルターを装着する方法は、他のH&YのGNDフィルターと同じです。

まずレンズの先端にK-SeriesホルダーとドロップインCPLを取り付けます。

次に、CPLドロップインフィルターの前にバランサーGNDフィルターを取り付けます。

一般的なGNDフィルターの場合、ホルダーに設けられたスリットにGNDフィルターを差し込んで使いますが、H&Y製品はマグネットで着脱できます。そのため、簡単に装着できとても便利です。

実際の使用例

それではどのようなシーンでバランサーGNDフィルターが活用できるか説明しましょう。

まずは空を広く取り入れたフレーミングの時です。下の写真のように満開のコブシの木を主役にドラマチックな空を広く見せたい時に、NDエリアが広いバランサーGNDフィルターを使うことで空のグラデーションがよりはっきりと描写できます。

スライダーを左右に動かすことで、バランサーGND フィルターなし(左)あり(右)を比較できます
スライダーを左右に動かすことで、バランサーGND フィルターなし(左)あり(右)を比較できます

ご覧の通り、バランサーGNDフィルターを使うことによって、フィルターなしの時よりも雲をドラマチックに表現することができました。

この作品の場合、画面の半分以上にGNDフィルターをかけたかったので、ソフトGNDフィルターよりバランサーGNDの方が適しています。

バランサーGNDフィルターのグラデーションはエリアが広いだけでなく、そのエリアの広さを活かしての滑らかな変化も特徴。境目を意識させることなく自然に表現できました。

次に上下シンメトリーの風景でも活用できます。今まではソフトGNDフィルターを使っていました。ただ画面半分にフィルターをかけるので、しっかり半分までフィルターをかけないと効果が出にくいことがありました。バランサーGNDフィルターはグラデーションの幅が広いのでしっかり画面半分にフィルター効果が 得られます。

スライダーを左右に動かすことで、バランサーGND フィルターなし(左)あり(右)を比較できます

スライダーを左右に動かすことで、バランサーGND フィルターなし(左)あり(右)を比較できます

さらにバランサーGNDフィルターに他のGNDフィルターを重ね合わせることで、撮影の幅が広がります。

下のような太陽を入れたシーンの場合、バランサーGNDフィルターだけでは輝度差を調整しきれないため、バランサーGNDフィルターにソフトGNDフィルターを重ねて撮影しています。

スライダーを左右に動かすことで、バランサーGND フィルターなし(左)あり(右)を比較できます

H&Yのフィルターシステムはマグネット式のため、フィルターの重ねあわせも気軽にできます。また、フィルターとフィルターとの間に隙間ができないので、隙間から光が入って乱反射を起こす心配もありません。

まとめ

このようにバランサーGNDフィルターは空を広く入れた画面構成やシンメトリーの風景を撮影する時、輝度差が大きいシーンで重ねて使うなど、様々な場面で活用できます。一般的なソフトGNDフィルターやハードGNDフィルターに加えて、1枚持っておくと写真表現の幅が広がりとても重宝します。

もうひとつ、H&Yフィルターシステムの良い点としては、耐久性に優れていることが挙げられます。スマートフォンの画面なで使用されるゴリラガラスで作られているため、落としても割れたり傷が付きにくいのです。また、使った限りでは色むらなども出にくく、自然そのままの色再現をしてくれます。

複数のフィルターを持ち歩く時は、フィルターケースがあると便利です。H&Yフィルターシステムでは、何枚か持ち歩くのに 斜め掛けにできるフィルターバックも用意されています。これに収納しておくと落 としたり傷が付きにくいのがメリットです。フロント部分にはフィルターホルダーが入り、ファスナーを開けると最大8枚までフィルターを収納できます。

H&Y純正のフィルターケース

最後に……デジタルカメラになってからパソコンを使っての画像処理も可能になりましたが、輝度差が大きいシーンについては、画像処理で暗部を持ち上げ過ぎると画像が大きく劣化することも考えられます。そういった事を防ぐためにもGNDフィルターを使ってある程度露出差を抑えておいた方が良いでしょう。また撮影現場で自分が見た状態に近づけて おくことで、画像処理に費やす時間も短縮できます。そういうメリットからもGNDフィルターを活用されることをお勧めします。

協力:H&Y Filters Japan

東洋英和女学院大学卒。写真家、前川彰一氏に師事。日本国内の自然風景をテーマに光・色・フォルムを巧みに操り表現する。アマチュア時代、多数のカメラ誌の月例コンテストにてグランプリや 年度賞を受賞し、2019年よりフリーとして活動を始める。同年、個展『MOMENT』(富士フイルムフォトサロン)開催。写真集『 MOMENT 』(文一総合出版)を出版。2020年『栞ーfour seasonsー』(オリンパスプラザ)開催。公益社団法人 日本写真家協会会員。公益社団法人 日本写真協会会員。